ロクでなし魔術講師と謎の転入生   作:紅いきつね

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バレバレに決まってんだろ!!



とは言わないお約束


明かされる正体

森の中、金髪の少女が大勢の魔術師に囲まれていた。

 

その場に座り込む少女は震えており、瞳からは涙が零れ落ちていた。

 

魔術師達が少女を手に掛けようとしたその時、1人の青年がどこからともなく飛び出し、魔術師達に少女を守るように立ち塞がった。

 

「おい、大丈夫か?怪我は?立てるか?」

 

青年は少女に優しく問いかけるが返事はない。それもそうだろう、幼い少女がこのような危険な目に遭って何事もない方がおかしい。

 

青年はため息を吐くと、魔術師達に向けて突っ込んでいった。

 

なんらかの方法で魔術師達の魔術を封じ、青年は圧倒的な体術で魔術師達を蹴散らしていった。

 

しかし、いくら圧倒的な力を持っていっても結局は1人でしかなく、体力の限界が近づいていた。

 

数人の魔術師が同時に青年に襲いかかったその時、その数人の魔術師の首が一瞬で飛んだ。

 

何が起こったか理解が出来なかった青年は目の前に何者かが立っていることに気づいた。

そしてその姿を確認し、どれだけ自分はついていないのか、と自分を呪った。

 

「お、お前は......」

 

編笠に黒の着流し、異国から伝わったとされる衣装に黒のブーツを履き、手には刀と呼ばれるこれまた異国から伝わったとされる武器、そして腰にはそれを納める鞘を差した年齢も素性も不詳の謎の人物。編笠を被っている為、素顔すら分からない。

 

その人物は青年も仕事上何度も命のやり取りをした経験がある、宮廷魔道士団と互角以上に渡り合う実力を持ち、金さえ積まれれば誰であろうと殺す裏の世界で有名な殺し屋。通称『人斬り』その人だったのだ。

 

「『人斬り』......まさかお前までこの子を殺しに来たのか?こんな大勢の魔術師まで引き連れて随分な気合いの入りようじゃねえか......」

 

冷や汗を掻きながらも青年は『人斬り』と呼ばれる人物に話しかけた。

 

せめてこの間に少女が立ち上がり、少しでも遠くへ逃げてくれという僅かな希望を抱いて。

 

チラリと後ろを見る、残念ながら少女は変わらず座り込んだままだった。むしろ不気味な人物が新しく現れたことにより更に怯えているように見える。

 

その時、黙っていた『人斬り』が口を開いた。

 

「『愚者』、お前は今の話だけでも2つ勘違いをしている」

 

「なんだと?」

 

『愚者』と呼ばれた青年はまるで訳が分からないといった風に怪訝な顔をした。

 

「まず1つ、俺はその金髪の女に用はない。2つ、その魔術師共の味方でもない」

 

「それじゃあなんだってんだ?こんな最悪な状況で俺の首でも狙いに来たのか?流石にそれは空気読めないにも程があると思うんだが?」

 

「いや、お前の首になど興味はない。ただの......気まぐれだ」

 

「気まぐれってお前......」

 

「1つだけ聞くが、お得意の愚者の世界とやらは発動済みだな?」

 

青年が何か言おうとしたが、それに被せるようにして『人斬り』は問いかけた。

 

「あぁ、もちろん」

 

「了解。なら、容易いな」

 

そう呟くと、『人斬り』は魔術師達を次々と殺していった。

 

首を飛ばし、胸を刺し、次々と死体の山が作られていく。

 

そんな姿を『愚者』はただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

魔術師全員が物言わぬ肉塊に成り果てるまでにほとんど時間はかからなかった。

 

その時、少女が怯えながらもようやく一言、言葉を発した。

 

「あ、あの、お二人はどうして助けてくれたんですか......?」

 

「悪い魔術師を殺すのが俺の仕事だからな」

 

『愚者』と呼ばれる青年はそう答えた。

 

「さっきこいつに言った通り、ただの気まぐれだ」

 

『人斬り』と呼ばれる男はそう答え、去っていった。

 

その時少女は『愚者』の瞳と『人斬り』の声から、この2人は本当は人殺しなんてしたくないような優しい人なのでは?と直感的にそう感じていた。

 

 

*****

 

「先生、今なんて言った?」

 

「あぁ、何度でも言うぜ?」

 

俺が聞き返すと先生は一呼吸置き

 

「完全にアウトだ」

 

もう1度爽やかな笑顔ではっきりと、そう答えた。

 

まさか転入初日から遅刻とは......俺としたことが。

 

「ま、こうなりゃ仕方ない、喋りながら行こうぜ?」

 

先生は特に気にする様子もなくそう言った。

 

 

身を隠すことが目的で特に優秀な生徒になるつもりは無かったが初日から遅刻する問題児になるつもりも無かったのだがな......どうなるか分かったものじゃない。

 

 

雑談をしながらしばらく歩いていると先生は突然立ち止まり、真剣な顔で俺を見た。

 

「先生?次はどうした?また武術をやってるとかそんな話か?言っておくが俺は平凡な「2つ、聞きたいことがある」......?」

 

「まず1つ、お前......本当はそんな喋るタイプじゃないだろ?」

 

ふむ、バレていたらしい。先生の予想通り、俺は本来おしゃべりなタイプではない。いや、本来......本来となると......どうなのだろう。もう忘れてしまった。

 

「よく分かったな。これでもそこそこ自信はあったが......違和感あったか?」

 

「あぁ、といっても、もしかしてと思ったのは公園出てからだな。余程の奴がいない限り学院の生徒や教師程度にはバレないとは思うけどな」

 

「ほう、じゃあ先生は余程の奴ってことか?」

 

俺がそう聞くと、先生は更に警戒した表情でこう答えた。

 

「あぁ、2つ目はそういう少し難しいお話だ。単刀直入に聞くぞ」

 

そう言った後、先生はまた一呼吸置き、こう言った。

 

 

 

「お前、敵か?味方か?」

 

 

 

 

ふむ、まぁ流石にあちらも俺がただの転入生ではないと察したか。

 

ここで俺は自分の中での認識を『先生』ではなく『グレン』という1人の人物に変えることにした。

 

「そうだな......先生が俺にとって邪魔な存在にならない限りは敵にはならないはず、とだけ」

 

「邪魔な存在......ねぇ?まるで邪魔になったら俺を排除出来るような口ぶりだな」

 

「まぁ実際、これまでの経験からすると出来るからな。恐らく一対一なら確実に」

 

そう、俺はやはりこの男のことが気になり、喋りながら

自分の記憶を思い返していたのだ。

 

そして思い出した。

 

「なぁ、グレン先生?いや、『愚者』と呼んだ方がいいか?」

 

「......っ!!お前......俺とやり合ったことがあるのか?......いや、あるな。俺もずっと引っかかってたんだよ。お前の声、どこかで聞いたことあるってな」

 

「あぁ、あるな。なんなら気まぐれで(・・・・・)助けてやったこともある」

 

 

 

「な!?お前まさか......『人斬り』......なのか?」

 

 

 

「あぁ、3年ぶりってところか?」

 

「ははは......あっはっはっはっは!!!!」

 

お互いの正体を明かした後、グレンは突然腹をかかえて笑いだした。

 

「どうした?」

 

「いやいや、これが笑えないはずねえだろ!宮廷魔道士団すら圧倒した裏の有名人のあの『人斬り』がまさかの年下でしかも俺の生徒とかどういう冗談だっつの!」

 

なるほど、それで笑っていたのか。たしかによくよく考えるとたしかに笑えてくる。

 

こんなにも面白いと感じたのは本当に久々だろう。

 

「たしかに笑えるな、まさか生徒が命の恩人でしかもその生徒に何度も殺されかけてる教師がいるなんてな」

 

「はぁ?ばっかお前あの時はお前が勝手に乱入してきただけで俺だけでも余裕だったし?命の恩人とか思ってないし?」

 

「なーにをアホなこと言ってんだか。肩で息してくたばりかけてただろうが。感謝しろよ?あの森で野宿しようとしてた命の恩人様である俺にな?」

 

それからしばらく子供のような会話を続け

 

 

 

「くくくっ」

 

「ふっ」

 

 

 

「あっはっはっはっは!!」

 

「はははははは!!」

 

お互い腹をかかえてしばらく笑い転げていた。

 

 

 

「あー腹いてぇ、それにしてもお前どうすんだ?早速正体バレちまってるが......お前、丁度あの森の件ぐらいから姿消してたじゃねえか」

 

「あぁ、あの時、人を殺すことしかしてこなかった俺が人を助けたりなんてしたからだろうな、あの時からなんか色々と面倒くさくなってしまってな......だからと言って今更暗殺業を辞めるには有名になりすぎた。だから身を隠していたんだ」

 

「なるほどな、あの『人斬り』にも色々あったってわけか。でも、バレたからにはここも離れるんだろ?」

 

「......いいや、しばらくここにいるとする。それに、あの『愚者』の生徒として生活するのも面白そうだしな。そういえば魔術が嫌いとか言っていたが、お前にも色々あったのか?」

 

「あぁ、その通り色々あってな、もう宮廷魔道士でもない、ただのやる気のない非常勤講師だよ。まぁお互いの正体は漏らさない方がいいだろうけどな。じゃあこれからよろしく頼むぜ?転入生のムラクモ君?」

 

「まぁそれが賢明だな......ふっ、よろしくお願いしますよグレン先生?」

 

 

そう言って悪い笑みを浮かべながら俺達は握手をした。

 

 

 

 

 

こんなに笑ったのも誰かと話したのも久々だし、まさか『愚者』の教え子になるだなんて。

 

 

 

本当に何が起こるか分からないな。

 

 

そう心の中で呟き、これからの生活を楽しみにしている自分がいることに俺は戸惑っていた。




あれれ、学院に入ってすらいない
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