ドクン.....
なん....だ?
体が動かない....
金縛りのような感覚に突如襲われた立香は巨大な培養器の前で立ったままだ
ドクンドクンドクン....
心臓の鼓動が早くなる
なんだこれ...何かに威圧されているような....
視線?誰かに見られている....?
立香はこの感覚の原因を探すため、目だけで辺りを見渡す
誰もいない
人間の視野の広さは左右約120度程度といわれている
視界で範囲では誰もいない
なら後ろか?
いや、違う、後ろじゃない
背後からは何も感じない
ならどこだ?
その正体を立香はようやく理解した
培養器
目の巨大な培養器に入っている少女、さっきまで眠っていた少女の目が開いている。その視線の先は真っ直ぐに立香を凝視している
やばい....
立香は直感で感じた
少女から放たれている異様な空気に体が痺れる
今すぐにここから逃げなきゃ....
逃げなきゃ....
顔から
体から
ツーっと冷たい汗が全身を滴る
ーーーーーいー
逃げなきゃ.....
「ハァ.......ハァ....」
息が荒い
無意識に呼吸が乱れている
ーーーーぱーーいー
逃げられな....
「先輩!!」
ッ!
突然の掛け声に立香の金縛りのような感覚がようやく解かれる
「はぁ.....はぁ.....え?マ、シュ...?」
「助けに来ました先輩!」
今自分の目の前にいるのはマシュ
「さぁすぐにカルデアに帰りましょう!
正面の入り口?
「で、でもまだ静謐が...」
「せい....ひつ?、あぁー
マシュは立香の手を引っ張る
立香はすぐに気づいた
手を引っ張られるも立香はその場で立ち止まる
「どうしましたか先輩?」
「..........」
立香は質問する
「今、静謐がどこにいるかわかる?」
「静謐さんならカルデアで先輩の帰りをずっと待ってます」
違う、今静謐はカルデアにはいない
それにさっきマシュは正面の入り口から逃げるって言っていたど静謐からは裏口からだと聞いている
どちらからか逃げるってことはどちらかが危険ということだ
マシュと静謐、どちらかが嘘をついている
マシュは静謐はカルデアで待っていると言った
それは違う
静謐はカルデアのみんなに託されて俺の元へ来ている
それをカルデアの一員であるマシュが知らないはずがない
それを知らないってことは....
だけど
そんな理屈がなくても立香には一瞬でわかった
「君はマシュじゃない...」
マシュは黙ったまま立香を見続けている
そしてわずかに微笑むとマシュは暗闇へと消えていった
「なんだ、今の....」
立香はハッと思い、培養器の方を見ると中にいる少女は目を閉じたままだった
「幻覚....だったのか?」
立香は培養器に入っている少女を助けようと思っていたけど、今はすぐにここを立ち去るべきだと判断した
立香はその部屋からすぐに出て行く
さっきのあの体が痺れるような感覚とマシュの幻?は一体なんだったのか
わからないけど最後に見た培養器に入っている少女の顔は薄っすらと微笑んでいるような気がした