病院のベッドでボーッとしていると、従姉の『加藤 涙美』がお見舞いにきてくれた。
家が火事になり、一時的に記憶を失った俺に涙美は父親と母親のことを教えてくれた。
父、援交で逮捕。母、失踪。
いやいや、笑えない。マジで?本当に?
「だから聞かないほうがいいって言ったじゃん?後悔は?」涙美が苦笑いで聞いてくる。
「していない」
といい顔で言いたかったが滅茶苦茶、後悔していたので...
「べ、別に後悔なんかしてないんだからねっ!」とツンデレ風に俺。
「うわ、キモッ!...あ、嘘、嘘」と涙美。
記憶喪失の俺からしたら身内とはいえ会って十数分の女性に『キモッ!』と言われるのは流石に辛かった。まあ、確かに今のはキモいと思うが。
「で?いつ退院なの?」
「明日」
そういえば明日退院できるんだ。やっと帰れる。明日から俺は自由だ。...が、俺の頭に一つの疑問が浮かんだ。帰るって何処にだろう?俺の家は全焼しているし。
「これからどうするの?」
「え?」
「家、燃えちゃったよね?」
「うん」そう。全焼。
「記憶ないんだよね?」
「うん」ビックリするぐらいない。
「あたしの家、来る?」
「ふぇっ?」
「親戚だし家も近いから、あたしの家から学校通えばいいじゃん?」
「いいの?」
「当然でしょ?従姉だし、記憶がないなんて方っておけないよ」
「ありがとう」やばい、泣きそう。
「じゃあ、明日のこのぐらいの時間に車で迎えに来るから、今日はもう帰るね」
涙美が帰り、病室に取り残された俺。これからの事とか色々と考えることはあったが疲れていたので考えるのをやめた。
-翌日
昨日言っていた時間はとっくに過ぎていたが涙美が病院まで迎えに来てくれた。お世話になった看護師と医者に挨拶を済ませ、車に乗り込・・・もうとしたが車が見当たらない。俺の前を歩いていた涙美が足を止める。視線を前に向けると涙美がドヤ顔で言い放つ。『乗りな!』驚いたことに自転車に跨がって。え?ママチャリ?
動揺を隠せない俺。ん?確か昨日『車』で迎えに来るって行ってたよな?まさかこれが涙美の言う『車』?いやいや、そんなバカな。
「あの?車は」恐る恐る聞いてみる。
涙美の目が死んでいた。
「お...」
お?
「お亡くなりになった」
あ、ああ...
「体は大丈夫なの?怪我とかしてない?」冷静に心配だった。
「速く乗りな!!!」
ママチャリの荷台を指差して涙美が叫ぶ。もう、完全にヤケクソだな。
「いや、だから体は大丈夫なの?」
「いいから、速く乗りな!!!」
やばい、会話が成立しない。
続く