十六夜咲夜とアイタス・ロータが戦闘を始めるのと同じ頃。その場から逃亡(戦略的撤退)していた博麗の巫女、博麗霊夢は今回の異変の首謀者とご対面していた。
「あんたが今回の黒幕?」
「そうだとしたら?」
博麗霊夢の問いに答えるのは、おおよそ幼女と言っても刺し違えない容姿を持つ、背中に翼を生やした吸血鬼。
今回の空を紅くした首謀者、レミリア・スカーレット。
椅子に座るレミリアは、また霊夢へと問いを投げ返す。
「力づくで、止めさせてもらうわ。力こそが正義、いい時代になったものね」
「止める側が言うセリフか、それは」
やれやれ、と言った顔で指を眉間に当てゆっくりと首を振る。
「ところで、うちのメイドは殺してないだろうな?うちはこれでも人材不足なんだ、殺られては困る」
「そうなの。私の知ったことじゃないけどね。
あのメイド?弾幕ごっこなら死ぬことはないんだけど……」
「釈然としないな」
「途中、見知らぬ乱入者が来てね。そいつに押し付けたから知らない」
悪びれる様子もなく、霊夢は言った。実際、霊夢にとって十六夜咲夜はどうでもいいのだ。
「押し付けた……だと?おい。お前の仲間じゃないのか、その乱入者は」
「見知らぬって言ったでしょ、私とは何の関係もないわ」
いかにも面倒くさいといった表情をする霊夢。その表情を見たレミリアは、椅子から立ち上がる。
「……なら、とっととやるか。そのほうが、お前にとってもいいだろう?」
「あら、話がわかるじゃない。吸血鬼のくせに」
くせに、とはなんだとレミリアは顔をしかめる。
ーーーーパチェは、ついさっき黒白の魔法使いと戦闘を開始するとあったからな……そうやすやすと負けることはないと思うが。
レミリアは、一つ問題に思うことがあった。
ーーーーこの巫女は、おそらく強い。勘に近い感覚であろうが、わかる。いや、それではない。問題はーーーー
先程から感じる、知らない魔力の波動。
それが、博麗の巫女が咲夜を押し付けた相手だろう。近くには、咲夜の力も感じる。もうすぐ、戦闘が始まると言ったところか。
だが何故だろうかーーーー咲夜と対峙している男の気を感じると、戦う気持ちが湧いて来る。
本能が、戦えと頭に呼びかけて来る。
随分と久しく忘れていた感情であった。幻想郷に来るまでにも、この紅魔館に挑んで哀れにも爆発四散した輩もいたが、その時はこの気持ちはなかった。
魂が、昂らなかった。
しかし、今はどうだろうか。目の前にいる、今回の異変を止めに来た巫女。
そして、ここからでも感じる見知らぬ男の闘気。
久しぶりにーーーーいい戦いができそうだ。
「さぁ、やりましょう。博麗の巫女ーーーー存分に、戦いあいましょう」
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「ーーーー脱走した?」
「はい。妖精メイドから報告がありました。あの男の部屋の扉が破壊されていたという……」
「おいおい、どうしたんだぜ?パチュリー」
紅魔館にある図書館で三人の少女が話をしていた。
普通の魔法使い、霧雨魔理沙とこの図書館の主パチュリー・ノーレッジとその使い魔である。
三人とも、服が多少ボロボロになっており疲れた様子でいた。
その中、パチュリーは使い魔である小悪魔から男ーーーーアルハザード・ラクティーが脱走した報告を受けた。
アルハザード・ラクティー。突如となく、この紅魔館に現れた男。それだけならば、ただ奇妙な出来事で終わったのだがパチュリーが気になったのはその男の中から感じられる魔力だった。
その魔力の質は、魔導書の魔力に酷似していた。それも、とても危険な部類の魔力に。
確か、この図書館で厳重に保管していた本にーーーー
「さっき、私が話したわよね?」
「ああ、あの突然現れたから一応とっ捕まえたって話か」
「重要な所が抜けてるわよ……その男から、魔導書の魔力を感じたの。それも、とても強力な魔導書の魔力を」
「なら、とっとと話を聞けばいいんじゃないかーーーー」
その時、不思議なことが起こった。
ある本が光り、この図書館から飛び去ってしまったのだ。
あまりの突然なことに、言葉を失うパチュリーと魔理沙。しかし、パチュリーはすぐに我にかえった。
「魔理沙、行くわよ!あの魔導書を追わないと!」
「言われなくてもわかってるぜ!」
魔理沙とパチュリーは、魔導書を追う。
飛び去った魔導書、その名はーーーー
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「はぁ……お姉様はまた楽しそうなことをしてるんだろうなぁ……」
そう、いつもの見慣れた天井を見ながら言葉を出す。ああ、ホントに何回みただろうか、数える気も起きない。
ずっと、ずっと、何年も何年もこの地下に幽閉されてきた。
そのため、外の様子など何もしらない。時々、咲夜とかが外の話をしてくれるけどやっぱり自分で見てみないと面白くない。
耳を澄ませば、衝撃音などが聞こえてくる。おそらく、お姉様達の誰かが戦っているのだろう。
ああ、羨ましい。私も、お姉様みたいに遊びたいーーーー
勿論、それが叶わない願いということはわかっている。私、フランドール・スカーレットの力は強過ぎたのだ。
その強過ぎる力故に、相手を簡単に壊してしまう。そして、私自身細かくコントロールもできない。
だから、私が無闇に他人を壊してしまわぬようこの地下に幽閉されたのだ。
しかし、それだけならばまだ耐えられた。たまには皆とも食事できたりするし、談笑することもできる。
問題は、私自身にある闘争本能だった。
時折、遊び相手と称しては見知らぬ人が入って来るけどもすぐ壊してしまう。これでは、私の、吸血鬼特有の闘争本能は満たされない。
そのせいか、時々溜まりまくったソレを晴らすために何も考えず暴れてしまうのだ。
お姉様は抑えれてるようだけどさ。
ああ、私ももっと楽しいことしたい。卑猥な意味じゃなくて。
そんなことを思ったとき、扉が凄い勢いで開けられた。それにびっくりして、思わず飛び上がっちゃった。
開けられた扉から来たのは、一冊の本だった。黒い本だった。
私はそれを手に撮る。タイトルは……
「無名ーーーー祭祀書?」
その瞬間、私の視界はブラックアウトした
文字数少な過ぎてやばい。
二話に分けようとしていたのを一話に纏めたほうがいいかな