照-teru- 魔法編 episode of side-IF   作:ホーラ

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別作品として再投稿です


第1局[出逢]

2030年前後より、急激な寒冷化により世界の食糧事情は悪化。それを補うためにエネルギー資源の争奪が各国間で始まり、2045年から20年間続いた戦争、第三次世界大戦が勃発する。

各国共に兵器の開発や人材の育成に力を入れていたのだが、そんな中

一番力を入れたのは魔法であった。

 

 

魔法とは、「超能力」と呼ばれていた先天的に備わる能力の使用法を、「魔法式」として体系化し、素質ある者が使用できるようにしたものである。

そして、魔法は攻撃面では対歩兵に強く、防御面では対兵器にも強い。そんな優秀な魔法を各国はこぞって研究した。

当然、日本でも研究がされており、いくつもの研究所が設立された。2093年現在、その研究所出身の魔法師は十師族と呼ばれており、日本の魔法界を支えている。

 

 

だがその研究所とは別に、当時の政府の高級閣僚しか知らない極秘の研究所が建てられていたのは今はもう知る人はいない。

 

その研究所で行われていた研究は、魔法師に勝つためだけを突き詰めた魔法師。『魔法』ではなく『魔法師』だ。

優秀な魔法師同士を掛け合わせ新しく子供を作る。その産まれた子供が優秀な子でなければ破棄する。それの繰り返し。

ただ優秀なだけではダメ。その子だけが特別でありイレギュラー、場を支配するぐらいの圧倒的力を持ち、魔法に愛されていると思われるぐらいの能力を研究者は求めた。

 

その結果産まれたのは男女4人ずつの魔法師。ちょうど4人ずつだったので家庭を持たせまた子供を作らせた。

そうしてできたのが「宮永」「大星」「神代」「天江」という四つの家系。その家庭は魔族と呼ばれ、一人一人は魔物と呼ばれていた。圧倒的力を持って戦場で活躍するかに思われたが、時期が既に遅すぎた。その魔法師達が家庭を持った後すぐに、第三次世界大戦が終結してしまう。

 

どの家もそれぞれ圧倒的力を持っていたのだが、大きすぎる力は身を滅ぼすと言われているように、今現在の2093年、残っているのは宮永家だけ。 あと他の家は皆、調整体特有の短命であり繁栄する前に滅びたのだ。

 

その生き残った宮永家の長女、宮永照は2093年4月国立魔法大学付属第一高校に入学する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国立魔法大学付属第一高校

 

これから3年間通うことになるであろう学校。毎年、数多くの生徒が国立魔法大学へ進学しているエリート校である。

 

しかしそんな学校にも格差が存在する。

わかりやすい特徴としては胸にある8枚の花弁の紋章の有無。その紋章は今年入学する200人のうち、上位100人の一科生を示すものである。そして残り半分の100人の紋章がない人たち、こちらはニ科生と呼ばれる。

 

そんなもので魔法師としての優劣が決まるわけではないと思うのだがこんな誰もいない自分1人の場所で言っても無駄である。

 

 

 

登校中にもかかわらずなぜ周りに誰もいないかというと…

 

「迷った……」

 

私、宮永照は絶賛迷子中であった。今日は高校の入学式。家から高校の最寄駅まで行くのはどうにかなったのだが、駅から学校までの道で迷子になってしまった。

この時代、情報端末が発達し迷子になることはないと言われているが、そんなものを私が上手く使いこなせるはずがないし、地図を見ても暗号文と同じだ。

 

こうなってしまったものは仕方がない。ここからはどう頑張っても無駄であるので、気を紛らわすために本を読みながら歩くことにする。私にとって知らない場所は大迷宮と変わらないのだ。しばらく適当に歩くと突然、前から声をかけられる。

 

「こんなところで何をしているんだ?」

 

私に声をかけた人は、同じく第一高校にの制服をきたストレートボブの髪型をした中性的な感じがする女子であった。胸の紋章の背景の色は学年ごとに違うのだが見ると同じ一年生。彼女の胸にも花弁の紋章がある。向こうも私の紋章を見て声をかけてきたのであろう。

 

 

「少し迷ってしまって」

「少しって…ここ駅から見て、学校の真反対だぞ。私も入学式に向かうところだから一緒に来ないか?」

 

彼女は家がこちらの方向にあるのか駅を使わない登校のようだ。もしかしたらトレーニングのためにランニングしてたのかもしれない。

そしてその申し出は、とてもありがたい申し出だ。

 

「ありがとう、親切な人」

 

営業スマイルを顔に貼り付けて答える。この営業スマイルは初見では絶対見分けることはできない。妹は人付き合いが悪いし、知らない人に話しかけられるとオドオドするし、こういうところは私を見習ってほしい。

 

「とりあえず歩きながら本を読むのをやめてほしい」

「わかりました。すみません」

 

私も座って本を読む妹を見習うべきだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

摩利は入学式にトレーニングの一環で歩いて学校に向かっている時、一風変わった女子生徒を見つけた。

その彼女は本を読みながら、学校と真逆に進んでいる。胸の紋章を見ると私と同じ一科生の一年。

 

 

最初は話しかけるつもりはなかった。

 

何か用事があって学校の反対に向かっているのかもしれないし、こんなところで入学前に軽々しく話しかけるのは気がひける。

 

「こんなところで何をしてるんだ?」

 

そう思ったにもかかわらず、その女子生徒に話しかけた理由は、その女子生徒が感じたこともないオーラを発していたからだ。

 

一般的に魔法感受性が高ければ高いほど、相手がどれぐらいの実力を持つかわかるようになる。魔法感受性が高いと、相手の身体から溢れ出すサイオンをオーラとして感じることができ、そのオーラは実力者ほど強くなるから、相手の実力はある程度予測できるようになる。

摩利も魔法感受性は高い方であり、十師族直系を何度か見たことがあるが、自分と同じぐらいなように感じ取っていた。

 

しかし、彼女が放っていたオーラは異質。

彼女のオーラはそれほど強いものではない。サイオンを身体に抑え込む技術を習得しているのかもしれないが、特筆すべきはその点ではない。

普通、サイオンは身体から放射状に発散される。しかし彼女のサイオンは、全体からも発散されているが、ありえないことに多くは右手で渦を巻いている。そのオーラは人間ではない、言うなれば「魔物」というのがふさわしいと思ってしまうほどの圧力を持っていた。

 

摩利はその異質なオーラが気になり、興味本位で話しかけたのだが、すぐに後悔することとなる。

 

話しかけた自分を見る彼女の目。何か情報を読み取ろうとする目。その目は自分の外見だけではなく、性格、能力、過去、など自分を形作ってるもの全てを見通している気がしたからだ。そんなことはできるはずがないのだが。

 

そんな目は一瞬であり、その女子生徒は困っているような顔をする。

 

「少し迷ってしまって」

 

少しどころじゃない。彼女はたぶん駅でおりたのだろう。そうなると学校と反対の方向に向かっているのだ。方向音痴にも程がある。たぶん一生かかっても学校に辿りつけないであろう。

 

「少しって…ここ駅から見て、学校の真反対だぞ。私も入学式に向かうところだから一緒に来ないか?」

 

思わずそう提案してしまう。先ほど見た彼女の目に恐怖を感じたが、この子をほっておくわけにはいかないと感じてしまったのだ。

 

「ありがとう、親切な人」

 

可愛い顔に笑顔を浮かべそう言ってくる。それは柔らかい笑顔であり、それが作り物か作り物ではないかは見分けることはできない。

そして親切な人と言われたので、親切ついでに一つ注意をしてあげる。

 

「とりあえず歩きながら本を読むのをやめてほしい」

「わかりました、すみません」

 

彼女は少し驚いたようだが、私の注意に従ってくれるようで、本を閉じてくれた。

 

 

 

私はその彼女と2人で並びながら駅まで戻る。彼女はあんまり会話が得意ではないのか無言であった。

 

「ここがたぶんお前がおりてきた駅だろう。そして学校にはこっちではなく、あっちの道をまっすぐ行けば着く」

「ふむふむ」

 

納得したような顔をしているがとても心配である。

 

「それに迷っていたなら、誰かに道を聞くか本を読むのをやめて調べるかしたらどうだ?」

 

もし私が声をかけなければ、彼女は永遠に学校につくことはできなかっただろう。普通の人間なら人に道を聞くなり、情報端末で調べるなりするはずである。私が疑問に思うのはおかしいことではなく、当然であろう。

 

「なるほど、そういう考え方もあるね」

「いや、考え方とかの問題ではないだろ…」

 

いや逆にそれ以外の何があるんだ…たまたま適当に歩いたら着くみたいなのことを期待でもしていたのか?

 

「でも大丈夫、今回は親切な人が助けてくれたから」

「親切な人じゃなく、渡辺摩利だ」

 

親切な人呼びが鬱陶しかったので、思わず自己紹介をしてしまうが、これから同学年で3年間共にするので別に不自然でもないし、問題ないだろう。

 

「わたし鍋無理?」

「言ってない」

 

どんな聞き間違えをしたらそうなる。

 

「渡辺」

「ワタナベ」

「摩利」

「…………」

「なんでそこは復唱しないんだ」

 

変わったやつだ。そして、彼女は急に歩みを止めこちらを見る。

 

「私は照、宮永照」

 

これがのちに一高で四天王と呼ばれる4人のうちの2人の初めての自己紹介であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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