あと、結構出だし部分で自身六作目『呪術師と預言者の悪魔的恋愛』から引っ張ってきたネタが多いです。
第1話:帰ってきたラクギサ+愛しのホリィ
無限に広がる魔界は宇宙空間その物と言っても問題ないほどに広い。
魔界の数も広さも、そこを修める魔王のレベルがそのまま反映されるからってのもあるんでしょうね。
強い魔王が沢山いるから、ここら辺一帯の大気中の魔力密度が半端ないのは、そういうことなんでしょう。
「それにしてもホリィ。
あなた平気? 魔王クラスはともかく、あなた種族は人間のままだけど?」
「平気ですよご主人様♪
ほら、私って普段から気合いでなんでもやっていたでしょ?」
「そうね。あなたの気合いは悪魔以上だったわね」
「さッ! ご主人様!
キアイ入れて頑張っていきましょー♪」
まぁ、何にせよ、ホリィを鍛えた私自身が驚くことでもないのかもしれないわね。
それよりも、こんな場所に漂っているだけじゃ話は進まないし、とっとと行動に移すとしましょうか。
「テレポート」
ちゃっかり『モンスターファーム』の世界で戦ったスエゾー種から観ただけで覚えたテレポートで目的の場所に転移。
話が早くに進んで便利ね、この技。
「ご主人様、見ただけで他のモンスターの技を覚えたんですか?」
「正確には“観た”ね。
見るんじゃなくて“観る”の。聞くんじゃなくて“聴く”の。
観察眼こそが大切なの」
「ご主人様の師匠の言葉とかですか?」
「いいえ、私に師匠はいないわ。
でも私の大好きな漫画やアニメの登場人物の言葉ね。
それよりも、今更だけど気を抜いちゃダメよ。
これから会うのはあなたはおろか、私でさえ命がけの相手なんだから」
こんな場所でもなければ私の好きな漫画談義をしてもいいんだけど、テレポートを使ったから目的地にはもう着いているのよね。
目的の人物もいるし。
「突然の来訪、本当に久しぶりじゃないの、ラクギサ。
二年ぶり位かしら?」
ここは私の宿命のライバル“呪術王”シュナムクルの治める魔界にして彼女の城。
ようするに私がここに来た目的の人物。
「テレポートだなんてカッコいい技どこで覚えてきたの?
とある魔術と科学が交差する世界への旅行券でも当てたとか?」
「それはそれで行ってみたいけど、私が最近まで遊んでいたのはモンスターをファームで育てる世界よ。
そこで尻尾の生えた目玉モンスターを観て覚えたわ、シュナムクル」
雰囲気作りと言う理由から、電気ではなくロウソクの灯りが照らす広間の奥に座る小柄な少女。
永遠のライバルにして、無敵街道まっしぐらだった過去の私に始めて土を付けた女。
「こっちはあんたが居なくなってから暇だったのよ?
ほら、あたしってば結構強いから腕試しで本気出せる相手少ないし♪」
「あなたには可愛いお嫁さんがいるじゃないの。
プラムちゃんは元気?」
プラムちゃんというのは、彼女のお嫁さん。
女同士での結婚ってのも、悪魔にとってはそう珍しくはないわね。
「いやぁ~、プラムちゃんったら女同士でも子どもを作れるようになる魔法を研究するとか言って、どっか異世界に行っちゃってさぁ~♪
あたしは血の繋がりはないけど娘がすでにいるし、子どもなんて別にいいんだけどねぇ~♪」
「でも、そういう自分への愛を証明するための努力が嬉しい、と?」
「そゆこと~♪」
ほんと、変わらないわね、私のライバルは。
私だって、最初に負けた時は死の恐怖や屈辱感で殺意や絶望でいっぱいだったけど、長い事接してからは嫌いになれないもの。
「で、ラクギサ。
あんたの後ろにいる子って、ひょっとして……」
「ええ、御想像通り。あっちの世界でブリーダーランク名人位になって連れてきた私の可愛い側近、【魔神】のホリィよ♪」
「人間のまま魔神にしちゃったんだ?
っへ~、あんたが魔神を作るだなんて、もしかして魔王になる気?」
「そのつもりで今日はここに来たのよ。
相談したいこともあるし、今日は泊まっていくからとりあえずお茶をちょうだい」
「いいよいいよ、泊まっていきなさいな♪
出てきなさい、シードル」
シュナムクルの影から出てくる<シュナムクル魔界>の名物魔神シードル。
「久し振りだな、ラクギサ。
オレはお前が来ない間、シュナムクル様の暇つぶしとして高難易度ゲームへの挑戦をしていたぞ」
「久し振りねシードル。そして相変わらずのようね。
でも、あなたはもう少しフロム・ソフトウェアのゲームをするべきよ。
せめてプレイ時間はともかく、私やシュナムクルくらいのレベルになるにはさらに研究をする必要があるもの」
「くっくっくっ……、オレは魔神としての仕事もあるからな。
というか、上司のシュナムクル様が魔王の仕事をほとんどしないのもあるが……」
「それにしてもあなたは魔神らしさというか、シュナムクルへの敬意がないわね」
生意気な発言も許す寛大な魔王シュナムクルは、シードルの言うことは何処吹く風でお菓子をつまんでいるし。
私もこれからは魔王を目指すことになるわけだけど、シードルと比べるとホリィの方が断然可愛くて優秀!
まだ自分の魔界すら持っていないけど、この時点で私の方がシュナムクルよりも勝っていると思えるわ♪
「さぁ、詳しい話は夜にしましょう。
何故なら! その方が悪魔っぽいから!!」
この城の主がそう言うのだから、話は夜ね。
シュナムクルの城は、客人用のベッドが最高級ホテルに勝る設備だし、ホリィと過ごすのもファームに居た頃よりも楽しめそうだからね♪
ちなみに、シュナムクルの城は雰囲気作りでロウソクによる灯りですが、城の灯りの大多数は電気です。
この章は魔王を目指す気になったラクギサが、自分の魔界を手に入れるまでのお話になります♪