「逃げも隠れもしない。ただ少し、待ちくたびれただけよ」
「お腹が減ったから?」
「当然」
そんな感じのお話。まぁ、始まりの二話目ですからそこまで進展はしないんですよね。
「ん~、はぁ~♪ ホリィ……」
「ご、ご主人様……、もっと、お願いします……」
丁寧にベッドメイキングされたシュナムクルの城のベッドを汚すのは忍びない……なんて殊勝な心がけをしないからこその悪魔。それが私。
どうせシードルやプリニーどもが直すんでしょうし、ちょっとくらい汁まみれになっても別に構わないわよね。
現在、友人のシュナムクルの城に厄介になり、かつ愛しのホリィとえっちぃことをしている最中よ。
で、そんなことを考えていたからって訳じゃないのでしょうが、ここに無粋極まりない第三者が割りこんでくるのは、ここが私の魔界でも私の城でもないからでしょうね。
「……おい、二人とも。
夕飯の支度が出来たぞ」
邪魔者の正体はシードル。この城の持ち主の側近。
くぅ、早く自分の魔界が欲しい! 自分の城が欲しい!
シードルなんかに折角盛り上がっていた私とホリィの熱に水を差されるだなんて!
それは勿論、私だけでなくホリィも思ったことのよう。
すっかり私がいなければ耐えれない体に調教しただけあって、二人の愛の語らいを邪魔されたことに魔王クラスの怒りを発揮するだなんて……、濡れるわね♪
「……シードルさん。
私とあなたは生きてきた年数は違うかもしれませんが、同じ魔神という肩書同士。
出来れば魔界初心者の私は仲良くしたいと思っているのですが、今この瞬間あなたは私の敵となりました」
「くっくっくっ……、このオレを敵に回すというのか?
俺はシュナムクル様の命令以外は自由なのだから、貴様に人間から悪魔になる良さを体に教えてやってもいいんだぞ?
これでも過去、人間の頃は勇者をしていた」
シードルは冗談だと思っているのかもしれないけど、ホリィはやると決めた時にはやる女。
伊達や酔狂で私の側近をしている訳じゃないのよね。
「残念ながらあなたに教えてもらうことはありません。
何故なら、あなたは過去を語るだけしか出来ませんが、人間としても若い私は、無限に広がる未来を語ることができるのだから!」
へぇ~、なんか熱いセリフ言ってくれるわね♪
同じ魔神同士とはいえ、元・魔王のシードル相手にここまで啖呵切れるだなんて流石は私の愛するホリィ。
「私は卵カブリを一万個食べて寿命を伸ばしに伸ばしました。
ステータスも前の世界でカンストしていたのが、こっちの世界に来て上がりました。
さて、私の今のレベルは幾つでしょう?」
「一般的な魔神はレベル数百~千もあれば一流だな」
「残念ですね。私のレベルは2000です」
ホリィはステータス限界値の低い『モンスターファーム』の世界出身だけあって、経験値が大量に余っていたのよね。
それがこっちに来たことで前の世界の限界を超えたんでしょうが、それでも相手が悪い。
相手は元・魔王にして私のライバルの治める魔界を取り仕切る魔神なのだから。
「くっくっくっ……、オレのレベルは53万だ♪」
シードルの方もノリノリで応戦しちゃうし。
まぁ、彼の言うことは大半が冗談でしょうけど、それでも実践経験の無いレベル2000程度ならシードルにはまだ勝てないわよね。
ホリィはあっさりと敗北。勿論、実力を過信したホリィにも非はあるけど腹が立ったから私もついでにシードルを殴って食堂へと向かう。
まったくこの子は、もう少し考えて行動してほしいわね。
「くっくっくっ……、なかなか筋がいいなラクギサ。
オレに挑んでくる者など、久し振りだったぞ」
「私の自慢よ。そう遠くないうちにあなたを超えさせてみせるわ、シードル」
私のライバルの従者が弱かったら面白くないもの。
そして私の恋人が弱いのも嫌。
ホリィには、これから作る予定の私の魔界を支えてもらうためにも頑張って強くなってもらわないとね♪
しばし、ホリィを担ぎながらの移動中、シードルと雑談しているうちにシュナムクルの待つ食堂へ到着。
それにしても広い城ね。
「遅かったわね。
またシードルが馬鹿なこと言ってホリィちゃんと喧嘩でもしてたの?♪」
「その通りよシュナムクル。
シードルが私とホリィの行為の最中に無粋にも勝手に入室してきたから、この子がキレちゃったのよ」
「あっはっはっはっは♪ それはシードルが悪いって」
「くっくっくっ……、やはりシュナムクル様はラクギサやホリィの味方をするのだな」
当たり前よ、と言いながらシードルに私が殴ったよりも痛そうなゲンコツを落とすシュナムクル。
ほんと、この二人は仲良さそうで、この辺は羨ましいものがあるわね。
私も早く、ホリィとボケとツッコミが出来る仲になりたいわ。
「そんなことよりご飯よご飯。
あんたら二人も仲が良いのはいいけど、食事の時間くらいは守ってくれなきゃ。
これでもあたしの方が格上なのよ?」
「今更私たちの関係に肩書なんかを持ちだすの?」
「ンな訳ないじゃん。
あたしだって、プラムちゃんが居れば毎日だってイチャコラして食事を蔑ろにするでしょうからね。
っか~、愛しの相手がすぐ隣にいるあんたが羨ましいわよラクギサ!」
「くっくっくっ……、オレは何時でも妻とズッコンバッコン楽しんでいるがな♪」
「シードルは少し回数を減らしなさいよ。
毎晩毎晩、あたしが一人寂しく枕を濡らしているのにトコナっちゃんとイチャコラし腐りやがって!」
「くっくっくっ……、それはオレの妻に言うことだな。
あいつからいつも求めてくるんでな♪」
あ~、いいわ~、こういう会話♪
私も自分の魔界を作ったらこういう会話を毎日ホリィとしてぇ~! 他にも可愛い子一杯集めて楽しい魔界にしなくちゃ~♪
そして妄想は一時中断。
料理がプリニー達によって運ばれてきたので一旦食事にしましょう。
それにしてもシュナムクルの城って、プリニー隊とシードルしか家来が居ないらしいけど、本当にシードルったら家事万能ね。
「ところでラクギサ」
「何かしらシュナムクル?」
「どうやって魔界作るの?」
「ふふっ、私には考えがあるわ。
それにはちょっとシュナムクル経由でプラムちゃんに許可が欲しいのよ」
「ほいきた、何でも言ってみ♪
あたしとあんたの仲だし、プラムちゃんも大概のことは許可くれるさ♪」
「あと迷惑を掛けることになるわ」
「構わないわ」
「くっくっくっ……、その迷惑が一番掛かるのはオレだろうがな」
ふふっ、それじゃこっちの世界に帰ってきて一番にシュナムクルの魔界に来た要件を済ませるとしましょうか♪
◆ ◆ ◆
そうして談笑を楽しんで要件を済ませた私は、シュナムクルと一緒になって宴の盛り上げ役として空に打ち上げられるシードルを見ながら決意を決めたの。
自分の魔界を手に入れて、ホリィと一緒にシードルみたいなギャグ要員の家来を空に打ち上げまくれる日常を送ろう、と。
そして時は動き出す。
これまで私は自分の魔界を持たないから“魔王クラス”であって“魔王”と呼ばれていなかったけど、そのことに色々な思惑を持つ者たちが接近を図る。
私を倒してこれから作る予定の魔界を乗っ取ろうとする者、配下となって寝首を掻こうとする者。
そして、私の寵愛を求める者。
ほんと、この世界は退屈しないわね♪ ふふふふふふ♪