「ただのアホです」そんな感じのお話。
悪魔なら誰だって自分の魔界が欲しいと思うもの。
基本的に好戦的な性格が多いから隆盛の激しい各魔界だけど、それでも一時の栄華を誇ろうとする悪魔は多い。
名のある悪魔は規模はピンきりなれど、魔王として魔界を治めているし、そんな魔王の補佐をしている魔神だって大勢いる。
昔の私は、そんな権力を手に入れたがる悪魔たちを鼻で笑って自分がその時々でしたいことを楽しんで生きて来たけど、ホリィに召喚され、ホリィに惚れ、段々と考えが変わってきたのよ。
自分の魔界が欲しい、と。
正直、魔界を治めるだなんて、魔王の称号さえあれば「力こそ全て」の悪魔にとって何をしても許されるんでしょうけど、人から嫌われちゃうじゃない?
私は交友範囲が広いし、あまり無茶な命令を人にしたり、纏め上げたりってのはしたくないの。
だけど、ホリィという身も心も仕事もサポートしてくれる存在がいるなら、彼女と暮らす最高の環境を作るために自分の魔界が欲しい、そう思ったの。
そして私がそのためにしていることとは……、
「凄いわ! 実際凄いこの薬♪
ここまで効果がある痩せ薬は始めてよ♪」
「すいませ~ん、この薬50個ください。
ついでにお菓子も同じだけ」
「あ、一人占めは許さないわよ!!」
「このお菓子美味しいぃ~♪」
アイテム屋『らくぎさ』。それが私の経営する店の名前。
私は「悪魔であっても美しく」をモットーに、あまり暴力的なことは敵以外にはしない主義なのよね。
だからたまにお金が必要になるとこうやって、アイテム界などで圧倒的な力で手に入れてきた採掘品を売ってお金稼ぎをしていたんだけど、今回売っているのがこちら!
「ヒル草はどんなダイエット食品よりも効果があるわよ。
食べて一週間もすれば一回り痩せるし、バリアメはとっても甘いから毎日食べたくなるけど太り易いわ。
アルタケーキはちょっぴりお高いけどそれだけ美味しいわ♪」
『モンスターファーム』の世界で買い占めてきたアイテムの転売。
これが意外なほど儲かるのよ。
「ご主人様、これは凄い稼ぎですね……」
「でしょ?
悪魔ってのは無駄に長い寿命のおかげで娯楽の人気が高いのよ。そして女性は男を誘惑するためにも美しくなきゃダメだからダイエットにも力を入れる。
確実に痩せる『モンスターファーム』世界のヒル草は見ての通りの大ヒットよ♪」
「それにしても、ぼったくりではないでしょうか?
通貨の基準は分かりませんが、私の前居た世界では50ゴールドだったヒル草やバリアメを5000万ヘルで売るだなんて」
「いいのよ。だって私の店を利用する悪魔たちは元々それだけのお金持っているし、商品の質と私への信頼は絶大だから♪」
「本当にご主人様はなんで魔王にならなかったのか不思議なほど人望があるんですね」
そりゃ「魔王」でなくとも「魔王クラス」だからね。
私個人の実力と信頼、それに実績は一流の魔王と比べても遜色がないもの♪
「アイテム界で手に入るアイテムは苦労の割に数が揃わないからあまり儲からないし、モンスターファーム様様よ♪」
バリアメが売れればヒル草が売れて、アルタケーキも一緒に売れて、食べておいしい売っておいしい。
これまでの実績のおかげね!
そして一週間ほどで買い溜めた商品を売りさばき、所持金1兆ヘルオーバー。
……ちょっと稼ぎすぎたかな? でもまぁ、ここまで来れば私が何をしようとしているか分かるでしょう。
そう! お金で自分の魔界を買うの!!
「ご主人様、シュナムクルさん経由で宇宙最強魔王のゼタさんに【全知全能の書】を使わせてもらうというのでは駄目だったんですか?」
「それは無理ね。
だって私が満足する規模の魔界を作るとなると、魔力全てを注ぎこんでも作れないでしょうから。
ちょっとずつ魔力を小出しにして徐々に大きな魔界を作ろうにも時間がかかるし、それなら誰かから買った方が安上がりなのよ」
奪うって方法もあるけど、私は出来る限り穏便に平和的に事を運ぶ主義。
相手が敵になるなら潰すのはやぶさかじゃないけど、楽しく魔界を手に入れるならこのやり方がいいわ。
「まっ、騙したり騙されたりってのも悪魔の常なんだけどね」
さて、それじゃ魔界ゲットといきましょうか♪
交渉相手が留守じゃなければ今日中に手に入るでしょうし。
◆ ◆ ◆
「わはははははっ!
おぬし、なかなか良い取引を持ちかけてくるではないか!」
魔界を売ってほしいと相談を持ちかけた相手は高らかに笑う。
「嬉しいのか? 嬉しいのだろう?
なんせ我輩の魔界を手に入れるのだからな」
「随分と者分かりが良くて助かるわ……、キングダーク」
そう、私が自分の魔界として狙いを付けたのは魔帝ロイヤルキングダーク3世の魔界。
自身の魔界を生まれたばかりの娘に取られた間抜けでチンケな小物魔王だけど、その娘のプラムちゃんがシュナムクルと結婚したから、その隙に娘から魔界を取り返したアホなおっさん。
ようするに元々はプラムちゃんの魔界を所持しているのよね。
「勝利の歴史に包まれた魔王の中の魔王、その我輩に相応しいさらに大きな魔界まで譲ってくれるというのだ。
それに1000億ヘルもくれるというのであれば二つ返事で了承してやろう」
「一応言っておくけど、私が勧めた魔界は、あくまで大きいからあなたのように立派(笑)な魔王が治めるのに相応しいじゃないか? ってことだけなんだけどね」
今でこそ、このアホが魔王をしているキングダーク魔界だけど、本当はプラムちゃんの魔界。
結構な大きさと美しさがあって私の魔界に相応しい美しさなのよね。
これを手に入れるために、このアホから買い取ろうってわけよ。
「それじゃあ、最後にもう一度条件を確認するわ。
あなたの魔界を私は、今のあなたの魔界よりも大きな魔界の『情報』と現金1000億ヘルで売る。
これでいいかしら?」
「うむ、いいとも!
我輩ほどの偉大な魔王には小さかったところだからな」
「そう良い取引をありがとう。
お金はアタッシュケースに入れているから。
そしてあなたの次の魔界に相応しい魔界ってのはここからすぐ近くにあるわ。
真っ赤だからすぐに見つかるでしょうね」
「よし、早速行ってくるとしよう。
我輩の新たな魔界に、我輩の偉大さを刻みつけ無ければな」
そう言って飛び出していくキングダーク。
……まったく、呆れるほど単純な男ねぇ。
「あの、ご主人様。キングダークさんが向かった方向にあるのって……」
「ええ、そうよ。シュナムクルの魔界。
キングダークったら、娘の結婚式の時に一度言ったはずなのにシュナムクルの魔界のこと完全に忘れているんだもの。
それに、よくよく考えれば分かるでしょうに、1000億ヘルだなんて安い値段で自分の魔界を売っちゃうし、本当にどうしようもないアホ魔王だわ」
そこがカモだから商売人としてはありがたいことこの上ないんだけどね♪
「さっ、アホは放っといてこの魔界を私色に染めるわよ。
手始めに私室と寝室を二人の愛の語らいが出来るようにしましょう」
「イ、イエスノー枕とかですか?」
「散々私とイチャコラしていながら発想が子どもっぽいわねホリィ。
あのアホが使っていたのよ? 内装は全取っ換えよ。
それと私が言いたい愛の語らいグッズってのは、ベッド関連だけでなく、事務仕事中も楽しめるように、お互いの身長に合わせて角をこすりつけ易い高さの机とか、はっ水性の高い敷物のことよ」
嬉しそうに頬を染めるホリィに舌舐めずりをし、これからの魔王としての生活の苦労を全て吹き飛ばせる幸福を堪能するのでした。
ようするにホリィを自分の魔界の自分の城で、好きなだけ弄繰り回しちゃうってことね♪
~設定説明~
プラムはシュナムクルと結婚したことでシュナムクル魔界へと引っ越し、その隙を狙ってキングダークがゲット。
まぁ、元々はプラムも父親であるキングダークから奪った魔界なので元鞘なのですが、それすらもラクギサに奪われてしまうってな流れですねw
今後も出てくる機会があれば命を狙われそうですが、魔王クラスでキングダークよりも弱い魔王っているのでしょうかね?