キングダークの強さって、『ドラゴンボール』のサタンと同じくらいな気がします。
「よくも我輩を騙してくれたなラクギサ!」
キングダークから魔界を購入して私自身が魔王になった翌日。
予想以上に早くに文句を言いに来られた私。
「騙したとは随分な物言いね。
私はこれでも悪魔よ。契約に反することはしていないわ」
「おぬしが教えてくれた魔界の情報というのは、“呪術王”シュナムクルの魔界ではないか!?
この辺りだとゼタにも匹敵し、何よりもおぬしと知己の魔界を勧めたのか!?」
「あら、それは偶然ね。
でも、たまたま見かけて、たまたま勧めた魔界がシュナムクルの魔界だとしても、千億ヘルはきちんと渡したでしょう?
私の商いはその時点で完結しているわ」
「だが魔界を金で買うとなると、相場はピンきりだが我輩の元々の魔界規模は10兆ヘルはするではないか!」
「商売するなら相場くらい知っとく物でしょう?
私はあなたが自分の魔界の値段を知ったうえでボランティア精神から安く譲ってくれたのかと思ったわ♪」
のれんに腕押し、柳に風。
私という存在は百合であり商人であり、色々あったけどキングダークから魔界を買ったことで肩書は“魔王”となっているのよ。
そんな私が、こんな元・魔王を本気で相手するわけないじゃないの。
「こうなれば勝負だラクギサ!
冥界のドン底で後悔するがいいわ!」
「そのセリフはシードルの方が似合いそうだけどね。
あ、でもシードル魔界って今はアレクの管理下なんだったかしら?」
こうして勢いで勝負をしかけてきたキングダーク。
でも考えてほしいのは、こいつと私の戦力の差がどれだけのものなのかってことよ。
「ご主人様に手を出すな!」
そう、キングダーク――本名はロイヤルキングダーク3世。
獅子の顔と筋骨隆々の巨体、立派な名前は迫力があるし、彼の実の娘が“預言者”プラムちゃんというビッグネームなこともあって、彼と面識の無い悪魔からは一目置かれる魔王。
だけどその本質はアホで間抜けで小物。
私にまるで勝ち目が無いアホな元・魔王は、ホリィのドロップキックで壁に叩きつけられ、気絶。
あぁ~、いいわぁ~♪ こちらは決められたことをきちんと守り、契約の穴を突いて稼ぎ、それに逆上した相手を合法的にぶっ飛ばす。
だから商人をやめられないのよ♪
「ご主人様、キングダークさんって弱くないですか?」
「そりゃ、魔王だけど最低ランクだからね。
過去には人間界を攻めたりした実績があるから勘違いしている人も多いけど、彼のレベルはたったの100よ?
単に過去の実績は運が良かっただけで、よっぽどのことがなければこんなのに寝首かかれる魔王はいないわよ」
まぁ、レベル差を覆せるのが悪魔の常識だし、この近辺はゼタが宇宙最強魔王として諍いを減らしているから強さを発揮する機会は少ない方なんだけどね。
キングダークの処理に関しては、ちょうどゴミ収集車が来たところだったから、ついでに回収してもらったわ。
この元・キングダーク魔界にして現・ラクギサ魔界でもゴミの収集はきちんとしないと町内会がうるさいのよね。
勿論、私はルールを守る女だけど。
◆ ◆ ◆
それが今朝の出来事。
現在時刻はお昼を過ぎ、食後のデザートを食べているときのこと、
「おいっすぅ~♪ 早速自分の魔界ゲットしたみたいじゃんラクギサ♪」
「あら、シュナムクルじゃないの。
引っ越し祝いでもくれるのかしら?」
大荷物を持たせたシードルを連れてシュナムクルがやってきたわけよ。
お互いの魔界がすぐ近くにあるわけだから、これからはご近所さんってことになるのかしらね?
あ、ホリィったらまるで新妻のごとく甲斐甲斐しさで連中にもお茶を用意するだなんて、流石は私の女ね♪
「いやぁ~、あんたのおかげでキングダークがうちの魔界にせめてきちゃったのよね」
「それで? ちゃんと話しておいた通りになったようだけど何か問題があったの?」
「あ、うん。キングダークに関してはシードルに任せたからあたしには何の問題もないのよ。
でもシードルったら下手に加減したもんだから、あっという間に逃げられてさ。
あのアホ、こっちに来なかった?
ってか、このお菓子美味しいわね♪」
「えぇ、奴ならさっき来たけど、ホリィの練習相手としてぶっ飛ばしてやったわ。
たぶん、懲りていないんでしょうけど、魔王としての肩書も失っているから頭数を揃えて復讐に来ることも出来ないでしょうね。
そもそも、私とホリィのコンビに勝てる悪魔はまずいないわ!
あと、このお菓子はホリィお手製よ。羨ましい?」
「おうおう、自信家なのは元々だけど、恋をして変わったねぇ~、ラクギサ♪
羨ましいぞぉ~♪」
「一夜限りの恋を繰り返すだけの夜魔族の私だったけどね。
……本気で惚れちゃったのよ、この子に」
特に指示を出していないのに傍で従順に待機していたホリィの頭を撫でる。
ふわっふわで柔らかい触り心地に、うっかり他の場所も撫でたくなったけど、流石に来客中は駄目よね。
「くっくっくっ……、変われば変わるものだな。
ラクギサも昔は毎日女をとっかえひっかえだったと言うのに」
「シードル、これが恋を極めた末にたどり着く境地――愛よ。
悪魔にも愛はある。
人一倍、恋をする夜魔族なら、ひとたび愛情を持てば他の追随を許さない炎が燃え上がるってものよ」
「そういうこと♪
まぁ、そんな訳でこれからは肩書では対等になったんだしよろしく頼むわよシュナムクル」
「任せなさいよラクギサ♪
あたしゃ、あんたのこともホリィちゃんのことも気に行ってるし、出来る限りのことはしたげるわよ。
シードルが♪」
私と関わるのは面白くとも面倒事は部下に丸投げなのね。
「くっくっくっ……、ラクギサ。
これは<シュナムクル魔界>での日常的な会話だから今更なツッコミは不要だぞ」
半ばあきらめたような、それでいて幸せそうな返事をするシードル。
まぁ、結果的にはシュナムクルのおかげで結婚出来たり、携帯機のゲームを持ち寄って遊ぶ友人が出来たり、可愛らしい娘が出来たりで幸せだからでしょうね。
私だったら、いくらシュナムクルが可愛らしい外見をしていても耐えられっこないわね。
「それじゃラクギサ。今日の良き日に♪」
「ふふっ、らしくないけど雰囲気を読む行動ね。シュナムクル♪」
乾杯。そうして魔王となった私は自分の魔界を守った記念ということで夜まで飲み明かすのだった。
~ラクギサの一言~
「私は平和主義者よ。ただちょっと、その『平和』の基準が人よりも大らかで自分基準なだけ」
そんな感じ。一応悪魔的には平穏無事に魔王になれたので良しとしましょう♪