架空の現代にポケモンが出現したら   作:kuro

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お久しぶりです。
数話書き溜めが出来ましたので、こちら行きます。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


ポケットモンスター対策本部

 内堀通りを曲がり、左右に国交省や外務省、内閣府などを見やる。そうして三枝さんの運転する車に揺られ、やってきたのは、内閣総理大臣の執務の拠点、総理大臣官邸だ。東口正門で一時止められはしたものの、ほぼスムーズに中に通される。

 

「ほえ~」

 

 うん。前も含めて自分の人生とは一切由縁(ゆえん)のない建物に連れてこられて思わず口をボケッと開けてしまい、その後はキョロキョロと田舎から上京してきた人みたいな感じに辺りを見回すのは仕方ないことなんだ☆

 

 そうして通される一室。『未確認生物対策本部』と達筆な字で書かれた看板が立てられているその一室の中では、すでに会議が開かれている最中のようであった。

 

「やあやあ来ましたね、新居高さん」

「遅くなりましてすみません、総理」

 

 総理が立ち上がって、2人が軽く挨拶を交わす間に軽く様子を見やる。

 

 実は午前中だが、Web会議という形でだけど僕たちも参加していたのだ。そこでここに集まるメンツをチラリと紹介されたのだけど、まあ大物揃いもイイトコ。瑞樹総理はもとより、副総理兼外務大臣を務める眞柴肇、財務大臣兼金融担当大臣・中河庄一のエース級閣僚2人に始まり、与野党政策部会会長または会長代理、防衛省制服組背広組も含めた各省庁や警察の関係者、現場自衛官(ただし肩の階級章から相当上の方)や内閣官房参与、学者やトップ企業の経営者などなど、はっきり言って経歴なんかを比べれば僕とは住む世界の違うお歴々の方々である。

 

「そうだ。御子神さん、一度こちらへ」

 

 そうして僕は総理の下に招き寄せられ――

 

「皆さん、改めて紹介します。彼がこの度内閣官房参与を引き受けてくれた御子神彰さんです。何分急なもので正式名はまだ決めていないのですが、本日未明より現れた未確認生物、ポケモン担当になります」

 

 ――とこのように紹介される。

 ちなみに僕が引き受けた役職である内閣官房参与とは、首相に直接任命され、首相の“相談役(ブレーン)”にあたる存在である。ちなみに日当は2万7000円と言われた。

 

「皆様、改めて自己紹介させて頂きます。この度内閣官房参与の役職を賜りました御子神彰と申します。まだまだ浅学非才の身であり、皆様の足を引っ張ってしまうことも往々にしてあるかと思われますが、精一杯精進して参りますので、よろしくお願いします」

「とまあこんなことを言っている彼ですが、ことポケモンに関しては我々よりも遙かに知見の優れる方です」

「わはは、総理。そんなことは午前中の会議の席でわーってるよ!」

「ですね、総理。今は何よりも情報が必要です。それをもたらしてくれる彼は値千金の人材ですよ」

「あ、そーいや対策本部の名前変えないといけねーな」

「『ポケットモンスター(ポケモン)対策本部』、でいいんじゃないですか?」

「あ、じゃあ眞柴さん、それでお願いしますよ。私より上手く綺麗に書いてくださいね」

「お、総理も言うじゃねーか! 任せなって! とびっきり上手く書いてやるわなぁ!」

 

 出来るだけ自分が考え得る限りの、失礼のないような挨拶をしてみたんだけど、眞柴副総理の豪快な発言と彼の隣に座る中河さん、あるいは瑞樹総理がそれを追認するような発言で一気に議場が弛緩した気がする。実際この議場にいる人間はニコニコと笑みを浮かべたり、『然り』という具合に頷いてくれる人間が多い。ついでに総理も含めてこの3人は実に仲がいいらしい。

 

「はは。ああ、御子神さん、まあこういうことです。今は国家の非常事態。我々は忌憚のない意見を求めています。ここでは年齢や経験を気にせず、発言してください」

「あ、え、ええ。わ、わかりました!」

 

 うん。そう言われてもこんなメンツを前にしてそれは中々に厳しいだろうに思うのよ。

 

「とりあえず、ここに来るまでの間に新たに判明したこともあると聞いています。我々の方で見つけた情報と摺り合わせまして、ここをより良いものにしていきましょう。あなたも内閣やこの対策本部の一員なのですからそう緊張せずに。ね?」

「は、はい!」

 

 うー、とりあえず、しばらく時間ください! あるいはちょっとトランスするまで待って!

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 

 とりあえず他の会議の列席者の話に耳を傾けているうちに落ち着くことができた。

 で、今は渡された資料も読み込んでいるところなんだけど……うーむ。

 ざっと眺めてみたところ、ポケモンポケストップ関係は完全に僕たちが集めてきたものの方が多い。まあ完全手探りよりかはある程度知識がある上でのそれの方が集められるそれの量が格段に違うと思うからそれも致し方ないのか。

 ただ、その分既存の生物がポケモンに置き換わったことや、ポケモンが現れたことによる被害等については格段に情報量は多い。その辺は政府や省庁の強みと言ったところか。

 あ、それで気になったことがある。

 

「うーん、レベルか」

 

 これは僕たち(というよりかは三枝さん)ではなく各省庁が作成した時系列資料にあったんだけど、だんだんとポケモンのレベルが僅かずつとはいえ上がってきている傾向が見られるらしい。

 思えば今日見てきたのはほとんどが未進化のポケモンだった。スピアーは最終進化形だけど最終進化レベルは10と、レベル進化ではポケモンの中で一番低い部類だ(新出先生のピジョンは進化形だけどレベルは9と規格外に低いからこれはほぼ例外に位置するだろう)。

 とすると、レベルが上がっていく傾向がみられるということは今後は進化形のポケモンの出現も十分にありうる。だいたいのポケモンはこちらから危害を加えなければ大丈夫な部類だろう。問題は……――

 

 今の議場を見やる。

 

「――水産物や畜産関係が既存のものからポケットモンスターと思われるものに変わったため、食糧事情が大いに懸念されます。また海上はポケットモンスターの往来が激しく、漁業にすら出られないという報告も上がっています」

「――ポケモンを犯罪に使うことやポケモン自体による治安の悪化が懸念されます」

「――空と海上ともにポケットモンスターの往来が多く、現状では事故防止のために航空機の欠航や船舶の往来の制限を設けております。それに伴いましてすでに莫大な経済的損失が発生しております」

 

 今はこのように各省庁で現在も含めた今後の懸案事項を述べているところだった。

 なら、僕のこれもそれに沿う形なのだから問題はない、ハズ。

 

「……あの、よろしいでしょうか」

 

 僕は初めて自主的にこの場で意見を述べることを決めた。

 

「構わないよ。どうぞ」

 

 総理からGOサインをもらい、席を立つ。

 緊張はあるけど、今はそれを置いてとりあえずは言いたいことを言おう。

 

「今懸案事項を述べられているところ、恐縮ですが、まずは1つ言わせてください。乳製品、及び農産物の一部に関してですが、これは代用品があります」

 

 うん、これには皆が「えっ?」っという表情を浮かべた。農水省関係者だけはその後に鬼気迫る表情で見つめてくるのだけど。

 

「あー、まず乳製品についてですが、ミルタンクというポケモンがいます。で、このミルタンクの乳としてモーモーミルクというものが採取出来ます。相当美味しいらしく恐らく人間が摂取しても問題はないものと思われます」

 

 するとポケモンの資料から「ミルタンクミルタンク」と探しながらペラペラと紙を捲る音が支配する。

 

「このポケモンは各地の牧場で乳牛から置き換わったものと同じですね。としますと――」

 

 実際アニメやゲームでは普通に人間も飲んでたからたぶん問題はないはず。

 あときのみについても味の差違はあれど問題はなかったはずだ。味についても甘いの他に辛い苦いとかもあったはずだから香辛料にもなる……かもしれないし? 少なくともオレンのみとモモンのみは相当美味しいらしいし。

 ということでこれらを速やかに分析解析してもらい、流通に乗せられるように動くという結論を出させてもらった。

 

「では次です。少し確認を行いたいのですが、まずは警察関係者の方、あるいは省庁の方でも構いません。このポケモンの姿は確認されましたか?」

 

 そうしてたらこ唇に王冠のような背びれと腹びれが描かれた、コイキングが印刷された資料を見せる。

 

「足が生えてりゃタンノくんにソックリだな」

「いや、南国少年パプワくんじゃないですよ、眞柴さん」

 

 いや、僕的にはアニメとかサブカルに詳しい眞柴さんならまだしも、中河さんがそういうこと言うとか意外すぎるんだけど! あれか、中河さんが眞柴さんに毒された感じなのか。

 

「それ大分古いですよね。一番若い御子神くんは分からないんじゃない?」

 

 そして総理も知ってることにビックリ。てかこの3人ホントメチャクチャ仲いいんだな! ネットで言われてた以上だよ! ビックリだよ! ……実際(くだん)の漫画とアニメは名前くらいしか知らないんだけど。

 

「そのポケモンについては確認されています」

 

 やっぱりそうか。とするとやっぱり。

 

「そうですか。では治安に関して申し上げます。近い将来大混乱が起こる可能性があります。ですので、関係各所、特に警察ですね、あるいは自衛隊も含まれますでしょうか。何はともあれ速やかに、いえ今日明日中にでもポケモンの所持を進めてもらいたく思います」

「それはまた穏やかではありませんね。どういうことです?」

「そうだな。政府としてはポケモンの所持を進めていくことはほぼ決定事項だが、かなりの急な話だな。どういうこったい、御子神君よ?」

「そうですね。君の所見を是非聞きたい」

 

 さっきまでの朗らかさとは一変しての鋭い眼光(特に眞柴さん。昔クレー射撃でオリンピックに出ただけのことはある)の3人が見据えてくる。こういうところはこの3人が本当に政治家なんだということを実感させられる。

 

「ではポケモン資料のうちのギャラドスの項目を開いてください。コイキングの次のはずです。それから各省庁の集めてくださったポケモンの出現情報の方もご参照願います」

 

 そうして室内はページを捲る音に支配される。

 

「このギャラドスというポケモンなんですが、非常に凶暴な性格をしているとされています」

 

 ポケモンの各個体の資料は僕のpixiboonにアップしたものから取ってきているようなので、そこにはポケモン図鑑に当たるような簡単な説明文を載せていたりしている。

 

「おいおい、こりゃあマジかい?」

 

 ちなみにそこには『非常に凶暴な性格』だとか、『野蛮』だとか『一度暴れ出すとすべてを焼き尽くす』だとか、凡そマイナスなことしか書かれていない。てか『全て焼き尽くす』とかどこのゴジラだとも思う。誰だ、こんなの書いたの。

 

(あ、僕ですね。いやぁ、ここまで書かなくてもよかったかなぁ。……いやいや、ポケモンがない世界にポケモンを残すというのには必要だったし、ポケモンが現実に出現するとか予想できねーよ)

 

 なんて少々悶々としていたが、会議は進む。

 

「総理、これはまずいかもしれません」

「うーむ、しかし……。御子神さん、あなたはなぜそのようにお考えなのです?」

 

 ちょっとマイナス寄りに振り切れてしまったか。でも、一応はすべての情報を挙げて判断してもらわないとまずいからこのまま行くしかない、か。

 

「このギャラドスについてはまだ確認されていないと思いますが――」

 

 ここで一度止めて警察庁自衛隊防衛省職員の方を見やると、その意図を理解してくれてか、彼らは頷いてくれた。

 

「ありがとうございます。今現状は確認されていませんが、近々出現の可能性は十分にあります」

 

 そうして僕は出現情報を胸に掲げた。

 

「コイキングというポケモンはレベル20になるとギャラドスというポケモンに進化できます。ああ、すみません、今ここでは『進化』というものは置いておいてください。簡単に言えばコイキングはレベル20でギャラドスになる可能性があります。そしてこの出現情報ではざっと見てみると最高でレベル15ですが、じわじわと出現するレベルが上がっていっているとわかります。そして、このコイキングがそこら中で確認されたとしますと――」

 

――そこいら中で凶暴なギャラドスが暴れまわる可能性がある――

 

 そうして僕の言う懸念が理解できたのかズーンと重くなっていく議場内。

 

「ま、さか……」

 

 総理は顔を青ざめてしまっている。自らの失策、ひいてはそれが国民の命に直結するものという認識に陥ってしまったのか。

 正直ここまで雰囲気を重くするつもりはなかったんだけどなぁ。ここから上手く雰囲気をアゲアゲしていかないと。

 

「ただ、そのための対策です。このギャラドスですが、電気に非常に弱いんです」

 

 ここからは考えさせないで一気に捲くし立てていく。

 

「ポケモンには必ずタイプというものがあります。そしてそのタイプには必ず弱点、“有効打”があります。これはどんなポケモン、それこそ世界の安定を司るディアルガ、パルキア、ギラティナ、大地の化身や海の化身のグラードンやカイオーガ、宇宙を創造した創造神アルセウス、並行世界につながるウルトラホールという異世界に住むウルトラビーストも例外ではありません。そしてギャラドスも当然のごとく弱点があり――「ちょっ、ちょっと待ってください!!」――うぇい?」

 

 びっくりした。総理あんな大きな声出すんだもん。思わず変な声が出たし。 

 

「ど、どういうことですか、今の話……?」

「オレぁなんか聞いちゃいけないもん聞いた気がするぞ……」

 

 見れば全員が今度は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべていた。ほぼほぼ口まで開けているので、本当に豆か何か放り込めそうなほどだ。意図してやったこととはいえ、効果ありすぎだろ。

 

「キミ、宇宙を創造した創造神?というのは本当かね?」

「それに並行世界とは? シュレーディンガーの猫のパラドックスが」

「世界の安定とはどういうことかね」

 

 ……やっばい。なんか変な先生方の火がついたっぽい。「と、とりあえずは落ち着いてください教授」なんて諫められてるからどっかの大学の権威なんだろうなとは思う。

 

 ただこれでさっきまでの重苦しい空気は完全に消し飛んだと思う。

 

「先生方、時間があればその話はまた後程。で、ギャラドスについてですが、当然弱点があります。しかも超有効打となりそうなものが」

 

 そうして僕はギャラドスが水・飛行タイプであり、その2つがどちらも電気タイプが極めて有効であることを述べる。

 

「そういうわけですので、出来れば早急に電気タイプのポケモンまたはその技の習得を急がれるのが有効だと思います」

「ふーむ、なるほど、話はよく分かった。防衛省? 警察庁?」

「早急に取り組みます」

「同じく。ちなみに他にも有効なポケモンはないかな?」

「ギャラドスについては電気技が一番です。ギャラドス以外の危険なポケモンはまだ出現する可能性は低いでしょう。ちなみにそんな彼らには格闘タイプやフェアリータイプがいいかと思われます」

「なるほど。いずれキミとはウチに招いていろいろご教授いただきたいものだ」

 

 そして。

 そんな感じで穏やかな話をしていたところで、風雲急を告げる知らせが会議室の扉が開け放たれた大きな音と共にやってきた。

 

 

「首都高速都心環状線代官町インター付近、千鳥ヶ淵にて正体不明の生物が暴れています!」

 

 




書くかどうか分からなかったので、一部感想返しでネタバレしてしまった形ですが、御子神くんは内閣官房参与の役職を引き受けました。人事院上の登録は内閣官房参与ですが、名前の方は好き勝手決められるんですよね。一応ポケットモンスター担当官なんてしましたが、はてさてどうするか。
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