長くなったので分割したらこの分量になりました。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
『信じられません! こんなことがかつてあったでしょうか!? 巨大な未確認生物が東京都千代田区千鳥ヶ淵に現れました! 幸い近くを走る首都高速都心環状線に被害は出ていませんが、危険な状態です!』
テレビでは『未確認』って呼称されてるけど、まだまだポケモンが一般的ではないので、あれがギャラドスだとはまだまだ認知されていない。
そう。
先の一報、そして今テレビに映し出されているそれは、空に向かって凶悪そうな顔で吠える
今「ん?」と思われた方、その疑問は正しい。
そう、
「自衛隊の出動を」
「市ヶ谷に連絡します!」
「いえ! 総理、僕が行きます! 行かせてください!」
相手はポケモン。自衛隊の銃器を向けるというのは気が引ける。それにポケモンにはポケモン。真っ向からあのギャラドスをねじ伏せる。それに今後はこういったこともあるだろう。テストケースとして披露する必要もあるだろう。
「何とかできるのかい?」
「あれはポケモンです! 未確認生物でもゴジラでもない! ポケモンにはポケモンがベストです! ですので、僕たちが必ず何とかします!」
幸い僕のラルトスは電気技も覚えているし、相手のレベルも現状ではレベル20以上とは考えづらい。レベル9のピジョンがいたんだから規定レベルよりも低いギャラドスの可能性だってある。それにこちらはラルトスを含めて3匹のポケモンがいる。
「わかった。警察の車両に先導させる。見事あのポケモンを押さえてみせなさい」
「はい!!」
そうしてこの部屋からは僕、それから三枝さんも付いてきてくれることになった。
「御子神さん!」
首相官邸玄関を出たところで、数台のパトカーが停まっているうちの後部座席ドアの開いた1台の前に立っていた男性から呼び止められた。
「こちらに乗ってください! そちらの方も!」
それに僕たちは迷わずに滑り込んだ。最後にその男性が乗り込んでシートベルトを締めたところで、クラクションが鳴らされてパトカーが発進する。
「こんなんで申し訳ないですが、警視庁公安部の武藤といいます。助手席のが香取、運転席のが久内です。以後、御子神さんの警護に付きます」
「あら、公安さんが名乗るなんて珍しいわね。それに香取さんは女性ですか」
「お陰様で配属されることになりました」
「香取は警視庁警察学校を歴代トップの成績での卒業と大変優秀でしたからね。それに適性もありましたから。それから、本来は仰る通り、そういうことはしないんですが、特別な協力関係を結びたい、もとい既に我々の仲間でありますからね。そういうことですよ、新居高義雄衆議院議員私設秘書で新居高議員の従姉妹の三枝幸香さん?」
「あら、さすが公安さんですね」
「いえ、礼を言われるほどでは。これも仕事ですから」
なんとなく険悪なものを感じたのは気のせいですかね。てか今の皮肉の応酬だよな。
とりあえずは空気を変えたい。
「千鳥ヶ淵まではどのくらいなんですかね?」
「正確にはボート乗り場の方なので戦没者墓苑の方ですね。まあサイレン鳴らしてますから、5分もしないうちに着きますよ」
たしかに、赤信号を通過する際にはスピードを落とすが、それ以外はビュンビュン飛ばしている。
「そうだ。一度何処かのポケストップに寄ってください。戦力を整えます」
「わかりました。おい」
「はい。『護送中の各車へ。こちら1号車香取、――』」
武藤さんの合図で助手席の香取さんが車内に備え付けの無線機を取り、今の内容の連絡を入れている。『了解』の声とともに先頭の車が大きく左へ曲がった。
『こちら先頭2号車。ポケストップ発見。墓苑入り口交差点右折後すぐ右手側の銅像にあります』
ということで、一旦はそこで車を停車してもらい、ポケストップでサイコソーダ、ふっかつそう、それから水タイプの捕獲率がアップするネットボールを1つずつ購入。ちなみにこれで歩数はほぼスッカラカンになった。
「特殊ボールたっかいな……」
大半がこれに消えていったので、げんきのかけらではなく、安いが懐き度が下がる苦いふっかつそうになったという事情がある。ポケストップは捕まえたポケモンの数とかの何らかの条件によって割引が効いているみたいだけど、それが効いていてすらギリギリだったのだ。
「準備OK?」
「はい!」
「んじゃ、行きましょうか」
ということでそのまま乗車。桜の名所として有名な千鳥ヶ淵緑道を北上。千鳥ヶ淵戦没者墓苑やボート乗り場を過ぎて駐日インド大使館や靖国通り方向へと進む。桜のシーズンもほぼ終わりとはいえ、自衛隊員や警察官以外は人っ子一人おらず、かつ駐車車両もないここら一帯は現在は通行規制がされて一般人、車両共に立ち入れない状況になっているらしい。
「にしてもボート乗り場って聞いてましたけど移動したんですかね?」
「我々はそのように聞いております。ああ、あれですね」
見ればテレビ画面で見た赤いギャラドスそのものが自分の眼で確認出来た。赤いギャラドスはあの凶暴そうな顔に大口を開けながらも、悠々と花筏を引き連れて北上していた。
「あのポケモン……私のラプラスに比べても随分と大きいわね」
「たしかギャラドスという生物でしたか。画像を拝見しましたが、色が違いますね?」
「……ちょっとちょっとちょっと、あれはまさか……」
降車した後、三枝さんや武藤さんが大きさや色違いについて言及しているけど、あのギャラドスにはたぶんそれ以上の厄介さがある。
1,普通のギャラドス(高さ6.5m)より
2,湯気が立ち上るような
「まさかあれ、ぬしポケモンか?」
SMで登場した初見で何の対策もしていない場合、苦戦必須のポケモンたち。あとはサポートポケモンが出てくればもうぬしポケモン確定なんだけど、それはバトルしてみないと分からない。
もしあれがぬしポケモンだったとすれば、彼らはウルトラホールのエネルギーを浴びたという設定だったからやっぱりウルトラホールとウルトラビーストの存在はほぼ確実か。
「なんて言ってる場合じゃないな。皆さん、あのギャラドスに仕掛けます! いいですね!?」
念のため確認を入れたが、周りの皆はすでに準備万端というところであった。
「いい
三枝さんはタブレットのカメラで動画撮影も行っているみたいだ。ホント、図太い神経している。
「なにか?」
「いいえぇぇ! なあ、ギャラドス! 僕とバトルしよう!」
ラルトスの入ったモンスターボールを突きつけてバトルに誘う。
「――ギュオオオ!」
するとギャラドスはこちらを振り向いた後、嘶いた。そしてもう一声嘶いたと同時に現れるは――
「――トッサキーントトサキーント!」
頭に鋭い角が生えた見た目金魚のようなポケモン、トサキントだった。
「うっわ、これってサポートポケか? とするともうホントにぬしポケ確定か。ていうかトサキントがサポートって、おいおい、まさか……」
トサキントは水タイプのポケモンで、弱点は草と電気。しかし、このポケモンの場合、問題は特性の方で、特性が『ひらいしん』だった場合、厄介極まりない。というのも、『ひらいしん』は電気技を吸収して特攻をアップさせる効果があり、ダブルで来られると、ギャラドスに撃った電気技がトサキントに吸われてどっちにもダメージ無しという状況に陥るからだ。サポートとして呼んだなら弱点を補える『ひらいしん』の可能性が高い気がする。
そして相手のレベルだけどギャラドスはレベル14、トサキントはレベル11でどっちも僕の手持ち3匹よりは低い。水タイプに弱いのが2匹いるのは気にかかるけど、このレベルならば大した水技は持っていないと思われる。まあトサキントのタマゴ技はともかくだけども――
「とりあえずどっちも試してみるか! まずは行け、ラルトス、ヒトカゲ! キミたちに決めた!」
ゲームでは1対2だったけど、別にここではそんな縛りはないし、向こうの方が数が多くてこっちが1匹っていうのは昔から気に食わなかったんだよね。群れバトル、特にお前だよ(努力値稼ぎ以外)。特に特に『がんじょう』イシツブテとココドラ、お前らだよ。
「いいよな、ギャラドス?」
「グゥウウ」
まあそこはさておいて、ギャラドスの方も了解してくれたので、いざバトル開始だ!
ちなみにネットボール等を調達したポケストップですが、実際に峯田義郎 作『髪結い』という髪を結う裸婦を模した彫像があります。
「ギャラドス+ひらいしんトサキント」とか「ギャラドス+ひらいしんガラガラ」並にガチな構成……。でも雨ママンボウヨワシ、晴れポワルンラランテスとか見てるとぬしポケってこんなもんですよね。