皆様にご忠告を。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
以上のこと念頭に置いてくださいね!
「まずは挨拶だ! ラルトス、ギャラドスに向かって10まんボルト!」
彼が懸念していたギャラドスというポケモン、その一戦がとうとう始まった。私は今は公安の人と共に彰くんを守る立場にいる。ついでにポケモンについてより多くの資料を得るべく、動画も撮るように依頼されている。それは公安の方でもそうなのか、官邸からここまでの運転を担当していた久内と言った彼も同じことをしていた。
「ラプラス、私たちを守って」
私はさっきゲットしたラプラスを外に出した。彰くんは『ポケモンはボディーガードにもなる』ということも言っていたので、今はその役割を果たしてもらうためだ。
「フアアウゥゥ」
ラプラスも『了解した』というばかりに、彼らをまっすぐ見据えつつ、私の前に背を向けて立ちはだかってくれている。
「これは?」
「この子もポケモンなんですよ。ラプラスって言います」
「へぇ。かなりかわいいですね。私も欲しいなぁ」
「頭もいいらしいし、人を乗せて泳ぐのが好きらしいので、今度の休みのときに川か海に連れて行って、乗せてもらおうかと思っています」
「うわぁ!素敵ですね!」
同じ女性ということなのかこの子により魅力を感じてくれただろうと思われる香取さんとの趣味は合いそう。お友達になれないか後で聞いてみようかな。
「ソイツがポケモンですか」
「ええ。おそらく警察や自衛隊は即座にポケモン所持をするよう言われますから、武藤さんもどんなポケモンがいいか考えておいた方がいいですよ」
「そうですか。ところで市ヶ谷へは?」
「ええ。すでに総理は連絡済みです」
それを受けて武藤さんはコクリと頷いた。
先程総理は「やってみろ」と彰くんに仰っていたけども、市ヶ谷からの自衛隊出動待機命令はすでに出ていて、いつでも出動可能状態にある。彰くんが失敗したときの保険だ。彼もそれが分かっているのか、顔色には楽しさもあるけれども、緊張感の色も窺えている。
「ちっ! やっぱトサキントは避雷針の方かよ! ラルトス、ヒトカゲ避けろ!」
「ラル!」
「カゲ!」
見ればなんとあのラルトスというポケモンから放たれた攻撃がグイとねじ曲がり、あの新しく現れた金魚のようなポケモン?に当たったのだ。いや、吸収されたと言ってもいいのかもしれない。なぜならば、あのポケモンは攻撃を受けても苦しそうな素振りを見せずに全く平気な顔をしていたからだ。
そしてその隙を突いて、金魚のポケモンにギャラドスが水面から飛び上がってあの2匹に攻撃を仕掛けていた。尤も、それを悠長にもらう彰くんたちではなく、しっかりとタイミング良く躱していたけど。
「あの赤いギャラドスではない方のポケモンはトサキントというらしいですね」
香取さんがスマホで彰くんが描いた絵を表示させた。見比べてみれば、形や色はまんまスマホの中の絵と一致している。
「なるほど。正しくトサキントですね。しかし、どういうことなのかしらね」
トサキントは水タイプらしい。見た目金魚っぽいからそれも納得の話。しかし、確か水タイプは電気に弱いということだったけど、あのトサキントは先程の電気技を無効化してみせた様子からして、とてもそうは見えない。
「ヒトカゲ、トサキントにりゅうのいかり! ラルトスはギャラドスにあやしいひかりだ!」
ヒトカゲが青紫っぽい色の炎のようなものを吐き出し、ラルトスは7色に明滅しながらフヨフヨと漂う光を作り出した。魚なのに陸に向かって攻撃を放ったために、陸上でピチピチと跳ねているだけのトサキントにはその青い炎がジャストミートした一方、ギャラドスはその巨体をうねらせて水中に戻ったためにその光と接触することはなかった。
「トッサ……トサ、キー……」
するとどうだろうか。
あの炎に当たったトサキントは目を回して倒れてしまった。
「うそ? すごそうな技とはいえたった一撃で」
「彼は本当に何者なのか。今日現れたポケモンをあそこまで使い熟すとは」
それはたぶん聞いちゃいけないし、知らなくてもいいことだと思うんだけどね。
「よっし! これで10まんボルトが効くはずだ! ヒトカゲはえんまくで補助! ラルトス、10まんボルトだ!」
すると今度こそラルトスの放った攻撃がギャラドスに命中する。
「ギュグュオオオオンン!」
赤いギャラドスは目を固く閉じてあの大きな体躯を大きく左右に振っている。これはひょっとして?
「あれは嫌がっている仕草ですかね?」
「そうだろうな。どうやらあの攻撃はあのギャラドスには相当の効果があるらしい」
「ええ!? ラルトス、中止だ中止!」
私たちのこのままいけば倒せるだろうと思ったそこでなぜか彰くんはそこで攻撃の手を止めるような指示をしていた。
いったいなぜ?
そんな思いが胸中に宿る中、答えが文字通り
「なるほど」
「まあこれは仕方ないか」
なんというか、あのラルトスの攻撃の余波と言うべきか。ラルトスは水中にいるギャラドスに向かって電気攻撃を撃った。そしてその電気がギャラドスの身体を伝って水中に流れたためか、この千鳥ヶ淵にいたのであろう他のポケモンたちにもそれが伝ってしまったのだろう。ラッコ?のようなポケモンにオタマジャクシ?のようなポケモン、他にもカメやペンギン、アシカ、カニや貝、ワニ、カモノハシ、魚など様々。コイキングもいる。そんな様々な――皆に共通して目に×マークの入っている状態の――ポケモンたちが水面に浮かび始めたのだ。ていうかアシカっぽいのとかペンギンがなんでこんなお堀の中にいるのか。そして、ワニとかカモノハシがなんで(ry 謎は深まるばかり。
「ギュオオオオン!」
電気が止んで、ギャラドスはあの凶悪そうな顔をさらに歪めて怒りを表しているように私には見えた。
「ラルトス、ねんりきでギャラドスを水中から引き釣り出せ!」
「ラル!」
あんなのに睨まれたら身体が竦んでしまいそうなものだけど、彰くんはそれを物ともしていないらしい。
「なるほど。水から出してしまえばまたあの電気攻撃を繰り出せる、か」
「他のポケモンに危害を加えることを良しとせず、あのギャラドスだけを相手する。彰くんらしいと思いますよ」
先程総理に啖呵を切った様子が思い出される。自衛隊の武器を絶対にポケモンに向けさせないという意思を。それが形が変われどこうして目の当たりにすると彼はポケモンのことを知っているだけではなく、もっと他の、いや深い何かを感じ取れる。
「もう1回だ! ヒトカゲ、えんまく! ラルトス、10まんボルト!」
そして緑道の車道に乗り上げさせられたギャラドスに向かって再度2匹から攻撃が通る。
「ギュオオオ、オオ、オ……」
苦しそうな声を上げながら、ギャラドスはそのまま身体を横たえた。尤も、頭だけはまだ起きて彰くんを睨み付けているのだけど。
「ものは試しだ! いっけぇ、モンスターボール!」
もうほぼ終わりかと思っていたところで、彰くんはスマホからモンスターボールを取り出すとそれをギャラドスに向かって投げつけた。
「彰くん、ゲットするつもりなの!?」
回転がかかったボールはそのままギャラドスに当たる。するとボールの口が開き、ギャラドスの身体がモンスターボールに吸い込まれた。
「失礼、ゲットとは?」
「ポケモンを捕まえることです。ああしたモンスターボールを使って」
武藤さんの質問に答えながらもモンスターボールの揺れを見つめる。一度これは新居高先生がゲットするところを見たけど、他人のことでもやっぱり固唾を呑んでしまう。
だけどここで予想外なことが起きた。
「うそっ!? 失敗!?」
なんと一度モンスターボールに入ったギャラドスが外に出てきてしまったのだ!
「あ」
――「まだです!」
――「まだ!」
そういえば先生がナックラーをゲットしたときもそうだった。ボールに入った後も、彰くんはナックラーの入ったボールを注視していた。
『ボールの揺れとスイッチの点滅が消えて初めてポケモンがモンスターボールに入ったことになります。それまでは油断出来ません』
あの後、移動の車中で聞いたところ、こんな答えが返ってきた。なるほど、あれはこういうことを意味していたのか。
「失敗。こんなこともあるんですか。興味深い」
武藤さんを尻目に彰くんはどうするのかと見ていれば、スマホをいじって新たなボール?を取り出した。
「なにかしらあれ? モンスターボールじゃないわ」
モンスターボールの赤い部分が水色っぽくなっていてさらにそこに網目模様が描かれているボールだ。
「ボールは弾かれるかと思ってたけど、まさかボールに入るとはな。ということはお前はゲット出来る! 失敗したのはボールの捕獲率とポケモンの捕捉率が上手く噛み合わなかっただけだ! ならコイツで決める! 頼むぞ、ネットボール!」
彰くんはまだギャラドスゲットを諦めていなかったらしい。手に持つそのボールを1投目と同じ要領でギャラドスに投げつけた。そして1投目と同じくギャラドスはボールの中に入る。
「頼む!」
彰くんは手を組んで祈るような仕草を見せているけど、私とて今は彼と同じ心境だ。
一度。
車道の石畳の上に落ちたボールは、小刻みな揺れとスイッチの点滅を伴いながらも、まずは1回大きく揺れる。
二度。
2回目、大きく揺れる。
「お願いよ……!」
私も彰くんと同じく祈るような面持ちでそれを見つめる。拳に力が入る。雰囲気で周りもその空気に当てられてか食い入るようにボールを見つめているのが分かった。
三度。
3回目の大きな揺れが来た。
これで何も起こらなければ――
――カチッ
――ポォン
小さいはずのその音が周囲に響き渡った。
彼、私、そしてさらに遅れて周囲の順に歓喜が爆発した。
御子神君はひっかくなどよりは定量的ダメージを与えられるりゅうのいかりの方がダメージが高いと判断して、りゅうのいかりを指示してます。ちなみにレベル11トサキントはゲーム仕様ではりゅうのいかり一撃で昇天します。
今回はストーリーの都合上、三枝さん視点になりましたが、他の人の視点でのストーリーも執筆中ですので、しばらくお待ちください。
題名通り録画されてますので、これがいずれ官房長官辺りの会見にて解説付きでマスコミに流されるという。