私自身の中ではオーキド博士とポケモンのナレーションは氏であり、氏はオーキド博士とポケモンのナレーションでした。ED曲『ひゃくごじゅういち』のオーキド博士の歌とピカチュウがモンスターボールでヘディングしたり玉乗りしていた頃から始まり、この声で育ってきたようなものです。映画冒頭の「ポケットモンスター、縮めてポケモン」から入る運昇氏のくだりは今でも大好きであり、これこそがポケモン映画の始まりだとも思えるものでした。去年から始まったラストでの語りもこれはこれで非常に味がありました。
心よりご冥福をお祈りします。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
窓から入り込む夕日の光を浴びて赤色灯を光らせ、サイレンを鳴らしながら、さっきも乗った公安の車は、赤信号も何のそのと進んでいく。
『外見だけでもいい! 映像は!? 写真は!? 何かないのか!?』
そういえば、総理のあれだけ激しい様子は初めて見た。普段穏やかな人って(この場合は違うかもしれないけど)怒らせると怖いというのは本当だ。
そして見せられた写真。ブレは酷いけど判別は簡単だった。
『まさかホウオウにエンテイ、ライコウ、スイクンの三犬、それからセレビィにマーシャドーにフィオネだって!? どーなってんだ!?』
正直、あのときは思わず立ち上がって大声で叫んでしまったが、それも仕方がないと思う。
だってあんな伝説に幻のオンパレードとかゲームでも中々ないのに(第5世代後半以降はある種のバーゲンセール状態だったけども)、それがデータではなく、現実のこの世界で目の前の生き物として起こるとかねぇ。
しかもだけど、何だか、戦うという雰囲気も見られなかった。これは完全なイメージで全ての鳥に当てはまるものではないっていう前提だけど、鳥って相手を威嚇するときは羽を広げるか、鳴き声で威嚇すると思うんだよね。だけど、あのホウオウは羽を閉じているし、三犬も伏せって戦闘体勢というわけでもない。直ぐさまその後、リアルタイムの映像も届き、それらに加えてセレビィは周囲を無邪気に飛び回っている感じでフィオネはそれを追いかけている感じだし、マーシャドーはホウオウの足元に隠れるようにして佇んでいて、これからバトルしますという風にはやはりどうしても見えなかった。
だから、こちらが仕掛けなければおそらくは何もしないだろうと踏んで、絶対に手を出さずに監視に留めるよう進言して、僕はまた先程と同じく車に乗せられ皇居に向かっていた。
ただそれとは別に気になることが――
「まもなく皇居に着きます」
三枝さんの代わりに隣に乗っているこの女性なんだけど、いったい誰なんですかね? この女性、さっきっからずーっと一緒なんだよね。
いったいどゆこと?
「まさか神定さん、自己紹介されていないのですか?」
それを察してくれてか、左隣りの武藤さんに呆れ顔をされる。
うん、正直僕もそう思う。たまに余計なこととかもしてくれるし。
「はい。まだ正式な辞令が下りているわけではないので。とりあえず、神定若菜と申します。前は内閣府大臣官房総務課秘書室にいましたが、週明けには急遽異動しますので、そのときに正式にご挨拶すればいいかなと」
つまり、そんときまで黙ってるつもりだったんかい。まあ、そんなに深い付き合いになることもなさそうだから、それでもまあいいけど。
そうして皇居の御所の
そこにはやはりというか先程の映像と同じような光景が目に飛び込んできた。
いや、2つ決定的に異なる。
三犬がおとなしいのは変わらないが、なんと、あのホウオウが今上陛下に身体を寄せているのだ! そして陛下はホウオウの首をなで上げている! さらに、セレビィとフィオネは陛下のお隣の皇后陛下の両肩に座り、楽しそうに笑っていたのだ!
周囲のSPは警戒を怠っていないが、これなら別にそんな必要はないんじゃないかとも思う。
『ふわぁ、すごいすごいのネ。2人はすごいのネ』
「まあ。うふふふ」
ていうかフィオネって喋れるのかよ。そっちも驚き、いや?
「両陛下が無事そうで一安心というところでしょうか。というかポケモンって日本語話せるのですね」
「いや、話せるポケモンは滅多にいないはずで、フィオネが特殊なんだと思う。それにあれは口が動いていない。これはテレパシーだ。相手の脳や心に直接言葉を伝えるっていうアレの」
「……なるほど、それはすごい。エスパーみたいですね」
まあ、エスパーはさておき、エスパータイプはきっといっぱいいるだろうな。
ていうかそれも驚きなんだけれども――
(うん、てかホウオウもセレビィもフィオネも手懐けるとか、流石天皇皇后両陛下としか言いようがないわ)
伝説や幻って大抵初期懐き度低い上、ゲットしてもいないのにああもいともあっさりと、そんなことを思っているとお2人がこちらに向き直った。
「あなたがお噂の御子神さんですか」
へっ……?
あれ……?
今ひょっとして陛下に話かけられた?
「たっ……、はっ、はい! み、御子神彰と言います!」
ほげっとしてたら神定さんの肘でつつかれて、慌てて再起動。最敬礼でご挨拶申し上げた。
「そこまで固くならず。それでどのようにすべきだと思われますか?」
(……これは今のこの状況をどう打開すべきかということか……?)
ホウオウやセレビィ、フィオネを手懐け、ホウオウに付き従う?三犬と、彼らを見守り相対する両陛下、そしてそれらを監視するSPたち。この状況を動かさないと事態は収束しないということだ。
(……あれ?)
ふと、陛下が手に持つ羽が目に止まる。
そこには赤・オレンジ・黄色・緑・水色・青・紫と七色に輝く羽があった。
(まさか、にじいろのはね?)
仮にそうなら。いや、ホウオウに会えている時点でその可能性は非常に高いし。てか、もうこの際それでいいや☆
「……陛下、よろしいでしょうか」
「何でしょう?」
「はい。陛下にはこちらのポケモン、全て捕獲――ゲットしていただければと思いまして」
その言葉にこの場の空気がザワッと変わる。両陛下も目を見開いて驚かれているが、これが一番後腐れなく円満に終わる解決方法だと思うから、是非とも飲んでいただきたい。
「そちらのポケモン、名はホウオウといいます。ホウオウは中国神話の霊鳥鳳凰やエジプトの伝説の霊鳥フェニックスにも通じる――」
とりあえず半分適当なことも混ぜてつつも、
・ホウオウは『生命の蘇生』や『火の鳥』といった太陽の化身、太陽神としての資質がある
・太陽神は天照大神にも通じ、皇室は天照大神を皇祖神として宮中三殿の賢所では天照大神を祀っている
以上から
・ホウオウ=太陽神≒天照大神≒皇祖神として皇室がホウオウを手にするのにはこれ以上ないというほどの正当性がある
・そのお手元のにじいろのはねは、ホウオウが『自身に会う資格がある』と認めた場合に落としていくものである
・何より、ホウオウ自身が陛下に懐いている
ということで捕獲が望ましいことを進言する。
ついでにライコウ・エンテイ・スイクンの三犬はホウオウに蘇らせてもらって誕生した経緯から、ホウオウの眷属のようなものなので、ホウオウとセットが望ましいし、マーシャドーもホウオウが下した判断が本当に正しいのかを見定める役割もあるので、やはりホウオウとセットが望ましい。セレビィやフィオネはどうして一緒にいるのかは不明だが、楽しそうな様子を無理に引き離すのはよろしくないのでセットが望ましいということも付け加える。
三犬はともかくホウオウやマーシャドーにそんな話が付くかはこの際知らないが。
「最後に。ここでゲットしないで、可能性は低いかもしれませんが、良からぬ輩にゲットされた場合、災いが引き起こされる場合も考えられます。是非とも、ホウオウらが陛下を認めた以上、陛下が彼らのパートナーになるのが相応しいのです」
「…………わかりました。あなたの言うとおりに致しましょう」
ということで、ホウオウと三犬、マーシャドーは今上陛下が、そして今上陛下の希望により、皇后陛下がセレビィとフィオネを捕獲する運びとなった。ちなみに陛下らはボールを投げるのではなく、コツンと当てたり、あるいは三犬の方からボールに入ってきたりと、半端なさの格が違った。
とりあえずこれにて、御所での騒動は収束した。
「ショオーッ!!」
と思ったんだけど、ゲットされたホウオウがモンスターボールから出てきて僕に近寄ると、頭を下げたと共に光を吐き出し、それが僕の手の中であるアイテムへと変わっていった。
それを見て、まだまだ一連の騒動は終わらないという思いと共に、諸外国対応も含めてこの国で起こった混乱を鎮めうる一発逆転の秘策にもなるのではないかとも思い立った。
「御子神君、先の千鳥ヶ淵に続き、今回もご苦労様でした」
「いえ、お気遣いありがとうございます。中河大臣」
ということで戻ってきました、官邸へ。
危機管理センター内では、安堵と共に少しあった「何コイツ?」みたいな空気も霧消していた。
一応、認めさせた感じでいいのかな。
「君らが席を外している間に関してだけどね」
そう言って大臣自らが聞かせてくれた。二度手間になる感じで本当に申し訳ないでありますな。
で、その内容についてだけど、まず総理は米国大統領との臨時電話会談、官房長官は再三記者らにせっつかれての会見中、眞柴大臣は各国の大使との緊急面談なんだそうだ。
いろいろと無茶ぶりだの難癖だの付けられてそうで実に大変そうだ。
そして太平洋上に突如出現した島についてはやや面倒な事態になっているらしい。
というのも、現状は公海上に出現したためにこの5つの島はどの国の領土でもないということのようだ。領土とするには発見することと管轄すること必要だが、5つの島とも管轄が出来ていないらしい。何でも、何やら
ぶっちゃけ、バリアが張られてて上陸出来ないとか、意味わからないです……。
ただ、これもやっぱりポケモンが関係していて云々ということであれば、ポケモンによる事象ということで僕も何かしらの理由で関わるかもしれないということだそうだ。
いやまあ、そんなこと出来そうなのって伝説のポケモンだけだろうし、そんなことが出来ちゃいそうなのがいそうだから、たぶん100%関わると思うけどね。
他にはテレビで紹介されていた巨大構造物の異変(富士山のやりのはしら、択捉島・与那国島の日輪の祭壇・月輪の祭壇)の他にも、香川県東かがわ市引田の女郎島と奈良県の法隆寺に巨大構造物が出現したらしい(映像資料を見たところ、造形的には完璧にヒャッコクシティの日時計とセッカシティの北にあるリュウラセンの塔だった)。
概ねこんなところだったけど、ぶっちゃけここでああだこうだ考えるより、さっきも言った、ここは一つ、一発逆転になりそうな策に賭けてみることを提案してみたい。してみたいんだけど、正直この場でいうより出来ればいっそ誰かと相談もしてみたいような――
「なにかありましたか、御子神さん」
……神定さんってタイミングがいいというか人の顔色を伺うのが上手いというべきなのか。
何にせよ、それを相談してみたところ、1通のメモ用紙を渡された。
「ここにそのことを書いてください、私が直接現議長の中河大臣に渡してきます」
ということ、サラサラと書いたメモを彼女に渡す。彼女は中腰で素早く移動すると、中河大臣の肩を叩いてそれを渡した。
中河大臣はそのメモに目を落として『なんだこれ?』と眉を顰めるも、その後一瞬して、ハッとした顔を上げる。
「みなさん! 総理に至急お伺いしなければならないことが出来ました! 一度この会議は中断します!」
その発言で議場内は一気にざわざわとし始めた。
さて――
説明すると、僕が書いた内容というのはこの一言だ――
創造神に会いに行きましょう
僕は先程ホウオウに託されたアイテム――
――てんかいのふえ――
それが収められた自身のスマートフォンの入ったポケットをそっと外から撫で上げた。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
フィオネは喋らせないと後がきついので無理矢理喋ってもらいました。
ちなみにフィオネが喋るのでマナフィも喋ります、テレパシーですが。
それからハーメルンの機能についての疑問なんですが、斜体タグが使えなくて困ってます。
斜体 ←きちんとタグ使ってますが、表示されず。
原因がわかる方いらっしゃいませんか?
そういえばヒロイン的な人が出ていましたね。ちょっと変人?ですが。イメージ的にはシンゴジラの尾頭さんを筆頭にして森課長が言っていたはぐれ者、一匹狼、変わり者、オタク、問題児、鼻つまみ者、厄介者、異端児を相当マイルドにして詰め込んだ感じ。