架空の現代にポケモンが出現したら   作:kuro

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この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


2人の夜(後編)

「ラル?」

「カゲカ?」

「モグモ?」

 

 どうやら大声を出してしまったようで3人には心配をかけてしまったようだ。

 胡坐状態で頭にラルトス、両膝にヒトカゲとモグリューが乗っかってきた。

 ラルトスはねんりき使ってないみたいで、頭に6kg、両膝にそれぞれ8kg以上の重さがかかる。

 

「重い……」

 

 思わずそう呟いてしまった。てかやっぱりアニメのサトシはおかしいわ。ラルトスですらこうだったのにヒポポタス(50kg)乗せたり、ヨーギラス(72kg)抱えて走るとかバケモンですわ。

 

「ラ、ラルッ」

「カゲッポッ」

「モッグ」

 

 それに慌てた3人はそれぞれ両膝から降りたり、あるいは頭にかかる重量が減った。

 

「ありがとうな。それに心配してくれたんだろ?」

 

 その心意気に嬉しくなり、順番に頭を撫でさする。ヒトカゲとモグリューは両手をそれぞれの僕の膝上に乗せて、気持ちよさそうに頭を擦りつけてきた。

 

「ルゥゥゥッ」

 

 ラルトスがグリグリと頭を擦りつけてくるんだけど、正直突起が擦れていたいです。仕方ないから、モグリューに置いていた手を頭の上の方に伸ばしてラルトスを探り当てる。

 

「モグー……」

「ラルー♪」

 

 手を放した方と置いた方の正反対の反応に苦笑しながらも、ふと思った。

 

「あれ? ひょっとして心配してくれてたのか?」

 

 思えば近くにいる親しい人とか家族が急に声を上げたら「どうした?」ぐらい声かけするし。

 

「ラル」

「カゲ」

「モッ」

 

 すると3人とも首を縦に振ってきた。

 

「そっか。ありがとう、みんな。でも、僕は大丈夫だからさ」

 

 ちょっとホッコリ温まる感覚とみんなの感触を覚えながら、つづきを見ていくことにした。

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

 さて、“ポケモンセンター(改)”、“通信交換(改)”と見てきて、残りは2つ。

 “不思議な贈り物(改)”と“掲示板”だ。

 

「まず先に“掲示板”の方を見てみるか」

 

 ゲームにも一切なかったこちらの方を先にタップしてみる。

 

 全国とのトレーナーとの通信交換機能が解禁されました

 よって、双方のトレーナーとコミュニケーションが取れるよう、掲示板機能を解禁します。

 情報交換、ポケモン交換等様々な用途として是非ご活用ください。

 

 見てみるといわゆる某大手掲示板サイトみたいな感じのスレッドフロート型掲示板で、左に交換対戦地域などのカテゴリとジャンル分け(板)がなされ、スレッド等もいくつも立っている。試しに一つクリックしてみれば、「ポケモン交換しようず(36)」「ポケモンじまん!(40)」「ポケモン情報交換1(69)」などのスレッドのタイトル(スレタイ)が並んでいる。

 

「んー、2○ゃんみたいな感じか。いずれ利用するかもしれないけど一先ずは置いとこうか」

 

 そして最後の項目、“不思議な贈り物”を見てみる。

 

「はて、ね?」

 

 ゲームでのふしぎなおくりものは起動画面のときに選択してWi-Fiやローカル通信などを通してアイテムやポケモンを受け取るためだけの機能だったのだが?

 

 伝説のポケモンがゲットされました!

 付きましてはアプリポケットモンスターの特殊機能、不思議な贈り物(改)機能を全トレーナーに解放します。

 これは、12時間に1回無料にて、アイテムや技マシン、きのみからポケモンのタマゴ(タマゴ未発見除く)などの、ポケモンに関するありとあらゆるものの中から1点を選んであなたにお送りする機能です。

 あなたのトレーナーライフに彩りを添えることになるでしょう。

 なお、ポケストップでは引き続き、歩数支払いによるくじ引きを実施しております

 それぞれ是非ご活用ください。

 

 ふーむ。これっていわゆる、『12時間に1回の無料ガチャ』ってやつか。てかポケストップにガチャ機能なんかあったんか。今度しっかり見てみよう。

 

「さて、じゃあ早速だけど、引いてみるかな」

 

 えーと? あ、なんかポケモンGOの捕獲画面みたく、手前にモンスターボール、奥にポケモンではなく横に高速でスクロールしている何かが現れた。よくよく見てみればたまにポケモンのタマゴらしきものもある。

 

「ははーん、このモンスターボールを当ててゲットするって感じなのか」

 

 その直後、やはり思ったのと同じ説明画面が出てきた。ただ、ザッと目を通して見たところ気になるものが目に入った。

 

 モンスターボールにてのゲットは失敗する場合もあります

 よりゲット確率をあげたいという方はスーパーボールやハイパーボール、またはダークボール等の特殊ボールをご活用下さい。また必ずゲットできるマスターボールもございます。併せてご活用下さい。ただし、マスターボール以外は捕獲確率を上げるのであって必ずしもゲットできる保証があるというわけではございません。

 以上の点につきましては御了承お願い致します。

 なお、モンスターボール以外のこれらのボールは全て有料(歩数)です。ご注意下さい。

 

 いやまあ確かにポケGOでボール当たらないとか当てても出てくるとかあるけど、ガチャにもそれを適用するのか(愕)。無料で外れるならまだしも、ハイパーボール(有料)投げて失敗とかマジカワイソスなんだけど(;`・ω・)ノ

 まあ救いは現金じゃなくて歩数で支払うというところか。これなら現金突っ込んでの破産なんてことも起こり得ないし、金持っているのが有利ということにもならないだろう。

 

 んで、投げ方はやっぱりポケGOと一緒。ということで的は何でもいいからとりあえず外さないよう、あとついでにカーブボールも決める。

 

「よし!」

 

 Excellent!の表示と共に何かがゲットされた。

 

「おっ?」

 

 どうやらポケGOと同じく、ボーナスが貰えるっぽい。ただ、ここでは経験値ではなく歩数のようだ。内訳はゲットで100、エクセレントスロー200、カーブボール50ということだった。ワンショット(一発ゲット)はなかったが、元々一回挑戦なんだからないのもまあ当然だろう。

 

「さて、いったい何がゲットできたかですよ」

 

 獲得ボーナスの画面を消すと、「ゲットしたものがお手元の画面から飛び出します。よろしいですか」にOKを押して、少し液晶から体を離す。

 すると、その通りに「ポンッ」という音と共にモンスターボールが飛び出してきた。

 

「カゲッ?」

 

 ヒトカゲが思わず自分の方に飛んできたモンスターボールをキャッチした。

 

「カゲ。カゲッポー」

「ありがとうヒトカゲ」

 

 そのモンスターボールを受け取り、はてとここで疑問に思った。

 

「これどうやって開けるんだ?」

 

 ポケモンの入ったモンスターボールなら投げればいいけど、アイテムとかが入ってる可能性のあるやつなんて投げて開けられるのか。

 

「そういえばゲームとかで落ちてる道具って大抵モンスターボールみたいなのに入ってるけどどうやってんだろな?」

 

 とりあえず適当にそれっぽそうなところ(最初はボールのボタン)を弄ってみた。

 

「ええ!?」

 

 するとまあビックリ。急にそれが野球ボール大からバスケットボール大くらいにまで大きくなり、そして口がパカッと開いたのだ。開け方自体はあんまり深く考えることでもなかったけど、この変化には驚きも然りだ。

 

 ちなみに当たったアイテムはチカチカ光るランプが付いているヘッドギアみたいなもの――

 

「これががくしゅうそうちか! これがあればバトルに出てなくても経験値入るからかなりラッキーって感じだな!」

 

 ちなみに6世代以降、がくしゅうそうちは仕様が変わってかなり有用なアイテムに変わったが、僕はスイッチを切らずにずっと使う派なので、これは非常にありがたい。これで育成や進化までの道のりはラクになるだろう。スマホに戻してみると、どうやら“道具”の大切なもの扱いになっているので、6世代以降の仕様が反映されていると思われる。

 

「明日のガチャもいいのが当たればいいな」

 

 そう思いつつ、その夜はポケモンたちと戯れて過ごしたのだった。

 ちなみにいつの間にかバスケットボール大になっていたモンスターボールは消えてなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

「ビリ。ビリリ」

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

『――と、以上のようになります』

 

 演台の上と記者席とを交互に視線をやりながら、会見を行っていた女性、的井吉乃官房長官はその言葉を句切りにして記者席の隅から隅までを一望した。

 

『――えー、それでは続きまして、質疑応答に入ります。記者の皆様は会社名とお名前を名乗ってからの質問をお願いします。また、質問は簡潔にお願い致します。』

 

 会見の進行係はそのいつものルーチンを確認してから、質疑応答の時間へと移る。

 すると一斉に上がる手。

 

『どうぞ。前から二列目のお座りの向井さん」

 

 それを一瞥した的井は、大抵すぐに覚えてしまう名前で以て指名している。

 

「共時事新報の向井です。長官、本日はいつにもまして会見を開いておられて大変お疲れ様です」

『ありがとう。ですが、国民の皆様に一刻も早く正しい情報を発信しなければと思い、こうして頑張らせていただいています。皆さんも、社会の公器として()()()()、そしてスピーディーな情報発信をお願いしたいものです』

「はは、で、質問なのですが――」

 

 和やかなムードが流れる中でも、彼女は大きな釘を刺すことは忘れない。そして今の会見は一層平和であった。

 

 

『はい、次。あら、渡部さん、お久しぶりです。官邸付きに戻ったのですか。あ、指名は渡部さんで』

「どうも。ありがとうございます、的井長官。あ、東都新聞の渡部です。急遽呼び出されてこちらに参りました。先程は芳澤が大変失礼をしたようで」

『毎回毎回失礼してるんですけどね、あの方は。いったいお宅の社員教育はどうなっているんです? あの方のせいでここにいる他の皆さん全員に迷惑が被っているんですよ? 中には「あの会社だけ官邸への出入りを禁止してくれないか」とまで言ってくる記者さんもいて、こちらも困っているんです』

「はい、はい。本当に大変に申し訳ない。彼女と彼女の上司、それから部署には徹底してそれらの通告をします」

『本当に頼みましたよ? で、ご質問は?』

「あ、はい。では質問ですが――」

 

 と、このように先にコテンパンにやり込められた女性記者がいたためだ。皆、「自分もああはなりたくない」という思いで、いつも以上にルールに則って紳士淑女的に会見は進行していた。

 

 

『では次、そこの女性の方。たしか、ツツジテレビの平中さんでしたか?』

 

 ここで、パリッとしたスーツに初々しさを感じさせる若い女性が指名された。

 

「は、はい! ツジジテレビの平中です! 的井長官、覚えていただき光栄です!」

『いえいえ、つい先日に初めてお見かけしたものですから、4月になって新しく配属になったのでしょう? 頑張ってくださいね』

「はい! ありがとうございます! あ、それで質問の前に、たしか長官はチルットってポケモンをゲットされていますよね?」

「ええ、ええ。もうもう本当にかわいいんですよ。それに成長して進化とやらをすればチルタリスになって空も飛べるらしいですから、ますますいい子過ぎて」

「実は私も先程キャモメをゲットしまして。同じく進化?をすれば、ペリッパーになって空を飛べるみたいなんです」

『そうですか。ならばお互い進化して飛べるようになったら、それぞれポケモンに乗ってドライブでもしませんか?』

「是非ともお願いします! あ、で質問なのですが」

 

 ちなみに進化については先に開いた会見、並びに政府広報にて先程から公開されており、報道されていけば、今後一般にも広まっていくことは確実な状況である。

 それはさておき、この年若く一番経験の浅い女性が、記者たちにしてみれば、本日一番のファインプレーをして見せた。

 

「長官はポケットモンスターのアプリかポケストップはご確認になられましたか?」

『いえ。生憎と会見続きなものですから』

「では、今私のスマホのポケットモンスターのアプリからの案内が出ているんですが――」

 

 そうして彼女はアプリ上でポケモンセンター(改)、通信交換(改)などの機能が解禁されたということを話す。それを聞いていた記者たちは一斉に自分のスマホ画面を確認し始める。そして彼女の話すことが事実であったと知り、そしてさらにそこに気になる文面があったことを確認した。それは的井長官、引いては秘書官らもそうであった。

 

 

「で、その案内に『伝説のポケモンがゲットされました!』とありますよね。この『伝説のポケモン』とはいったい何を指すのでしょうか?」

 

 

 的井吉乃は頭の回転が速く、非常に優秀な人物だ。正直彼女が首相でもおかしくはないと思っている人物は大勢いる。しかし、彼女は瑞樹総理の下で官房長官の職に就いている。それは瑞樹にとっても、あるいは彼女にとっても、お互いがお互いのことを筋を通す人物として信頼し合っていると共に強い絆があったからだ。

 例えば、彼らは負けるとわかっている自保党の総裁候補を、しかし、自分の信念と同じであり、その後は党の人事で干されて冷や飯を食わされるということがわかっていても、彼を応援し、そしてわかりきった結果後の時を乗り越えた。その後も与党から転落した後も同じく、時の党首を献身的に支えた。そして瑞樹が党総裁候補に名乗りを上げたときも眞柴、中河と同じく真っ先に支持表明をして以後、自保党が与党を奪還し、瑞樹の長期政権が発足して以降も彼を支えている。

 瑞樹と的井の間、あるいは中河や眞柴もそうだが、彼らの間には男女の関係の垣根を乗り越えたものが存在していた。

 

「んー、そうですねぇ」

 

 このほんの僅かな時間、彼女は必死に考えを研ぎ澄ませる。敵の多い自分たちや引いては瑞樹にとって何が一番最善であるかを。

 

 そうして彼女は結論に達した。

 

(まあ、今思ったけど、こんなの考えるまでもないわよね。はー、ムダに考えて糖分使っちゃったから、家帰ったらアイス食ーべよ)

 

 そして彼女は語り出した。




ストック切れました上、身の回りに余裕が全くないので、しばらくアップ出来ません

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