架空の現代にポケモンが出現したら   作:kuro

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ポケストップの設定を少し付け足しました。

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


初めてのゲット

 おめでとうございます!

 あなたは記念すべきポケモントレーナーとしての第一歩を歩み始めました!

 その始めの記念としてあなたのスマートフォンにポケットモンスターをダウンロードします!

 またポケストップ初回利用特典として以下のものを差し上げます!

 

 モンスターボール 2個

 キズぐすり    3個

 ポケモンフーズ  4袋

 

 それでは、ポケモンと人とが共に歩める良きトレーナーライフをお送りください!

 

 これが今僕の目の前に表示されたホログラムの内容だ。

 そして一番下に表示されているOKボタンをタップするとそのホログラムが閉じる。

 しかし、まだホログラムは消えずに表示されていた。

 一番上には『総歩数』という項目が別枠で設けられ、そこから下にはポケモンに登場するアイテムのリストがず~っと続いていっている。スクロール出来る分を見るに結構ありそうだ。

 気になるのは最上部付近に表示されているリストは白く書かれ、少し下に行くと灰色で書かれていること。アイテム名の横の数字に『歩』が書かれていることだ。例えば『モンスターボール』の横には100歩、キズぐすりの横には50歩、などだ。下にスクロールしていって例えばスーパーボールには1000歩などと書かれている。また、ポケモンフーズ(一番低くて20歩であり、50歩や70歩、600歩やそれ以上なんてものもある)なんてアニメ限定のものすらあった(ちなみに初回特典のはこの一番低いやつだった)。あとは例えば『でんきだま』や技マシンなんかの項目もあったが、そこは灰色でかつ歩数のところは棒線で書かれている。

 

「待てよ? もしかしてこれってこの表示されてる歩数でアイテムを買うってことなのか?」

 

 現在の総歩数が327歩なので、試しにどくけし(75歩)を買ってみようと思い、どくけしという項目にタッチした。するとそこだけ抜き出して拡大したような感じで『アイテム名』、『歩数』、個数表示と『購入』というが項目が出てきた。個数を2個にするとそれに合わせて歩数が150歩へと変わる。そのまま購入をタップしてみると総歩数が327歩から177歩に減った。

 

「なるほどなるほど! こうするのか!」

 

 そのままポケモンフーズはそこそこあるみたいだから、回復系のまひなおし(75歩)と捕獲用のモンスターボールをそれぞれ1つずつ購入し、残りの歩数が2歩になったところで買い物を終了した。ちなみに現状買えそうなのは初期のボール系と回復系のみで、きのみや持ち物、技マシンなんかはエラーで買えなかった。ハイパーボールやすごいキズぐすりなんて歩数が4桁半ばから後半ととても手が出そうではない。

 さて、今も目の前に広がるこのホログラム、いったいどうやって消すのかをいろいろ考えていると、ホログラムの右上に×ボタンを見つけた。

 

「これはあれか、PCのプラウザやソフトみたいな感じなのか?」

 

 気になったのでそれをタップしてみると、案の定表示されていたホログラムが消えた。今目の前にはポケストップが鎮座するのみである。

 

 今度はピロリンという音が左手の中のスマホから鳴った。液晶画面を見てみると【ダウンロード 終了!】というようなことが表示されている。

 それを消すと前世で見慣れた、しかしこの世界では影も形もなかった青地にモンスターボールが描かれたポケモンGOのアプリのアイコンが現れた。

 

「ま、マジか……」

 

 震える指でそのアイコンをタップしてアプリを起動させる。

 そこには今度はアプリではなく、“図鑑”、“ポケモン”、“道具”などのゲームでよく見かけたメニュー画面のようなものが表示されていた。中には“ポケリフレ”なんて項目もあった。

 とりあえずそれらはいったん後回しにして僕は“道具”の項目をタップする。すると初回特典とやらや購入したアイテム類がモンスターボール、キズぐすり、どくけしといった具合に手に入った順でリストに並んでいた。

 

「各項目分けで整理されるわけじゃないっぽいな」

 

 どうやらここに関しては初代ポケモン仕様のようである。

 さて、手に入れたアイテムはどうやって出せばいいのか。

 

「やっぱりこういうのってトライアンドエラーだよな」

 

 とりあえず、モンスターボールの項目をタップしてみる。

 

「お、お、おお!」

 

 すると目の前に野球ボールかややそれより大きいような赤と白に塗り分けられたモンスターボールが現れた。

 

「おっと!」

 

 急に目の前に現れたので落ちないように慌てて空いている右手で受け止めた。

 

「お、おい、なんだよ、あれ?」

「どういうこと? 何もないところから急にボールみたいなのが出たわよ?」

「どうなってんんだ?」

 

 ――し、しまった! ここってば外だったのうっかり忘れてた!

 どうする!? ここで逃げるか? いやでもここで逃げても事態はあまり良くはならない気がする。第一ポケストップの使い方が広まらなければ社会は混乱したままだ。ニュースでもあったが、ポケモンに怪我を負わされた人もいるという。そうでなくても毒や火傷なんかを食らって仮に死んでしまう人がいれば、ポケモンが有害生物とされるかもしれない。そうなれば国家非常事態宣言発令、そのまま治安出動や、可能性はないとは思うけど最高レベルの防衛出動なんかがくればポケモンたちにも大きな被害が出る。人が傷つくのはいやだけど、ポケモンが傷つくのもやはりいやだ!

 それに考えてみれば、ピクシブーンにアップしたのが僕じゃないっていうのが最悪バレなければいいだけだ。しかもこれも時間が稼げればいいだけで、ポケモンが完全に世の中に浸透すれば非難する声は世の大多数の声にかき消されるハズだ。

 

 ならば――!

 

「みなさん! 今、世間では不思議な生き物が溢れかえっていることを知っていますよね!?」

 

 僕はポケストップを背に群衆に問い掛けた。

 ポケストップの周りで僕の行動を見ていただろう人は、皆が皆、僕に注目の視線をくれている。中にはスマホを(かざ)している人もいた。たぶんあれで動画撮影をされているんだろう。うまい具合に事が運べるかもしれない。

 

「この奇妙なホログラムをうまく使えば、こんなアイテムが手に入ります!」

 

 そうして僕はモンスターボールを右手ごと天に突き刺した。

 

「そしてこのアイテム、こんな風に使います!」

 

 そこまで言うと僕は心の中でラルトスにお願いした。

 

――リュックの中から外に出てきてほしいと

 

「ラルー!」

 

 するとラルトスは「待ってました!」と言わんばかりにリュックの中から勢いよく飛び出して僕の前に、僕と目線を合わせるように着地した。

 周囲がどよめく中、僕とラルトスは見つめ合う。

 

――僕の友達になってくれる?

 

――うん、いいよ!

 

 なんとなくアイコンタクトでラルトスとそんなやり取りが出来たと思う僕。その後、僕ラルトスに向かって優しく下手(したて)でモンスターボールを投げた。

 ラルトスはそのまま腕を突き出す。すると突き出された腕の先の手にモンスターボールが触れた。

 その瞬間、モンスターボールの口がボールスイッチのところで大きく開き、その中にラルトスが赤い光とともに吸い込まれていった。

 ボールはその大口を閉じて地面に落ちる。今度はそのまま小刻みに揺れ始めた。ボールスイッチの部分が赤く点滅している。モンスターボールはそれを繰り返しながら、1回、2回と大きく揺れた。そしてその揺れが3回となったとき、とうとう揺れは収まり、スイッチの点滅もなくなった。

 それを確認すると僕はボールに歩み寄る。そして同時に思った。

 

――あのアニメの登場人物たちはこんなような感覚を味わっていたんだなぁ。

 

 それは何者にも代え難いほどの高揚感。何かを成し遂げたときに感じる達成感。捕まえられたという満足感と幸福感。それらが一挙に押し寄せて自分を飲み込むのだ。

 なんと気持ちの良いことか。

 

「サトシとかが叫ぶ理由も分かるわな」

 

 僕は口の中だけで聞こえるような小声で独り言ちた。

 しゃがみ込み、ラルトスの入ったモンスターボールを手に取る。

 ズシリと重みが増したような感覚を覚えた。

 

「出てこい、ラルトス! キミに決めた!」

 

 立ち上がると同時にそのままボールを持った腕を振り上げる。手が直上に上がると同時にモンスターボールを手放した。ボールはさらに上まで上がり、やがてその口を先ほどと同じく大きく開けた。違うことは開けた口から白い光とともに現れるもの――ポケモンだ!

 

「ラル! ラッルー!」

 

 その光が地面に落ちると、つい今し方までそこにいたラルトスが現れた。ラルトスは御丁寧に右手を胸に当てお辞儀をしている。中々のエンターテイナーなように思われる。

 

「ご覧のようになります!」

 

 そして大きな歓声が上がった。

 おそらくだけど、今まで訳も分からず、混乱していた状態だった。それに一筋の光が見えたような気がしたからだろう。

 

「ん? あれは」

 

 見ればこれまた明らかに1匹のポケモン。なぜだかこちらに向かってきている。

 ショーはまだまだ続くようだ。


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