カロスポケモン協会理事 ハチマン   作:八橋夏目

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2週分の量になっちゃいました。
長いです。


11話

「次はイロハちゃんの番か。相手は四天王なんだよね!」

「ああ、強いのか弱いのかは知らんけど」

「四天王に選ばれてる時点で相当な強者でしょ」

 

 初戦はユキノの勝利で幕を閉じ、Aブロック二戦目。トレーナーになり半年強のイロハの初陣である。

 ただ、その相手は四天王。俺がここにいる時点で今回の四天王枠は俺ではない。誰が出るのかは………。

 

『さあ、盛り上がってきました、カロスリーグ! 次のバトルはこの二人だぁぁぁあああ!! トレーナーになってまだ半年! イッシキイロハ!』

 

 と、どうやら選手入場らしいな。

 イロハの相手もすぐに出てくるだろう。

 つーかあいつ、人に観られることに慣れすぎじゃね?手なんか振っちゃってるぞ。

 

『そして対戦相手はこの人! 四天王、ドラセナ!』

 

 あ、おばさんが出てきた。そうか、イロハの相手はあの人か。底の知れない人だからな。どんなポケモンを連れているのかさえ知れない。

 

「お兄ちゃん、あの人強いの?」

「知らん。どんなポケモンを連れているのかさえ知れないくらいの人だ」

「なんで知らないのさ。それでもポケモン協会の理事なの?」

「や、出場選手の強さを全て把握するとか無理だから。対戦表に変な名前の奴らもいるだろ。そんな奴らも参加してるんだから、知る由もない」

「ねえ、ヒッキー。イロハちゃん勝てるかなー」

「さあ、どうだろう「絶対勝てるっすよ! トレーナーになって半年しか経ってないのに、もう姉ちゃんに引けを取らない強さっすよ! 勝てないわけがないっす!」……お、おう。なんかイロハに入れ込んでるな」

「べ、べべべ別にそんなんじゃないっす! ただ山で一緒に修行した仲っていうか、強敵ばかりの野生のポケモンに囲まれてもあっさり倒してしまう人が負けるとは思えないだけっす」

 

 ん? 強敵ばかりの野生のポケモンに囲まれても?

 あいつ、一体どんな修行をしてきたっていうんだよ。このクズ虫と一緒に帰ってきた時には驚いたが、カワサキの実力をずっと見てきたタイシが言うんだから、そうなのだろう。

 うへぇ、壊れていませんように。

 

『カルネさん、ドラセナさんは一体どんなトレーナーなのでしょうか?』

 

 実況の男性がカルネに話を振った。この大会の目玉の一つである四天王をチャンピオンが紹介することになっているのだ。チャンピオンと四天王の関係上、近しい間柄という理由でハルノさんがこの演出を決めてしまった。

 いや、いいんだぞ? 観客にとって四天王とはいかなるものなのか、実力はどんなものなのか、バトルの前に知ることができるのだから。そしてこれから始まるバトルどれだけ高度なバトルになるのかが理解できてくるだし、いいのだ。

 問題なのは俺だ。四天王として出るが別にチャンピオンと近しい間柄ではない。お互いよく知らない………全く知らないと言っても過言ではないか。

 

『ドラセナは四天王の中で最も長く役職に就いている強者です。それもドラゴンタイプの使い手であることが関係しているでしょう。ドラゴンタイプは聖なるポケモンとして、扱いが最も難しいとされています。先程のバトルでもリュウキ選手がドラゴンタイプを使っていましたが、相手が三冠王だったため、一方的だっただけで、バトルセンスは悪くありませんでした。磨けば光る逸材ですね。そんな気難しいポケモンたちを使いこなすドラセナの相手は相当骨が折れることでしょうね』

『なるほど……、どうやらこのバトル、イロハ選手には苦戦を強いられるものになりそうですね』

『それはどうかしら。イロハには四天王よりも高い壁を越えるという目標があります。四天王が相手だからといって、早々に負けているようでは「あの男」に勝つのは無理な話ですよ』

『「彼」を超えてる人っているのかい?』

『本人曰く、探せばどこにでもいるらしいですよ』

『適当な答えだね……。「彼」らしいよ』

 

 ねえ、ちょっと君達? オンマイクで俺のディスるのやめてくれる?

 他に会話のネタねぇのかよ。まあ、ユキノだから仕方ないけどよ。話振る方ももう少し考えろよ。

 

『あの、先程も仰っていましたが、その「彼」というのは?』

『カルネさんも知っている人物ですよ』

 

 しかもチャンピオンはまだ誰のことを言っているのか分かってないみたいだし。

 あーた、リーグ戦を開催するって時に呼び出したでしょうが。俺のこと、全く目に入ってなかったのか? いや、コルニとかコンコンブル博士と話してたんだし、コルニなんか俺の連れてるポケモンを聞き出してたまであるんだぞ? なんか少しくらいは覚えているはずなんだが。

 あ、それともあれか? ステルスヒッキーが発動したとか?

 ふっ、俺もついに影の住人になってしまったか。

 って、誰だよこのキャラ。キモいわ。

 

『さあ、それではバトルといきましょう!』

「これよりイッシキイロハ選手対四天王ドラセナ選手のバトルを始めます! 双方、準備は?」

「いつでもいいですよー」

「わたしも大丈夫よー」

 

 なんだこの二人。緊張感なさすぎだろ。

 

「それではバトル開始!」

「いってらっしゃい、ドラミドロ。うふふっ」

「いくよ、ヤドキング!」

 

 まずはヤドキングと………何あのポケモン。カロスに生息するポケモンか?

 

「なあ、カワサキ」

「あのポケモンはドラミドロ。どくとドラゴンを併せ持つ珍しい海のポケモンだよ」

「どくとドラゴンか………」

 

 タイプで言えばヤドキングの方が有利。だが、イロハがドラミドロについて知っていればの話。相手のポケモンについて知らなければ、弱点を突くこともできない。

 さて、イロハはどう出る。

 

「あらあら、エスパータイプだわ。さっさと倒しちゃいましょう。ドラミドロ、10まんボルト」

「ヤドキング!」

 

 ヤドキングを呼びかけると、迫り来る雷撃が止まった。

 サイコキネシスでも使ったのだろう。

 

「あらあら」

 

 ヤドキングが腕を広げると雷撃は霧散していった。

 そして、何の命令もなくドラミドロが後方へ吹き飛ばされ、隔壁にクレーターを作った。

 

『おおっと! イロハ選手、何の命令のないままドラミドロを吹き飛ばしたぁぁぁあああっ!!』

 

 命令をしていないわけじゃない。声に出す必要がないのだ。ヤドキングはエスパータイプ。テレパシーを用いた会話も会得している。だから、俺たちに聞こえないだけで命令は下されているのだ。

 

「ドラミドロ、りゅうのはどう」

 

 壁に激突したドラミドロが態勢を立て直し、赤と青の竜を模した波導を送りこんでくる。

 

「ヤドキング!」

 

 今度はヤドキングの方が電気を溜め始めた。

 そこにりゅうのはどうが突き刺さり、相殺させた。と思いきや、一閃がドラミドロを貫き、地面に倒れた。

 

「10まんボルトよ」

 

 レールガン。

 でんじほうをさらに速く、無駄のない形で撃ち出すザイモクザの得意技。ザイモクザの場合はロックオンを使ってからのでんじほうであり、追尾機能までつけてくる。そのため高速弾を躱したとしても当たるまで追いかけてくる厄介ものなのである。

 イロハにはまだロックオンを覚えたポケモンがいないからザイモクザのような鬼畜さはないが、その分フィールドを巧みに操り、逃げ道を絶ってくるから、それはそれで面倒ではあるが。

 でんじほうであるからして、追加効果の痺れも備わっているし、現にドラミドロは身体が痺れて起き上がれなくなっていて、雷撃を撃ち出すこともできないようだ。

 

『ドラミドロ、万事休すかぁぁぁあああ!? でんじほうと思われる一閃を受け、ドラミドロ、身体が痺れて動けない!!』

 

「とどめだよ」

 

 イロハの一言でヤドキングの額の赤い珠が光り、ドラミドロを宙へと浮かせた。もがくドラミドロであるが、それも無駄な抵抗となっている。

 

「ヤドキング!」

 

 勢いよくドラミドロを地面に叩きつけ、クレーターを作った。

 

「ドラミドロ、戦闘不能!」

『決まったぁぁぁあああっ!! イロハ選手、まずは先取点をもぎ取ったぁぁぁあああっ!!』

「あらあら、まあまあ。ドラミドロ、戻りなさい」

 

 なんか、思ったほど堪えてないらしい。こんなのまだまだ序の口よ、とでも言いたいのだろうか。

 うーん、全く読めない。

 

「強いわねぇ〜。テレパシーで命令を出せるなんてカルネくらいのものだと思っていたのだけれど。腕がなるわ〜っ」

 

 次に出してきたのはヌメヌメとした体液を垂らしているヌメルゴン。あいつのことは知っている。最弱のドラゴンから進化するポケモンだ。

 

「ヌメルゴン、パワーウィップ」

 

 駆け出したヌメルゴンの二本の角が光ると、グインと伸び始めた。

 それと同時にイロハの命令が下ったのかヤドキングの額の赤い珠が光り、ヌメルゴンの動きを止めた。だが、ドラミドロを相手にしていた時とは全く力が違う。受け止めてはいるが、ヌメルゴンはギチギチと角を前へ前へと押し出し、サイコキネシスを正面突破しようとしているのだ。

 

「ヤドキング!?」

 

 とうとう破られ、初のダメージを受けてしまった。

 

『ヌメルゴンのパワーウィップが決まったぁぁぁあああッッ!! 効果は抜群だぁぁぁあああっっ!!』

 

 だが、あいつはこんな一撃でノックアウトするようなやつではない。やられるならやられるで置き土産を残していく。無駄にイロハと意思疎通ができるわけではない。

 

「ヤードッ!」

 

 テレパシーがこないとなんか変な気分である。あいつが喋ってないのが気味悪いというかなんというか。や、普通は会話ができる方が気味悪いんだけど。

 

「またでんじほう!?」

「むふんっ! 我の奥義、レールガンをモノにしてきたようであるな」

「ただでさえ命中率の悪いでんじほうをさらに加速させて撃ち出すとか、誰も考えねぇだろ」

 

 ザイモクザでもロックオンを使ったりしてるのにな。マジで山に篭って何をしてたんだか。まさか俺が出した課題を全てクリアしてきたとか言わないだろうな…………。

 

「………誰も考えないからこそいいのだろう? 君のバトルがそうではないか」

「いや、誰かやってるでしょ。俺みたいにとはいかなくても。別に俺が特殊なんじゃなく、期待以上のものに仕上げてしまうリザードンたちがすごいんですよ」

 

 先生、そんな持ち上げないでください。俺はいたって普通だし、逆に飛行術が乏しかったから、アニメを漁っただけだってのに。いや、あれはマジですごいと思った。ポケモンじゃなくて人間自身が空を飛べるようになってるんだからな。

 

「打ち上げて」

 

 ヌメルゴンは二本の角で一閃の角度を変えた。

 

「花火になっちゃった………」

 

 何をどうしたら花火になるんだろうか。まさか今のはヤドキングの方が仕組んでいたとか?

 

「ヤードッ!」

 

 なんて花火に目がいっていると、ヤドキングが仕掛けた。一瞬遅れて部屋の中に閉じ込められたことに気づいたヌメルゴンがキョロキョロと辺りを見渡している。

 

「ヤドキング!」

 

 口を大きく開いたヤドキングが今にも凍りつきそうな風をヌメルゴンに送りこんだ。ふぶきだ。

 

『おおっと、ヌメルゴン! 急に部屋の中に閉じ込められたかと思うと吹雪に煽られ、身動きが取れない!?』

 

 右腕で身を守る態勢を取っているヌメルゴンの足元が段々と凍りつき始めた。

 

「ヤドキング、交代!」

『ど、どういうことだっ!? 攻めに回っていたヤドキングがボールに戻っていく! イロハ選手、一体何をする気だ!?』

 

 あの部屋はトリックルームだろう。

 そしてここで交代。ということは鈍足の奴が出てくるのかもしれない。

 

「フカマル、ドラゴンクロー!」

 

 お、交代したからイロハの命令が聞けるようになったぞ。

 ボールを投げることでヌメルゴンとの距離を縮め、さらにトリックルームの効果で一瞬でヌメルゴンの目の前にフカマルがいた。竜の爪で下から上に斬り裂き、ヌメルゴンが後ろへとバランスを崩した。

 

『交代で出てきたフカマルのドラゴンクローが決まったぁぁぁあああっ!! 恐らくこの部屋はトリックルーム! イロハ選手、進化前のポケモンで有利にバトルを進めるべく、ヤドキングにトリックルームを使わせていたぁぁぁあああ!? なんという、なんという巧みなバトル!! 半年前にトレーナーになったばかりとは思えないぞっ!!』

「ヌメルゴン、アクアテール!」

 

 だが、それも束の間。後ろに倒れるのをいいことに、尻尾に水のベールを纏わせ、くるっと身体を捻り、斬り裂くためにジャンプしたフカマルを地面に叩きつけた。ドサッと自分も地面に倒れたがあまり堪えてない様子。さすがのタフさである。

 ………ん?

 なんか、ヌメルゴンが尻尾を気にしてないか?

 こう、なんというか痛みを感じているような………。

 

「ヌメルゴン、どうかしたの?」

「フカマル、あなをほる!」

 

 うわー、容赦ねー。

 攻撃してこないヌメルゴンを見て、すぐに穴を掘って身を隠しやがった。

 

『こ、これはどうした?! ヌメルゴンが尻尾を気にしている!? 何か問題が起きたのかーっ!!』

『………おそらくフカマルの特性だね』

『特性ですか。なるほど、確かフカマルの特性は二つ。すながくれとーー』

『彼女のフカマルの特性はさめはだ。触ると危険な特性を持ってます』

『やっぱりか。君たちはつくづくレアなポケモンを捕まえてくるね』

『そこに私も含めるのはやめてほしいですね。レアなポケモンを捕まえてくるのはイロハとハチ……「あの男」くらいだもの』

『うーん、まあ、「彼」の方はもう特殊な能力だと思った方がいいんじゃないかな』

『そうですね、そうしておきます』

 

 ダメだ………。

 あいつら口を開けば俺のことばっかディスりやがる。おかげで実況もカルネさんも会話に加われない状態になるというね。仕事してくれ。

 

「ぷくくくっ」

 

 あ、あっちにも話聞いていやがった奴がいる。

 おいこら、バトルに集中しやがれ!

 

「ヌメルゴン、フカマルの特性はさめはだよ。直接触れるのはよくないわ」

「メゴッ」

 

 いつぞやのナックラーみたいな奴だとは思っていたが、まさかそこまで一緒だったとは。ナックラーも特性はちからずくでレアな方の特性だった。そしてフカマルもレアな方の特性であるさめはだときた。出会った場所も同じであれば、懐かれ方も同じという、何かあるとしか思えない偶然の一致。しかもあれだ。タイプももろ一緒だからな。何なのあいつ。いつからそんな特殊な能力をつけてんだよ。おまけに喋るヤドキングだろ? あいつのポケモンの雄どもは碌でもない奴しかいないな。

 

「ゴー!」

「フガッ!」

 

 ヌメルゴンの視線が足元から離れた隙にフカマルが地面から飛び出してきた。そのままヌメルゴンに体当たりをかまし、角で捕まえられてしまった。

 何やってんだよ。

 

「えへっ、りゅうせい!」

 

 ん?

 りゅうせい?

 りゅうせいぐんじゃないの?

 群れないの? え? 単発?

 

「ヌメルゴン、りゅうのはどうよ」

 

 大きく開かれた口から吐き出された一発の流星は上空に吹き飛んで行ったヌメルゴンへと一直線に走る。それに気づいたヌメルゴンは上から押さえつけるように赤と青の竜を模した波導を撃ち出した。

 徐々に押し返されてくる流星。

 そこへイロハの声が走った。

 

「フカマル、進化!」

 

 おい、またか。

 マフォクシーに進化した時も進化を合図出していたよな。

 何なの、その能力。一体いつからポケモンの進化を自在に操れるようになったんだよ。こうなってくるとナックラーの進化が感動的すぎるだろ。

 

『なっ、なんということだ!? イロハ選手、次なる命令は進化とき………は、始まりました!! イロハ選手の命令通り、フカマルの進化が始まりましたっ!!』

 

 フカマルが白い光に包まれ、姿を変え始めた。

 本当に進化が始まったのだ。

 誰だよ、こんな風に育てた奴。俺はこんな奴に育てた覚えはないぞ!

 

「……あらあら、まさか本当に進化のタイミングを命令できてしまうのね。トレーナーになってまだ半年の初心者、なんて考えは邪魔なだけだわ」

 

 どうやら四天王の方も本気でくるらしい。

 目つきとオーラがガラッと変わった。

 さすがに波導と押し返された流星を進化の時に放出されるエネルギーで弾き飛ばしてしまう相手には本気を出すのが礼儀と思ったのだろう。

 よかったな、イロハ。今のお前は四天王に本気出させるほど、強くなったらしいぞ。

 

「ガバイト、りゅうせいぐん!」

「ヌメルゴン、げきりん!」

 

 進化したことで今度はりゅうせいぐんになった。撃ち出された流星が弾けて群になり、次々と落ちてくる。

 その中を竜の気を暴走させてヌメルゴンが一直線にガバイトの方へと突っ込んできた。

 

「受け止めて! ドラゴンクロー!」

 

 進化したことで長くなった腕に竜の爪を作り出し、交差させて真っ逆さまに落ちてきたヌメルゴンを受け止めた。だが、やはり暴走状態。そんな程度では受け止め切れはしなかった。

 

「ガバイト!?」

 

 技と技がぶつかり、相当なエネルギーが凝縮されたようで、爆発が起きた。爆風に呑まれ、ヌメルゴンもガバイトも荒れ狂う町のゴミのように吹き飛んで行った。

 

「ン~、メゴーッ!」

 

 うわ……、タフにもほどがあるだろ。あれでまだヌメルゴンは立ち上がれるのかよ。ガバイトは起きる気配がねぇぞ。どうすんだよ。

 

「ガ……バ………」

 

 まだ意識はあるようだ。だが、あと一撃で倒れるのは間違いない。ガバイド自身、技を出せるか怪しいところである。

 

「まだ意識があるみたいだわ。ヌメルゴン、とどめよ」

 

 未だ竜の気を暴走させているヌメルゴンに四天王からの命令が出された。それを聞いたヌメルゴンはすぐさま駆け出し、フラフラと立ち上がろうとしているガバイドの目の前に移動した。

 

「メーゴッ!」

「ガバイト、ステルスロック!」

 

 振り被るヌメルゴンに対し、身を守ることもせず、見えない岩をフィールドへ仕掛けた。

 最後の力を振り絞って、といった感じか。

 なぜあのタイミングでフカマルに交代させたのかは分からない。何が狙いなのかも未だに掴みきれていない。ただ進化させたかっただけかもしれないし、他のポケモンの体力を残しておきたかったからかもしれない。最後のステルスロックが本命だったとかだったら、俺は泣く。フィールドに仕掛けをするために手持ちを一体犠牲にするとか、贅沢すぎるだろ。

 

「ガバイト、戦闘不能!」

『ガバイト、戦闘不能っ! 四天王、すぐに追いついてきたぁぁぁあああっ!!』

 

 あれ? イロハがなんか不敵な笑みを浮かべてるんだけど。ああいう時のイロハって絶対何か企んでる時だよな。何を仕掛けたんだ?

 

「ヌ、ヌゴ〜………」

 

 竜の気の暴走も治ると、フラフラとヌメルゴンの足元が足元が覚束ない。

 

「あらあら」

 

 ついにはヌメルゴンも地面に背中から倒れてしまった。

 

「ヌ、ヌメルゴン、戦闘不能!」

 

 そして力も尽きてしまったようだ。

 

『ヌ、ヌメルゴンも倒れたぁぁぁあああっっ!! いつの間にかヌメルゴンにダメージが入っていたみたいですっ!! イロハ選手、巧みな戦略でヌメルゴンを道連れにしましたっ!!』

 

 いつ、なんてそりゃ最後の攻撃だろう。

 特性を忘れたのかよ。ガバイトの特性はさめはだ。フカマルから進化しても特性は変わらない。だからげきりんで毎度直接ダメージを入れていた分、自分にも跳ね返ってきていたというわけだ。

 ああ、そういうことか。最初のやり合いでヌメルゴンの耐久力を思い知り、トリックルームを残して交代した。トリックルームはフカマルが動きやすいようにするためであり、踏ん張りどころでは進化をさせて意表を突き、本気を出してきたところで相討ちを狙う。しかも倒れる直前にはフィールドに仕掛けも施したわけだ。何かを狙ったわけでなく、すべて狙っていたみたいだ。

 なんて奴だ。一体どんな修行をしてきたんだよ。

 

『やるわね、あの子』

『そういう子ですから』

『初めてバトルした時からバトルセンスはあったけど、これはちょっと予想外だね』

『あまり彼女とはバトルをしたことがないのですが、バトルをするたびに強くなっていますね。優位に進めていてもいつの間にか支配権を奪われている、そういうバトルが何度もありました。奪い返しましたけど』

『しょ、将来が楽しみな逸材だわ』

 

 いやー、怖い。

 何が怖いって、フィールドだけじゃなくて観客すら支配してそうで怖い。

 それとユキノさんや。お前の負けず嫌いに、チャンピオンが引いてるぞ。

 

「これはちょっと意外な展開だわ。四天王として示しのつくバトルをしなくちゃ。ガチゴラス」

『四天王ドラセナ選手の三体目のポケモンはガチゴラスだ! 一体どんなバトルを見せてくれるのか!!』

 

 ガチゴラスか。

 ザクロさんのチゴラスが進化した姿だったな。あのでかい顎は要注意だ。噛みつかれたら離れない。噛まれなければいい話なのだが、そう簡単にもいくまい。あいつは脚力もある。離れていようが一気に距離を詰めてくることだって考えられる。イロハがどこまで上手く躱せるか、そういうバトルになるだろう。

 と、ここでガチゴラスに地面から岩が生え、突き刺さった。ステルスロックだ。

 

「ガチゴラス!」

 

 だが、突き上げられた身体を回し、宙返りをするとそのまま態勢を立て直し着地した。

 

『ガチゴラス、ステルスロックを上手く躱したぁぁぁあああっ!!』

 

 普通躱そうとしても躱せないもんだと思うんだけどな。なんかもうこの時点でドラミドロやヌメルゴンとは一味違う育て方をしてきたように見受けられる。

 

「ガチゴラス、ザクロさんが連れていたけど、あの子よりもずっと強い気を感じる………。ヤドキング、まずは動きを止めるよ!」

「ヤードッ!」

 

 まずはふぶきか。

 凍風がガチゴラスを襲う。

 

「ジャンプで躱して、かみくだく」

 

 早速出してきたか。

 一跳びで凍風を躱し、ヤドキングの頭のシェルダーに噛みついた。

 あれ外れたらヤドンに戻るのだろうか………。ちょっと見てみたい気もしなくもない。けど、要は馬鹿に戻るってことだしなー。それもなんか気が引ける。

 

「あらあら、サイコキネシスね。ガチゴラス、もろはのずつき」

 

 噛みついてきたガチゴラスを超念力で何とか切り離した。だが、そこは四天王。すぐに対応し、超念力をいとも簡単に破り、そのままヤドキングを弾き飛ばした。ヤドキングは観客との隔壁にぶつかり、壁にクレーターを作って動かない。

 

「や、ヤドキング?!」

「……ヤドキング、戦闘不能!」

 

 ものの一発。

 それだけであのヤドキングが戦闘不能にされてしまった。

 

『こ、これが四天王の実力かぁぁぁああああああっっ!! もろはのずつきの一撃でドラミドロ、ヌメルゴンと倒してきたヤドキングをあっさり倒してしまったっ!! 強い、強すぎるぞ!!』

 

 これがまさに四天王の実力なのだろう。

 技の一つで空気を変えてしまう。それくらいの実力がなければ就けない役職。責務というか名前の重みというか、背負うものに見合う実力が必要なのだ。

 

「お疲れ様、ゆっくり休んでて。ガチゴラスはいわ・ドラゴン………。ラプラス、あなたの番だよ!」

 

 ラプラスとな?

 マジか………、またレアなポケモンを捕まえやがって。何なのあいつ。何を目指してるわけ………?

 

「れいとうビーム!」

「ジャンプで躱すのよ」

 

 やはりあの脚力はすべての攻撃を躱してしまうようだ。一跳びで自在に距離を詰めることだってできそうな跳躍力。サワムラーも泣きそうな脚力だわ。

 

「もろはのずつき」

 

 ジャンプしたままガチゴラスがラプラスに飛び込んでいく。当のラプラスは外れたにも拘わらず、冷気を飛ばし続けていた。冷気はフィールド一帯の地面で固まり、アイスバーンに。ガチゴラスに躱されたステルスロックも凍り付いている。

 

「躱して、れいとうビーム!」

 

 水上でもないのに躱せるのかと思いきや、地面に張った氷のおかげでスイスイとガチゴラスを躱した。頭から地面に転がり落ちたガチゴラスは、地面の氷のせいで隔壁の方まで滑っていき衝突した。

 そこにラプラスの冷気が突き刺さり、ガチゴラスの尻尾を凍り付けにする。

 

「ガチゴラス、ドラゴンクローを地面に突き刺して」

 

 起き上がったガチゴラスが地面に竜の爪を両方突き刺し、どうするのかと思えばロケット弾のように飛び出し、一気にラプラスとの距離を詰めた。

 

「ラプラス、躱してあられ!」

「ラプラスを掴むのよ」

 

 氷の上を滑るように躱すラプラスの首に竜の爪を引っ掛けると、遠心力でそのままラプラスの背中に着地した。ラプラス、大ピンチ。後ろを取られてしまった。

 

『ガチゴラス、ラプラスの背後を取ったぁぁぁあああっ!! イロハ選手、このピンチをどう乗り切るっ!!』

 

 と、あられを呼ぶことには成功したようだ。

 パラパラと雪が降り始めた。

 

「もろはのずつきよ」

「フリーズドライ!」

 

 背中、というか首に激烈な頭突きを受け、前転で隔壁まで滑っていく。

 

『もろはのずつきが決まったぁぁぁあああっ!! ラプラス、万事休すかっ?!』

 

 効果は抜群。

 ヤドキングを一発で倒した技だ。効果抜群で受けてしまえば、続行不能の可能性は大である。

 

「ラプラス、戦闘不能!」

 

 やはりか。

 だがイロハはしっかりと置き土産を作っている。

 

『ラプラス、戦闘不能! ガチゴラス、立て続けにイロハ選手のポケモンを戦闘不能に追い込んだっ! ……おや? ガチゴラスの様子が…………な、ななななんとイロハ選手、置き土産を作っていたぁぁぁあああっ!! ガチゴラス、身体中凍り付いてしまい動けないっ!!』

 

 宙返りをして着地したガチゴラスは足元から静かに凍り付いていき、気づいた時には首にまで来ていた。そこまで来てしまえばどうすることもできない。ただ凍り付くのみである。

 

「ありがとう、ラプラス。ちゃんとこのチャンス活かすからね。マフォクシー!」

 

 ラプラスをボールに戻すと、四体目のポケモンとしてマフォクシーを出してきた。

 マフォクシーは木の棒を取り出し、地面に突き刺した。すると地面に亀裂が入り、隙間から炎が噴き出した。炎は凍ったガチゴラスを呑み込み、火柱を上げる。

 

「ブラストバーンか。急激な温度変化にさしものガチゴラスも耐えられるわけないか」

 

 氷漬けからのマグマを浴びる感覚を受けて、耐えられる生き物なんているとは思えない。

 それにあのガチゴラスは何度ももろはのずつきを使っている。もろはのずつきはその名の通り諸刃なのだ。

 リスクだってもちろんある。攻撃の度に反動。全く顔に見せないがガチゴラスの体力消耗は激しいことだろう。そこにあんな温度変化を使った技の組み合わせをされたのでは立っていられるとは思えない。

 

「ガゥ………」

 

 バタリと。

 炎に呑まれたガチゴラスが地面に倒れ伏した。

 残念ながら炎はまだ燃え続けている。水をかければ鎮火するかもしれないが、生憎マフォクシーは水を生み出すことができない。ガチゴラスも何かできるほどの体力はない。

 熱が膨張し、いつの間にかあられは止んでしまっている。

 

「マフォクシー、あの炎を取ってあげて」

 

 マフォクシーは地面に突き刺した木の棒を引っこ抜くとくいくいと動かし、それと同じようにガチゴラスを包む炎も動き出した。どうやら見かねたイロハが炎を取り除くことにしたみたいだ。四天王の方もボールを取り出して戻す準備をしている。

 

「ガチゴラス……、戦闘不能!」

「よくやったわ。ガチゴラス」

 

 すでに意識のなかったガチゴラスに審判が判定を下し、それを聞いた四天王がボールへと戻した。

 

『とうとうガチゴラスも倒れたぁぁぁああああああっっ!! 一進一退のハードな攻防! 実に見応えのあるバトルとなっております! さすがリーグ戦! さすが強者たちが勢揃いな祭典です!』

『こりゃ参った。まさか半年で四天王に引けを取らない実力者になるとは』

『最初のポケモンを渡した身として、喜ばしいことなのでは?』

『嬉しいよ。嬉しいさ。だけど半年だよ? 周りの環境を考えれば妥当な期間なのかもしれないけど、一度ポケモントレーナーを目指した身としてはあり得ない期間だね』

 

 あり得ない期間か。

 だが、イロハのこれまでの環境を考えればあり得なくもないだろう。校長というベテラントレーナーに知らず知らずの内に鍛えられ、いざ旅をするとなれば俺やユキノというチャンピオン経験者やザイモクザというある部分に特化したトレーナーがいたんだ。それにあいつ自身、潜在的な能力というかあのあざとい言動の延長戦というか、空気を操るのが上手い。それが人の感情だったり、バトルフィールドだったり、進化だったりとやり方は様々であるが、それらすべてを巧みにコントロールしている。

 正直なところ、出来レースに実践を組み込み、経験を積んだだけのような感じである。すべてをモノにしたのはイロハ自身の努力なんだが。

 

「ねえ、ハチマン。妹ちゃん、借りていい?」

「うおっ、なんすかいきなり。後ろから抱き着かないでくださいよ」

 

 なんかいきなり後ろから柔らかい感触が襲ってきた。

 

「あ、ハルノさん。お迎えですか?」

「そうそう、二人とも三体目のポケモンが戦闘不能になったからね。こっちに来る間に巻き返しちゃうんだもの。展開が早くて大変」

「それはそれは、お疲れ様です」

「もっと労って。お姉さんを労って!」

 

 何、この駄々をこねるどこぞの水の女神様みたいな反応。俺にどうしろって言うんだよ。

 

「はいはい、よく頑張りました」

「うわー、テキトーだー」

 

 言うな、コマチ。これで満足してしまう魔王様がここにいるんだから。

 なんだよ、こんなのでいいのかよ。ただ肩に乗せてきた頭を撫でただけだぞ。棒読みで。

 

「はるさーん、いきますよー」

「あ、メグリ。待ちなさい」

 

 しっかりと堪能したのか、スッキリとした顔でメグリ先輩の方へと駆け寄っていく。一体何しに来たんだよ。

 

「さて、いくかヒキガヤ妹」

「へっ?」

「コマチ、お前の相手はヒラツカ先生だ」

 

 コマチ、対戦表見てこなかっただろ。自分の相手を知っておくのも大事なことだぞ。

 

「ふふんっ、兄貴には負けたが妹には勝ってやる!」

「あんた、大人気ないな………」

 

 んとにこの人は………。

 どうしてこう俺に対しては対抗心が強いんだよ。俺、一応あんたの教え子だからな。教え子相手にムキになるなよ。しかも勝てないからって今度は妹の方に手を出すとか。これで負けたら一体どうなってしまうんだ…………?

 うわっ、考えただけで今から面倒臭そうだ。考えるのはやめよ。

 

「先生、負けませんよ! コマチはもう先生が知っているコマチじゃありませんから!」

「ほう、あまり大人を嘗めてはいけないぞ」

「んじゃま、行ってこい。骨は拾ってやる。先生も骨くらいは拾ってあげますよ」

「………いっそこの身をもらってくれればいいものを………」

 

 ちょいちょいちょい!

 今なんか危険な発言が聞こえてきたんですが。

 

「クリムガン」

 

 おっと、四天王が次のポケモンを出してきたみたいだぞ。続き見ようぜ、続き。

 

『ステルスロックが決まったぁぁぁあああっっ!! 激しい攻防で実況の私もすっかり忘れていたステルスロックがクリムガンに刺さりました!!』

「…………はあ、結婚したい」

「シズカちゃーん、最近発言が重たいよー」

「何を言うハルノ。教え子に先を越されるこの気分を知らないから言えるんだ」

「あはは………、と、とりあえず控え室にいきましょー、ね?」

「シロメグリ、とりあえずで片付けられるような案件ではないぞ。これは死活問題なのだ。私というこんなにも素晴らしい女性がいながらどうして世の男どもは揃いも揃ってーーー」

 

 スイッチの入った先生はハルノさんとメグリ先輩に愚痴をこぼしながら引きづられていった。それを追うようにコマチもついていく。タイシが「がんばるっすよー」などと手を振っているが思いの丈はあまり届いていなさそうである。ただ単に無邪気な笑顔を向けられていた。ざまぁ。

 

「嵐のようだったね」

「だな」

「ねえ、ハチマン。このバトル、どっちが勝つと思う?」

「さあな。リーグ戦をやるって決めてからはあまり人のバトルを見ないようにしてきたからな。俺には手の内を知られたくないだろうし」

 

 近くにはユキノたちもいたが、仕事が忙しくて人のバトルを見ている余裕がなかったのが正直なところである。

 いや、ほんとマジで。

 運営体制を整えるのはもちろんのこと、何かあっては大変なのでセキュリティーや避難マニュアルなど、次から次へと仕事が降ってきたのだ。何が嫌って最終的な判断は俺が下すということだ。責任重大すぎて胃が痛いね。

 特に防災関係は面倒だった。最悪のケースを想定って、何を想定すればいいんだよ。隕石か? 隕石が降ってきたときのことを考えればよかったのか? まあ、今回はフレア団の事件を踏まえてロケット団が強襲してきたらという想定にしたが。

 俺が思いつく最悪の事態がロケット団って………。

 火事とかの災害じゃないところがポイントな? そんなのはポケモンがいれば何とかならんこともない。共通項として避難のルートと誘導を重点的に取り決めたし。

 …………フラグになりそうだからもうこの話を思い出すのはやめよう。

 

「じゃあ、イッシキさんがラプラスを連れていたのも」

「初めて見たな」

「そ、そうなんだ………」

「ま、俺が言えるのは勝とうが負けようがあいつは強くなった。一段とバトルしたくない相手になってしまったわ」

 

 ユキノといいイロハといい、一体何をどうしたらいきなり強くなって帰ってこれるんだよ。怖いんだけど。女の底力とか言われた日にはもう立ち上がれないまである。

 

「すごいよねー。たった半年であそこまで強くなれるなんて」

「素質はあったからな。それよりも驚きなのはユイが本戦に出場してくるってことだな」

「えへー、何か言ったー?」

 

 フィールドを見ているユイをため息まじりにチラ見すると、屈託のない笑顔を向けられた。

 はあ、この半年で化けたのは言うまでもなくユイだ。別にバトルを見たわけではない。何故かジムバッジを八つ揃えてしまったのだ。コマチたちから聞いてもちゃんとバトルして勝ち取ったバッジであり、正真正銘の本戦出場選手になったのだ。しかも何があったのか知らないが、コルニに鍛えられることになってたし。

 

「いや、何も」

「マフォクシー!」

「クリムガン、かたきうち」

 

 何を命令したのか知らないが、マフォクシーが木の棒で文字を描くように動かし、クリムガンに何かを送り込んだ。鬼火、とはまた違う。

 その間にクリムガンはマフォクシーとの距離を詰め、音もなく切り裂いた。

 

「ま、マフォクシー!?」

 

 ドサッと。

 技の衝撃で爆発が起きるとかでもなく、静かに倒れた。

 かたきうち。

 その名の通り、敵を討つ技。別に仲間の敵を討つ必要がなくても技は使えるが、仲間が倒されて本当に敵相手となった場合、威力が跳ね上がる。今のはガチゴラスの敵なのだろう。

 それにしてもハサミギロチンみたいだな。だが、かたきうちは一撃必殺ではない。

 

「………フォッ………ク……」

『一度倒れましたが、マフォクシー。根性で立ち上がりました!』

「ほっ、よかった………」

『と、どうしたクリムガン! ヌメルゴンのように腕をさすっているぞ!』

「あらあら、マフォクシーが痛がるならわかるけど、クリムガンが痛がるなんて…………」

『プラターヌ博士、これは一体どういうことでしょう?』

『うーん、マフォクシーが痛がるのなら分かるんですがね。クリムガンの特性にはさめはだがあります。フカマルーーガバイドと同じように触れた相手にダメージを与える特性です』

 

 なら答えはもう一つじゃねぇか。

 マフォクシーはスキルスワップを覚えている。そしてあの木の棒の動き。あれがスキルスワップを使った証だったのだろう。

 スキルスワップはお互いの特性を入れ替える技。一見、何をされたか分からない。だからクリムガンも気づかなかったというわけだ。

 

『なるほど。では、三冠王はどうみますか?』

『恐らくクリムガンの特性はさめはだ。それをマフォクシーが奪ったのでしょう』

『奪う………?』

『なるほど、スキルスワップだね。マフォクシーのタイプにはエスパーも含まれている。覚えていてもおかしくないですね』

 

 ユキノは知っている。だからすぐに答えにたどり着いた。だが知らない奴からしてみれば謎だらけのトリックだったというわけか。

 

「ほんとすごいわ~。まさかここまで翻弄されちゃうなんて」

「私には倒したい人がいますから」

「まあ、それは三冠王さんのことかしら?」

「ユキノ先輩もですが………。三冠王や四冠王ですら勝てない相手です」

「あらあら、四冠王も勝てない相手なんて。うーん、誰かしらー」

「マフォクシー!」

「仕方がないわ。クリムガン、マフォクシーには退場してもらいましょう。ドラゴンテール」

 

 少し会話をしたかと思ったらイロハの方から仕掛けた。

 マフォクシーが木の棒を振り、新たな部屋を作り出していく。

 マフォクシーが覚えていたのは確かワンダールーム。直接攻撃への防御力と遠距離からの攻撃への防御力を入れ替える特殊な部屋。だが、クリムガン相手に必要なさそうな気がするんだが。

 と、そこへ飛び上がって、尻尾に竜の気を纏わせたクリムガンが振りかぶってきた。するとマフォクシーは木の棒を振り、ワンダールームを投げつけた。部屋の壁にぶつかったクリムガンはそのまま弾き飛ばされ、四天王の前でくるっと一回転し着地した。

 

「コマチちゃん、みたいな使い方するね」

「ああ、あいつもついに鬼畜になったんだな」

 

 およよ、とコマチ風に泣き真似をしてみる。後ろから刺さるカワサキの冷たい視線が超痛い。

 

『な、なんという技の使い方! 作り出した部屋を障害物としてクリムガンにぶつけるなんて見たことがないぞっ!』

 

 いや、前は足場にもしてたしな。そう考えると思いついてもおかしくはないが、コマチ……というかカマクラを見ているようでなんか萎えてくる。

 

「リベンジよ」

 

 態勢を立て直したクリムガンは着地と同時に地面を蹴り上げ、マフォクシーへと詰め寄った。

 

「マフォクシー!」

 

 またしてもワンダールームを作り出し、壁とした。だが、それを読んでいたのかクリムガンの拳が部屋の壁を叩き破り、ワンダールームを消し去ってしまった。

 

「ドラゴンテール」

 

 くるっと前宙し、竜の気を纏った尻尾でマフォクシーの頭を叩きつけた。マフォクシーは地面に伏せる暇もなく技の効果でイロハの方へと引き寄せられていく。そして、ボールに吸い込まれたかと思うとフライゴンが勝手に出てきた。

 

『クリムガンのドラゴンテールによりマフォクシー、ボールへと戻っていきました! 代わりに出てきたのはフライゴン!! ドラゴンタイプ同士のバトル!! 熱い展開になってきました!!』

「フライゴン、ちょっと出番が早まっちゃったけど、いくよ! ドラゴンダイブ!」

「迎え撃つわよ~、リベンジ」

 

 加速し勢いに乗ったフライゴンが赤と青の竜の気を全身に纏い、クリムガンへと突っ込んでいく。対してクリムガンは腕を下げて、迎え撃つ態勢を取り始めた。

 

「さめはだを奪ったからクリムガンに直接触れられるようにもなったわけか。イッシキも計算しつくしてるね」

「あいつのやることに無駄はないからな」

 

 カワサキが感心したように呟いた。

 よかったな、イロハ。恐らく俺がお前に与えた課題を全てクリアしてそうなカワサキがお前のバトルに関心を持ってるぞ。

 

「ほんとどれくらい先まで見通してるのか怖いくらいっすよ」

 

 弟の方なんか震え上がってるし。

 山で一緒に修行してた時のことでも思い出したのだろう。お前、一体どんな修行をしてきたんだよ。

 

『ドラゴンダイブが決まったぁぁぁあああっ!! さあ、クリムガンの反撃だっ!!」

 

 衝撃で爆発が起き、一足先にフライゴンが空へ回避してきた。様子を見る限り、攻撃を受けていない。

 

「クリムガン…………、戦闘不能!」

『おおっとクリムガン、反撃の狼煙を上げられずダウン!! 一歩リードしたのはイロハ選手だっ!!』

 

 四天王は判定を受け、クリムガンをボールへと戻した。

 これで相手はあと二体。数的有利はイロハにあるが、果たしてすんなりバトルが展開していくのだろうか。相手は四天王。多くの猛者たちから選ばれた言わば最強の中の最強。その一角を担うあのおばさんがそう簡単に勝利をくれてやるとは思えないんだが。

 

「オンバーン、上に行くのよ~」

『五体目のポケモンはオンバーン! どうやら空中戦に持ち込むようです!』

 

 五体目はオンバーンか。

 パンジーさんが連れてたっけ。

 

「あ、ステルスロックが………」

 

 トツカも気が付いたようだが、出てきてすぐに上空へ飛んで行ってしまったため、ステルスロックの餌食にならなかった。ただ障害物として岩が突き出てきただけである。三つもあると邪魔だな。別のフィールドになったみたいだわ。

 

「フライゴン、ハイヨーヨー!」

 

 おい!

 なんでお前までそれ使ってんだよ。いつの間に覚えやがったんだ?

 

「出たっす! あれ、ポケモンの技じゃないから反則にもならないし、でも空中戦じゃ移動の方法でも勝負の行方が変わるって言ってたっすよ!」

 

 お、おう………。

 どうしたクズ虫。そんなに上昇していったフライゴンがすごいのか?

 

「あ、あのタイシくん………」

「はいっす!」

「あれね、元々ヒッキーが編み出したものだから………」

「へ………?」

「タイシ………」

 

 さーちゃん頭痛そうだな。

 

「ハイヨーヨーは上昇するという反重力のエネルギーを無理矢理蓄えて、下降する時に上乗せして一気に詰め寄る飛行術だ」

「………マジっすか…………。お兄さん、何者なんすか………」

「今はカロスポケモン協会の理事だな」

 

 以前は………、何になるんだ? カントー理事の懐刀? 元チャンピオン………と言えるほど就いてないし。みんなは元チャンピオンって言ってるけど。脅し程度には使える肩書きだから、まあ便利ではあるが。

 ………ああ、あるじゃないか。元シャドーの戦闘員的なの。

 うん、やめよう。シャドー脱走の後からこっちに来る数日前の記憶がないんだ。しかもその部分だけ、あまり詳しいことが手帳には書かれていない。一番謎な部分を突き止めない限りは昔の俺を語らない方がいいよな。

 こんなことあまり深く考えたことなかったが、ポケモン協会の理事になんてものになってしまった以上、詮索されないとも限らないからな。一応パンジーさんを専用記者に抜擢し、情報漏洩を抑えてはいるが、それでもホロキャスターなる検索機器がある時点で、俺の過去を突き止められないとも限らない。

 近しい人物でも俺の記憶にある範囲内のことだけしか話さない方が得策だ。

 ありがとよ、タイシ。おかげで用心しておくことがまた一つ明らかになったわ。

 

「や、それは知ってるっすけど………。そうじゃないっす!」

「えーと、ヒッキーは………ポケモントレーナー………?」

「分からんのなら口を挟まない方がいいぞ」

 

 そう言えばユイたちは俺のことをどこまで知っているのだろうか。ザイモクザはなんだかんだ俺の部下扱いで行動を共にしていることが多かったようだ。それにユキノもなんだかんだで付き合いがあるらしい。ハルノさんも魔王なので全てを知っていてもおかしくはない。

 だが、ユイやイロハは?スクールの時から好意を持っていたことを仄めかしてくる二人だぞ? 調べていないとも限らないのではないか? 調べられるのか疑問ではあるが………。俺ってアレじゃん? 割と危ない奴じゃん? 情報の漏洩とか厳しい…………こともないか。厳しそうなのはシャドー脱出後くらいだろうし。

 

「うぅ………」

「えっとね、ハチマンはカントーの元チャンピオンだよ」

「はっ?」

「うぇっ?!」

 

 姉弟で驚いている。

 ユイとコマチは言っちゃってよかったの? なんて顔を向けてきたが肩を澄ませて肯定しておいた。

 

「チャンピオンってあのカルネって人と同じ………?」

「無論、我が相棒は偉大なのである」

「アホ、そんな大層なもんじゃないだろ、俺の場合」

「通りでヒキガヤさんがすぐに強くなったわけだ………」

 

 それは別に関係ない。

 コマチが強くなったのはコマチ自身の努力だ。素質があったことは認めるが、そもそも素質なんて皆最初は平等に持っている。ただ違うのはこれまで何を見聞きし、何を経験してきたのか。そこで差が生まれてくるのだ。要は環境の問題………ん? ちょっと待てよ? そう考えるとコマチやイロハはどこでそんな経験をしてきたんだ? イロハはまあ、あのじじいがいるし………いや、そうは言っても過度の接触はできていなかった。イロハがポケモントレーナーになってようやく祖父であることを打ち明けたのだ。バトルを教え込むことなんて無理だろう。

 ………となるとやっぱりあいつ…………。

 それにコマチもか…………。あ、でも俺の強さなんて知らなかったって言ってたし、それが原因でケンカまがいのこともしたわけだし。

 取り敢えず、この条件でいくとユイは何も知らなかったとみて間違いないな。

 ふぅ……、ちょっと落ち着こう。バトルでも見て思考を止めるとするか。

 見ると、急降下し始めたフライゴンをギリギリで躱し、すぐにオンバーンはフライゴンの後をついてきていた。

 フライゴンは地面スレスレで方向を変え、ステルスロックの間を翔け抜けていき、オンバーンもギリギリで方向を変えていく。

 

「オンバーン、エアスラッシュ」

「フライゴン、躱して!」

 

 空気を固めた無数の刃を飛ばしてきた。

 それをフライゴンは後ろを見ず、感覚だけで躱していく。無数に飛ぶ刃のいくつかが岩を砕き、見晴らしをよくしてしまった。これでイロハが作り出したフィールドも払われたことになる。

 

「フィッ!?」

 

 そうなるとやはり無理があったらしい。一刀を背中に受けると次々と斬り裂かれていく。

 俺の飛行術を使うのであれば、ソニックブーストを使えば躱すこともできたはずだ。だがあれを使わなかったということは完璧にマスターしたというわけではないらしい。できるものだけでも習得させたと見るのが妥当だろうな。

 

「くっ、フライゴン、エアキックターン!」

 

 なるほど、空気を蹴って、方向転換をするエアキックターンは使えるのか。ということは翼を使う術には得手不得手があるということだな。

 

「フライゴン、ドラゴンダイブ!」

 

 崩されたバランスを立て直しながら方向転換すると、勢いよく空気を蹴りつけた。そして赤と青の竜の気を纏い、オンバーンへと突っ込んでいく。

 

「いかりのまえば」

 

 巨大な前歯を作り、突っ込んできたフライゴンを捉えた。

 交錯したのは一瞬で、二体はそれぞれ地面に転がり込んでいく。

 

『オンバーン、フライゴン、交錯して両者地面へと叩きつけられましたっ! 激しい、なんと激しいバトルなのでしょうか!!』

「フライゴン、ストーンエッジ!」

「フィッ………、ラッ!」

「オンバーン、ばくおんぱよ」

「オォォォバァァァァァァアアアアアアアアアンッッ!!」

 

 両者起き上がれないまま、技を繰り出した。フライゴンが叩きつけた地面からは岩が飛び出し、その岩をオンバーンが音波で粉砕していく。

 

「りゅうのはどう」

「りゅうのいぶき!」

 

 今度は波導とブレスの交錯。

 激しい衝撃波を生み出し、両者をさらになぎ払っていく。

 

「フライゴン!?」

 

 地面にバウンドしていった二体は起き上がる気配がない。

 ぐったりと。

 それはもうぐったりと横たわっていた。

 

「………フライゴン、…………………オンバーン、ともに戦闘不能!」

『両者ともに戦闘不能だぁぁぁああああああっっ!! ドラゴンタイプの同志のバトルは引き分けに終わったぁぁぁああああああっっ!!』

 

 今思ったんだが、フライゴンはクリムガンも相手しただろうが。そっちもドラゴンタイプ同志のバトルになるんじゃねぇのかよ。おい実況。しっかりしろよ。

 

「ハッチー、とうとう最後の一体になったね………」

「そうだな。だが油断は禁物だ。相手は四天王。場数じゃ相手の方が遥かに上だ」

「そうだね、ここからがイッシキさんの腕の見せ所になるだろうね」

「ああ」

 

 トツカの言う通り。

 最後のポケモンだからこそ、腕の見せ所になる。おそらく相手は切り札とも呼べるポケモンを出してくるだろう。そいつはこれまでの比じゃない強さを持っているはずだ。イロハにとってそいつをどう攻略するか、そこが勝利への鍵となる。

 

「フライゴン、お疲れ様。ゆっくり休んでて」

「お疲れ様〜、よくやったわ〜。…………ここまで追い込まれたのは初めてかもしれないわ。強い信念と高い実力。四天王として敬意を表さないとだわ。………本気、出させてもらおうかしら」

 

 あ、ちょっと声の高さが低くなった。

 おばさんが超本気モードに入ったようだ。

 

「チルタリス」

 

 出してきたのはチルタリス。

 もふもふが人気の可愛い系ドラゴンタイプ。

 その顔に似合わず、見事にステルスロックを躱しやがった。

 

「チルタリス………、マフォクシー、お願い!」

 

 対してイロハはマフォクシーか。

 何を企んでいるのか知らないが、メガシンカという切り札は最後まで取って置くつもりらしい。

 

『四天王ドラセナ選手の最後のポケモンはチルタリスだ! マフォクシー、四天王の最後のポケモンを攻略することができるのか!!』

 

 先に仕掛けたのはマフォクシーか。

 出したのはサイコショックか? 地面に転がる岩の破片を浮かせ、チルタリスの周りに集め始めた。

 

「チルタリス、あなたの歌声の虜にしちゃいなさい。うたう」

「チール」

 

 ピンチだというのにチルタリスは歌い出した。いや、いい声してるよ? ずっと聞いて痛くなる心地いい音色である。

 

「綺麗………」

 

 おーい、そこのあざとかわいい子。バトルに集中しないと負けるぞー。

 

「フォ……ク………」

 

 ほれみろ。マフォクシーがとうとう崩折れて寝てしまったじゃないか。チルタリスを囲っていた岩の破片どももパラパラと地面に落ちていってるぞ。

 って、トレーナーの方まで目をこすってるし。まずいな。これは非常にまずい。

 

「チルタリス、りゅうのはどう」

 

 心地いい音色が消えたかと思うと、ズドンと激しい振動が会場を襲った。

 チルタリスのりゅうのはどうが眠っているマフォクシーに当たったようだ。

 

「あ………」

 

 なるほど、これはイロハも一枚取られたな。今まで散々会場をも包み込むような支配力を見せてきたが、ここに来て真の支配力というものを見せつけてきやがった。

 

「マフォクシー、戦闘不能!」

 

 眠気が消えさり、ようやく状況を把握できたって感じだな。

 なんか一気に絶望に打ち引かれてるな。

 

「………ごめんね、マフォクシー。わたし………」

 

 太陽が出てきたからか、イロハの目元が暗くなった。なんてタイミングのいいこと。

 

『………うーん、まさ……か、チルタリスの、歌声、が………こんなにも眠気を誘うってくるとは…………ふわぁ〜………』

 

 よし、あの実況クビだな。

 仕事放棄してんじゃねぇよ。まあ、あの歌声に呑まれるなって方が無理な話だろうけど。だからってオンマイクであくびはダメだろ。

 

「………なんだよ」

 

 なんかイロハがこっちを見てきてるんですけど。

 なに? 俺にどうしろってんだ?

 いやそもそも見られているのは俺なのか? 他の誰か、例えばユイという可能性もある。

 

『まったく、これくらいのことで何を暗くなっているのかしら? 上を目指すのならこれくらいやられて当たり前でしょう?』

 

 おーい、いいの? 解説者が一個人に喝を入れるとか。まあ、ルールにそういう規定はないから違反でもなんでもないが。

 

「ッ!?」

 

 おーおー、驚いてる驚いてる。

 ユキノはイロハに対してあまり口出しはしてこなかったからな。こんなこと言われたのも初めてなんじゃないか?

 

「…………デンリュウ、最初から本気でいくよ」

「リュウ!」

 

 首を横に振るとイロハはようやく最後のポケモンであるデンリュウを出してきた。

 

「メガシンカ!」

 

 取り出したペンダントを強く握りしめると、デンリュウのメガストーンと共鳴しだし、白い光に包まれていった。

 デンリュウの尻尾にはチルタリスのようなもふもふな毛が生え、姿を変えていく。

 

「あらあら、メガシンカを使えたのね」

「りゅうのはどう!」

 

 叫ぶような命令が下され、竜を模した波導がチルタリスを襲いかかる。

 

「でもメガデンリュウはでんき・ドラゴンタイプ。ドラゴンキラーと称されるわたしには相手じゃないわ。チルタリス、メガシンカ」

 

 だが、相手の方も光と光が共鳴を始めた。

 そういえば、メガシンカのリストにチルタリスもあったな。だが詳しいことまでは知らない。誰も連れていなかったから調べるということもしてこなかったのだ。

 チッ、こんなことだったら全メガシンカポケモンについて調べておくんだったな。これだから社畜は………。

 

「えっ………? 効いて、ない………?」

「ええ、効かないわ。だって、メガチルタリスはドラゴン・フェアリータイプですもの。チルタリス、はかいこうせん」

 

 ………そういうことか。

 通りでずっと余裕で居られたわけだ。

 フェアリータイプであればドラゴン技は効かない。

 それはイロハの思考を一瞬でも止めてしまう材料になりえるからだ。

 現にイロハはなす術もなく思いつかず、デンリュウがはかいこうせんを受けてしまった。

 

「あ、ああ………デン、リュウ…………」

 

 そして、デンリュウのメガシンカがあっさり解けてしまった。

 えっ? 一発でか!?

 はかいこうせんでデンリュウが倒れる………効果抜群でもない限り一発でとかありえないだろ。仮にもメガシンカしたポケモンだぞ?

 いくらメガシンカしたポケモンからのはかいこうせんだとしても……………効果抜群? 

 もしはかいこうせんがメガチルタリスのタイプであるドラゴン、あるいはフェアリータイプの技だったらどうだ? ………一発退場もありえなくはない。というか技のタイプを変化させる特性があったような…………。

 

『ドラセナは私と同じメガシンカの継承者でもあります。従ってメガシンカを使う時が彼女の本気というわけです。そして他の四天王たちも同じくメガシンカの継承者。そんな彼女たちからメガシンカを引き出せた時点で、トレーナーとしてレベルの高い実力を持っているという証です』

 

 ………そう、か。

 四天王は皆メガシンカを使えるのか。つーか、そもそもあのくそじじいの弟子だったのか。

 はあ………、こんなことなら調べておいてやるんだったな。

 

『激しくなるかと思われた最後のバトル!! メガシンカ同士の熱いバトルになるかと思いきや一転!! 四天王ドラセナ選手の見事な戦術にイロハ選手手も足も出す暇もありませんでした!! Aブロック二戦目。勝ったのは四天王ドラセナ!!』

 

 

 

 

 ーーーイロハの初のリーグ戦は。

 

 

 

 ーーー呆気なく終わった。




行間(バトル使用ポケモン)

イッシキイロハ 持ち物:キーストーン
・マフォクシー(フォッコ→テールナー→マフォクシー) ♀
 特性:もうか
 覚えている技:かえんほうしゃ、ほのおのうず、ソーラービーム、にほんばれ、ワンダールーム、スキルスワップ、メロメロ、ニトロチャージ、マジカルフレイム、シャドーボール、ブラストバーン、だいもんじ

・フライゴン(ナックラー→ビブラーバ→フライゴン) ♂
 特性:ふゆう(ちからずく→ふゆう)
 覚えている技:ギガドレイン、かみくだく、むしくい、じならし、すなじごく、がんせきふうじ、りゅうのいぶき、ばくおんぱ、だいちのちから、りゅうせいぐん、、ドラゴンダイブ、ストーンエッジ

・ヤドキング ♂(校長からの贈り物)
 覚えてる技:サイコキネシス、みずでっぽう、パワージェム、まもる、うずしお、ずつき、トリックルーム、シャドーボール、でんじほう、かえんほうしゃ、きあいだま、いやしのはどう、ふぶき

・デンリュウ(モココ→デンリュウ) ♀
 持ち物:デンリュウナイト
 覚えてる技:ほうでん、シグナルビーム、わたほうし、コットンガード、エレキネット、でんじは、パワージェム、でんじほう、アイアンテール、りゅうのはどう、こうそくいどう、じゅうでん

・ラプラス ♀
 覚えてる技:れいとうビーム、フリーズドライ、あられ

・ガバイド(フカマル→ガバイド) ♂
 特性:さめはだ
 覚えてる技:あなをほる、りゅうのいかり、ドラゴンクロー、りゅうせいぐん、ステルスロック


ドラセナ 持ち物:キーストーン
・チルタリス ♀
 持ち物:チルタリスナイト
 特性:???←→フェアリースキン
 覚えてる技:りゅうのはどう、はかいこうせん、うたう

・ドラミドロ ♀
 覚えてる技:10まんボルト、りゅうのはどう

・ヌメルゴン ♀
 覚えてる技:パワーウィップ、アクアテール、りゅうのはどう、げきりん

・ガチゴラス ♀
 特性:がんじょうアゴ
 覚えてる技:かみくだく、もろはのずつき、ドラゴンクロー

・クリムガン ♀
 特性:さめはだ
 覚えてる技:かたきうち、ドラゴンテール、リベンジ

・オンバーン ♀
 覚えてる技:エアスラッシュ、いかりのまえば、ばくおんぱ、りゅうのはどう

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