カロスポケモン協会理事 ハチマン   作:八橋夏目

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ちょっと短いですが、感想にあいつのバトルを見たいとあったので急遽こんな形で一話追加です。
本編に戻る前に、たまにはあいつの状況をね。


23話〜

 さすがに、あれは、キツい…………。

 ハチ一人じゃ、あいつがぶっ壊れてる。二人で分けてこのザマだ。次来ても、ハチもオレも持ちこたえる自信がない。

 

「だ、大丈夫………?」

「フォック?」

 

 これが大丈夫なように見えるのか………?

 ほんとアレはダメでしょ。

 アレはもうリザードンじゃない。別のポケモンだ。あの野郎、リザードンの域を出て伝説の仲間入りしやがって。

 

「………無理そうだね。マフォクシー、サイコパワーで………って無理だったね。はあ………なんであくタイプを併せ持っちゃってるかなー。こういう時不便すぎるよ」

 

 そう言われても仕方ないだろ。オレはオレなんだから。

 

「ガブリアス、運んであげて」

 

 やめろ!

 こいつの肌、すげぇ痛ぇんだぞ!

 どうせならマフォクシーのふわふわな毛並みに包んでくれ!

 

「ガブ」

 

 痛ぇぇぇえええええええええええええええっっっ!!!

 

 離せ!

 このバカ、離せって言ってるだろ!

 

「?」

 

 だぁぁぁあああああああああああああっ!?!

 首をひねるなっ!

 今、刺さったじゃねぇか!

 た、たすけてくれ、マフォク………。

 

「(お兄、昨日私をいじめた罰よ)」

 

 こんのバカ妹がぁぁぁあああああああああっ!?!

 今そこでやり返すとか卑怯だぞ!

 覚えてろよ!

 

「マフォクシー、なんかご機嫌だね」

「フォック!」

 

 くそ、強い奴と戦えるみたいだったから追いてきたってのに………。

 何だよ、あの水蒸気野郎。全然やる気がねぇ。

 はあ、こんなことなら残ればよかったかもな………。そうすればあの柔らかいお胸様が触り放題だったってのに。

 しかもハチはハチで面倒事になってるし。

 ああ、早く帰りたい………………。

 

 

 

 夜。

 小娘も眠りについた頃。

 オレは一人、身体を起こした。

 あー、身体痛い。ガブリアスのバカ野郎、オレを殺す気か?

 ………さぁて、準備の続きだ。

 取り敢えず、ヒトツキとキリキザンは仲間に取り組むことができた。後は最低二人は仲間に欲しいところだ。

 

「ギャオォォォスッッ!!」

 

 早速お出ましか。

 こんな山中で野宿してたら、遭遇しない方が稀というもんだ。

 

「(ヒマァァァアアアアアアッッ!!)」

 

 …………………。

 暇だからといって、真夜中に騒ぎ立てるなよ。

 

「(ニィヒッッ、みぃーつけたァァァッ!)」

 

 関わらない方が身のためである。

 これは食物連鎖、弱肉強食の世界、自然の摂理だ。なるようにしかならのだから、下手に顔を突っ込もうものなら飛び火が大きすぎて蛇足でしかない。

 

「(キャッ?!)」

 

 これは、狙われたのは女か?

 女も大変だな。

 こんなところで捕食されちまうなんて。

 クワバラクワバラ。

 

「(だれかっ、だれか助けてぇぇっっ!!)」

 

 …………チッ、オレの前でやるんじゃねぇよ。やるなら他所でやりやがれ。

 が、こんな声を聞いて、しかも何気に視界に入ってしまえば助けざるを得ないこの心境。

 まずはみずしゅりけんで………、デカい方にしとくか。

 となると、先に接続しないとな。意識までは接続しなくてもよくなったが、今は側でハチの様子が見られない分、こうして意識まで接続することで様子を伺っている。そのおかげて、今日も間に合ったって感じだ。

 さて、それじゃリンクスタート。

 

 ッ!?

 

 おい、ハチ。

 お前といい、リザードンといい、こんなトンデモナイ過去を持ってたのか?!

 徒者じゃないとは常々思っていたが、まさかそういうことだったとは……………。

 いいだろう、オレも自分で主人を選んだ身だ。地の果てまでお前の腕になってやる。

 

「(我はここで待っている)」

「(キリキザン、そうしてくれると助かる。こんな涎を垂らして寝ている小娘を放っておいたら、今度はこっちが狙われかねないからな)」

 

 さて、こっちは一発投げますか。

 

「(ぐぇっ!? だ、誰だッ!?)」

 

 顔にヒットか。

 これで少しは…………無理だな。サザンドラだ。元々こういう性格の奴らだ。逆にトレーナーの下にいることで大人しくなる傾向があるといった具合に、野生の奴らは危険である。

 で、襲われてるのはハクリュー。

 何でこんなところにいるのかは知らねぇけど、もっといい場所を住処にしろよ。

 

「(まあ、誰でもいい。オレ様の邪魔をした奴は一匹たりとも許さねぇからなァ。………そうだ、ここら一帯を火の海に変えちまうってのも楽しそうじゃねぇか)」

 

 クズがいたもんだ。

 ハチが以前言っていた五行相生でもやってみるか。使う技のタイプはじめん、はがね、みず、くさ、ほのお。内オレが使えるのははがね以外。それ故に今まで完成させることができなかったが、ヒトツキを仲間にできたことで、オレの武器兼はがね要員として使うことできる。

 ようやくって感じだな。

 さて、まずはどろあそびで泥まみれにしてやり。

 お次は。

 

「(ヒトツキ、ラスターカノン)」

「(はいよー)」

 

 併せてオレのみずのはどうでサザンドラを覆ってやり、足元からはくさむすびで締め上げていく。

 最後にめざめるパワーで一気に燃やす。

 一つ一つの技の威力は大したことないが、こうして相乗させてやることで最終的に威力と技のスピードが格段に上がるらしい。

 

「(ぐぅ、何者だッ!!)」

 

 通りすがりのポケモンだよ。

 悪いがお前はここでおさらばだ。

 

「(ヒトツキ、せいなるつるぎ)」

「(なめるなァァァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!)」

 

 竜の気を一気に纏いあげた………あれはげきりんか。

 だが、まあそっちは囮だ。お前を仕留めるのはこのみずしゅりけんだよ。

 

「(ぐァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!?!)」

 

 はあ…………、何だったんだ、あいつは………。

 

「(…………あ、危ないところを助けていただきありがとうございました)」

 

 何が何だか、という顔をしてるな。

 さて、帰るぞ、ヒトツキ。

 

「(あ、あのっ!)」

 

 オレはやることがあるんだ。

 あ、こういう時こそ影に潜るべきだな。

 タイプ変化の能力を捨ててからというもの、イマイチその辺の発想に行かない。

 

「(いいのかー? あの子、呼び止めてたぞー)」

「(いいんだよ。お前は気づいてないだろうけど、あのハクリュー、結構歳食ってるからな)」

 

「(なん………だと…………っ!?)」

 

 いや、そんな大げさに驚くことでもないだろうが。

 ハクリューはドラゴン。ドラゴンってのは歳の割に見た目が変わらねぇんだってよ。

 

「(まさに魔性の女……………。オンナ、コワい………)」

 

 ほんと、女は怖い。

 腹の黒さは種族問わず真っ黒だし、変に影響しあうこともある。

 いい例が、あの小娘とマフォクシーだ。

 計算高いトレーナーの元に置いておくと、あんなにまで真っ黒に染まっちまうとは。

 末恐ろしい限りである。

 

「(なあ、ゲコー。俺たちのほかに誰をたらしこむ気なのー?)」

 

 たらしこむって………。

 俺はハチじゃないんだからたらしこむなんてしてねぇよ。

 そろそろ出るか。

 

「(ッ?!)」

 

 ここまで来れば誰も追って来ないだろう。

 

「(何奴ッ!?)」

 

 影から出て早々にかよ。

 はあ………………、タイミングの悪い。

 

「(拙者はアギルダー。貴公も名乗られよ)」

 

 アギルダー………オレと同族のむしタイプか。

 ま、お前がそれならオレは名乗る必要もなさそうだな。

 

「(見たまんまだ)」

「(ゲッコウガ…………なのか?拙者の知るゲッコウガとは少々違う気がするのだが………、まあ、いい。貴公は何者だ)」

 

 何者、か………。ハチマンというトレーナーの………ポケモンとでも言うしかないな。

 

「(だねー)」

 

 よく人間どもはオレたちのことを友達だとか言うが、オレとハチマンの関係が友かと言えば、それは違う。強いて言えば主人と使用人。トレーナーとポケモン。

 だが、ただの契約上の関係かと問われれば、またそれも否。オレはあいつ以上にオレを使いこなす人間はいないと思っているし、あいつもオレのことを認めてくれている。受け入れてもくれた。恩義あると言ってもいい。そんな関係性だ。

 

「(ん? そっちのは………ヒトツキであるか? 貴公もそのハチマンとやらのポケモンなのか?)」

「(ちがうよー。俺はこいつの仲間ー。ハチマンってトレーナーには会ったこともないよー)」

「(なぬ? それは真か? いやしかし、それではどういうことなのだ………)」

 

 オレとヒトツキはオレがボールに収めたって関係よ。

 

「(………それはつまり、トレーナーとポケモン………)」

 

 そういうことだな。

 

「(ふっ、貴公は不思議な男であるな。………うむ、ここは一つ手合わせできないだろうか。ますます貴公という男を知りたくなった)」

「(どうするー?)」

 

 いいんじゃねぇか。

 ただし、オレは武器の一つとしてヒトツキも使うがな。

 

「(うむ、拙者としてもそちらの方が貴公を知れる気がする)」

 

 二対一になるようなもんなのに、気前いいな。

 

「(では、参るっ!)」

 

 一瞬で消えたか。こうそくいどうか?

 

「(後ろがガラ空きであるぞ)」

 

 つまり、後ろか。

 みずのはどうで水のベールを作ってしまえばいい。

 

「(ぬぅ、やはり効かぬか。ならばこれはどうであるかなっ!)」

 

 スピードスターだったか。

 んで、次はかけぶんしんね。

 

「(ヒトツキ、せいなるつるぎ。薙ぎ払うぞ)」

「(はいよー)」

 

 剣先が三倍に伸びたヒトツキを一回転させ、影のアギルダーを消し去っていく。

 

「(よもや一瞬とは。ならばここからの攻撃は如何かな?)」

 

 速いっ……………。

 取とりあえず、防壁だ!

 ………これは、むしのさざめきか。

 

「(ヒトツキ、つばめがえし)」

 

 ヒトツキに斬りつけられ、さざめきも消えたため、ついでにオレも追撃として白い手刀で斬りつけた。

 

「(ぐああっ!?)」

 

 無駄に素早いためすぐ懐にも入って来れるんだな。

 

「(な、なるほど、確かに貴公はゲッコウガであるようだ。しかし、さすがにタダでは還してくれぬ。こちらも痛手を負った)」

 

 その割には嬉しそう、というか何かまだ隠しているような顔をしている。油断はできない。

 

「(ふっ、ありがたく頂戴する)」

 

 ぐああああああッッッ?!

 こ、これは、ギガドレイン、かッ!?

 

「(ヒ、ヒトツキ、オレを斬れ)」

「(いいのか………?)」

「(いいから早くっ)」

「(はいよー)」

 

 痛い。

 だが、これで吸い取られなくなった。

 

「(ヒトツキ、本気でいっていいか?)」

「(いいんじゃなーい)」

 

 ヒトツキの了承も取れた。

 まずはこうそくいどうで素早くなったアギルダーをどう捉えるかだな。

 ………影を増やして、攻撃してくか。

 

「(ぬぅ?!)」

 

 かけぶんしん。

 からの影の中に潜る。かげうちだ。

 

「(全てが消えたっ?!)」

 

 アギルダーはむしタイプ。

 つばめがえしやオレのめざめるパワーが効くがアギルダーに近づかなければならない。

 それよりもハイドロカノンを全方位から撃った方がアギルダーの心理を揺さぶれそうだ。そうなれば近づくことも容易いだろう。

 

「(そこかっ!)」

 

 おっと、気づかれた。

 まだ、姿を見せてないのだが………。直感か、何か仕掛けていたか。

 だが、温い。みずしゅりけんで牽制してきたが、それはオレの十八番だ。軌道も何もかもを熟知している。だがら、撃ち消せる。

 ハイドロカノン!

 

「(ッ!?)」

 

 今の内にアギルダーの懐へ。ハイドロカノンで倒れていればいいが、奴の素早さを考えると…………。

 

「(やはりな)」

 

 これははかいこうせんか。

 防壁でガードしながら近づくしかないな。オレの影が。

 

「(これで終わりである!)」

 

 むしのさざめきか。

 アギルダーの十八番はこの技なのかもしれない。

 

「(なぬっ?! 影………だとっ!?)」

 

 驚きとともにさざめきも止んだ。

 そこに背後からアギルダーの首筋にヒトツキを充てがう。

 

「(オレの勝ちだな)」

「(…………参った。拙者の負けである)」

 

 両手を挙げて降参の意思表示。

 いや、二対一だしな。

 これで勝たれても困るというものだ。

 

「(…………お前、一人身か)」

 

 ヒトツキを収めて、アギルダーに問いかける。

 

「(であるが………)」

「(なら、オレの仲間にならないか。お前のその速さ、勘の良さ。オレは欲しい)」

 

 近い内、ハチに何か起きるのは確実だ。オレがこうしてハチから離れているのも、何か思惑があってのことかもしれない。そうでなくともこの自由な状況。活かさない理由がない。

 その一つとして、オレ自身に新たな仲間を作ることだ。ハチとリザードンがああなっている以上、オレがどうにかする必要も出てくるはず。

 そんな中、仲間になってくれたのがヒトツキとキリキザンだ。ヒトツキはオレの武器としても使いたいと話しても二つ返事で了承。キリキザンはバトルし、オレを認めてくれた。

 そしてこのアギルダー。速さという最高の武器を持っている。オレと組んで、まだ見ぬ敵を翻弄させることもできるかもしれない。

 

「(一つ、良いか?)」

「(ああ)」

「(先の影に隠れた貴公を見つけたのは心の目で見たからである)」

「(それがどうした。心の目で見れるなら、それに越したことはないだろ)」

 

 勘じゃなくとも分かればいいんだよ。

 

「(そう言ってくれるのは貴公が初めてである。拙者と同じ他のアギルダーたちからはよく卑怯だと言われていた。………良かろう。拙者、これより貴公の手となり脚となろう)」

「(恩に着る)」

 

 オレが空のボールを差し出すとアギルダーは自らボールの開閉スイッチを押した。

 後はもう一人くらい仲間にしたいところだ。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

「(お兄、起きて。起きなさいっ!)」

 

 何だよ、朝っぱらから。

 揺らすなっ。

 

「(この女、何なのっ?!)」

 

 女………?

 昨日、誰か連れて帰ってたっけ?

 

「(………♪)」

 

 ……………昨夜のハクリューか。

 ……………ハクリュー、だと?

 

「(何故お前がここにいる)」

 

 思わず飛び起きてしまった。

 もう眠気なんかさっぱり吹き飛んでいる。

 え、なに、何を企んでんだ?

 

「(………♪)」

 

 一向に返事は返ってこない。ただ笑顔が向けられているだけ。

 会話ができないわけではあるまい。昨夜はオレに話しかけてきていた。

 となると、一体何を考えているんだ………?

 

「みゅー」

 

 おい、こら。いきなりすり寄ってくるな。

 なんなんだ、こいつ。

 まさか、ハチマンの惹きつけ力がオレにも移ったとか…………?

 ありえなくもない話だ。

 

「(お兄ちゃん?)」

 

 げっ、マフォクシーのもうかが発動してやがる。

 

「みゅーみゅー」

 

 ちょ、小娘から拝借したオレの空のボールをいじるんじゃ………。

 

「(うそっ?!)」

 

 マジか………。

 ハクリューのやつ、開閉スイッチを自分で押しやがった。

 

「(………魔性の女が仲間に………)」

 

 すまん、ヒトツキ。許せ………。

 

「マフォクシー、ゲッコウガ起こしてくれたー?」

「フォック」

「うん、それじゃ今日も張り切っていこーっ!」

 

 小娘のお陰で命拾いしたな。

 ……………はあ。

 まさか、こんな形で仲間が増えるとは……………。

 それにしてもさっきから何か違和感を感じるのはオレだけか?

 

「(ま、あまり深く考えても仕方ないか。後はなるようになるだけだ。オレはその時に備えておく以外、できることはないしな)」

「(お兄ーっ、今日もあいつのとこにいくよーっ!)」

 

 全く、うちの妹はよく分からん。

 怒ったかと思えば、普通に接してくる。

 ま、ハチの周りもそんなんばっかだったけどな。

 クワバラクワバラ。

 




〜お知らせ〜

番外編『忠犬ハチ公 ハチマン』を連載中です。
本編に合わせて更新していきます。
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