カロスポケモン協会理事 ハチマン   作:八橋夏目

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35話

「これは………」

 

 病院の外に出ると外は酷い惨状となっていた。

 建物は半壊し、黒煙が上がっているところもある。

 そして夜空にはデオキシスの大群がいた。

 

「………デオキシスってのが攻めて来たし」

 

 やはりそういうことか。

 俺が眠っている間にもネオ・フレア団は粛々と計画を進めているようだ。

 

「状況は?」

「分かんないし。あーしも窓から外を見て知っただけだから。それとニュース」

「そうか」

 

 取り敢えず、ミアレの現状を把握していこう。

 こんな状況だ。誰かしらは知り合いが残っているはず。

 

「バシャーモ、ブレイブバード!」

 

 あ、ヒラツカ先生だ。

 この病院の防衛をしているみたいだな。

 つーか、ほんとやべぇなこれ。

 

「先生!」

「ミウラ………にヒキガヤ。目を覚ましたのだな」

 

 ミウラが先生に声を掛けるとこちらに振り向き、俺たちを認識した。俺が立っていることに肩を落としているところを見ると、結構心配させてしまったらしい。

 

「ええ、まあ。状況があまり飲み込めてないですけど」

「そうか。エルレイド!」

 

 俺がそう言うと先生はエルレイドを呼んだ。

 すると上空から降ってきて、シュタッと着地した。

 うん、かっこいい。

 

「レイ」

「今、ユキノシタを中心に日時計に集まっている。デオキシスがこうして彷徨っているのを見ると、まだ奴らの手に落ちていないと思われるが、一刻の猶予もないのは確かだ」

 

 つまり、俺が寝ている間にユキノが動いたということか。

 そういやゲッコウガたちはどうしているのだろうか。あいつのことだから動いているとは思うが。

 

「エルレイド、ヒキガヤたちを日時計へテレポートで連れて行ってくれ」

「レイ!」

「はっ? ちょ、そりゃマズいんじゃ………」

「大丈夫だ。エルレイドはお前たちを連れていくだけだ。さっきユイガハマたちも連れて行っている。………ここは私たちに任せろ」

「………大丈夫なんですか?」

「私を護られる存在だけにしてくれるな。私も大人だ。たまには君の背中を護らせろ」

「ヒキオ、今は先生の言う通りにするし」

「………分かった」

 

 仕方ない。今は先生に甘えることにしよう。

 どうせ俺がこっちの状況を聞いたとしても先生は俺を強制的にでも日時計へと連れていくだろうし。

 

「んじゃ、行ってきます」

「ああ、行って来い! そして必ず帰って来い!」

「うす」

 

 先生がそう言って拳を突き出してきたので、俺も拳を重ねて返した。

 そしてエルレイドが俺たちの肩に手を置くと一瞬で景色が変わった。

 

「ここは………」

 

 辺りを見渡すと割と近くに日時計が見えた。

 建物があるのを見ると、ここはヒャッコクシティなのだろう。

 

「ヒキオ、あれ………」

 

 ミウラが指差す方を見ると所々で火災が発生していた。戦いが随分と長引いているようだ。

 

「………20時前か」

 

 最終兵器起動後、20時から21時の間、日時計から謎の光が出るようになったと博士から報告を受けたことがある。それに反応するかのようにキーストーンとメガストーンも光り、共鳴しているようだと。だが、今回はそれだけじゃないらしい。日時計は元々宇宙から来た物と言われている。そこにデオキシスの登場だ。関係ないとは言えないだろう。しかもこの謎の光を発する時間帯。何が起こるか分かったもんじゃない。

 

「時間なんか気にしてどしたん?」

「いや、リミットまで数分しかないなと思ってな」

「………知ってたんだ」

「ああ、これでもカロスの長なんでな」

「………なら早く行くし」

「そうだな」

 

 エルレイドに礼を言って見送った後。取り敢えず日時計に向けて走り始めた。

 既に避難指示は出されていたのだろう。今更逃げ惑う者は全く見当たらなかった。しかし逃げる所なんてあったのだろうか。ここもミアレシティと同じく夜空はデオキシスで埋め尽くされている。カロスは今謎の侵略者により攻撃されていますって言っても普通に受け入れられるレベルだな。

 

「ポケモンで行かないの?」

「なあ、こっちに向かったのが誰か分かるか?」

「え? ………確か、ユキノシタとあいつの姉貴、それからユイとシロメグリ先輩、それにあの太いのに加わる感じでハヤトが………。あ、アンタの妹とスクールの子も行ったっけ。それとチャンピオンとシャラジムのジムリーダー、あとロケット団だったはずだし」

 

 太いのとはザイモクザのことだろうか。

 となると、ここにイロハが加わって計14人か。いやロケット団を数に入れるべきではないな。先生ズとオリモトたち育て屋がミアレに残ったと見ていいだろう。

 多勢に無勢とは中々厳しい戦況だな。一つ救いなのがネオ・フレア団の下っ端が雑魚ってことか。

 

「そうか。戦力としてはあるが、それはネオ・フレア団だけに対してってだけだな」

「なら尚更早く行くし」

「いや、確かにポケモンに頼った方が速い。だが状況も分からないまま突っ走るのも得策とは言えない。割り込む初手は慎重に行った方がいい」

「………みんなやられるし」

「そうだな。現にユキノが一回やられてる。猶予はないな」

「だったら!」

「大丈夫だ。あいつらを信じろ」

 

 大丈夫だなんて保証はどこにもない。

 だが、あいつらは俺を寝かせてまで行ったんだ。だったらその行動力と判断を信じてやるしかないだろ。

 

「………変わったね」

「まあな。自覚はある」

 

 昔の俺からは全く想像できない思考回路であるな。

 でもまあ、悪くはない。

 

「ロケット団のボスから話は聞いたし。アンタ、以前ほど全力出せないんでしょ」

「………あいつが話したのか? まあ、奴の言う通りだ。俺のリザードンは元々ロケット団の研究の被験体。普通のリザードンとは色々と違う。そしてそれを飼い馴らす俺もな。ただ、サカキがこっちに来てからちょっかい出されて、今まで安定していた俺たちのパワーバランスを崩された。恐らく今回の事を察知したサカキによる戦力の強化なんだろうが、急すぎて俺もリザードンも自分たちの力を制御できないでいる」

「………………」

「けどまあ、そんなこと言ってられるような状況でもない。やるしかないんだよ」

「………大丈夫なん?」

「それはやってみないと分からないが………ダークライが力をくれたんだ。できるはずだ」

 

 やべぇ、走りながら喋ってたから息が上がってきた。これならリザードンに…………いや、それはリスクが高いんだったな。

 今の俺たちの武器は本来ここにいないということ。ネオ・フレア団にとっては想定外の奇襲を起こせる要員だ。それをみすみす逃すほど戦況は芳しくない。

 

「………見えて来たな」

「ヒキオ、あーしはどう動くし」

「ミウラは………因みに誰連れて来た?」

「ギャラドス、ミロカロス、ジャローダ、ハンテール、サクラビス、ハクリュー」

 

 以前と同じか。

 

「なら、あいつらの近くで待機しててくれ。ピンチだと思ったら割って入っていい。その後はひたすら防御に徹しろ」

「分かったし」

 

 防御に於いても突然現れればそれだけで戦況が変わる。最初からいるよりも精神的攻撃力が高い。

 

「ヒキオは?」

「奴らの相手をしてくる」

「………死ぬなし」

「当たり前だ」

 

 俺はミウラと別れて飛翔。空から戦況の確認に移った。

 

「日時計を囲むようにして防戦一方か。まあ、あれだけのデオキシスの影とちょっかいを出してくるネオ・フレア団のせいで攻撃には転じ得ないわな」

 

 どうやらあいつらは日時計を取り囲むように陣形を作っている。デオキシスを日時計に近づけさせまいということなのだろう。そこにネオ・フレア団の下っ端どもがちょっかいをかけて邪魔をしている。

 そして少し離れたところではサカキとマチスとナツメがクセロシキたちネオ・フレア団本陣と対峙しているようだ。

 悪に対して悪を向けたあたり、ユキノシタ姉妹の戦略だろうな。

 デオキシスを相手取る前にまずはあの邪魔なネオ・フレア団の排除が先だな。

 

「っ!?」

 

 あれはユキノか?!

 それにユイも!?

 

「………まだ目を覚ましていないのか。んで、ユイはユキノが死んだままと思い側にいる。そんなところだろうな」

 

 日時計の影に隠れるように二人の少女がいた。一人は横たわり、一人は覆い被さり泣きじゃくっている。そして、二人のポケモンたちーーオーダイル、ボーマンダ、ユキメノコ、ブリガロン、ルカリオ、ウインディーーが何とかそこに攻撃が流れていかないように防御に徹していた。当然ユキノのポケモンは誰一人メガシンカしていない。ルカリオがメガシンカしているがトレーナーからの指示はないため、戦略も何もない状態だ。一応はオーダイルが指揮を取ってはいるものの長年の勘と予測だけで動いているのだろう。

 

「あーもー、しつこ過ぎ!」

 

 この声はイロハか。

 そういやイロハがいるってことはアイツもいるんだよな。

 

「ボルケニオン、スチームバースト!」

 

 ん?

 ボルケニオン?

 誰………?

 声のする方を探すと見たことのない紅いポケモンがいた。その横でイロハが指示を出している。見たことのないポケモンだし、あれがボルケニオンとやらなのだろう。あいつ何気に新種? のポケモン捕まえたのかよ。

 

「メタグロス、バンギラス! はかいこうせん!」

「エンペルト、アクアジェット!」

 

 あっちにはハルノとメグリ先輩か。

 

「サーナイト、リフレクター!」

 

 これはチャンピオンだろう。

 

「エンテイ、だいもんじ! スイクン、ハイドロポンプ!」

 

 はっ?

 エンテイ?

 …………あ、ボールの中空っぽだ。

 誰だよ、連れてった奴。ルミルミか? まあ、いいんだけどさ。書き置きくらい欲しかったわ。

 

「リザ、かえんほうしゃ!」

 

 あ、本当にハヤマもいるわ。

 

「スピアー、ダブルニードル」

「くっ、お前たち! さっさと攻撃するのだゾ!」

 

 こっちはサカキのポケモンたちにネオ・フレア団が縮こまっちゃってるよ。

 動こうともがいているのを見るとナツメの見えない空間に閉じ込められているのかもしれない。

 

『アギルダー、むしのさざめき!』

 

 あ、いた。ゲッコウガは遊撃か。ほんとに指示出してるし。しかも自分も戦っているというハイブリット型。超次世代型ポケモントレーナーの姿はああなのかね。人間とは何なんだろうな。悲しい。

 

「クセロシキ! 出し惜しみしてる場合じゃないわよ!」

「分かってるんだゾ!

 

 ま、あっちはゲッコウガが何とか耐えてくれるだろう。

 それよりもまずはネオ・フレア団だな。

 何か仕掛けてくるみたいだ。

 一気に攻め込める方を叩き潰してしまうか。

 

「お前たち! 用意は出来ているか!」

「はい、クセロシキ様!」

「いつでも発射可能です!」

「うむ! ワタシの合図であの虫ケラどもに放つのだッ!」

「「はっ!」」

 

 奴らが陣取る所の奥に何やら巨大な砲撃装置がある。恐らくそこから何かぎ放たれるのだろう。ならばまずはあの装置から破壊だな。

 サカキがあいつらの意識を集めているため、移動も楽だ。多分、あの男からは俺の姿が見えているんだろうな。

 

「カラマネロ、さいみんじゅつだゾ!」

 

 撃つタイミングを計っているのか、時間を稼ごうとしているようだ。となると乱射するようなものではないって可能性が高いな。

 

「躱せ」

 

 まあ、スピアーのスピードに追いついてないが。メガシンカしたスピアーのスピードはチートだから仕方ない。

 さて、取り敢えずあの砲撃台は無力化しておくか。構造設計は知らないが出口が丸見えだからやりようはある。

 俺は黒いオーラを放射口に流していく。

 

「放て!」

 

 するとすぐさま合図が出された。

 だが、何も起こらない。

 否、何も起こらないのではない。起きているが何も出てこないだけである。

 

「おい、お前たち! さっさとやるのだ!」

「く、クセロシキ様! 大変です! 作動しているはずなのに放射しません!」

「ぬぅ、貸せ! ワタシがやる!」

 

 クセロシキが下っ端を退かせ、放射設定をいじり始めた。

 

「くそぅ、何故だ! 何故動かぬのだッ!」

 

 色々やったのだろうが全くの無反応。

 数値上異常がないことがさらに奴を混乱させていた。

 

「へっ、今のうちだぜっ。エレキブル、かみなり!」

「フーディン、サイコキネシス!」

 

 そんなこんなしてるうちにマチスとナツメが女幹部どもを鎮圧していっている。あとは砲撃台に群がる下っ端とこのゾーさんだけである。

 そろそろ出ていくか。

 

「ジュカイン、くさむすびで縛っておけ。ヘルガー、そいつらが妙な動きをしたら焼いていいからな」

 

 ボールからジュカインとヘルガーを出し、ジュカインには拘束、ヘルガーには見張りの役を与える。

 

「フン」

 

 そして、黒いオーラで砲撃台を真っ二つに破壊した。爆発するかとも思っていたが、どうやらその心配はないらしい。ちゃんとあっちの世界に送り込めていたようだ。

 

「こ、今度は一体何なんだゾ!」

 

 いきなり砲撃台が破壊されたことで喚くクセロシキ。いい加減うざったくなってきたな。

 

「ピーピー吠えてんじゃねぇよ、うるせぇな」

 

 ようやく何が起きたのか理解したらしい。

 俺の声に反応するようにこちらを見てくる。

 女幹部どもは無事拘束できたみたいだな。

 

「………キ、貴様ッ!」

「なあ、クセロシキ。フラダリに遠く及ばない三下風情が見栄張ってんじゃねぇよ」

 

 今の俺は奴からすると急に出てきたラスボスくらいはあるだろう。悪の先駆者であるサカキですら可愛く思える程の。

だって、禍々しく俺の周りには黒いオーラが漂ってるんだからな。俺だったら腰抜かして漏らすくらいはあるぞ。

 

「俺の大事なもんに手出したんだ。当然、分かってんだろうな」

 

 ゆらりゆらりと近づき、遂には奴の首根っこを掴んでやった。横にデカイこいつも今の俺なら余裕で持ち上げられるらしい。

 

「ぐぬぬ」

「なんだ苦しいのか? もっと苦しめよ。テメェらの行いが罪のない人間やポケモンたちを苦しめてんだぞ。今のテメェの何十倍もな」

「く、クセロシキ様!?」

「おっと動くなよ、下っ端ども。動いたら…………首が飛ぶと思え」

 

 手足をジタバタさせてもがくクセロシキを助けようと下っ端数人がポケモンを出そうとしたようだが、それをひと睨み効かせて封じた。これくらいで動けないのならば所詮は雑魚中の雑魚だ。

 

「んじゃま取り敢えず」

 

 いい加減息も出来なくなって来たようだし、上に投げ束の間の呼吸時間を返した。

 

「歯食いしばれよ悪党!」

 

 そして降ってくるクセロシキの腹に目掛けて拳を叩き込んだ。

 

「ぐぼぁっ?!」

 

 普段の俺では到底出せない力なため三回もバウンドしていった。

 恐らく気絶しているだろう。

 

「なあ、サカキ。結局テメェの狙いは何なんだ?」

「このオレ様が答えるとでも?」

「答えないのなら俺の憶測だけが正しい答えとなるだが?」

「フン、好きにしろ」

 

 やはり取り合う気はないか。

 まあ、俺を殺す気があればとっくにやっているだろうしな。

 となると、やはり俺とリザードンのあの力を見届けるつもりなのだろう。

 何度も暴走して堪るかってんだ。

 

「マチス、ナツメ。お前らはどこまで知ってる」

「あん? 少なくともお前よりは知ってるぜっ!」

「そうね。あなたよりは詳しいわ」

 

 …………ということはリザードンが実際にどんな実験をさせられていたのかや、俺が何故この実験の被験者になったのかも知ってるってわけだ。

 

「あっそ。ならお前らも同罪だな」

「あら、ヤル気かしら?」

「はっ、冗談だろ? 今のお前らを捕まえたところでジムリーダーを任命している協会に揉み消されるのがオチだ。いくら俺が会長の懐刀だろうがカロスの会長だろうが、多勢に無勢。数で勝てるわけがない。なら、揉み消しようのない証拠がないまでは首に刃を当てた状態で放っておくっつの」

「フン、お前の刃など痛くも痒くもない」

「ほう、そいつはどうかな。確かシルバーだったか? 図鑑所有者の。あいつお前の息子だろ? あいつを人質に取っちまえばいいだけの話だ」

「ッ?! 貴様、余程死にたいようだな」

「ふひっ、大分痛かったみたいだな。なるほど、シルバーが弱点と。本人に確認出来てよかったわ」

「スピアー、殺れ」

「おっと動くなよ? 今の俺はお前が知ってる俺じゃない。何なら俺すら知らない俺まである」

「どういう意味だ」

「こういう意味だ!」

 

 黒いオーラを走らせ、スピアーを襲う。

 

「ッ!? スピアー、躱せ!」

 

 もちろん警戒して来ていたが既に四方を取り囲んでいるため行き場を失っている。

 

「無理だ。既に四方を取り囲んでいる。スピードで躱せるわけねぇだろ」

 

 そのまま黒いオーラでスピアーを覆い、新たにさいみんじゅつを施した。

 イメージだけで出来ちゃう今の身体は超チート過ぎると思う。

 

「んじゃま、スピアー。サカキにダブルニードル」

 

 堕ちたスピアーはサカキへと襲いかかった。

 

「くっ」

 

 だが、ニドキングが割り込みサカキを守った。

 

「ハチマン、テメェ!」

「別に驚くことじゃないだろ。俺のポケモンはリザードンだけじゃない。あの黒いのだって何だかんだの付き合いだ。なら、こんな芸当が出来てもおかしくはないだろ」

 

 マチスが威嚇して来たため、事実を言ってやった。

 

「それに、俺がいつお前らに攻撃しないと言った?」

「ふざけるなっ! テメェは首領の恩も忘れてっ! それにテメェの女はテメェが俺たちを利用してるだけだって!」

「恩? ………ああ、この身体のことか? まあ確かに。お前らロケット団に弄られなきゃ、リザードンの力に呑まれてただろうな。けどな、それ今と一緒だと思うんだが? スピアーに何か盛られてからリザードンは暴走し始めた。俺も制御出来ない。結局最初に戻ってるだけじゃねぇか。ならそもそもの話、お前らロケット団がリザードンを、ポケモンたちを実験道具にしなけりゃ、俺がサカキに攻撃することもないはずだ」

 

 サカキに恩とかあるわけないだろ。

 あるとすればリザードンーーヒトカゲと出会いユキノたちに意識され今がある。それだけだ。だが、それをサカキのおかげだとは思っていない。多分、リザードンでなくともバトル大会に出てオーダイルの暴走を止めているし、そいつだけでポケモンリーグに恩挑んだだろう。中身が違ったとしても結果は同じような人生を歩むはずだ。所詮俺の人生の主人公は俺なんだし。人が変わらなければ結果も変わらないだろう。

 

「それに、ユキノか誰かが何か言ったんだろうが、俺はお前たちを野放しにする気もないし、許すつもりもない。言ったはずだぞ? 『今のお前たち』を捕まえる気はないと。今はまだ利用しているだけだ。何か間違ってるか?」

「くっ………」

 

 悪党に正論を突きつけてしまえば言い返す言葉なんてあるわけないだろう。

 

「やめろマチス。お前ではこいつの口には勝てん」

 

 サカキですらそれを自覚している。脳筋ってのは面倒だ。

 

「あなた、口が達者なのね」

「そう見えるなら眼球を取り替えるくらいはすることだな。俺が口達者とか、世も末だわ」

「あら、褒めているのに。素直に受け取りなさい」

「断る。エスパー使いは性格悪いって相場が決まってんだ。アンタの言葉にいちいち喜ばねぇし、嬉しくもねぇ」

 

 ほんとこの女は怖い。

 本物の超能力者なのだ。いつ俺を操ってくるか分からないのに、隙なんか見せられるはずがないだろ。

 

「ッ?!」

 

 な、何だこの光はっ!?

 

「な、なに?!」

「ま、眩しいっ!?」

 

 突如、背後に巨大な光を感じた。

 そして俺も光ってる。

 ………キーストーンか。となると俺だけでなくリザードンたちメガストーンを持つポケモンたちも光っているってわけだな。

 つまりこの巨大な光は日時計のもの。

 

「チッ、タイムオーバーか」

「………始まるようだな」

 

 どうやら間に合わなかったみたいだ。

 ロケット団に油を売っていたせいだな。

 だが牽制しておかなければ邪魔される可能性が高い。そして暴走確定。ただでさえ暴走する可能性が高いってのに、これ以上確率を上げるのは選択肢にはなかった。

 人によってはどうせ暴走するんだから邪魔されても変わらないだろうと思うかもしれないが、そのどうせってのが命取りになるのだ。

 

「………こかき」

 

 デオキシスの様子を伺っていると、異変が始まった。

 

「けきここきかかくけかききくかここけきかくくけけこかきッ!!」

 

 デオキシスの本体だと思われる奴が奇声を上げ、天を仰ぎ出した。日時計からのエネルギーを取り込んでいるように見えるのは見間違いではないだろう。

 

「こここかかきけけきかけくくけけこかきかかかッッ!!!」」」」

 

 そしてそれは影の方にも伝播していく。奇声の不協和音が俺たちの危機感を煽ってきた。心拍は早くなり、胸が痛い。鼓動がうるさいくらいに聞こえてきている。もしかしなくても緊張しているのか?

 

「………な、なにこれ………」

「こ、こんなの聞いて…………な…………」

 

 突然のことにユイは絶句、イロハも流石にビビっている声が聞こえてきた。

 

「ッ?! ジュカインッ!」

『全員伏せろ!』

 

 ふと、奇妙な遠吠えは何の前触れもなく消えた。

 そして一閃が背後から俺の顔の横を通過した。

 咄嗟にゲッコウガが指示を出したことで訳が分からないまま全員言われた動きを見せる。

 俺は止まった脚を殴りつけて一気に駆け出し、日時計の方へと向かった。横にはジュカインもいる。

 …………今の俺ジュカインと同速かよ。

 

「は、ハヤマ先輩?!」

「ユイさん!? ユキノさん?!」

 

 どうやらハヤマとユイとユキノが狙われたようだ。

 くそっ、ハヤマはともかくユイとユキノはやらせんぞ!

 

「ハヤトォォォッ!」

「間に合え!」

 

 俺は二人に向かっている一閃を見つけ、間に身体を割り込ませた。俺に触れた瞬間、一閃は消えていく。

 これは………無効タイプに起こる現象。つまり俺は今エスパータイプの技であるサイコブーストを無効化出来るあくタイプのポケモン同等ってわけか。

 

「キィナァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 げっ、このタイミングで出てくるのかよ。まだデオキシスすら倒してないってのに。

 

「………あれ………? 生き、てる………?」

「お前らを死なせるわけねぇだろ」

「ハッチー!!」

「ったく、メガシンカエネルギー同等の力を取り込んでサイコブーストの乱射とかチート過ぎるだろ。おかげで街が壊滅的じゃねぇか。この落とし前、どうしてくれんだよ」

 

 街一つぶっ壊しやがって。ミアレも合わせたら二つだぞ。どう責任取ってくれるんだよ。

 

「キィナァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 突然ギラティナが姿を消した。奴の技、シャドーダイブだろう。似たような技にゴーストダイブなんてのがあるが、奴のは威力が格段に違う。文献では魂を持っていかれるとか。誰も検証出来ていないが、今後も試されることなんてあるわけがない。俺だって勘弁だ。死ぬ気はない。

 

「…………っ」

 

 これはマズい。

 今のデオキシスの攻撃で多数が戦闘不能になっている。

 

「動ける奴はこっち来い。無理な奴は自分のトレーナーを安全なところまで避難させろ!」

 

 俺が指示を出すと真っ先にオーダイルがやって来た。

 うん、来ると思ってたよ。

 

「オダッ!」

「またお前の力も借りるぞ」

 

 挨拶代わりにオーダイルと拳を重ねていると次々とポケモンたちが集まって来た。

 ユキノのポケモンからはオーダイル、ユキメノコ、マニューラ。クレセリアがいなくなったため、メガシンカ可能な二体が残ったようだ。

 ユイのポケモンからはルカリオ、グラエナ。後はユキノのポケモンたちと避難中。

 コマチのポケモンからはニャオニクス。既にカビゴンとプテラとオノンドは戦闘不能のようだ。

 ルミのポケモンからはスイクン、エンテイ、金色のチルタリス………色違いとかよく捕まえたな。………他は避難のサポートか。

 ハヤマのポケモンからはリザードン、カイリュー。他の奴はハヤマを守って負傷したようだ。

 イロハとザイモクザのポケモンは来てないが、あいつらはトレーナー自身が動くらしい。ザイモクザは何だかんだ経験あるし、イロハにはあいつがついている。勝手に動いてもらおう。

 あと当然のように、ハルノとメグリ先輩も動けている。ベテラン組はしぶといな。

 それと誰のか知らないサーナイトともう一体、ルカリオがいた。

 

「誰のだ?」

「あ、あたしの………だよ。あと………カルネさん」

「コルニ………」

 

 そうか、こいつも来てたんだったな。

 サーナイトはチャンピオンのか。いいのかよ。つか、まさかもうやられたのか?

 

「あたしもやる」

「や、そんな身体で無理なんか「無理なんかじゃない!」………」

 

 傷だらけの身体で肩で息しているため休ませようとしたが、俺の言葉を遮って強く言い放った。

 

「………あの時みたいに動けないなんて絶対やだ!」

 

 あの時とは先のフレア団事件でのことだろう。一度フレア団にやられ意識を失い、目を覚ました時には既に終わっていた。あれが相当悔しかったらしい。

 

「分かった。なら、俺の後ろは任せた」

「うん! ならサーナイト借りてくよ!」

 

 頭を撫でると機嫌良く答えた。やられた借りは返さないとな。その気持ちすげぇ分かるぞ。

 だが、無理はするなよ。

 

「リザードン、カイリュー、それにチルタリス。サブレとカマクラとマニューラを乗せてデオキシスの気を引け! エンテイ、スイクン。先にデオキシスを片付ける。それまでギラティナを足止めしておいてくれ。オーダイル、ユキメノコ、ルカリオ。お前らは俺と来い!」

 

 時間がないため早口で命令を出したが各々役目を理解してくれたようだ。

 

「………ッ!?」

 

 ゾワリと悪寒がした。

 

「エンテイ、スイクン! 俺の後ろだ!」

 

 悪魔の攻撃だ。

 見てないが丁度姿を見せたところだろう。

 二体の聖獣は俺の両脇を駆け抜け、ドガンッ! と攻撃をヒットさせた。

 

「ハチマン、ギラティナは私たちが足止めしとくわ!」

「ヒキガヤ君が来るまで何とか保たせてみるから!」

 

 どうやらハルノとメグリ先輩もギラティナについてくれるらしい。

 まあ、聖獣二体で何とか出来るなら最初からしてるしな。デオキシスにかけられる戦略は減るが今更だし。

 

「了解! リザードン、大仕事だ。決着、つけるぞ!」

「シャア!」

 

 リザードンもボールから出した。

 

「暴走のことは考えるな。考えると余計に暴走に向く」

 

 まずはデオキシスだ。奴はメテオ・グランの破片を取り込みフォルムチェンジを自在に操る。攻撃の時はアタックフォルム、防御の時はディフェンスフォルム、逃げる・距離を詰める時はスピードフォルム。

 ………ならばノーマルフォルムは一体何があるのだろうか。

 

「確かめる術はないし、とにかく本体を探さないとな」

 

 疑問を確かめる時間も余力もない。せいぜいフォルムチェンジを考慮して攻撃するしかないだろう。

 

「エーフィ、めいそう! ロトム、でんじは!」

「フライゴン、カブリアス! ドラゴンダイブ!」

 

 あっちは既に再開したようだ。こっちも使える手を全て尽くそう。

 

「飛行隊! りゅうのはどうで注意を引け!」

 

 空には赤と青の竜を模した波導を撃ち出す三体のドラゴンと竜を纏った二体のドラゴンが次々と影を消していく。影だからかディフェンスフォルムに変わっても貫通していった。あれで貫通しなければ本物とみていいだろう。

 

「Z、ジバコイル、ダイノーズ! 斉射!」

「デンリュウ、ヤドキング、ラプラス! こっちもいくよ!」

 

 ヤドキングも来てたか。

 あいつらでんじほうを使う気だな。

 なら利用させてもらおう。

 

「ユキメノコ、あやしいひかりで誘導してこい!」

「メノ!」

 

 準備している間に次の手を打つか。

 

「三体揃ってることだしな。リザードン、まずはメガシンカだ!」

「シャアッ!!」

 

 俺とリザードンの意気込みに応えるように二つの石が共鳴していく。白い光に包まれたリザードンはみるみるうちに姿を変えた。

 

『アギルダー、みずしゅりけん! キリキザン、つじぎり!』

「マフォクシー、マジカルフレイム!」

「エーフィ、ロトム! シャドーボール!」

 

 空ではデオキシスが飛行隊の攻撃を呆気なく躱している。躱したタイミングでアギルダーたちが攻撃を仕掛けるが、それもディフェンスフォルムでガードされ弾き返された。

 だが、それと含めて攻撃を仕掛けているため、隙の出来た追撃体に攻撃しようとアタックフォルムに変わった瞬間に飛行隊が再度攻撃を仕掛けている。

 上手くローテーションで攻撃が出来ているみたいだ。ダメージにはなってないのが痛いところであるが。

 

『来るぞ!』

 

 デオキシスからの攻撃はゲッコウガの合図で躱し、何とか急所を避けている。まあこれも時間の問題だな。

 そんなこんなしている俺たちトレーナーを狙って影の大群を寄越してくるため、一息つく間もない。

 

「ギルガルド、キングシールド!」

「来た! ボルケニオン、スチームバースト!」

「ルカリオ、打ち返せ! バーチカル・スクエア!」

 

 ザイモクザはギルガルド、イロハは紅いポケモン、そして俺はユイのルカリオで攻撃を弾いた。

 

「スイッチ!」

『スイッチ!』

 

 ザイモクザとゲッコウガは合図を送り、防御に徹したポケモンたちの後ろに控える攻撃陣と入れ替えてさせた。

 

「ってーっ!」

「今だよ、レールガン!」

 

 それぞれトレーナーの合図によりレールガンが放射され、フォルムチェンジしきれていないデオキシスの影どもを押し返していく。

 ほぼ反射の要領で向きを変えたので中心の大群まで一直線に反撃が渡った。爆発で見えないが攻撃してくる気配はない。

 ならばここだ!

 

「ジュカイン、ハードプラント! リザードン、ブラストバーン! オーダイル、ハイドロカノン!」

 

 煙が晴れレールガンの連続攻撃で次々と消えていく中、一際デオキシスの塊があった。そこに向けて三位一体の究極技を放つ。

 追撃にデオキシスの対応は…………くそっ、あのままフォルムチェンジに走っていたか。

 

『来る! ヒトツキ、れんぞくぎり!』

 

 影の枚数を重ねることで分厚い壁を作り、貫通しないようにしたみたいだ。

 そして、その背後から新たな影がサイコブーストを放ってくる。

 

「ユキメノコ、ひかりのかべ!」

「エーフィ、超念力!」

「マフォクシー、サイコキネシス!」

 

 それをゲッコウガだかヒトツキだかが斬りつけいなしていった。逸れた弾道は各々の技で動きを抑え、迎撃体制を整えていく。

 

「サカキ様、何かなさいますか?」

「いや、あいつにやらせろ。それよりもこいつらだ」

「へい」

「ギルガルド、キングシールド!」

「ボルケニオン、スチームバースト!」

「ルカリオ、俺が呑み込む! その間に軌道を辿って骨を投げろ! 飛行隊はタイミングを合わせて骨の軌道先に攻撃だ!」

 

 さっきとは変えて、俺が前に出て黒い穴を作り出し特殊光線を呑み込んだ。ルカリオはその後ろで軌道を遡って骨を投げ上げ、飛行隊はそれを辿りりゅうのはどうとはかいこうせんを放った。

 ………おい待て。カマクラにサブレ。お前らいつの間にそんな技覚えやがった。

 

「ハチマン! 後ろ危ない!」

 

 ふぁっ?!

 

「な、ん痛ッ!?」

 

 ハルノの声がしたかと思ったら後ろから強制的に腰を曲げさせられた。

 何事かと顔を上げようとした瞬間、地面に巨大な影が通り過ぎていった。そして突風が巻き起こり、髪が逆立ってしまった。

 これはデオキシスのものではない。というかすげぇデカいドラゴンの姿をしている。つまり………。

 

「キィナァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 ギラティナさんのお通りでした。

 危ねぇな、もっと安全に飛びなさいよ。

 

「………ふぅ……サンキュー、オーダイル。首吹っ飛ぶところだったわ」

 

 頭を押さえる力が弱まったため身体を起こしてみるとオーダイルが横にいた。

 

「オダ」

「Z、ジバコイル、ダイノーズ! 主砲斉射!」

『ヒトツキ、せいなるつるぎ!』

 

 ゲッコウガはすぐに攻撃体制に移ったみたいだな。

 よし、次だ次。

 

「もう一度三位一体の究極技だ」

「カイッ!」

「オダッ!」

「シャアッ!」

 

 ゲッコウガの後を追うように飛行隊も技を繰り出している。

 

『撃ったら離れろ!』

 

 しかもゲッコウガの指示で俺たちの撃つ場所も用意していく始末。やべぇ、あいつ本気でやべぇ。

 

「ってーっ!」

「デンリュウ、ヤドキング、ラプラス、レールガン! ボルケニオン、ハイドロポンプ!」

「撃てっ!」

 

 再度レールガンと三位一体の究極技が影の大群に襲いかかる。先に飛行隊の攻撃で影を消費しているため層は薄い。

 なのだが……………。

 

『まだだ………!』

 

 やはりまだ届かない。手応えとしては徐々に本体に迫っている感じではあるが、そう悠長に事を進めてもいられない。なんたって厄介者は二体いるのだから。

 恐らくあっちもそう長くは保たないはずだ。それまでにデオキシスの方を倒さなければいよいよもって大ピンチだ。ギラティナ戦で俺たちが最初からクライマックス状態になっているのはなんとしても避けたい。もしそうなれば誰も生きて帰られないと思ってもいいくらいだ。

 

「くそっ、イロハ! ザイモクザ! これじゃ切りがない!」

「ならば我が守りに徹する! 攻撃は任せた!」

「はいよ! イロハ! お前はレールガンの準備だ!」

「分かりました! フライゴン、ガブリアス! 誘導お願い!」

 

 とは言ったもののこれまでの流れからみるに今の戦力じゃ決定打がない。何かもう一発協力な技を使わなければ…………。

 いっそリザードンがレシラムになりあおいほのおを放てば或いは…………いや、それはもっと危険だ。こんな考えに至る時点で既に危険だわ。忘れよう。

 ………あれ? ルカリオは?

 

「東海の神、名は阿明、西海の神、名は祝良、南海の神、名は巨乗、北海の神、名は寓強、四海の大神、百鬼を退け凶災を祓う!」

 

 気づいたらルカリオがいなかった。

 え、マジでどこ行った?

 まさかギラティナにやられたのか?

 

「ぬぅ、お前たち耐えるのだ!」

 

 巨大な五芒星がデオキシスの気を引き、集中的に狙って来た。

 そしてそれが防壁だと分かるや否やアタックフォルムへと変わり、攻撃特化で破ろうを総攻撃を仕掛けて来る。

 流石に受け止めるのにも限界があるし、破れるのも時間の問題だろう。

 

「っ、そうだ! マフォクシー、トリックルーム!」

 

 そんな時、イロハが今まさに突っ込んで来ようとする一帯を速度反転の部屋に閉じ込めた。

 これにデオキシスは単調に突っ込んでも意味がないと判断したのか、五芒星の両側から回り込んで俺たちにサイコブーストを放って来た。

 

「先輩! 横からも来ます!」

「分かってる! お前は左をやれ!」

「分かりました! マフォクシー、ブラストバーン! ボルケニオン、ハイドロポンプ!」

 

 俺も黒い穴を作り出し、吸収していく。

 

「すまぬ! あと十秒ほどで破られる!」

 

 五芒星にも限界が来た。

 ならば、破られた瞬間に反撃開始だ。

 

「イロハ! カウンターいくぞ!」

「了解です!」

「3………2………1………ぬぅわっ?!」

 

 ここだ!

 

「ジュカイン、ハードプラント! リザードン、ブラストバーン! オーダイル、ハイドロカノン!」

「デンリュウ、ヤドキング、ラプラス! レールガン! ボルケニオン、オーバーヒート!」

 

 五芒星が破れ、ザイモクザが吹き飛ぶ瞬間に五芒星を狙って三位一体の究極技とレールガンを放った。紅いポケモンはオーバーヒートで電磁砲を押し上げ、テレズマ化させている。

 恐ろしい奴………。

 

「キィナァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 ッ!!

 お前、そこにいたのかよ!

 いつの間に飛び移ってたんだよ。

 

「ルカリオ、これもいけるんだろ! ジ・イクリプス!」

 

 ギラティナがデオキシスの影なんかお構いなしに飛び回っており、その背中に長骨を構えたルカリアがいた。いないと思ったらどうやら先程の攻撃で飛び移っていたようだ。おかげで飛行隊とどういう原理で飛んでいるのか分からないゲッコウガを除けば、一番近い位置にいる。

 だから最大にして最強の技を命令してみた。出来なかったら出来なかっただ。別の技にすればいいだけのこと。

 だがその心配は杞憂に終わり、ルカリオが27連撃の大技を叩き込んでいく。一極集中の攻撃で薄くなった壁がさらに削られ、あと一歩という感じのところまで来た。

 

『スイッチ!』

 

 それを見逃すゲッコウガでもなく、ルカリオが撃ち終わる寸前に割り込み、追撃を加えた。あれは突進系斬撃のダブル・サーキュラーだな。

 …………何でお前もソードスキル使えるんだよ。ユイのルカリオだけじゃねぇのかよ。しかも二刀流とか、片方ヒトツキだよな? もう何でもありだな。

 

『ヒトツキ、ラスターカノン!」

 

 突進系斬撃の後はヒトツキによる鋼の光線が放たれた。薄くなっていた壁をとうとう貫き………。

 

「ッ!?」

 

 見つけた!!

 

「ようやく捉えたぜ、デオキシス!」

「うぇっ!? 先輩?!」

 

 奴を見つけた瞬間、黒いオーラを走らせデオキシスを掴み取った。

 何度攻撃を防がれたことだろうか。

 当てたと思えば影だったり、影の数を減らせば動きの制度を上げてくる。その上フォルムチェンジで隙がないし、気づけばまた影が増えている。

 何とも面倒な奴だった。

 

「お前が俺の大事なもんをぶっ壊すってんなら」

 

 でも、それもこれでお終いだ。

 俺は厄介者その1を片付けに黒いオーラで足場を作り、一気に駆け抜けた。

 

「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

 

 どこぞのツンツン頭よろしく、黒いオーラを纏った拳でデオキシスの胸のコアを殴りつける。

 結構勢いもあったため、地面に叩きつけることも出来てしまった。同時に影も一斉に消え、恐らく本体のみしか活動できないところまで追い込めたようだ。

 いくらフォルムチェンジを使えようが、胸のコアだけはどのフォルムでも急所であり、効果抜群でもあったみたいだな。

 

「今だよ、マーブル! ふういん!」

 

 えっ?

 

「………ユイ?」

 

 突如声のした方を見るとコルニの横でユイがブイサインを送って来ていた。

 

「マーブルにスケッチさせたから! これであの技は使えないでしょ!」

「愛してるぜ、ユイ! ジュカイン、くさむすび!」

 

 全く恐れいったよ。

 まさかここでふういんを使ってくるとは。

 随分と成長したじゃねぇか。

 

「ジュカイン、何か変化があるかもしれん。そのままデオキシスを警戒しといてくれ!」

「カイッ!」

 

 草でぐるぐる巻きにされ、十字架の処刑台のようになっているオブジェの警戒をジュカインに託した。

 さて、もう一体の厄介者のところへと行きますか。

 

「リザードン、いくぞ!」

「シャアッ!」

 

 俺は羽ばたいたリザードンの背中に着地し、そのままギラティナの方へと移動した。

 

「ハルノ! メグリ先輩!」

「………ずるいなぁ、君は。いつもいつもお姉さんが来て欲しいって時に来ちゃうんだから」

 

 間に合ったようだな。

 流石にデオキシスとやり合ってる途中で反転世界の王の相手をするのは相当疲弊するようだ。伊達にプレッシャーを放ってないな。

 

「回復したら戻るわ」

「了解」

 

 ハルノたちと入れ替わり、ギラティナの前に立ちはだかる。

 

「よぉ、ギラティナ。半日ぶりだな」

 

 ようやくギラティナへと辿り着くことが出来た。

 さて、第2ラウンドといこうか。




ギラティナ戦まで入れると2話分超えたので分けました。
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