カロスポケモン協会理事 ハチマン   作:八橋夏目

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3話

 さて、今日のやることはすべて終わってしまったわけだが。

 明日からまた忙しくなるんだよなー。

 はあ………、コマチがいないのに何をエネルギーに頑張ればいいのだ………。ハルノさんのせいで精神が磨り減ったってのに回復できないぞ。

 そのハルノさんは俺を堪能したのか、メグリ先輩と出かけてしまった。

 ほんと自由すぎでしょ、あの人。

 

「ハチマン、ホロキャスターが鳴ってるわよ」

「お、ああ、えっと………トツカ!?」

 

 ユキノに促されてホロキャスターを見ると。

 まさかのトツカからのコールである!

 いやっふぅぅぅうううううううううううっっっ!!!

 もうね、その場で立ち上がっちゃうくらいにはテンションマックスになってしまった。

 さすが天使。名前を見ただけで心が浄化されていく。もうこれで明日は頑張れそう。

 

「も、ももももしもし!」

「なぜそんなにテンパってるのかしら」

 

 書類を整理しているユキノがぽつりとツッコミを入れてくるが、今の俺にはどうでもいい。

 全てはトツカのためである。

 

『もしもし、ハチマン? 今大丈夫?』

「大丈夫だ。問題ない。問題があっても問題ない。トツカとの会話が最優先事項だ」

『もう、ハチマンってば。大げさすぎだよ』

 

 はわー、かわええのう。

 さっきのコマチの話じゃないが、画面越しでもトツカはキラキラしている。めっちゃキラキラしてる。

 これが恋というものなのか。

 なんてすばらしいものなんだ。

 

『さっきね、フスベジムを攻略してきたところなんだ』

「ほー、ということはジョウトのバッジは揃ったってことか」

『うん!』

 

 はふぅ、癒される。

 守りたい、この笑顔。

 

「そりゃおめでとさん。次はカントー制覇だな」

『だねー。でもすごく強いんでしょ? 勝てるかなー』

「………どうだろうな。あのイケメンはオーキド博士の孫でじじい曰く、『育てる者』らしいからな。俺も負けた経験があるみたいだし、他のジムリーダーたちとは格が違うと思っておいた方がいいぞ」

 

 顔は覚えている。こっちでの会話も覚えている。だが、残念ながらどういう間柄だったかは覚えていない。不思議な感覚である。記憶がないというのも不便なものだな。

 最近は手帳が手放せない。大いに役立っている。過去の俺、さすがだ。

 

『だ、大丈夫かなー………』

「なに、不安を煽るようなことを言ってるのよ」

「ま、トツカなら勝てる、なんて無責任なことが言えるような相手じゃない。ただ、あいつに勝てた時が初めて自分が強くなったと実感できるんじゃないか? 何度も挑戦してみるといい」

 

 別に一回しか挑戦できないわけじゃないんだし。あのイケメンには何度も挑戦しても毎度何かしら得られるものはあるだろう。

 

『そっかー………、他のみんなは?』

「ついさっき、旅に出た」

 

 行ってしまったのだよ。ついに、とうとう。

 ああ、コマチが恋しい。

 

『ありゃ、ちょっと遅かったか』

「つってもハクダンシティに向かったんだけどな。初心者……もう初心者と言わない方がいいだろうけど、あいつら三人がジム巡りをすることになってな」

 

 だがカロスはまだいい作りをしている。どこに行くにしてもミアレシティを通過することになるのだ。すなわち、たまには顔を見せに来てくれる。はず………だよね? くるよね?

 

『へー、まあ三人なら強くなって帰ってくるよ』

「うかうかしてるとイロハやコマチが急成長してくるからなー」

『ユイガハマさんはそこに入らないんだ………』

 

 入らないというか入ってほしくないというか。

 

「あいつはあいつで成長はしてくるって。ただ、他の二人が早すぎるんだよ。あれが普通だ」

 

 あの年下二人の成長が著しすぎて困る。

 いつ追い抜かれるかひやひやしっぱなし。

 

『なら、そっちに戻った時にでもバトルしてみようかなー』

「いいんじゃないかしら? ユイもジムバッジを集めて帰ってくる頃には独り立ちできるようになっているでしょうし」

 

 書類整理が終わったのか、ぬっと顔を出してきた。ぼそっとツッコミだけは参加してたけど、やっぱり話すのね。

 

『ユキノシタさん、久しぶりだね』

「ええ、久しぶりね」

『残ってるのってユキノシタさんだけ?』

「……そうね、私と姉さんとシロメグリ先輩だけね」

 

 それとヒラツカ先生ね。

 あとは全員で払っているぞ。

 

『あれ? サガミさんたちも?』

「彼女たちはこの男に雇われて開拓しに行っているわ」

『開拓?』

 

 おう、そんなかわいく小首をかしげないでくれたまえ。悶えてしまうだろうが。

 

「ほら、なんだかんだで人が増えちまっただろ? つまりはポケモンの数も増えたわけだ。それにまだまだ新しくゲットしてくる可能性もある。となると世話するのが大変になってくる。疲れるのは嫌だ。なら、一か所にポケモンたちが自由に生活できる環境を作っておいた方が俺たちの手間も省けるだろ?」

『……つまりは育て屋さん……?』

「一般開放してない、会員制のだけどな。しかも野放しという」

「その作業を行っているのがサガミさんとオリモトさんとナカマチさんというわけ」

『へー、結局育て屋さんやるんだね』

「まあな。俺が見るわけでもないし、勝手知ったる奴らばかりだからトレーナーの元へ帰らないなんてことにはならないだろうし」

『サガミさんたちのこと、ちゃんと労ってあげないとだめだよ?』

「そりゃ、まあ、善処する」

 

 労うって言っても、俺が言ったら目ばっかり言ってきそうだしなー。オリモトとか取り合えず何かにウケてるし。あいつの笑いのツボは何なんだろうな。

 

『心配だなー』

「や、だってサガミとか俺が来ても嫌がるだろ。金くれるから引き受けてくれたんだろうし」

『はあ………サガミさんももう少し素直になればいいのに。ハチマン! サガミさんはオリモトさんたちのことよく知らないんでしょ? 勝手知る人がいない中に一人放り込まれたら不安になるんじゃないかなー』

「ああ、そこは大丈夫だろ。なんたって、相手はオリモトだ。半日もあれば距離を縮められてしまう。リア充おそるべし」

「………これが過去に告白された女のアドバンテージなのね。くっ、新しい伏兵が現れたものだわ」

『なんかオリモトさんのことだけよく知ってる感じだね。ちょっと嫉妬しちゃうなー。………ハチマンはオリモトさんのこと好きなの?』

「「ぶっ」」

 

 ぬなななっ、なにを言いだしてんだ!?

 ファッ?!

 

「な、なに言い出すんだよ………」

『だって、告白したんでしょ? 今でも好きなのかなーって』

「あれはただの勘違いだ。思春期特有の思い上がり、いいように解釈してただけだ。だからそもそもそんな感情はない」

「ほっ……」

『よかったね、ユキノシタさん』

「ななななんのことかしらっ?」

 

 安堵しすぎだろ。せめて画面に映らないようにやりなさいよ。

 トツカが意地の悪い顔で俺たちを見てるじゃないか。

 

『まあ、僕はハチマンの周りの人が増えるのはいいことだと思うけどねー。一人で頑張るハチマンもかっこいいけど、みんなに囲われているハチマンも見たいなーって』

「やめておけ。そもそも人選を間違えてるぞ。こいつらに囲まれたら俺はオブジェクトでしかなくなる。身動きなんてとれやしない」

『あはは~、ハチマンも面白いこと言うね~。それだけみんなに慕われてる証だよ』

 

 やだよ、あんなべったり。要するにハルノさんが何人もいるってことだろ? そのうち変なスイッチとか入ったりしたらそれこそ俺の体が危ない。いろんな意味で危ない。

 

「………慕われてる、ねー」

『自覚はあるでしょ?』

「………トツカも人が悪いな。本人がいる前で言わせようとするなよ」

 

 ここに一人いるんですよ?

 面と向かって言うのとか恥ずかしすぎるんですけど。というか言った記憶がまだないし。口に出そうものなら噛むわ、もごもごになるわ、酷いもんだろう。

 もう少し心に余裕が持てるようになったら、その時は、まあ、無きにしも非ず? 的な? 感じだな。

 

『あはは、ごめんね。その反応だけで充分だよ』

「ゴホン! ま、まあ私としてはその続きの言葉を聞いてみたい気もしなくもないけれど。いえ別に全くこれぽっちもそんなことを考えたりはしていないのだけれど。甚だ遺憾ながらわわわ私も長年温めてきた気持ちが爆発し………ゴホン! その、トツカ君にはまだ言ってなかったと思うから知らせておくわ。半年後くらいにカロスでポケモンリーグを開くことにしたわ」

 

 えっ、なんだったの今の長文。

 なんか早口ですげぇこと言ってたような………。

 これはあれだな。言われる方も心に準備が必要だってことだな。イロハがよくいってるし、そういうことなのだろう。

 

『えっ? ポケモンリーグ?』

「知らないかしら?」

『ううん、カントーでも有名な大会だもん。それに僕が集めているバッジを揃えるとその大会の本選に無条件で出られるようになるんだから、当然知ってるよ』

「それをこっちでもやることにした」

 

落ち着きを取り戻して、ユキノの話に加わっていく。

 

『発案者はハチマン、だよね?』

「ええ、この男がこっちでポケモン協会の理事になったことは覚えてるわよね? フレア団によって地に落ちた協会のイメージを回復させるためにもド派手な大会を開くことにしたのよ」

『へぇ、さすがハチマンだね』

「カントーのやり方に則ってるから予選からなら誰でも出られるが、本選には予選を勝ち進むかジムバッジをそろえなければならないルールがある。どうだ? まだ半年以上先のことだからトツカも参加してみないか?」

『そだね。トキワジムを攻略できたらそっちに行くことにするよ』

 

 出ようと思えば誰でも出られる。

 だが、本選に立つにはそれなりの実力がなければ手が届かない。そういう大会だ。

 

「ま、がんばれよ」

『うん! がんばる!』

「トツカ君もどんどんポケモンを捕まえてくるといいわ。こっちで預かるから」

『うん、ありがと! それじゃまたね!』

 

 最後に言葉を交わすと、トツカの方から切れた。

 はあ………、癒された。ものすごく癒された。

 これでしばらくは大丈夫、だろう。

 

「はあ………、あなたはいつも通りね」

「なんだよ」

「顔が気持ち悪いことになっているわ」

「にへらぁ」

「ほんと腹立つ顔ね。そんな顔にはこうよ」

「んぐっ!?」

 

 え、あ、ちょ、息が………息が?

 っっっ!?!

 おおおおい、この子はいったい何やってくれちゃってんの?!

 

「ぷはっ、………ふふっ、さっきよりも酷い顔ね」

「おまっ………、くそっ、見境なくなりやがって」

 

 顔を固定してまで俺の唇を奪わないでくれます?

 さっきとは違うドキドキなんですけど。心臓がうるさい。これでもかってくらいうるさい。

 もうね、ハルノさんの寝起きのキス事件以来、この姉妹は容赦なく狙ってくる。や、別に嫌ってわけじゃないけど、場所というものをね。誰かに見られてたらどうするんだよ。

 

「ごちそうさま」

「………」

 

 憎たらしい笑みを浮かべやがって。舌なめずりするなよ。俺の理性を飛ばす気かっ!?

 

「きゃっ!?」

 

 うん、すでに飛んでたね。

 余裕ぶってるユキノの腕をつかんで手繰り寄せると、思いっきり抱きしめてやった。

 

「ちょ、ちょ、ハチマン!?」

「仕返しだ」

 

 首筋にカプっと。

 血を吸うかのようにかぶりついた。

 

「ひあっ!?」

 

 あ、ちょっとやりすぎたな。

 まあいいか。

 それにしてもこの匂い。ずっと嗅いでいると頭がおかしくなりそうだ。フェロモンぷんぷんじゃねぇか。

 

「……ふぅ、これは結構来るな………」

「あなたって人は………」

 

 さすがにこれ以上は危険だと思ったので解放してやると、案の定口に手を当て顔を真っ赤にしているユキノがいた。

 うん、ご満悦。

 これでちょっとは懲りただろう。

 

「………うわー、首にマーキングされてるー」

「「……………!!」」

 

 やばい、一番いてほしくない人が現れた。

 何が嫌って仲間はずれにすると途端に構ってちゃんになるところだ。一度なるととことん甘えてくるんだよ。もう、やばいくらいべったりと。

 俺の理性はいつも限界にいる。今すでに崩壊したところなんだから危険だ。二人がかりとか俺がチョロインになりそう。

 

「いいなー、私もマーキングされたいなー」

「ッ!?」

 

 ようやく気が付いたユキノが思わず手で首筋を隠した。

 まあ、赤くなってますしね。

 でもその表現はやめてもらおうか。合ってはいるけど、生々しいんだよ。

 

「さて、明日はどうしようか」

「そ、そうね、明日はトツカ君に言われたようにサガミさんたちを労いに行きましょうか」

「だな。トツカに言われたんじゃ行かないとな」

「ぶーぶー、私も混ぜろーっ」

 

 結局。

 この日はユキノシタ姉妹の挟み撃ちにあっていた。

 怖いよ、二人とも。いつからそんなキス魔になったんだよ。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

 翌日。

 メグリ先輩にハルノさんを任せ、ユキノと二人でミアレシティ南東の外れに向かった。何でハルノさんを連れてこないかって? そりゃもちろんサガミが怖がるからだ。

 

「ヒキガヤのバカぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

「ミナミの遠吠え、超ウケる」

「だからウケないって!」

 

 すでに情緒不安定? ってくらいの遠吠え。

 近づいてみるとそこにはすっかり仲良くなってるっぽいサガミたちの姿があった。

 さすがオリモト。ハヤマ並みに距離の詰め方が早い。恐るべきコミュ力。

 

「ゲッコウガ」

 

 まあ、まずはご挨拶。

 人を馬鹿呼ばわりした罰だ。

 影から伸びてきた舌がサガミの首筋を這った。

 

「ひぃっ!?」

 

 ビクンッと身震いを起こすサガミ。一瞬遅れて、その場から距離をとった。振り返りざまに右手は腰のボールに、左手は首筋を抑えている。

 

「メガニウム、はっぱ……! ちょ、ドクロッグ!?」

 

 何故かドクロッグにより腕を押さえつけられ、メガニウムを出すことができないようだ。毎度なんなんだ、あのドクロッグは。勝手に動きすぎだろ。結局ボールに収めてないのか?

 

「ケッ」

「あっれー? ヒキガヤ? どしたの?」

 

 このでかい声はオリモトか。

 なんか一人だけ楽しそうだな。多分、どこにいても割と楽しめてそうな奴だ。

 

「あー、どんな状況かなと」

「ふーん、丁度よかった。ミナミがヒキガヤがいないと寂しいってうるさいんだよ」

「言ってないし! なんでうちがこんな男がいないと寂しいって思わないといけないのよ!」

「ってな感じでさー。どうしよっか」

「や、どうもしねぇよ。つか、相変わらずだな」

 

 こうも簡単にサガミが遊ばれているとは。恐るべしリア充。

 

「何が?」

「もう名前呼びなんだなって。何したんだよ」

「知りたい?」

「いや、いい。怖いから聞きたくない」

 

 なんかこう、女子独特の会話とかあったりするんだろうし。そんなものを知りたいとか全く思わないから。知らぬ存ぜぬが一番安全なまである。

 

「大丈夫だって。シャドーの話しただけだから」

「どこが大丈夫なんだよ。それ、絶対俺が笑いものになってるだろ」

 

 だからと言って、そこに自分が出てきてしまってはどうしようもない。俺の知らないところで笑いものになっていたことだろう。そりゃもう、さぞ盛り上がったんだろうな。

 ひどい奴。

 

「当たり! やー、あの時のヒキガヤは今思い出すと超ウケるし!」

「ウケてたまるかっ。あの頃の俺は病気だったんだ。病気でおかしくなってたんだ!」

「病気とかウケる………」

「ウケねぇよ」

「病気? あんた何か病気にかかってたの? そんな話聞いてないけど」

 

 あ、うん、多分想像してるような病気じゃないな。もっとこう、なんというか、心の病気的な?

 

「ええ、そうね。今は治っているもの。バトル中に少しスイッチが入りすぎると発症するみたいだけど」

「ユキノシタさん………てことは……」

 

 俺の後ろからすっと顔をのぞかせたユキノの姿を見るや、サガミが一歩下がり、顔が青ざめていく。俺も違う意味で青ざめていく。

 なんでそういうところまでこいつは覚えてるんですかね。いいじゃん、忘れなさいよ。高い記憶力をそんなどうでもいいことに無駄遣いするなよ。

 

「大丈夫よ、姉さんは置いてきたから」

「ほっ……よかった………。あ、や、別に嫌いとかそういうわけじゃ」

 

 自分で超失礼なことを言ってる自覚はあるんだな。まあ、俺が言えた義理じゃないが。俺なんか普通に魔王呼びしてるし。いつか殺されそうだな。

 

「いいのよ、今のあの人は面倒だから。たまっていたものが今になって吐き出されているのよ。姉さんに甘えすぎていた私が悪いのだけれど、しばらくは好きにさせるしかなさそうだわ」

 

 呆れの混じった声で遠くを見据える。

 俺も思い出しただけでため息が出てしまいそうだ。

 

「まさに魔王が暴れてるって感じだもんな」

「それが全てあなたに向けられているというのはいささか癪よね」

「代わってくれるなら代わってほしいわ。なんだって夜這いまで仕掛けてくるんだよ。お前がユキメノコを置いていかなかったら今頃俺は………」

 

 ほんと昨夜は危なかった。寝ようとしたら急に部屋の扉が開いてハルノさんが普通に入ってくるわ、すぐに抱きついてきたかと思うとなんか昼に味わった柔らかい感触が違うわ、そんなこんなしてるうちにユキメノコがハルノさんを氷漬けにするわ。しかもそのハルノさんがまさかのゾロアークというね。何あの嫌がらせ。

 結局何だったのかと思案していると今度は背後から抱きつかれて、今度はまごうことなき柔らかい感触があり、本物のハルノさんだった。首に回された腕によりベットに押し倒され、抱きつかれたまま寝る羽目になるのかと思いきや、またしてもユキメノコが出てきて、サイコキネシスでゾロアーク共々部屋の外へと追い出してしまったのだ。

 まあ、それで睡眠の邪魔をされることはなかったのだが。

 

「えっ? 私は別にユキメノコに命令なんて…………まさか?!」

「な、なんだよ」

 

 何か驚いたような顔をしているユキノ。

 なんか俺変なこと言ったか?

 

「あなた、昨日ユキメノコと寝た?」

「おー、寝たぞ。冷んやりしてて気持ちよかった」

 

 ご褒美としてユキメノコと一緒に寝た。また襲われても困るからな。警備も兼ねてだ。

 

「はあ、まったく…………ユキメノコには困ったものだわ」

「そうか? 今もこんな感じだぞ」

 

 そんでもって、今日はずっと背中が冷んやりしている。

 見えないだけでユキメノコが背中にへばりついているからだ。

 

「メ~ノ」

「ユキメノコ………、朝からボールにいないと思ったらそこにいたのね」

 

 姿を見せたユキメノコにユキノが呆れた眼差しを向けた。

 

「ヒキガヤ、懐かれすぎでしょ」

「………やっぱり何かおかしいよ、この人」

 

 ナカマチさんはやはりこの状況を異常だと感じているようだ。まあご最もであるが。というか正常な感覚の持ち主がいてくれて助かるわ。最近の俺の周りは異常者しかいなくなってしまったからな。格いう俺が社会不適合者という異常者だ。類は友を呼ぶとはこのことを言うのだろう。………違うか。違うな。異常者にしているのは感情だな。恐るべし感情。リア充並みに怖い。

 

「………ユキメノコの狙いは姉さんを追い払うことじゃないわ。追い払った後に自分が一緒に寝ることが目的だったのよ」

 

 ほーん、まあどっちでもいいや。

 

「まさかのポケモンまで参加してるんだ………。何なのこの人たち………」

「ねー、ミナミも大変だねー。ライバル多すぎでしょ」

「俺と寝ることが目的だったとして何か問題でもあるのか?」

「はあ………、つくづくポケモンには甘いわね」

「別にそうでもないだろ。ユキメノコはしっかりとハルノさんを追い払ったんだ。その働きにそれ相応の褒美があっても文句ないだろ」

「あ、じゃあ、あたしらもしっかり仕事してるからご褒美が欲しいかも!」

 

 えー、絶対高いもんねだってくるだろ。

 それにしっかり働いていたかなんて現場を見ていない俺には判断できないし。

 

「口先だけなら何とでも言える」

「じゃあ確かめてみなされ」

「へいへい」

 

 はあ、仕方ない。当初の目的をやりますかね。

 

「じー………」

 

 なんですか、サガミさんや。目が怖いですよ?

 

「あー………、ごめんごめん、ミナミ。あたしらが独占しすぎたから。ほら」

「あ、おい、ちょ」

「ひゃあっ?!」

 

 何故押す。

 バランス崩してサガミの方に倒れこんじゃっただろうが。なんとか踏みとどまったけど、ちょっと生暖かい感触があるんですけど。

 

「……とっとと、おいこらオリモト! 何しやがる!」

「ミナミのことも構ってあげないとだめだよ」

 

 はあ?

 なに?

 この顔を真っ赤にして今にも怒り出しそうなサガミを構えと?

 どこにいっても一人は構ってちゃんがいるのか。まあ、ハルノさんが一番堂々と抱きついてくるから厄介ではあるが。

 それでも、構えって何すればいいんだよ。遊んだりか?

 

「え、なに? こいつも構ってちゃんなの? 困ったちゃんすぎるだろ」

「今のはウケないわー」

「ウケろよ。咄嗟に引っ掛けてみたってのに。お前のツボがよくわからん」

「ふんっ!」

「ぐおっ?! ぼ、暴力反対………」

 

 やはり気に障ったのか脇腹に拳がねじ込まれた。超痛い。マジ痛い。暴力反対!

 

「ありゃりゃ、ほんとに困ったちゃんだ」

「カオリがいじるからでしょうが。ミナミが繊細なの忘れてるでしょ」

「いやいや、忘れてないよ」

 

 というかサガミが繊細とか想像できない。どっちかつーとヘタレだろ。繊細とかそんな綺麗なもんじゃない。

 

「そもそも繊細という感覚がないのじゃないかしら」

「あ、うん、そうかも……ユキノシタさんの言う通りだよ。カオリに繊細なんて言葉があるだけでもよしとしなくちゃ」

 

 あ、それは言えてるかも。

 オリモトに繊細とかヘタレとかそんな感覚、絶対理解できなさそうだ。

 

「ひどっ?! チカもユキノシタさんも酷くない?!」

「カオリちゃんとは正反対に位置するから。うちのことなんて分かるわけないよ………」

「ミナミまでスイッチ入った?!」

 

 サガミ卑屈モード。

 

「………はあ、もっと素直にいれば楽なものを。見てみろ、オリモトなんか自分に正直すぎるくらいに生きてるんだぞ。少しは見習え」

 

 まあ、こいつはこいつで思ったままに行動するべきだとは思うが。オリモトまでとはいかなくてもあれくらいノリで動けたら楽に生きられそうだ。そこだけは俺も感心してしまうまである。

 

「ひどっ?! ヒキガヤ、あたしだってちゃんと考える時は考えるから!」

「………カオリちゃんみたいにはなりたくない」

「………だってよ」

「ウケないわー」

 

 サガミの一言にショボーンとするオリモト。軽口叩けるくらいには仲良くなったみたいだ。俺がいなくても毎日こんな感じなのだろう。………これはナカマチさんに何か礼をしておいた方がいいかもしれない。苦労をかけてるみたいだし。

 

「ケッ」

「ひぁっ?!」

 

 すっとサガミの背後に現れたドクロッグが腕を上から下に下ろした。どうやら背筋をなぞったらしい。おかげでサガミがまたしても変な声を上げている。

 

「あー、ドクロッグがついに我慢の限界にきちゃったか」

「なんかあったのか?」

「ミナミ大好きドクロッグの嫉妬」

 

 隙ができたサガミを軽々と持ち上げると連れて行ってしまった。

 

「連れて行かれたわね」

「そのうち戻ってくると思うよ」

 

 これが初めてということでもないらしい。

 はあ、戻ってくるまでに出来上がりを見せてもらうとするか。

 

「なら、その間に成果とやらを見せてもらおうか。ご褒美が出るかはそれ次第だ」

「まっかせなさい! あたしらの頑張りを見せてあげようじゃん」

 

 なんでそんなバトルする勢いなんだよ。ただ見て回るだけだろうが。

 




不図思ったのですが、新作のポケモンにはリージョンフォルムが追加されるんですかね。
されるとすれば、まず第二世代のポケモンなのは間違いなく、メガシンカをすでに獲得しているポケモンも前作同様かと。加えてアローラ図鑑にすでに記載されている第二世代はリージョンフォルムにならないのではないですかね。逆に島スキャンという特殊な方法で出てくるポケモンは、新たな生態系を築くという意味では可能性があるのかもしれません。ポケモン図鑑も認識しませんし。


なんて、不図した疑問でした。
島スキャンのポケモンたちなら第二世代の御三家もいますし。初代と第三世代はメガシンカをもらっているのに、間の第二世代だけ何もないのは不遇だなあ、と。メガシンカの可能性が薄くなってきているし、専用Z技と合わせてきても問題はなさそうな気がします。
ただ、島スキャンで出てくる第二世代って御三家を除けばトゲピー族、マリル族、ウリムー族とタッツー族の最終進化のキングドラで、トゲピー族とウリムー族は第四世代のトゲキッスとマンムーに進化しますからね。どうなることやら………。
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