バーテックスと誇り高き勇者の物語 作:バーテックス
次にあたしが目を覚ますと、最初の光景は白い天井だった。
「ここは?」
周りを見渡すと、近くには友人が椅子に座って、眠っていた。
(ここは医療施設らしいよ。銀)
突然、頭の中から声が聞こえたことであたしは少しだけ驚いた。
(このこえ……もしかして桜か?)
(そう。今は銀の体内にいるけどね)
そういえば……桜は自分の魂とあたしの魂と同化したといっていた。
(私の力で傷ついた肉体や細胞は何とか修復できたけど、出血が激しかったからね。樹海が解けたときにお仲間さんと一緒にここには運ばれたってわけ)
(そうか……お前が助けてくれたんだな)
(いったでしょ。銀を助けるって)
そういえば、桜はそんなことをいっていた。
(そういえば、あたしたちは何で話せるんだ?)
(銀の心の中で私と会話をしている。だから他の人たちには聞こえない)
そういうわけか。それにしても、姿が見えないというのもあれだな。
(しばらくは銀と一緒にいる。元の体は安全なところにおいてあるから)
(そうなのか……人間で例えると、幽体離脱みたいなもんか?)
(それはよくしらないけど……魂だけが銀の体に同調しているからね)
いろいろと難しいけど、とりあえずは幽体離脱ってことで考えたほうがいいかもしれない。
(銀の友人たちはとてもいい人たちなんだね)
(そうだろ。あたしの自慢の友達だからな)
(そうだね。それは見てて思った)
病室で寝ている二人を見て、あたしは二人と過ごす日常がとても暖かいもので大切なものだと思った。
(桜は友人はいなかったのか?)
(私はバーテックスとして生まれたからね。それに人としての姿を持っていたから、バーテックスからも仲間じゃなくて、敵として見られていたみたい)
仲間からも敵として扱われ、一人で過ごしてきたんだろうな。
(さびしくなかったのか?)
(その感情は私にはなかったから。一人でいることが当たり前だと思ってた)
(つまり……ボッチだったってことか)
(ボッチ?)
(一人きりで過ごすってことだよ)
(ああ。なるほど)
考えてみれば、あたしもこいつをバーテックスだから認められないという思いがあった。それは逆の立場でもいえることなのかもしれない。
(でも……今は銀と一緒だから。銀と一緒ならどこまででも行けそうな気がするから)
(おうおう。うれしいことをいってくれるじゃん)
(うん。それは本音だから)
人には本音と建前を使い分ける人がいるが、こいつの場合は全てのことが本音のように聞こえる。
(そろそろ……銀の友人たちが起きそう)
(それがどうかしたか?)
(私がいるとまずいかもしれないから……)
バーテックスなのに、気は使えるんだな……
(いればいいじゃないか)
(え?)
(あたしの友人たちがいい人だと思ったんだろ。だったら話くらいは付き合っていけよ)
(でも……私は二人とは話すことが出来ないから)
(それでもいるだけでも違うと思うぞ)
(そうなの?)
そういう時、園子ならうまくいえるとおもうんだけど、あたしはなんて伝えたらいいかわからない。
(仲間ってそういうもんだろ)
(私って仲間なのかな……)
(違うのか?)
(だって……私はバーテックスで銀たちは人間でしょ。仲間と呼ぶのは少しおかしい気が……)
意外と真面目だな。桜は
(そうか……なら一緒にいろ。あたしが命ずる!)
(何それ。命令?)
(おうよ。人間様のあたしが命ずる。桜よ。ここにいなさい!)
少しちゃかしたかんじでいってみると、桜は少しだけ笑っているように感じた。
(ふふ。わかった。ここにいる)
(お。そうこなくちゃな)
(ふふ。銀は本当に面白い)
バーテックスでありながらも、人間らしいところもあるのではないかと、このとき、あたしは桜と話しながら思った。