バーテックスと誇り高き勇者の物語 作:バーテックス
(いつか一緒に世界の裏側を見に行こう)
あたしは桜の言葉を思い出しては考えにふけることがある。
バーテックスである桜はまるで何もかもわかっているように話していた。
あの後、あたしは桜を問い詰めたが、今はこれ以上に話せないといった。
(私はすべてを知っているわけじゃない。私の言ったことも憶測に過ぎないから。真実を知るためには私を含めた、すべてのバーテックスを倒す。そうすることで真実の扉は開かれる)
桜は世界を知るためには自らも倒す必要があるといっていた。
(私はバーテックスでありながら、人の形をして生まれた。それには必ず意味がある。神様があなたたちを選んだように、私も神に選ばれたのかもしれない。もしかしたら、私と銀たちが戦うことで何かしらの答えが見えてくるかもしれない)
「あたしは桜と戦えるのかな……」
自分を助けてくれた恩人に刃を向けることができるのか。バーテックスでありながら、人の姿として生まれているあいつを倒すことができるのだろうか。
「どうかしたの?みのさん」
そんなことを思っていると、園子が話しかけてきた。
「まだからだのどこかが痛むの?」
「ううん。それはないけど、ちょっと考え事をしててさ」
「珍しいわね。銀にしては」
須美も会話に参加してきた。
「失礼な。あたしだっていろいろと考え事はするぞ」
「おお~。それで何を考えていたの~?」
「二人は世界の裏側って何だと思う?」
あたしの質問に二人は首をかしげる。
「世界の裏側?」
「世界にも裏があるんだ~。表もあるってことかな?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
須美は不思議そうに私に尋ねる。
「四国以外の世界ってどうなっているのかな~って思ったんだよ」
「そっか~。私たちは四国以外の場所を知らないもんね~」
「お役目が終わったら、3人でどこかいきたいわね」
「おお。いいね~」
桜が言っていた世界の裏側。それは二人にもわからないらしく、当然のことながら、あたしにもよくわからない。
(当然だね。あなたたちは何も教わってないんだから)
(おっわっ!?いきなり話しかけてくるなよ……)
桜が心の中でいきなり話を始めることであたしは少し驚いてしまった。
「ごめん。ちょっとトイレ」
「あ。それならわたしも~」
「いいよ。トイレぐらい一人でいかせてくれ」
私は苦笑しながら教室を出た。そしてトイレまでの道のりの中で桜と話し始める。
(ごめん。本当なら流そうと思ったんだけど、ちょっと気になったからね)
(気になったってやっぱりあたしが世界の話題を出したからか?)
(そうだね。それにしても、本当に何も知らないんだね)
桜の口ぶりは私たち以上に何かを知っている。そんな感じだった。
(教えられてないのか、それともいえない事情があるのか。なんにせよ、知るなら早いうちのほうがいいんだけどね)
(いい加減教えてくれよ。世界の裏側ってやつを)
(教えてもいいけど、その後、まともに戦える?)
桜の口調は今までに感じないくらいに恐ろしいものだった。
(それはどういう意味だ?)
(世界の裏側を知った後にまともに戦えるのかってこと。私は無理だと思うよ)
(何でだよ……)
(あれをみたら、もう使命がどうとか言ってられなくなるからね)
(お前はマジで何を知っているんだよ……)
(前に言ったでしょ。私も全部は知らないんだ。今の話はバーテックスの長から聞いて話だしね)
(聞いた話ってことは見たことないのか?)
(一回だけあるよ。ただそのときの記憶があいまいだからね。私は確信がもてないってこと)