森。
ここはどこなのか?
辺り広がる生い茂った木々と葉。
所々に、奇怪な色合いのした果実が成っている。
緑が多ければ、自然豊かと感じさせるが、妙に生気を感じさせないのは何故だろう?
そして閑散とした森に響く、打撃音。
一人は白亜の色をした王。
もう一人は白銀の色をした戦神。
お互いに、譲れない想いと信念を持ち、それを大剣に込めてぶつけ合う。
しかし、何故彼らがここにいるのか、何故彼らが闘うのか。
その理由はこの戦いと共に、『とある世界』からこの森が去って、忘れ去られてしまった。
そうして、流れる進化をその世界に齎したその森は、また新たな進化に枯渇している世界を見つけては、『理由のない悪意』を振りまく。
そして森はやがて、新たな世界を選び、新たな闘いの狼煙を挙げる。
今ここに、様々な『刀』を手に取りし、少年少女達の戦国乱世が幕を上げる。
仮面ライダー鎧武 天下一刀
一話 空から伊予柑!?
沢芽市。
そこは嘗て、どこにでもある様な地方都市の名。
しかし、それはある企業がのさばる様になってからは、世界も注目する大都市となった。
「んーっ!今日もいい天気だ!今日もいい感じに七色に輝いてるなぁ!」
そして、この活発そうな少年の名は、『七技雄一』沢芽市内の進学校、天樹天明高校に通うごく普通の高校二年生。今は、海外にいるが姉が一人。両親とは中学の頃に死別してしまっている。
「雄一くんっ!」
更に、またこの活発そうな少女…の様な成りをしているこの少年の名は七瀬秋。髪が長く、顔も中性的で背も低く、更には変声期と言う物が無かったらしく、限りなく少女に見えるのだが、男だ。
さらに言えば雄一の幼馴染でもある。
「おう!秋!相変わらずの女々しっぷりだな!」
「へへーん!僕、いつか雄一君のお嫁さんになるんだもんねー!」
えっへん、と威張る仕草を取る秋。雄一は苦笑いを浮かべていると、その後ろから秋に掌が飛んで来た。
「いったぁ!…もう何すんの!夏!」
「うるさい!このオカマ!もう少し恥じらいというのを持ちなさいよ!」
またまた現れたこの元気な少女、彼女の名は七瀬夏。秋の双子の姉で、彼女もまた雄一と幼馴染であるのだ。
「まぁまぁ。いいじゃねえか!秋は俺の事が好きだもんな!」
「うん!」
ワシャワシャと妹を撫でるかの様に可愛がる雄一。女々しいとは言っても、やはり男同士、気が合うらしい。
「こ、こらっ!雄一も甘やかさないの!」
顔を真っ赤にして怒鳴る夏に秋が悪戯っぽい笑みを浮かべてからかう。
「あれー?夏ちゃん。もしかしてそれ、嫉妬〜?もしかして、本気で僕と雄一君が結婚するなんて、思ってるのかなぁ〜?」
「なっ…!?…ば、バカな事言うんじゃないわよ!」
「うふふっ!夏、かわいいー!……あ、夏、その鞄に付けてるそのストラップ、『インベス』のじゃない?」
秋が夏の通学鞄に付けられている謎の生物のマスコットキャラのストラップを指差す。
「ん?これ?…ふっふーん、いいでしょ?これ、『ロックシード』早期購入者プレゼントの景品なのよ♪」
「ええー!いいなー!僕も欲しい!」
「へぇ、『ユグドラシル』でそんなキャンペーンしてたのか…製薬会社に止まらず、こんな遊びにまで手を出すとは、最近の経済も恐ろしいですなぁ」
少し大人ぶった口ぶりで、雄一は空を見上げ、そこに聳え立つ一つの『塔』を見上げた。
「ユグドラシル、あの会社がここに来てから沢芽も変わったよね!こーんなに明るい街になって!」
「そうだな…。おまけにこんな面白ぇ、玩具まで作っちまうとはなっ!」
雄一も自身のロックシードと呼ばれた物を取り出して、眺める。
「それにしても大きわね〜『ユグドラシルタワー』って…」
夏も、聳え立つ巨大な塔に視線を向ける。
今、沢芽市、いや全世界に有名を馳せている企業の名は『ユグドラシル』。
それは医療や福祉に貢献する製薬会社。全世界の主要都市に支部を持ち、その街、更には国の医療事情に少なからず貢献している。
だが、そんなユグドラシルはある一つのホビーを開発し、販売した。
『ロックシード』
手の平サイズの錠前の様な形をした変哲な形をした玩具。それは販売と共に沢芽市内で放たれれば、瞬く間に売れ、完売する程の大ヒット商品。
何故そこまで人気なのかと言うと、そのロックシードを起動させると異世界から来たと言う設定のマスコットキャラ、『インベス』が理由だろう。
見た目こそ、少々武骨ではあるが、何でも主人に従順なその仕草は愛らしいと、老若男女問わず人気となり、沢芽市内で知らぬ者はいないもの程までになった。
そんなロックシードも様々なゲームや遊びを行うことができるが、その中で随一の人気を誇っているのが…。
「それにしても、『インベスゲーム』って本当に人気だよね」
「あぁ…。俺はあんまし強くねぇ…っつてもあんまり好きじゃねえからやんないけどな」
「意外ね?私達のクラスの男子の殆ど、インベスゲームに夢中じゃない」
「まぁ、見てる分には面白いけどさ。自分の大切なインベスがいるロックシードをかけてインベスを戦い合わせるのはなんかさ…」
少し神妙な顔になり、またロックシードに視線を移す雄一。
インベスゲーム…。
それは数あるロックシードを使った遊びの中で一番人気のゲーム。互いのロックシードをかけてインベスを使役して戦い合わせるゲーム。人気のあまり、ロックシードホットラインなどと言う配信番組までできてしまった。
ロックシードホットラインは沢芽市内のインベスゲームの内容はそのランキングを発表する情報番組で、口達者なDJも相まってかインベスゲームの人気に拍車をかけている要素の一つでもある。
「…僕も雄一君にサンセー。確かに見るのは面白いけど、実際に今まで可愛がってきたインベスを戦わせるのは…ちょっとね…」
と秋は少し肩を竦めて見せる。
すると、雄一が少し慌てた様子で言った。
「げ。ちょっと急いだ方がいいぞ、俺ら!あと十分だ!」
「え!ヤバ!」
「あー!まっ、待ってよ!!」
学校の時間に遅れそうになった三人は一旦、インベスについての話に区切りを打ち、走って行った。
◆
放・課・後♪
この日、秋と夏はダンス部の助っ人の為に、練習に参加しており、今日は一人で帰宅している。
少々喧しいが自分のことを慕ってくれる、同い年だが弟分の様な存在の秋と、何かと自分の事を心配してくれてる夏。
そんな二人と歩きながら話すのは彼にとって日常的ではあるが、かけがえのない時間だったので、一人で帰るとなると少し気が落ちる。
「ん?…あれ、うちの学校の制服じゃないか?」
そんな時、ふと裏口に視線を向けた雄一は謎のスーツの男が、天明高校の男子生徒にアタッシュケースに入ってる何かを渡している現場を目撃した。
「何だ…?」
見つからない様にそっと、それを眺めていると、その男子生徒は嬉しそうに黒い鉄の塊を取ると、更に緑色の木の実の意匠が入った錠前を持ち、ご機嫌に去っていった。
「あ…行っちまう…」
生徒の先回りをしようと移動しようとした時、つい物音を立ててしまった。
「やべ…」
「ん?」
雄一の存在に気付いた男は雄一の方にゆっくりと近付いてきた。
「(や…やべぇ…これってあれか?後ろから殴られて、変な薬を飲まされるって定番の…!俺も高校二年生だし、まさか…!)」
探偵漫画の見過ぎと突っ込みたくなる様な妄想をしている雄一だが、得体の知れない人物に近寄られては些か、普通の思考ができなくなってしまっていた。
「なぁ、君。もしかして、今のところ見てたか?」
男は被っている帽子を少し上げて顔を雄一に見せながら問いた。
「あ、あぁ…。さ、さっきの奴…天明高校の奴だよな?」
「ほぅ。君もか…いや…もしかして…」
男は雄一を顎をいじりながら、面白そうに見る。
「な、何ですか」
「いや。なぁ、君。『君だけの世界を作れる刀』を手に入れたくは無いか?」
「刀…?」
「そうだ…!人類文化はいつも、その歴史を闘いを基に気づき上げてきたと言っても過言では無い。その闘いと共にあったのは、『刀』だろう?」
雄一は歴史の勉学にそこまで長けていた訳では無いが、確かに世界史や日本史の風刺画や浮世絵等の戦いや戦争の絵には確かに多くの兵士は刀か、剣を持っていた。
「……アンタ…何が言いたいんだ…?」
「俺は、君に…この力を授けたいんだ」
謎の男がそう言うと、また別のアタッシュケースを取り出し、それを開け、中に入っている黒い鉄の塊と柑橘系の果物の意匠が施されている錠前を見せた。
「こいつは…?」
冷んやりとした感触と共に雄一はドライバーと錠前、ロックシードを眺める。
「これもロックシードっぽいけど、これプレミアムのクラスAのロックシードか…?一個数万円もする…」
ロックシードにはランク付けがされており、普段雄一達が購入するロックシード、ヒマワリロックシードはクラスDで値段も数千円と、高校生にとっては割と手が出やすい値段となっているが、ランクが上がっていくに連れ、インベスの性能と大きさが上がり、値段は徐々に高騰化していく。
「クラスAのロックシードも驚きだが…こいつは一体…?」
雄一は一旦、ロックシードをポケットにしまうと、謎の黒鉄の塊を両手に持ちまじまじと眺める。
「そいつは戦極ドライバー。君にさっき俺が言った、『刀』を呼び出す文字どおり、『鍵』さ」
「はぁ…それってつまり…」
すると男は、態とらしく腕に付いている腕時計を見た。
「あぁー。もうこんな時間だ。悪いな、詳しい説明はまた今度だ。これからはここで構えてるから、よろしくな」
その男はとあるチラシを雄一に渡すと、そのまま去って行ってしまった。
「何だったんだ。あの男…にしてもこのチラシ…確か…」
雄一が折りたたまれてあるそのチラシを開くと、それは沢芽市にある、若者達の憩いの場、『ドルーパーズ』のチラシだった。
「板東さんの店…?」
益々、あの謎の男に対して不審を抱くが、取り敢えずは鞄に戦極ドライバーと呼ばれた物を詰め込み、家へ持ち帰った。
◆
幾多の世界が巡る空間、そこに佇む影、『蛇』は笑う。
「いよいよ、この世界でも始まってしまうんだな。あの男、七技雄一…奴がこの世界でどう進化していくのか、高みの見物と洒落込むとするか」
自身の住むマンションの部屋へ帰宅した雄一は先ほど貰った戦極ドライバーを不思議そうに眺めていた。
「それにしてもこれ、どうやって使うんだ?この小刀みたいな奴は何だろう?触っても痛くねぇけど…」
戦極ドライバーのありとあらゆる部分をまるで初めての玩具を貰った赤ん坊のように弄り、調べる雄一。
やがて、それにも飽きたのか、机の隣に置き、今度はクラスAのロックシードを取り出した。
「クラスAのロックシードか…。これはオレンジに見えるけど、『イヨカン』に近いかな…?…でも、別にそこまで欲しかった訳じゃないんだけどな…ま、いいか…取り敢えず、明日板東さんの店に行って、あいつに聞いて見るか」
雄一はそう自分に言い聞かせるように言うと、取り敢えず空の引き出しにロックシードとドライバーを入れて保管した。
クラスAのロックシードはインベスゲームを楽しむ者たちからすれば喉から手が出るほど欲しがられる物。その理由はやはりそのロックシードから放たれるインベスの性能だ。細かな攻撃パターンは兎も角、大きさが別格の為、クラスDのインベスでは話にならない。だがその分当然値段も跳ね上がる。
そんな物を得体の知れない黒い物体と共に自分に寄越したあの男が本当に不可思議で堪らなかった雄一だが、先程自身に言い聞かせた通り、明日全て確認してやろうと言うつもりで、再び鞄を手に取り、勉強道具を入れ、自分とは隣のマンションの部屋に位置する七瀬姉弟の所へ行った。
細やかな勉強会を開く為だ。
そして、この時は明日行われる小テストの勉強に追われ、雄一は寝る時までドライバーやロックシードの事を忘れる事にした。
◆
この日、雄一はまるで、奥底にしまっていた謎によって起されたような妙な感覚を覚えていた。
兎に角、このドライバーと、ロックシードが気になるのだ。
雄一はドルーパーズの開店時間になると、鞄にドライバーとロックシードを入れて向かう。
ふと街中を見れば、そこには老若男女問わず、様々な人々がロックシードを持っており遊んでいた。
だがよく見ればその多くがインベスゲームだった。
「本当に人気なんだな…。そんな所でこれなんか掲げたらマズイだろうなぁ…」
ボソリと呟きながら、鞄の中にしまってあるイヨカンロックシードの存在を布越しで確認する。
別に誰かが欲しいと言えば、インベスゲームに興味のない雄一としてはあげてもいいのだが、それにしてもその前にこの謎を知っておかなければどうも気が済まないでいた。
インベスゲームを嗜む街行く人々を通り過ぎていくと、突然妙な咆哮が道に響いた。
『キシァァァア!!』
「キャァァァァアッ!!」
その咆哮とともに現れた身体を目にした人々は絶叫を上げ、その場から逃げ去っていく。
雄一が目にしたのは、インベスに酷似している物、髑髏の様な顔に首と顔が一つになり餅の様に膨れ上がった頭部、正しくそれは『初級インベス』とインベスゲームで表される怪物だった。それが人間に向かってその巨大な掌で殴り倒していく。
「な、何だ!?」
突然の事に思考の追いついていない雄一はそのまま立ち尽くすが、人々が襲われているところを再確認すると意識を、彼の癖の『人助けモード』に切り替えると、飛びかかり、インベスに蹴りを喰らわせる。
「止めろ!化け物!!」
しかし、インベスは微動だにせず、雄一にまで手を伸ばし、殴り飛ばした。
「ガハッ!」
大きく吹っ飛ばされ、衝撃が齎す痛みに悶える雄一。このまま諦めてなるものか、と立ち上がるが一つ妙な点に気付いた。
「あいつ…何してんだ?」
雄一が見据えた先に謎の少年が、長い木の枝を持ってインベス達に向けて構えている。
「ま、まさか!」
「化け物め…!俺の力!見せてやる!!」
少年は雄叫びをあげて、インベスへ突っ込み、木の枝をふるって、頭部にぶつけるがその硬い体表に木の枝は耐えることができず、無残に折れてしまった。
「ぐっ…!なんて硬さだ!」
「おい!アンタ!逃げろ!!」
雄一が少年に襲おうとしているインベスに飛びかかり、取り押さえ、少年に逃げる様促す。
「逃げろ、だと?ふざけるな…!俺をあの様な腑抜けどもと一緒にするなっ!」
そう怒鳴ると、拳をインベスの腹部に喰らわせて雄一から遠ざけた。
「馬鹿言うな!!危ねぇだろ!?」
「危険を冒さずして、どの様にして強さを得るのか!ただ勢いに任せて戦うそれは、強さとは程遠い!!」
「…お、お前…何言ってんだよ…!?」
二人が口論をしていると、インベスが再び二人に向けて攻撃を仕掛け、不意を突かれた二人は大きく吹っ飛ばされてしまった。
「ぐあっ!!」
「ぐうっ!」
その時、雄一の持っていた鞄から、ドライバーとロックシードが転がり落ちた。
「…!……戦極ドライバー…くっ!こんな時にこれの使い方を知っていれば!!」
咄嗟に手に取り、弄り始める雄一。
だが、咄嗟にドライバーを腰にあてがった時、戦極ドライバーから黄色いベルトパーツが飛び出し、雄一の体に固定された。
「うおっ!?」
突然の事でビックリした雄一は自身の腰に装着されたドライバーをまじまじと眺めた。
「お、おい…これってまさか、バックルだったのか…?じゃあこの窪みはもしかして…」
「おい、来るぞ」
独り言を言っている雄一に少年が声をかけると雄一は立ち上がり、少年の前に立った。
イヨカンロックシードを構えて。
「ここは俺に任せろ」
「何だと…?」
「良く分かんねぇけど、この状況を変える、『七色の奇跡』を起こせそうなんでね!」
不敵に笑って見せた雄一は前方にロックシードを構えて、橙色に輝くその錠前を解き放った。
『イヨカン!』
「変身ッ!!」
『ロックオン!』
戦極ドライバーにロックシードを填め込み、錠前を閉めると、ドライバーから電子音声が流れた。するとドライバーから法螺貝から吹かれた待機音が流れ始め、それは不思議と、雄一の戦意を掻き立てた。
更に、ドライバーから待機音が流れ始めたと時を同じくして、上空に裂け目が開けばそこから伊予柑を模した鋼鉄の鎧が出現した。
「な、何だ…?あれは…」
少年は未知の現象に言葉を失っていたが、雄一はその視線をインベスから動かさず、ドライバーに備え付けられている小刀、『カッティングブレード』で錠前を勢いよく切り倒し、更なる力を解放した。
いざ切り開かん、新たな戦国乱世の幕開けを!
『ソイヤッ! イヨカンアームズ!刀の覇道!オンザロード!!』
雄一の頭上を舞っていた鋼鉄の果実は、雄一の頭部を覆い被さり、それと同時に雄一の身体を『アンダースーツ』が包み込む。
そして、果実が展開され、それはやがて鎧、『イヨカンアームズ』へと姿を変えた。
ここに現るは、新たな闘いの始まりの幕開け知らせる、橙侍。『アーマードライダー剣舞 イヨカンアームズ!』
「おっ…?おおっ!?これ!俺なのか!?」
謎の刀剣士へと変身した雄一は自身の新たな身体をまた弄り始めた。
「これ…が…このドライバーの使い方…何だな…。じゃあ今から俺の名は…!」
雄一、いやアーマードライダー剣舞はイヨカンアームズから生み出された専用装備、伊予刀を構え、インベスに向けて言い放った。
「俺は…剣舞!アーマードライダー剣舞だ!!」
『キシャ?キシャァァァア!!』
インベスは剣舞の姿を見るなりすぐさま敵と判断したのか、向かって来た。
「ようし!七色に輝く、俺の土壇場!見せてやる!」
剣舞は迫り来るインベスに向けて、勢いよく伊予刀を振るい、その横っ腹を切り裂く。
「うおらっあ!」
雄叫びと共に放たれたその一閃は確実にインベスに対してダメージを与えられていた。
「よしっ!効いてる!…へへっ!行くぜ!まだまだこれからだ!!」
剣舞は伊予刀を構えなおして、再び斬りかかる。
インベスは爪で抵抗しようとするも、剣舞の荒々しくも素早い剣撃にやがて対処できなくなって行く。
「よーし!これでトドメだ!!」
剣舞はカッティングブレードに手を伸ばし、一回倒して力を解放させた。
『ソイヤッ! イヨカンスカッシュ!』
「はぁぁぁぁぁ…!…らあっ!!」
伊予刀にエネルギーを纏わせ、その白熱化させた刀でインベスの身体を横、縦一閃に切り裂き爆散させた。
「いよっしゃっ!……って後一体はどこだ…?」
不審に思った剣舞はもう一体のインベスの所在を確認しようとすると、もう一体のインベスが先程襲っていた人々から奪ったロックシードを手に持ち、有ろう事か、それを口の中に含んだ。
「なっ…!ロックシードを喰った!?」
すると忽ち、インベスはその体表を変え、まるで昆虫の脱皮の様に皮を脱ぎ捨てるとやがてそれは鹿の様な魔物へと姿を変えた。
「なっ…!これがインベスだと!?」
「まさか…あのインベスはクラスAの…!?」
『グシャア!!』
新たな魔物、シカインベスは剣舞に凄まじい勢いで突進して来た。
「ぐおっ!?」
先程の初級インベスとは比べ物にならないその破壊力に、剣舞は弾き飛ばされ、地面を転がる。
更に運の悪い事にその拍子で伊予刀を落としてしまった。
「しまった!」
「余所見をするな!!」
少年からの声に気付いた剣舞は再び接近して来たインベスに首元を掴まれた。
「ぐあっ!…ぐっ!力も桁違いだ…!ヤベェ…どうすれば!!」
剣舞が何とか、反撃しようと暴れると、ふと左腰に収められている何かに触れた。
「…!これは…」
剣舞はそれを握りしめて勢いよく、インベスに向けて薙ぎ払った。
「!」
勇ましくその刀を構えている剣舞、白銀の刀心に黒の柄のその刀は『無双セイバー』
「スゲェ…!よし!反撃開始だ!!」
剣舞は無双セイバーに備え付けられている『バレットスライド』を引き、充填するとそこから計4発の銃弾を発射した。
「おぉ!スゲェ!拳銃にもなるのか!これは!」
突然の銃撃に怯んだシカインベスの隙を突き、剣舞は落ちている伊予刀を拾い上げて二刀流の構えでシカインベスの横っ腹を切り裂く。
そして更にはシカインベスに攻撃の隙を与えず、一撃、また一撃と二刀から成される剣撃をシカインベスにぶつけた。
「へっ!これで…!トドメッだぁ!!」
剣舞はロックシードを取り外し、無双セイバーに取り付けて錠前を閉めた。
『ロックオン!イチ!ジュウ!ヒャク!』
「俺の七色の技!受けてみろ!」
『イヨカンチャージ!!』
「セイッハァァァァァア!!」
裂帛した気迫と共に放たれたその太刀がシカインベスを横一閃に切り裂き、その身体を爆炎へと変えた。
「やった…!勝った!!」
勝利した剣舞は喜びながらも脱力し、ゆっくりとロックシードのキャストパッドを閉じ、変身を解いた。
『ロックオフ…』
闘いで汗を掻いた雄一は沢芽市から吹く風にその身を打ち付けられていた。それはとても心地が良く、戦い終えた戦士への極上の癒しだった。
「スゲェ…!あの怪物をやっつけてくれた!!」
「あの人!俺たちのヒーローだ!!」
「ありがとう!アーマードライダー!」
「剣舞!かっこよかったよ!!」
ハッとなった雄一は自分の戦いを見ていたのか、少人数ではあったが、街の人々に賞賛された。
沢芽市を救った『英雄』として…。
「あの力…俺も手に入れれば…!」
だが一人、雄一の事を英雄以外の物として見ていた者がいた…。
続
この作品は、pixivであげようとしてるかどうか検討している作品です。
ハーメルンで連載し続けるかは…ごめんなさい微妙です…。