ダンジョンに手柄を求めるのは間違っていないはず   作:nasigorenn

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すみません、今回はただの下ネタです。


第37話 ベルはベルのベル(意味深)を見られる

 18階層にたどり着いたベル達一行。本来あるべき歴史なら、ここで大怪我を負ったリリルカとヴェルフの二人を引き摺りながら必死に駆け込み入った直後に自身も力尽き気絶しているのだが、ここにいるのは薩摩兵子。そんな戦狂いと連んでいるパーティーに大怪我など一切無い。何せ彼等はベルの『戦』の邪魔をしないから。手を出せばその時は自分すら斬り殺されるということを本能的に理解しているから。だからこそ、リリルカもヴェルフも無理せず戦い怪我などない。唯一の損害を言うのなら、それはベルの服だろう。確かに身体に痣やら何やらはあるがそんなものは怪我にすら入らない。薩摩兵子にとって怪我とは戦闘に支障を来たすものを指す。来たさなければそれは怪我ですらない。故にベル自身に問題は無い。だが、その服は酷い有様だ。ベルは防具を一切着けない。いつも身に纏っているのは市井に出回っているごく普通の衣服だ。防御力など紙みたいなものであり冒険者からすれば皆無に等しい。そんな状態で『迷宮の孤王』の攻撃を何度も何度も受けたのだ。身体がおかしいくらい頑丈なベルでも服はそうではない。結果…………半裸である。

上半身など特に酷く服が服の機能を成していない。下半身は丈の長い物なのだが、彼方此方裂けておりダメージをつけたパンクなデザインへと早変わりだ。男らしいといえば男らしいのだが、あまり人に見られて良い格好ではない。これが女性だった場合は即通報物である。そんな格好のベルと特に問題のないリリルカとヴェルフ。そんな三人は18階層について最初に口にしたのは…………。

 

「ここが18階層かぁ………………」

「お腹空いたなぁ」

「ベル様ベル様、お着替えしましょう!」

 

三者三様にバラバラだった。

普通ならここで自分達が到達した階層に感動するものである。その点で言えば一番上のヴェルフの言葉は正しいし、感動に打ち震えている様子もまた正しい。

だが、残り二人の言葉は若干おかしいだろう。

 

「いや、確かにベルは暴れてたからそうなるのも分かるけどよぉ、それはないだろ。寧ろあれだけ派手にやってそれだけ? って思っちまったしそれより他にもっとあんだろ、初めての階層だぜ。それも俺等みたいな初めて中層にアタックして18階層なんて快挙だ快挙。もっと喜ぶなり打ち震えるなり何かあんだろ」

「別にそんなことなんてないと思うけど。手柄を求めていけばいずれ到達するものだし。それよりもお腹空いたかな。それなりに動いたしそろそろお昼時だしね。あ、この階層ってモンスターが生まれないんだっけ? どこで調達しようかな?」

 

もはやパーティー唯一の常識人?となったヴェルフからの突っ込みに対しベルはそんなことはないと普通に言ってお腹を擦る。あれだけ暴れ回ったのにその程度のリアクションはどうなんだという突っ込みは勿論のこと、件のスキルによってモンスターを食べようとするベルにヴェルフは更に突っ込みをかけざる得ない。別にこの階層はモンスターがいないわけではないの探せばいるのだが、だからといって誰だって(ベルともはや慣れてしまったリリルカ以外)ゲテモノを食べたくはない。(ヴェルフ以外いない)

そんなベルへの対応は勿論のこと、何故か身の丈以上もあるバックパックからベルがいつも着ている服と同じデザインの服を引っ張り出しているリリルカにも当然ヴェルフは突っ込んだ。

 

「んでもってリリ助、何でお前はさも当然のようにベルの服を持ってきてるんだ!」

「それは勿論、ベル様の為です」

 

ヴェルフの突っ込みにリリルカは当然のようにドヤ顔で答えた。実に良い笑顔である。見ていたヴェルフは正直殴りたくなった。

そんなヴェルフなど歯牙にも掛けず言ってもいないのにリリルカはベルの服を出す理由を嬉々とした様子で語る。

 

「ベル様は防具を着けずにいつもダンジョンに潜ります。その結果、ベル様の服はいつもボロボロで汚れだらけ。そんな格好のベル様もワイルドで素敵ですが、それでも人前に出るのは少しばかり問題になります。だからこそ、ベル様がいつでも人前に出られるように、こうしてリリはいつでもベル様の着替えを持ち歩いているのです」

 

過保護の親のような説明。決して言っていることに間違いはなく、確かにその通りだと言うことをパーティーを組み始めたヴェルフには理解は出来る。

だが、それだけではないだろう。

 

「んで、本音は?」

 

ジト目でヴェルフがそう問いかけると、途端にリリルカは恍惚とした顔でうっとりとしながら答えた。

 

「実はベル様の私服とちゃっかりすり替えてまして、それでベル様の香りが染みついたのはリリのお宝兼オカズに……………」

 

最近思ってきたが、真面目にこのパーティー辞めるべきじゃないだろうかとヴェルフは思いながらドン引きしていた。

そんなヴェルフの突っ込みなど気にせず頭のおかしい二人は普通に動く。

 

「そんなわけでベル様、お着替えを。別にこの場で着替えてもらっていいんですが、そうするとリリには刺激が強すぎて…………どうにかなっちゃうかもしれません」

 

モジモジしながら爆弾発言を噛ます暴走小人族。そんな相方にベルは服を受け取りつつ優しげに答える。既に『薩摩兵子』から『紳士』に変わっていたのは此所に手柄がないからだろう。

 

「ありがとう、リリ。いつもリリには助けてもらってばかりで悪いね。流石に女の子の前で着替えるわけにもいかないし、そこの茂みで着替えてくるよ」

 

リリルカにお礼を言いながらベルは二人から離れ茂みに入ると、そこで着替えようとぼろ切れと化した服を脱ぎ始めた。上半身の服など服の意味を成さないので鍛え抜かれた肉体が丸見えだが、服を脱ぐことでそれが完全に露わになる。そして下は勿論何故か用意されていた下着。羞恥心をどこかに置き忘れたのかベルはリリルカがそれを用意したことに恥ずかしさを感じなく、用意してもらったことに感謝しかなかった。『紳士』ではあるが『思春期』ではないらしい。ある意味枯れていた。

そんなわけで下も着替えるべく脱ぎ始めたベル。下着も替えるということは当然脱ぐわけであり、そこでベルのベル(意味深)も露わになる。

それは一本の刀であった。鋭く長く、しかもゴツい斬馬刀であった。それも某悪を背に掲げる喧嘩屋の持つアレであった。ベルの幼げな見た目に反し、それは明らかに『大人』であった。

そんなものを出している時にそれは起こった。

 

「…………誰かいるの?」

 

そんな声が茂みの奥から小さく聞こえ、草木が擦れる音と共に現れたのは美しい金色の髪をしたお姫様のような女の子。そして彼女はベルにとって見知ってる人間だった。

 

「あ、アイズさん。どうも、こんにちは」

 

ベルの前に現れたのはロキ・ファミリア幹部のレベル5『剣姫』の二つ名を持つアイズ・ヴァレンシュタインであった。そして彼女の目に映ったのはベルとそして………………ベルのベル(意味深)であった。

それは一本の刀であった。鋭く長く……以下略。

思春期の年頃でそれまで青春とは若干遠い生活を送ってきたアイズであったが、そんな彼女でも…………………『ソレ』を見たのは初めてであった。

だからなのだろう………。

 

「……………ッ!?!?!?~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?」

 

彼女の感情が表れづらい顔が一気に真っ赤になり、ボンッっという幻聴が聞こえるかのようになって彼女は……………。

 

「きゅ~~~~~~~~~~~………………」

 

見事に気絶したのであった。


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