ダンジョンに手柄を求めるのは間違っていないはず   作:nasigorenn

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久々の更新にしてまったく話が進みません。いや、マジで申し訳ない。


第38話 ベルはこうしてロキ・ファミリアの元に行く

 ベルのベル(意味深)を見てしまった所為で気絶してしまったアイズ。その姿は普段の様子からは信じられない程に年相応の少女をしていた。

と、まぁこんな風に結果が出たわけであるが、そのままにしておくわけにもいかないわけでベルは彼女の意識が戻るまで介抱することに。

 

「ベル、着替えるにしては随分と長いな。何かあったか?」

 

ベルが着替えるにしては遅いと判断したようでヴェルフが若干心配してベルの方にやってきた。勿論その心配にベルのことは含まれていない。この男は何があろうと大怪我をすることはないということは先のゴライアス戦で分かりきっているからだ。汚染されつつあるヴェルフではあるが、それでもまだ常識を捨てていないだけに、この心配は『ベルが何かやらかしたのか?』という意味で問いかけたのである。今現在、ヴェルフの思考はヘスティアに近かった。違うのはストレスを感じるか感じないのかの差である。

 

「ベル様、やけに時間が掛かってますね。どうかなさいましたか?」

 

そしてヴェルフと一緒にリリルカのやってくる。

そんな二人が見たものは正座をしているベルと、そしてベルの膝に頭を乗せて気絶しているアイズであった。所謂膝枕である。ただし美少女ではなく野郎の膝であるが。

 

「あ、ヴェルフ、リリ。ゴメン、ちょっとね」

 

二人の登場にベルは困った顔を向けた。

 

「あ、ベル様、膝枕ずるいです。リリにもして下さい!」

「いや、そこじゃねぇだろ!? 何でここにあの『剣姫』がいるのかをまず突っ込めよ!」

 

アイズがいることより膝枕されてることが羨ましくてベルにそう声をかけながら突撃するリリルカ。そんなリリルカに当たり前のことを突っ込むヴェルフは決して間違ってはいないはずだ。だが残念かな、この恋する暴走小人族の少女はそんな疑問は後回しにベルの元まで駆けつけると彼の膝の空いたスペースに目掛けて仰向けになるや自分の頭をちょこんと乗せてきた。ベルもベルでアイズに負担が掛からないようにしつつリリルカの為に二人の頭を乗せられるようにアイズの頭を若干動かす。そして両手に花というより両方に膝枕なんていう良くわからない状況が出来上がった。

 

「はぁ、ベル様の膝枕…………程よい弾力がして気持ち良いですね…………えへへ」

 

ご満悦なリリルカ、そしてそんなリリルカにベルは慈愛に満ちた眼差しを向けながら優しくその頭を撫でてあげていた。完璧に『紳士』であった。

ダメダメな小人族は放置することにしてヴェルフは改めてベルに問いかける。『薩摩兵子』の時なら一切此方の話なぞ聞かないが、今は『紳士』だ。此方の言葉も十分聞いてくれるはずである。

 

「んでベル、この状況を説明してもらいたいんだが?」

 

その言葉にベルも困った様子で返す。

 

「それがどうにも僕にも分からないんです。アイズさんが出てきたから挨拶したんですけど、僕を見た後急に顔を真っ赤にしたと思ったら意識を失ってしまって。もしかして体調が悪かったのかも………」

 

その話を聞いてヴェルフは何となく分かってしまった。大方ベルが着替えている最中に出くわしたのだろう。そこで着替え中のベルを見て気絶したとなると…………。

 

(剣姫って実はかなり純情なのか?)

 

 男の身体を見ただけで恥ずかしさのあまり気絶するという実に乙女らしい行動をあの有名人が取ったということでヴェルフはそう思った。自分の知っている女性はそんな精神を持ち合わせていないのばかりなので少しばかり新鮮に感じる。まさかそこにベルのベル(意味深)を見てしまったからというのは流石に想定できなかったが………。

そして逆にそんな如何にも乙女らしいことにまったく気付かないベルに流石はベルだとしか言えないヴェルフ。『紳士』であっても思春期ではない。ある意味枯れてるといっても良い彼には何故アイズが気絶したのか分からないのだろう。説明しても何故そうなってしまったのかということを理解出来ないに違いない。

だから説明するのは諦めたヴェルフは静かにベル達を見ることにした。

そしてアイズが目を覚ますまでの間、ベルは困った顔をしたままでリリルカはベルの膝枕を堪能しヴェルフはそんな光景を何とも言えない目をしていた。

そんな時間が少し過ぎ、やっとアイズが目を覚ます。

 

「え……あれ、どうして私………」

 

自分がどうして意識を失っているのかがわからないといった様子のアイズ。そんなアイズにベルは普通に笑顔を向ける。

 

「あ、おきましたか、アイズさん。おはようございます」

「ッ!? べ、ベル!? 何で…………」

 

目の前に現れたベルの顔、それもかなり近いことにアイズは驚き顔が熱くなるのを感じながら慌てる。そんなアイズにベルは苦笑しながら答える。

 

「驚きましたよ。アイズさんが現れたと思ったら急に気絶するんですから」

 

そう言われてアイズは意識を失う前のことを思いだそうとするのだが、何やら靄が掛かったように思い出せない。何かを見たような気がするのだが…………思い出せない。それも重要だが、ソレよりもアイズは今の自分の状態をやっと理解する。そして急いで飛び起きた。

 

「ご、ごめん!? ベル…………」

 

自分が今まで膝枕をされていたということに恥ずかしがるアイズ。『剣姫』の二つ名を持つにはあまりにも可愛らしい。そんな彼女にベルは和やかに微笑んだ。

 

「別に大丈夫ですよ。それよりもアイズさんは大丈夫ですか? 何か体調に問題でも?」

 

 ベルの紳士らしい対応に暖かな微笑み。その二つにアイズは見惚れてしまい胸がときめくのを感じた。よくよく考えればここ最近彼女は『薩摩兵子』のベルとばかり接していたため、こうして紳士的なベルと接するのは久しぶりだ。だからなのか、改めてそのギャップ差に驚いてしまう。

だからなのかベルの顔お直視出来ない。見てしまうと見入ってしまいそうになるから。故に彼女は恥じらいながら目をそらしつつベルに答える。

 

「大丈夫………たぶん」

「そうですか……でも気をつけて下さいね。冒険者だって体調は崩れるものなんですから」

 

 その言葉にアイズは自分が嬉しいと感じた。心配されるのはファミリアの仲間からしょちゅうなのだが、こんな気持ちになったのは初めてかも知れない。

胸の高鳴りを感じながらアイズはベルに更に話を振ろうとするのだが、ここでお邪魔虫………リリルカが牙を剥く。

 

「やっと起きましたか、剣姫様。でしたらベル様から離れて下さい。ベル様は貴女に介抱していて疲れているんですから」

 

 膝枕されていた彼女はアイズが目を覚ますと共に起き上がっていたらしく、アイズに対して警戒心を露わにした目を向けていた。アイズの先程までの様子を見てこの聡い小人族の少女はアイズが自分の同類と判断したらしい。所謂『恋敵』であると。

 そんなリリルカにアイズは何故そんなに敵意を向けられているのか分からず戸惑う。まだ彼女は自分が抱いている気持ちが分かっていないらしい。ある意味子供なのだ。

だからこそ戸惑う。そんな彼女達にヴェルフは頭が痛いと言わんばかりに頭を抱えた。

 

「これ、絶対に修羅場になるぞ。しかも最悪なことにベルじゃそれに絶対に気付かない」

 

常識的? な彼はこの状況に頭が痛くなって仕方ない様子だ。

そんな状況なわけであるが、いつまでもそうしているわけにもいかない。だからこそ、ヴェルフはアイズに何故ここにいるのかなどを聞くことにした。別にベルがやっても良いのだが、この元凶にそれをやらせると余計悪化しかねないと判断したためだ。

そんなヴェルフからの助け船にアイズは乗ることにして自分達が遠征帰りであることを話す。その最中に仲間がモンスターの厄介な毒にやられてしまいこの階層で仲間が解毒薬を持ってくるまで待つらしい。そんな話をされて納得する一同。

そして今度はアイズがベルに聞き返す。

 

「ベルは何でここにいるの?」

 

その問いかけにベルは笑顔で答える。

 

「勿論、手柄を取るために」

 

その笑顔は笑顔なのに目から薩摩が漏れ出していた。その気配を察したアイズはベルらしいと思い微笑んだ。普段感情をあまり出さない彼女にしては凄く珍しい。

 

「ベルらしいね」

「だってそれが僕ですから」

 

 そしてアイズの言葉にベルがそう答え、共に歩き出す。どうやらロキ・ファミリアはこの先でキャンプを張っているらしい。そこに招待するとアイズはベル達を誘う。その誘いにベル達は応じることにした。ここで会ったのだから袖振り合うのもなんとやら、という奴だ。紳士的なベルなら人の厚意を無下にはしない。

 そんなわけでベル達一行はロキ・ファミリアの所へ行くこととなった。

その道中の会話でベルが一人でゴライアスを叩き斬ったことが出て、同じく階層主を単身で倒したアイズもそれを話す。お互い似たようなことをしただけに共感が持てるようで会話に花を咲かせる。そんなアイズに焼き餅を焼きリリルカはアイズよりもベルの方が凄いと主張する。そんなリリルカにベルは別に何てこと無いと答えると今度はアイズまでベルは凄いと褒め始め、どういうわけかリリルカとアイズのベルへの褒め比べ対決という訳の分からないものに発展していた。そんな光景を後ろから眺めるヴェルフは何やら振り切ってしまった。

 

(なんかもう…………見てて面白くなってきた気がする。変に考えずに楽しんだ方がいいな、こりゃぁ)

 

その時のヴェルフは立派な愉悦顔になっていたんだとか。

 

 

 

 そんな一同はこうしてロキ・ファミリアのキャンプ地に行くのであった。


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