ダンジョンに手柄を求めるのは間違っていないはず   作:nasigorenn

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かなり書かなくて申し訳ないです。今回も薩摩は少なめ。速く薩摩が書きたいです(笑)


第40話 ベルは主神と再会する

 アイズに連れられてロキ・ファミリアのキャンプに向かったベル一行。

そこでロキ・ファミリアの幹部達が集まるテントに案内され、そこでここに来た経緯を説明することになった。

 それを聞いたフィンはおかしそうに笑い、リヴェリアはその非常識さに呆れ返り、ガレスは剛胆に笑い声を上げていた。

 

「まさか中層に進出したその日に18階層か。しかもその上階層主を一人で倒してきてしまうとは!! 話に聞いていたがそれ以上の強者だのぅ!」

「あのオッタル相手にあれだけ戦うからといってここまで非常識とは思わなかった。これがあのおかしなレベルだからなのか、元からそうなのか、判断出来ないな」

「君はつくづく愉快なことをしでかすね。同じ事をやれと言われて出来はするが、それをやろうとは思わないけど、自ら進んでやるというのだから。まったく、君は飽きさせない」

 

 そんな反応をする三人にベルは紳士らしく笑いながら普通に話し、リリルカはウチのベル様は凄いんですと自慢気にくっつきながら胸を張る。そしてヴェルフは驚きながら呆れるリヴェリアにこっちはもう馴れましたと達観的な言葉を贈っていた。

 そして談笑も一息ついたところでここに来た理由を話すベルだが、ただ単にアイズに誘われたから来ただけなので語るも何もない。寧ろ遠征に向かったロキ・ファミリアが何故こんな階層にいるのかと言うことがリリルカから質問され、そこでロキ・ファミリアの少しこまった実情を聞くことになる。遠征の帰りに厄介な毒を持つモンスターの群に襲われ大半の団員が毒に犯されることになってしまったらしく、そこでこの安全地帯で待機しつつ仲間に地上にある解毒薬を持ってきてもらうことにしたらしい。だからこうしてここにいるというわけだ。

 そこでこうしてベル達がやってきた。ただそれだけである。

ベルからしたら誘われたから来ただけであり、強いて言えばそろそろお腹が空いてきたのでご飯を食べに行こうかな、何て思う程度だ。勿論食料なんて持っていないベルは、この階層にいるであろうモンスターを狩る気でいた。最早食べ慣れたベル一行にその悪食への嫌悪は薄れている。

 そんなベルの状態を精神はともかく肉体は訴えかけてきた。

 

ぐぅぅううううう……………。

 

 室内に鳴り響く腹の音。女性の物にしては大きく、それでいて男の物にしては少しばかり可愛げがある、そんな音。

 

「あ~、あははは、ごめんなさい」

 

ベルは腹を押さえて苦笑を浮かべる。恥じらう様子はなく、そこにあるのは気まずさからの困った顔。そんなベルを見ていた面々は途端に笑ってしまう。この場面で笑うのは失礼なのかも知れないが、それでも笑ってしまうのは仕方ないだろう。それにベルなら許してくれると分かってしまう。彼はそういう性格だ。紳士な今でも薩摩な時でもそこは変わらない。

 そんなわけで一頻り笑った後、フィンはベルに向かって笑いかけた。

 

「アイズの知人がこうして遊びに来たんだ。せっかくだし食事でもどうだい。僕は君のような勇敢な者を歓迎するよ。それに………アイズは君がいた方が嬉しいらしいからね」

 

そう言ってニッコリ笑うフィン。ベルはその言葉を実に紳士的に受け止めた。友人や知人が遊びに来たのだから嬉しいのだと。

 しかし、アイズの考えはまったく違う。寧ろロキ・ファミリアという家族内で父親に相当するフィンに自分の想いがバレてしまっていることに真っ赤になり、フィンを睨み付けていた。

 

「フィン、余計なことは言わないで」

「別に僕は特に言ってないよ。ただホームでよく君が『ベルが、ベルはね、ベルと……』ってよくティオナ達と話してるのをきいただけさ」

「!?」

 

その言葉に更に顔を真っ赤にするアイズ。その顔は恥ずかしがっており、彼女の人形めいた美貌に可憐さを加える。同性が見ても見惚れる程の美しさがそこにはあった。

 

「フィンの意地悪」

 

そう言ってアイズはぷいっとフィンから顔を逸らす。その様子を微笑ましく見る幹部一同にベルはも同じく微笑ましく笑い、そして………。

 

(やはり剣姫様は私の敵です!)

 

リリルカが鋭い視線を向けていた。その視線には自分と同じ想いを抱く恋敵として完全に認識したという意味が込められている。同性としても見惚れる美しさを持つ相手ではあるが、それでも負ける気はない。そんな気持ちが彼女の中に湧き、そしてさりげなくベルの腕にひっつく。

 

「ベル様、せっかくのご厚意ですからご相伴にあずかりましょう!」

 

そう言いながらリリルカは勝ち誇った顔をアイズに向け、アイズはそれを受けて少しだけムスッとしつつベルに近づくと空いている手を取った。

 

「ベル、案内する」

 

そう言って若干強めの力でベルの手を引き始めた。

 

「剣姫様、別に案内するほどの事ではないと思いますけど。大体中央辺りで皆様集まっていると思いますが」

「そんなことはないかな。色々とゴチャゴチャしているから、案内は必要。迷うといけないから」

 

 そう言って視線が合わさるアイズとリリルカ。その視線がぶつかり合い火花を散らしているのは目に見えて分かりきっており、ヴェルフはその光景に軽く頭を抱える。

 

(やっぱり修羅場になってるじゃねか!)

 

 頭が痛いはずなのに、何故だかこの光景に目が放せない。まるで喜劇を見ているような、愚か者を見て笑うかのような、そんな愉悦がヴェルフに走り無意識ではあったが口元が嗤っていた。

 そんな恋する乙女のバトル勃発に対し、その対象であるベルはというと…………。

 

「あ、それじゃアイズさん、お願いします。でも僕、結構食べるからなぁ。この階層にモンスターがいるなら狩ってきますけど、いいですか?」

 

 実に呑気にしていた。目の前で起っているバトルに対して気付くことなく、両者の熱意を気にすることなく普通にしていた。

 この男に思春期無し、性欲無し、恋愛思想無し。戦闘においては薩摩兵子、そして常時は紳士。しかし、その紳士は老人のような成熟したもの。故に下心など一切無い。

 だからまったく気付かないし感じない。彼にとって今の現状はロキ・ファミリアのご飯にご相伴にあずかれるのでありがたいのだが、かなり食べるのでその分は自分で何か確保した方が良いんじゃないだろうかと考えていることであった。

 その言葉の真意をロキ・ファミリアが知ったのはその食事の時だろうが、今はその時ではない。

 そしてベル一行はアイズに案内されてテントで囲まれている中の中央部へと向かう。その最中にベル達に向けられたのは奇異の視線だ。自分達の幹部にしてエースであるアイズと楽しそうに話す見知らぬ『余所者』がいる。それが誰なのか、そして冒険者として強いのか、そんな視線がベル達に向けられていた。

 その視線を向けられていることに当然ベルは気付いているが気にしてはいなかった。今は紳士なのでそうなって当然だと思っていたし、薩摩な時なら文句があるなら掛かってこいと言いかねない。故に視線は向けつつも何もしてこないなら問題は無い。

 そんなふうに考えていた所、突如としてベル達は声をかけられた。

 

「あ、首狩りくんだぁ!!」

「やけに皆が騒々しいと思ったらアイズの好きっもが」

「ティオネ、言っちゃ駄目」

 

 以前あったアマゾネスの姉妹であるヒリュテ姉妹であった。姉妹の妹の方であるティオナ・ヒリュテはベルの姿を見て瞳を輝かせ興奮気味にベルに飛びつき、姉の方のティオネ・ヒリュテは周りの団員が騒々しい理由がベルにあると言うことに気付き、自分の今現在のベルへの認識をそのまま口にしようとしてアイズに口を手で塞がれた。その後に出る言葉を察することが出来たのはリリルカとヴェルフの二人だけだろう。ベルは当然気付かない。

 

「いやぁ、君があの猛者と戦ってる時、本当に全身痺れるくらい凄いと思ったよ!」

「あんな化け物と渡り合えるくらいだから当然だとは思うけど、やっぱり非常識としか言い様ないわね、アンタ」

 

 ベルの戦う姿に感嘆し興奮気味に語るティオナ、そしてベルの強さを素直におかしいと突っ込むティオネ。

 そんな姉妹と話しをして、そこでアイズが強くなった理由にベルが関与しているということを聞かれるのだが、ベルは苦笑しながらこう答えるのだった。

 

「僕は別に何か特別なことをしたわけじゃないんです。ただ………そう、ただ普通に戦っただけ。首を取るためにする殺し合いを教えただけですから」

 

 ニッコリと笑ってそう答えるベル。だがその口元に、その気配にぞわりと薩摩な殺気が漏れ出し、それを感じ取った周りにいた者達は恐怖に怖じ気づいた。

 ただし、恋する暴走小人族のリリルカはそれを感じ取っても『ベル様ったらもう~』と顔を赤らめており、アイズにいたっては『ベル……凄い』と頬を赤らめながらそう漏らす。そんな反応をする両者にヴェルフは呆れるしかなかった。

 

 

 そして食事のご相伴にあずかったベルはそこでモンスターの料理を披露し、美味しいがロキ・ファミリアの面々にかなりのショックを与えることになった。中にはショックのあまり吐き出す者もおり、食事の最中にしてはあまりにも酷い事に。

 勿論ベルに悪気があったわけではない。ただ身体に合わなかったのだろうと何気なく普通にその肉に齧り付くベルがそこにいた。

 午後になりロキ・ファミリアの面々が特にベルの強さについて聞きたいという話が出て、そこでアイズがベルとの模擬戦がしたいとベルにお願いすることに。

 そのことに最初は苦笑して断るベルであったがアイズが真剣な様子でお願いするので応じることに。

 

「アイズさん、何回も言っていますが………本気でやらないと………死にますよ」

 

 そしてここで現れるのは薩摩兵子。その殺気、その壮絶な笑み、手柄への欲求に魂が震え上がる。その姿にアイズは表情を引き締めながら斬りかかった。

 そして始まった『殺し合いに近い模擬戦』にロキ・ファミリアの面々は顔を引きつらせ、アイズはポーションを三回も使うほどの怪我を負い、ベルは浅く斬られた箇所こそあれど平然と立ちながらふふんと笑う。紳士らしさの欠片もない、薩摩兵子らしい笑みであった。 

 これによってロキ・ファミリアの面々はアイズが最近強くなった理由を知り、アイズはベルに尊敬の念を込めてなのか頬を赤らめながらベルを見つめる。そんな視線を感じ取ったリリルカがジト目でアイズを睨み付け、ヴェルフはまたも呆れながら見ていた。

 そんな感じで時間が過ぎ、辺りはダンジョンの中だというのに夜の闇に包まれる。その中で火を燃やし明かりにして皆で集まり食事を取るロキ・ファミリアとベル達。フィンによって勇猛な冒険者だとベルは紹介され歓迎される。

 そうして始まった夕食。パンにシチューにサラダという組み合わせの中に一つ奇妙な形の果物があり、何でもこれはこの階層で採れる果物らしい。

 

「ベル、これどうぞ」

 

アイズからそう言われて渡された果物をベルはお礼を言いながら一口囓る。その途端に口の中に広がる果汁、そして甘み。それは果物の甘みを通り越して最早菓子と同じかそれ以上の甘さであった。

 

「これはまた、凄く甘いですね」

 

その感想にリリルカは興味を示したのか、ベルに笑いかける。

 

「ベル様ベル様、リリにもそれ下さい!」

 

そう言って口を開けるリリルカ。あ~んと言って開けている辺り、食べさせて欲しいのは自明の理。ベルに甘える気が満々であった。

 そしてここにいるのは紳士なベルだ。なら彼が取る行動も分かるだろう。

 

「いいよ、リリ。はい、あ~ん」

「ん~~~~~、確かに甘すぎですけど、ベル様に食べさせてもらえるなら極上の味ですぅ~」

 

ベルに食べさせてもらって破顔するリリルカ。その蕩けるような幸せな顔は可愛らしい。ベルからしたらただ食べさせてあげただけなのだが、リリルカからしたら間接キスでもあった。まさに極上の果物だったと言えよう。

 そんな幸せそうなリリルカを見て、今度はアイズが動き出す。

 

「ベル、私も………あ~~ん」

 

アイズは少しだけムクれ、そして顔を赤らめながらベルに果物を渡すと食べさせてと口を開けて目を閉じる。彼女からしたら始めての行為だろう。ドキドキして顔が熱くなるのが自分の事ながら良くわかり、そしてそれが余計に顔を赤くさせて恥ずかしくなる。

 そんなアイズにベルは微笑む。

 

「いいですよ、アイズさん。あ~ん」

 

そしてベルに食べさせてもらうアイズ。その時の顔はとても人形めいた美貌からはかけ離れており、恋する乙女の幸せそうな顔がそこにあった。それを見たリヴェリアが驚きのあまりスプーンを落としたのは言うまでも無い。

 

「確かにこれは…………いい」

 

恥ずかしいけど嬉しい、そんな感情を持て余しつつ受け取るアイズ。そんな彼女を見てリリルカはライバル意識を燃やし更にベルにアタックをかけるべくひっつく。

 そんなリリルカにアイズは対抗意識を燃やしてなのか、ベルの手をきゅっと握った。お陰でベルは食事がとれない。そんな状態になりヴェルフは呆れながらこの修羅場を愉しむことにした。

 そんなわけで賑やかな食事を楽しんでいたわけだが、何やら18階層の入り口付近が騒がしくなってきた。なのでそこに向かうベル達がそこで見たのは…………。

 

「もういい加減帰らせてくれよ、ヘルメス! もうベル君が無事なのは分かりきってるんだし。大人しく君は斬られればいいんだ、僕には関係ない!」

「い・や・だ! 俺だけこんな理不尽な目に遭うのは間違ってる。お前だけでも道連れにしないと割に合わないんだ」

 

自分達の主神と見知らぬ男神、そして周りにいる複数の冒険者達であった。

 

「あ、神様。何やってるんですか?」

 

ベルのそんな単純な疑問に対し、主神………ヘスティアはジト目でベルを見ながらこう答えた。

 

「君関連で酷い目に遭ってる最中だよ」

 

 

 こうしてダンジョンの中でベルとヘスティアは再会した。




速く進ませて薩摩が書きたいですね(笑)

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