やはりダンジョンに出会いを求めるのは間違っている   作:雨時々飴

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長きに渡り更新が滞り申し訳ありません
これからは更新速度を上げる所存です


ベル・クラネルは知りたい

どこまでも真っ暗な空間が広がる世界。

何の光も見出せない世界に俺は今立っていた。

 

 

「またこの夢か」

 

 

幾度となく見た夢。

暗い空間にただ投げ出されてはーー

 

 

『私の可愛い坊や、強くなりなさい。それが貴方の生きる意味』

 

 

ーー女性の声が聞こえる。

同じ言葉を目が醒めるまで聞く夢。

長い間見るに連れ、自分は強くなるのが使命だと催眠のように思い込むようになった。

 

 

「どれだけ強くなればいいんだ」

 

 

殺されかけたミノタウルスを鼻歌混じりに瞬殺するまでか?

それとも、俺が魅了された無口な彼女以上?

それとも、オラリオ最強と名高いオッタル以上に?

その質問に女性の声は返事をしない。ただ、強くなれと繰り返すだけ。

はぁ、と溜め息を一つ零して目を閉じる。

 

 

「早く起きねぇかな」

 

 

 

 

 

 

 

「彼は一体何者なのだろう」

 

 

ベットを占領し、静かに寝息を立てて寝ている少年を見て、白髪の少年ーーベル・クラネルは呟く。

ベルと彼の関係は一言で表すと『他人』だった。

偶然にもダンジョンに潜って二階層で巡り会っただけの赤の他人。

パーティーを組まずに彼に少し興味を持ち、興味本位で嫌がる彼に引っ付いていった。

彼は嫌がりながらも何処か嬉しさを含んだ雰囲気を醸し出していた。

だから、いつもなら断られたら引くベルは強引にも引っ付くという彼らしからぬ行為に出れた。

そして、彼に着いて行ったベルは驚愕の連続に見舞われた。

一人ながらもモンスターの群れを壊滅させ、あまつさえミノタウルスを倒してしまったのだ。

ベルは彼に引っ付いている時に自分と同じ新米冒険者であることを聞き出していた。

それだから、ベットで寝転がる彼がLv.1だとも知っているし、嘘の可能性を指摘した神ーーヘスティアが無礼講ながらもステータスをチェックしLv.1で間違いはなかった。

Lv.1でのミノタウルス撃破。前代未聞の大事件。

彼はダンジョン内で多くを尋ねても、多くは答えなかった。答えたとしても名前と年齢、好物や嫌いな食べ物と言った世間話の一環的なものだけ。

何処の【ファミリア】に所属しているのか、戦闘スタイルはどうやって確立されたのかなどの深く踏み込んだ質問には一切答えようとはしなかった。

 

 

「本当に彼は何者なのだろう」

 

 

ベルが此処まで他人に固執したのは理由があった。

Lv.1でのミノタウルス撃破も理由の一つではあるが、大きな要因となっていたのはこの場にいない神ヘスティアの一言。

 

 

『彼に関わるのはやめるんだ』

 

 

大のお人好しである普段のヘスティアからは想像も出来なかった一言だった。

しかし、ヘスティアが彼の何かに危惧を感じているのはベルでも分かった。

その何かは彼があの『黒い魔法』だろう。

あの魔法を見た瞬間に脳内で警鐘が鳴り響き、本能が彼を殺せと訴えかけていた。

分からない。何故、あの時に僕は無意識に彼を殺せと命じたのか。

そして、彼の危うさとは何か。

 

 

「ベル君、僕は今帰ったよ!」

 

 

ベルが思考の渦に飲み込まれていると、玄関先からドカンと荒々しく開け放たれる音と共に元気のいい声が聞こえる。

 

 

「神様、おかえりなさい」

 

 

ベルは思考を一旦中断し、親愛なる神様へと返事する。

振り向くと神様は急いで帰ってきたようで、髪はボサボサに乱れて額には汗が滴っていた。

 

 

「ベル君、ボクが留守中に異常はなかったかい!?」

「い、いえ⋯、何もなかったですよ」

「ならいいんだ!よかったよ」

 

 

何がよかったんですか?と口にしようとして止める。

聞いてもヘスティアが理由を素直に話さないと理解しているから。

尤もらしい理由で誤魔化すのがベルにも分かっていた。

 

 

(彼は何者なのだろう)

 

 

知りたい。彼が何者なのか、そしてミノタウルスと戦闘時に僕が助太刀を試みた時に彼が見せた悲しそうな表情の意味をーー。

 

 

「知りたい⋯」

 

 

ベルが零した小さな呟きを耳にし、へスティアは人知れず顔を顰める。

目の前で横たわる彼とベルは数奇な縁で結ばれているように感じる。

その縁は太く長く、片方が切ろうとしても何らかの形で前よりも強固に結ばれるような厄介な縁に結ばれているような予感。

長い時を過ごした神の予感は嫌な程に当たる。

出来る事ならばベルから彼を離したいと思うもののーー

 

 

(彼からは嫌な力を感じるものの、眠る彼に表情はどこか悲しげ。何故かほっとけないまでに脆そうだ)

 

 

ーー助けたい。

この時のみは自分のお人好しさが恨めしい。

彼は無意識下に助けを求めている。

 

 

(彼は一体何者なんだ)

 

 

ベルが持つ疑問と同様の疑問がヘスティアにも芽生える。

芽生えてしまった感情を即座に捨てる術を持たないヘスティアは静かに嘆息する。

これからベルに降りかかるで災いと、降りかかると分かっていながらも彼を見捨てきれない自分に嘆息を溢す。

これから起こりゆる未来は神をも分からない。




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