この貧乏店主に愛の手を!   作:勇(気無い)者

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遅くなって申し訳ない。
今回から王都での話になるんですが、今回の11から13まで続くんですよ。後から書き直さなきゃいけないとこが出たら嫌だなーって思って、王都での話を書き終えるまで投稿はしないでおこうと思ってたらこんな遅くなりました。ごめんなさい。


11.王都へ遊びに行こう 前編

「カズト」

 

 いつものようにクエストを受けようとクエストボードを眺めていた時の事。背後から声を掛けられ、振り返ってみればキョウヤが立っていた。

 

「キョウヤか。あれ、フィオとクレメアは?」

「二人なら転送屋に行っているよ」

「転送屋? どこかへ行くのか?」

「ああ、実は王都に行こうかと思っていてね」

 

 この国の首都である。レベル三十以上のベテラン冒険者が多く集う都だ。今のキョウヤのレベルは三十六であり、魔剣グラムの恩恵もあるので充分活躍出来る事だろう。フィオとクレメアがどうかは分からないが。

 

「そうなのか。まぁ、キョウヤのレベルなら何も問題ないだろうな」

「何度か行った事があるからね、特に問題はないよ。……それより、今日は君を誘いに来たんだ」

「俺を……?」

「良かったら、僕らと一緒に王都へ行かないか?」

「……はぁ?」

 

 何を言っているのか、とカズトは首を傾げる。彼は無限の魔力の所為でアクセルの街を離れる訳にはいかないのだ。その事情こそ話していないが、キョウヤもカズトがアクセルの街を離れようとしないのを知っている。

 その上で誘ってくるとはどういう事なのか。

 

「どういう事だ? 俺がこの街を離れるつもりはないって事を忘れた訳じゃないだろう?」

「勿論、忘れてないさ。でも、日帰りでこの街に戻れるのなら、別に構わないんじゃないか?」

「…………そういう事か」

 

 カズトはキョウヤの言わんとしている事を理解した。

 上級魔法のテレポートだ。それを使えば、どんなに離れた場所であろうと、あらかじめ登録しておいた場所へと転移出来る。カズトはテレポートを習得済みだ。

 

「転送屋の費用は僕が出すよ。それで一緒に王都へ行けば、君はいつでもテレポートで王都へ行く事が出来るだろう?」

「まぁ、そうだな……ただ━━━」

 

 カズトは懐から冒険者カードを取り出し、

 

「━━━レベル九の俺が王都に行ったとしても、何が出来る訳でもないと思うがな」

 

 そう、現在のカズトのレベルは九である。キョウヤと初めてクエストへ出掛けた時から凡そ二週間近くが経過したのだが、あの時からレベルがたったの三しか上がっていないのだ。

 モンスターの討伐をしていなかったのかと言われるとそうでもなく、寧ろ毎日のようにクエストは受けていた。それにも関わらず、上がったレベルはたったの三。上級職でももっと早くレベルが上がるだろう。

 この世界では、素質の高い者ほどレベルの上がりが遅くなるものだ。が、カズトのステータスは魔法に関する項目以外は大して高くない。決して才能がある、とは思えない。……冒険者という最弱職に就いているのだから当然と言えば当然だが。

 

 さて、そんなカズトが王都のクエストを受けられるかと聞かれれば、答えは断じて否である。いくら無限の魔力を持つとは言え、実際には上限が決まっているようなものだし、王都でのクエストはアクセルの街のクエストよりも難易度が断然高い。

 そんなクエストにレベルが二桁にも到達していない、駆け出し感丸出しのカズトが一人で挑むなど無謀としか言いようがない。

 ……そう、一人で挑むのなら。

 

「確かに、カズト一人で王都のクエストに挑むのは厳しいだろう。だからこそ、僕らと一緒に行くんだ」

「……一緒に王都のクエストを受けようって事か?」

「そういう事さ。王都で難易度の高いクエストをこなせば、上がりにくいカズトのレベルも流石に早く上がると思うし、テレポートの登録をしておけば王都とこの街を好きな時に行き来する事が出来る」

「……そして、あわよくばこれからキョウヤ達がアクセルを訪れた際、俺に王都まで送ってもらえるようになる、と」

「ははは、バレてたかい? 勿論、その時は依頼としてキチンと報酬は払うよ。……ちょっと図々しかったかな?」

「……いや、そんな事はないさ。キョウヤにはよく世話になってるしな。言ってくれればテレポートぐらい、いつでもやるよ」

 

 頼れる前衛(キョウヤ)と一緒のクエストは、安心感が一人の時の比ではない。なので、カズトとしてはキョウヤに出来る限り力を貸したいと思っている。

 だが、それは逆も然り。キョウヤの方も、カズトの攻撃・回復・支援魔法。そして何より、彼の考える策に助けられているのだ。そのお陰でクエストがいつもより早く終わっていると言っても過言ではない。

 

「ありがとう、助かるよ。……それで、どうする? 一緒に来てくれるかい?」

「ああ、いいぜ。寧ろ、俺としては嬉しい申し出だな」

「そうか。なら早速向かおうと思うんだけど」

「あー、家主さん(ウィズの事はキョウヤに伝えていない)に事情だけ説明しておきたいから、先に転送屋に行っててくれ」

「分かった。次の転送まで一時間ぐらいあるそうだから、焦らなくてもいいよ」

「そうか。それじゃあ後でな」

 

 そして、カズトは一度ウィズの家に戻って事情を説明した後、転送屋でキョウヤ達と合流。暫くして順番が回ってきて、王都へ転送された。

 

 

 

 

 

 

「はー……ここが王都か……」

 

 思わず呟くカズト。

 見渡す限り、人、人、人。アクセルの街とは比ぶべくもない人の数。まるで日本の首都のようである。建物もアクセルと比べて重厚で趣があり、大きい。

 そんな街並みを、まるで田舎から出てきたおのぼりさんの如く周囲をキョロキョロと眺めるカズトを見て、

 

「それじゃあ、まずは冒険者ギルドへ……と思ったけど、今日はカズトに街の案内をしようかと思うんだ」

 

 と、キョウヤが提案する。カズトは王都が初めてであり、どこに何があるのか全く知らない状態なので、クエストよりもまずは街の案内を、と気を利かせたらしい。

 しかし、カズトは遠慮し、

 

「い、いや、クエストを受ける方向で構わないよ。転送屋の代金を出してもらっちゃったし、その分を稼がないと」

 

 そう、カズトの分の転送屋の代金をキョウヤが出したのだ。一人当たりの料金は普通に六桁を超える為、カズトの持ち合わせが少し足りなかったのである。

 だが、レベルが三十を超える冒険者であり、散財するような性格でもないキョウヤとしてはそこまで躊躇するような金額でもない。

 

「気にしなくてもいいさ。それに、カズトにテレポートをしてもらう時、料金を少し割安にしてもらえたらいいなっていう下心もあるしね」

「ああ……そんなもん、別に金なんか払う必要ないさ。友人の頼みなんだ、言ってくれればいつでも無償で引き受けるよ」

「いや、しかしテレポートは魔力の消費が大きいと聞くし、無償というのは……」

 

 そう言うキョウヤを手で制し、カズトはフィオとクレメアに聞こえない程度の小声で、

 

……俺の特典は知ってるだろう? テレポートは確かに魔力の消費が大きい方だが、俺からすれば大したもんじゃない

 

 キョウヤに耳打ちする。

 テレポートの消費魔力は距離によって変わってくる━━若干、という程度だが━━が、アクセルから王都程度の距離ならば、十数回ぐらいは連続して行えるだけの魔力がカズトにはある。

 彼の魔力容量は日に日に増しており、この異世界に来たばかりの時はテレポートを二回か三回使えば魔力切れを起こす程度の魔力量でしかなかったが、今ではその五倍以上である。ありえない程の成長率だ。

 しかも、特典のお陰で時間を置いて魔力を回復すればまたすぐに使えるようになる。いよいよチートとしての片鱗を見せ始めていた。

 ……毎朝死にかけるのは未だ変わらないが。

 

「まぁ、そんな訳だから。テレポートが必要ならいつでも俺を頼ってくれ。……っても、まだ王都とアクセルだけしか行けないけどな」

「……ありがとう、カズト」

「あのー、そろそろいいかしら?」

 

 カズトとキョウヤがずっと二人だけで語っていたところ、折を見てクレメアが話し掛けてきた。

 

「とりあえず、これからどうするのかしら? カズトに王都を案内するとして、どこから回るか決めてる?」

「そうだね……とりあえず、僕らは宿を取らなきゃならないから、まずは宿に寄って部屋の確保かな。それから街を案内しよう。それでいいかな?」

「俺は異存ないよ」

 

 カズトに続き、フィオとクレメアも異存なしと続く。

 それから四人は宿で部屋を取った後、カズトに王都を案内すべく街中を歩いて回った。キョウヤ達が行きつけの武具屋からポーションなどのアイテムが売っている店など、様々な店を紹介してもらったのだが、ハッキリ言って今のカズトに利用出来るような店ではないというのが分かった。主に金銭的な意味で。

 そうして店々を回っている内に時刻は昼過ぎとなり、四人は昼食を済ませ、いよいよ冒険者ギルドへ向かおうという時の事。

 

「……あれはなんだろう?」

 

 カズトの言葉にキョウヤ達も足を止める。見れば、何やら人集りがしているではないか。

 人混みを掻き分け、中心に出てみれば。

 

「さぁさぁ! 他に挑戦者はいないか⁉︎ 勝てば賞金十万エリス! 我こそはという力自慢の方は前へどうぞ!」

 

 恐らく二人組なのであろう男が二人。片方は今、挑戦者はいないかと声をあげた男。

 もう片方は如何にも屈強そうな筋骨隆々の男。こちらは机の前の椅子に腰掛け、黙している。

 何やら催し物が開催されている様子である。祭りでもないのに珍しい事もあるものだ。

 気になったカズトが近くの見物人に何の催しなのか尋ねてみると、どうやらアームレスリングで勝てば賞金をもらえる、というものらしい。

 

「……キョウヤ、対戦してみたらどうだ?」

「えっ!? い、いや、僕は遠慮しておくよ。どう見たって僕じゃ敵わない」

 

 遠慮するキョウヤを余所に、カズトは筋力強化の支援魔法をキョウヤに使った。

 

「……カズト?」

「これで勝てるんじゃね?」

「い、いや……これはズルなんじゃないか……?」

「いや、でもほら」

 

 そう言ってカズトが指差す先には『支援魔法やスキルは好きに使って頂いて構いません』と書かれた看板が。

 

「……いいのか」

「いいらしいよ。どうする?」

「うーん……まぁ、やるだけやってみようか。折角かけてもらった支援魔法が無駄になるのもアレだしね」

 

 キョウヤは挑戦してみる気になったらしい。支援魔法の魔力分など、数分の内に回復する程度でしかないので、カズトとしては無駄になっても全く気にしないのだが。キョウヤがやる気になっているようなので、カズトはそれについて何も言わなかった。

 そして、キョウヤが名乗りをあげる前に別の挑戦者が現れたので、それを見守る事に。彼もなかなかゴツイ見た目をしており、見た感じではいい勝負になりそうだ。

 

「挑戦料は五千エリスだよ!」

 

 そう言われ挑戦者が五千エリスを払い、いざ挑戦となったのだが。

 

「レディー……ファイト!」

 

 ガンッ‼︎‼︎

 

 ━━━挑戦者は瞬殺された。

 

「「「「「おおおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」

「…………」

 

 湧き上がるギャラリーとは対照的に、思わず無言になるカズトとキョウヤ。対戦相手の男が滅茶苦茶強いというのは、今の対戦を見て分かった。

 何故なら、あの対戦相手の男からは全く力む様子が見受けられなかったからだ。

 普通、腕相撲をする際は腕と共に身体も同じ方向へ倒してしまうものだろう。だが、あの男はただ腕を動かしただけだ。腕の力だけで圧勝してみせたのだ。

 カズトは成る程と納得する。あれだけ強ければ支援魔法やスキルありでオーケーだというのも頷けるものだ。

 

「な、なぁ、キョウヤ。俺が(けしか)けといて何だけど、やっぱりやめといた方がいいと思うんだが……」

「……いや。一度やると決めた以上、背を向ける訳にはいかない」

「お、おい……!」

「えっ、ちょっと、キョウヤ!? もしかして挑戦する気なの!?」

「や、やめといた方がいいよ! 怪我しちゃうよ!?」

 

 カズトだけでなく、フィオとクレメアも止めに入るのだが、キョウヤの意思は固い。挑戦料の五千エリスを支払い、対戦相手の向かいに座った。

 

「おいおい、兄ちゃんやめとけって!」

「装備はご立派だが、そんなヒョロそうな身体じゃ勝負は見えてるって!」

「くたばれイケメン!」

「どう足掻いても負けだな」

「確定的に明らか」

「何ですってー⁉︎」

 

 そんな、キョウヤを小馬鹿にしたような声が飛び、フィオとクレメアがそれに食って掛かって二人をカズトが宥め。

 そうこうしている内に、試合が始まる。

 

「レディー……ファイト!」

「ふっ!」

 

 キョウヤが全ての力を右腕に込め、全力で相手を倒しに掛かる。が、相手の腕はビクともしない。

 そのやりとりも一瞬の事で、対戦相手の男がピクリと眉を動かしたものの、次の瞬間にはガンッ、とキョウヤの腕が倒された。

 やはり瞬殺である。しかも、負けた際に変な風に捻ったのか、キョウヤは肩を抑えていた。

 

「はっはっは! だから言ったんだよ! やめとけってな!」

「ヒョロい癖に無理するから!」

「出てこなければ、怪我しなかったのに!」

「くたばれイケメン!」

「ちょっとあんた達! キョウヤに向かって何て口きいてんのよ!」

「そーよそーよ!」

 

 野次馬達が煽り、またしてもフィオとクレメアが食って掛かるが、そんな事よりもキョウヤである。

 カズトは急いでキョウヤの元に駆け寄り、

 

「おい、大丈夫か! 今、ヒール掛けてやるからな! ……ヒール!」

 

 キョウヤの身体が淡い光に包まれ、痛みで歪んでいた表情が和らいだ。

 

「……ありがとう、カズト」

「気にすんなよ。それより、肩は大丈夫か? 痛みは残ってないか?」

「ああ、大丈夫だ。痛みはないよ」

 

 キョウヤが肩を回してみせる。どうやら本当に痛みはなくなったようだ。

 カズトはホッと息を吐き、キョウヤと共にその場を後にしようとしたのだが。

 

「待て」

 

 今まで一言も喋らなかった対戦相手の男が二人を呼び止めた。

 

「お前、クラスは?」

「……ソードマスターですが、それが?」

「レベルは?」

「……三十六です」

「ふむ……」

 

 それだけ聞くと、今度はカズトの方に視線を移した。

 

「お前、クラスは()()()プリーストか?」

「えっ!? えっと……違います……」

「なに? では、プリーストか?」

「い、いえ……冒険者です……」

「何だと? ……レベルは?」

「…………九です」

「…………」

 

 レベルを聞いた途端、彼は難しい顔をしてカズトをじっと見つめた。顔が怖いので、カズトとしては早々にこの場を立ち去りたい気分である。

 と、ここでキョウヤがずいっとカズトの前に出て。

 

「僕の仲間が、何か?」

 

 ━━━俺が女だったら惚れてたかもしれん。

 

 自分を庇うキョウヤを見ながら、そんな事を思うカズト。たったそれだけで惚れるとは、どんだけチョロいのかという話だが。今時、少女漫画でもそんな即落ち展開は無いだろう。……多分。

 

「いや……お前に掛かっている支援魔法は誰が使ったのか気になってな」

 

 その言葉に、キョウヤとカズトはギョッとする。まさか支援魔法を使っているのがバレるとは思わなかったのだ。

 

「……支援魔法を使っても構わないという話では?」

「ああ、いや。別に責めている訳ではない。大体、勝ったのは私のほうだしな。文句をつける意味が無かろう。ただ、なかなかに()()()()()()()を掛けるものだと思ってな」

「え……?」

 

 キョウヤがチラリとカズトの方を見る。

 実際、カズトが掛けた筋力強化の支援魔法は、高レベルのアークプリーストが使った場合と遜色ない程度の効果があった。本来ならば、冒険者であるカズトが支援魔法を使ったところで、普通のプリーストにすら劣る効果しか出ない筈なのだ。

 だからこそ、彼はカズトが冒険者でレベルもたったの九だと聞き、怪訝に思ったのである。

 

「お前、魔力は━━━」

 

 そして、彼がカズトに何かを聞こうとしたところで。

 

『魔王軍襲撃警報! 魔王軍襲撃警報!』

 

 大音量のアナウンスが、王都中に響き渡るのであった。

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