この貧乏店主に愛の手を!   作:勇(気無い)者

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平均4000だったのに今回だけ8500文字とは……


8.魔剣の勇者に友達を

 カズトがこの世界に降り立ち、早いもので二週間が過ぎた頃の事。毎朝死にかけてはウィズに起こして(助けて)もらい続けるのは変わらなかったが、色々な事があった。

 日雇いのバイトに出かけたり、暖かくなり始め段々と活動する者が増えてきた冒険者達にスキルや魔法を教えてもらったり、魔法の実験や魔力について理解を深めたり、ウィズと一緒にクエストへ出かけたりなどなど。毎日が充実していると言っても過言ではないほど、カズトは異世界での暮らしを気に入っていた。

 中でも、ウィズと一緒に暮らしているというのが大きい。最近では、カズトはウィズの事を完全に異性として意識してしまっている。それはもう、自分の一生を彼女に捧げたいと思っているぐらいには。

 まぁ、表には出していないので、ウィズはカズトの気持ちなど知らないのだが。

 

 それは兎も角として。カズトは今、冒険者ギルドにてクエストボードを眺めているところである。

 実は、今回のクエストはカズト一人で行う事になっている。前回、前々回のクエストでは、カズト一人でも難なくこなせるようなもので、ウィズの出番が無かった為だ。いつまでもウィズにおんぶに抱っこではよろしくない。

 そんな訳で、何か簡単なクエストがないかとクエストを見繕っているのだが。

 

「ちょっといいかな」

 

 ふと、背後からの声。振り返ってみれば、そこには青い鎧を身に纏い、カズトと同じ黒髪黒目の少年が立っていた。年頃も同じくらいであろうか。顔立ちを見ても、カズトと同じ日本人のように思える。

 

「君はスズキカズト君、で合ってるよね?」

 

 そう聞いてくる少年だが、カズトの方は彼に見覚えがない。この街で他の日本人に出会った事がないので、彼のような黒髪黒目の者を見かけたら忘れよう筈もないのだ。

 

「……そう言う君はジョナサン・ジョースター」

「い、いや、違うよ……」

 

 それはそうだろう。彼はどう見ても日本人である。ただのギャグのつもりで言ったのだが、ウケなかったようだ。

 

「僕の名前はミツルギキョウヤ。君と同じで、女神様の導きでこの地に降り立った日本人だよ」

 

 彼はそう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 それからカズトとキョウヤは軽く自己紹介を済ませて席に着き、少し話をする事にした。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

 すると、ウエートレスのお姉さんがスッと近寄ってきた。席に着いてまだ数秒程度しか経っていないのだが、早すぎではなかろうか。

 だが、二人共お腹が空いている訳ではないので、キョウヤはネロイドを、カズトはネロイドのシャワシャワを注文した。

 ウエートレスのお姉さんが下がり、改めてカズトが口を開いた。

 

「それで、俺に何か用でも?」

「ああ、いや。特に用があるって訳ではなかったんだけど、特徴的な服装をした黒髪黒目の男が冒険者ギルドに登録したと聞いてね。一度、会って話をしてみたいと思っていたんだ。きっと、僕と同じ日本人だろうと思ってね」

 

 事実、君はやっぱり日本人だった、と。キョウヤがそう笑いかけてきた。

 そんな彼を見て、カズトはふと、とある男性を思い浮かべた。ギルドで受付を担当している、お兄さん(ホモの人)である。キョウヤの優しそうな笑顔が、あのお兄さんとダブって見えたのだ。

 

「……その前に一つ聞いていいかな?」

「ん? 何かな?」

 

 そう言ってキョウヤがネロイドの入ったジョッキに口をつけ、

 

「キョウヤって、同性愛者(ホモ)じゃないよね?」

「ブッ……⁉︎」

 

 軽く噴き出した。

 

「ゲホッゲホッ……! 君はいきなり何を言うんだ⁉︎」

「ああ、いや、えっと……同性愛者じゃないんだよね? 違うよね?」

「当たり前だよ! いきなり失礼過ぎやしないか⁉︎」

「す、すまない……いや、この世界に来てすぐに、ちょっとした事があってね……」

 

 カズトはキョウヤに語った。カズトがこの世界に来てすぐの時、冒険者ギルドで何があったのかを。

 それを聞き終えたキョウヤは、目を丸くしていた。そして、受付の方を振り返る。そこでは、件のお兄さんが女性冒険者の相手を終えたところであった。

 すると、お兄さんがキョウヤの視線に気が付いたのか、柔和な笑みを浮かべながら手を振ってきた。

 慌てて視線を逸らすキョウヤとカズト。

 

「え……? いや、え……? 今の話、本当なのかい……?」

 

 確認するようなキョウヤの言葉に、カズトは黙って頷いた。

 どうやらキョウヤはあのお兄さんが同性愛者(ホモ)である事を知らなかったようだ。現に今、彼の顔は青ざめている。

 その気持ちは痛い程に理解出来るカズト。初めてその事実を知った時は、キョウヤと同じ心境を味わったのだ。

 

「そ、そんな事よりも」

 

 キョウヤは努めて明るい声を出し、話題を変える。

 

「君も女神様の導きでこの世界に来たのだから、転生の特典はもらっているよね? 君は何をもらったんだい?」

 

 因みに、僕はこの魔剣グラムをいただいたんだ、と。キョウヤが帯剣している剣を指さした。

 使い手の能力を飛躍的に向上させ、あらゆるモノを斬り裂くという神器である。ただ、キョウヤ以外には単に頑丈でそこそこ鋭い斬れ味の剣でしかない。彼以外にその性能を引き出す事は出来ないのだ。

 そこまで話された以上、余り話したいとは思っていないが、カズトの方も話さざるを得ない。別にキョウヤが勝手に話したのだから、カズトまで話す必要はないのだが、彼はそういう性格の人種ではなかった。

 

「……俺は『無限の魔力』を司る神器を身体に入れてもらったんだ。お陰で魔力には困っていないよ」

 

 魔力に困らされてはいるけど、という言葉は呑み込んだ。無限の魔力の所為で毎朝死に掛けているという事まで他人に話す気はない。それを話すという事は、必然的にウィズの事まで話さなければならないのだ。

 そうなると、ウィズがドレインタッチを使える事が露見し、確実に迷惑を掛ける羽目になる。それだけは絶対に避けたい。

 

「へえ、それはすごいな! なら、カズトはウィザードなのかい?」

 

 キョウヤの言葉に、カズトは首を横に振る。

 

「じゃあ、プリースト?」

 

 首を横に振る。

 

「じゃあ、精霊使い?」

 

 首を横に振る。

 

「……? なら、クラスは何に就いてるんだい?」

「冒険者」

「…………え? 今、なんて……?」

「冒険者」

「……………………え?」

「冒険者」

 

 カズトは懐から冒険者カードを取り出し、キョウヤにそれを見せた。

 そこのクラスの欄には、しっかりと『冒険者』と記載されている。

 キョウヤは冒険者カードを二度見した後、カズトに視線を戻した。

 

「……えっと、ウィザードやプリーストに適性が無かったのかい?」

「いや、どちらも適性はあったよ。精霊使いもね」

 

 何なら、あと一つか二つレベルを上げられればアークウィザードにだってなれる。ステータスが少し足りなかったというだけで、それだけの適性はあったのだ。

 だが、カズトはどの職業にも変えるつもりは無かった。それは勿論、彼がなりたいと思っていた魔法戦士職にも、である。

 何故なら、カズトは探しているからだ。朝、目覚めた時にいちいち死にそうになるのを防ぐ事の出来る魔法やスキルを。

 クラスが冒険者であれば、あらゆるスキルを覚える事が出来る。それはクラス別の魔法やスキルだけでなく、リッチーなどの種族的な魔法やスキルも含めて、だ。

 もしかしたら、その中に自分の中の無限の魔力をコントロールする事が出来る魔法やスキルがあるかもしれない。そんな希望があるからこそ、カズトは他の職業に変えるつもりはないのである。

 が、そんな事をキョウヤに言う訳にはいかない。それを話すという事は、自分を取り巻く全てを話さなければならないのだ。

 

「ちょっと、理由があってね……」

「理由? どんな……?」

「悪いけど、人には話せない」

「……そうか。なら、何も聞かないよ」

「助かる」

 

 それだけ言うと、カズトはシャワシャワを一気に飲み干した。

 

「ぷはぁっ! ……俺はそろそろクエストに行くよ。色々話せて楽しかった」

「ああ、待ってくれ」

 

 去ろうとしたカズトを、キョウヤが呼び止める。

 

「良ければ僕もクエストに連れて行ってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、アクセル近郊の森の中。ついこの間、カズトとウィズがゴブリンの群れを駆逐した辺り。カズトとキョウヤは二人揃って茂みに身を潜めていた。

 

「それで、どうするんだい?」

 

 キョウヤが尋ねる。どうするとは、崖下に集っているコボルトの群れの事だ。ざっと五十近くは居るだろうか。崖上の茂みに居るカズトとキョウヤには気付いていない。

 そう、コボルトである。ゴブリンと対を成すような存在、人に近い形をした獣のモンスター。カズトが冒険者ギルドで受けた依頼は、このコボルトの群れが森に棲みついてしまったので駆逐してほしい、というものであった。

 ハッキリ言って、カズト一人だと厳しいクエストである。それは、コボルトの相手がという意味ではなく、近くに居るかもしれない初心者殺しの相手が、という意味だ。

 しかし、今のカズトには頼もしい味方(キョウヤ)が居るうえに、ある盗賊の少女から敵感知スキル━━それだけでなく、他の盗賊スキルも━━を教わっているので、奇襲を受ける心配がない。

 なれば、後は作戦を立ててモンスターを駆逐するのみである。

 

「完全奇襲のアドバンテージを活かしたい。そうだな……まず、俺がアースシェイカーの応用で、コボルト達を囲むように土の壁を作り━━━」

 

 作戦の詳細をキョウヤに伝える。彼は全てを聞くと満足そうに頷き、それを支持した。

 

「その作戦なら確実に上手くいくと思う」

「そうか。前衛は任せるよ」

「ああ、任せてくれ。……しかし、魔法っていうのは本当に便利だな」

「……? どうしたんだ、急に?」

「……いや、何でもないよ」

「…………??」

 

 キョウヤの妙に気になる言い方が引っかかるが、カズトは気持ちを切り替えてコボルトを見据える。棍棒で地面を叩いたり、ゴロンと横になって昼寝したり、その辺をうろうろしたりと、それぞれ思い思いに過ごしている。

 そんなコボルト達を見ながら、カズトは詠唱を開始した。先ほど言った通り、まず初めに使うのはアースシェイカーの魔法である。

 魔法にはイメージが一番大切だ。それが崩れると、魔法は狙ったところに飛んでいかないし、思ったような効果が得られない。だから、カズトはイメージする。コボルト達を囲う事の出来る土の壁を。

 そして、詠唱が完了した。

 

「アースシェイカー!」

 

 ズン、と突き上げるような衝撃が地面を走った。それと同時、コボルト達を囲うように土の壁が地面から突き出る。が、カズトとキョウヤの居る方にだけ壁がなく、三面のみ。

 突然の事に驚き戸惑うコボルト達。その隙に、カズトが次の魔法をコボルトに向けて叩き込む。

 

「ファイアーボール!」

 

 火球が飛び、数体のコボルトが焼け死ぬ。

 そして、次の魔法の詠唱に入るが、カズト達に気付いたコボルト達の何体かが弓を持ち、矢を放ってきた。

 

「フッ!」

 

 それをキョウヤがグラムで斬り払う。彼の腕ならば難なく出来る芸当だ。

 

「よし、キョウヤ! 下がれ!」

 

 詠唱を完了させたカズトが叫び、キョウヤはそれに従い下がる。

 そして、カズトが魔法を解き放った。

 

「フラッシュ!」

 

 眩い閃光が辺りに走る。それにより、全てのコボルトは一時的に視界を奪われた。

 それを確認したキョウヤがグラムを手に崖下へと飛び降り、コボルト達に斬りかかる。

 カズトもそれに続きたいところだが、流石に三メートル近い低層断崖を飛び降りるのは躊躇われた。キョウヤはレベルが高いうえに、グラムによって能力が高まっているから飛び降りられるのだ。カズトが同じことをした場合、下手したら怪我をするかもしれない。

 なので、迂回して降りる事に。道中、魔法の詠唱だけは行っておく。

 そして、下に着いた頃にはコボルトの数が半分近くまで減っていた。流石にキョウヤは強い。カズトも詠唱していた魔法を起動し、戦線に参加する。

 

「ライト・オブ・セイバー!」

 

 叫びながらカズトが手刀を振るうと、手刀の先から光の剣が伸びて近くのコボルトを斬り裂いた。

 ライト・オブ・セイバーは上述の通り、手刀から光の剣を発生させて敵を斬り裂く上級魔法である。

 そう、上級魔法だ。カズトは一週間ほど前に、ウィズから幾つかの上級魔法を教わり、それらをモノにしていた。瞑想スキル習得の訓練の時、魔力の流れを完全にコントロール出来るようになったおかげで、サクッと覚えられたのである。

 カズトとキョウヤは背中を合わせ、周囲を警戒するように立つ。コボルト達が視力を取り戻し始めているのだ。それぞれ棍棒や弓などの武器を持ち、油断なく二人を睨んでいる。

 

「……こんな時になんだけど、漫画みたいな状況だね」

 

 警戒しながらも、キョウヤがそんな事を言い出した。

 確かに彼の言うとおり、敵に囲まれた状況で仲間と背中合わせに戦うというのは、漫画などでありがちな展開である。二人は今、まさにそのような状況に置かれていた。

 

「不謹慎かもしれないけど、こういうのって少し憧れてたんだよね」

「…………ハハッ!」

 

 キョウヤの言葉に、思わず笑いが漏れてしまった。それは別にキョウヤの事を嘲笑った訳ではなく。

 

「━━━俺もだよ!」

 

 カズトがそう言うと、二人は弾かれたように駆け出し、コボルトの群れに斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

「それでは、こちらが報酬になります」

「どうも」

 

 カズトは受付嬢から報酬を受け取ると、近くで待っていたキョウヤの元へ歩み寄る。

 

「ほら、報酬の半分だよ」

 

 そう言ってカズトが硬貨の入った袋を差し出したが、キョウヤはそれを押し返した。

 

「いや、報酬は要らないよ。僕としては今回のクエストは楽しかったし、得られたものもあったからね」

 

 キョウヤの言う得られたものとは、カズトの事である。彼には何故か同年代の男の友人が出来ず、こうしてカズトと共にクエストへ行ったり仲良く話したりというのは中々に得難い事であった。

 それに、キョウヤは自分が居ても居なくても、カズトは一人で戦えただろうと思っている。寧ろ、キョウヤが居なかったらカズトは別の作戦で、もっと上手くコボルト達を完封していた事だろう。

 カズトは、わざわざキョウヤが一緒に戦える作戦を考え出したのだ。事実その通りであり、キョウヤはそれを分かっているからこそ報酬を受け取る事など出来ないのである。

 

「悪いが、報酬はキチンと受け取ってもらうぜ」

 

 対して、カズトとしてはキョウヤの存在は非常に大きなものであった。

 命懸けの戦いに臨む際、やはり仲間が居るというのはありがたいものである。それも、自分より強い格上の存在ともなれば、安心度はまるで違う。事実、カズトは今回ウィズが一緒に居るような安心感があったのだ。

 特に、一対一だと危険度の大きい初心者殺しも、キョウヤであれば楽勝というのは大きなポイントだろう。キョウヤが居たからこそ、カズトは安心してクエストに臨めたのである。

 何より、

 

「でないと、俺は一緒に戦った仲間が居たのに、報酬を独り占めする阿呆になっちまう。そんなの、ウィ……あの人に顔向け出来なくなってしまうからな」

 

 カズトは押し返してきたキョウヤの手を更に押し返した。

 

「いや、しかし……」

「しかしもカカシもねーよ。キョウヤは黙って受け取ればそれでいいんだっつーの。ほら」

「…………分かったよ」

 

 カズトから絶対に引かないという意思を感じとったキョウヤは、やがて観念したようにそれを受け取った。

 そして、その袋を見ながら考え込むような表情を浮かべ、意を決したように口を開く。

 

「カズト」

「うん? どうした?」

「僕のパーティーに入ってくれないか?」

「丁重にお断りする」

 

 即答であった。キョウヤがそう言うのを予期していたのかもしれない。

 

「……理由を聞いても?」

「理由は……そうだな、この街を離れられないから、とでも言っておこうか」

 

 厳密には、ウィズの側を離れられないから、であるが。彼女が居なかったら、誰が毎朝カズトを起こす(助ける)というのか。ウィズ以外に居ない。

 

「……どうしても駄目かい?」

「どうしても駄目だよ」

「…………そうか」

 

 キョウヤは軽く溜め息を吐き、

 

「全く、君って男は強情だな」

「そんなに褒めるなよ」

「いや、別に褒めてはないよ……」

 

 勿論、そんな事はカズトも分かりきっている。ただのギャグだ。やっぱりウケなかったようだが。

 

「でもまぁ、日帰りのクエストを臨時でって事ならたまにパーティーを組んでもいいけどな」

「本当かい?」

「ああ、俺みたいな低レベルの最弱職でも良ければ、な」

 

 言って、カズトは冒険者カードを懐から取り出し、ヒラヒラと振る。

 現在、カズトのレベルは今回のクエストで一つ上がって六。少なくとも、普通の冒険者であれば既にレベルが十を超えているぐらいの敵を今まで倒してきたのだが、カズトのレベルは未だに六なのである。レベルの上がりがかなり遅いが、カズトは普通のレベル上昇率の基準を知らないし、キョウヤはカズトがどれだけのモンスターを倒したのかを知らない。

 つまり、カズトは自分のレベルの上がりが異様に遅い事に気付いていないし、キョウヤも現時点でそれを知る事はないのだ。

 しかし、いつかは気付くであろう。多分。きっと。

 

「カズトならいつでも大歓迎さ。というか、そうでなければパーティーには誘ってないしね」

「それもそうか」

 

 二人揃って笑い合う。

 

「それじゃあ、俺は帰るよ。またな、キョウヤ」

「ああ、また会おう。カズト」

 

 そうして別れを告げ、カズトは冒険者ギルドを後にした。

 そして、彼と入れ替わるように、二人の少女がギルドに入ってきた。キョウヤのパーティーメンバーである、フィオとクレメアだ。

 

「あっ、キョウヤ! こんなところに居たのね!」

「探しちゃったよ!」

 

 二人はキョウヤを見るなり、駆け寄ってきた。

 

「ああ、二人とも用事は済んだのかい?」

「ええ。キョウヤはどうしてたの?」

「僕は、さっきまで友達と一緒だったんだ」

「と、友達……? その人って、女の子……?」

「いや、男だよ。僕と同い年だった」

「ええっ⁉︎ キョウヤに男の友達⁉︎」

「しかも、同い年の男の子⁉︎」

 

 フィオとクレメアが驚きの声をあげる。

 ミツルギキョウヤには男の友達が何故か出来ない。そう、何故かは分からないが、男の友達が出来ないのだ。何故なのかは分からないが。

 代わりに、女性にはモテる。キョウヤはイケメンに分類されるので、女性にはモテるのだ。

 しかし、何故か男には嫌厭(けんえん)されがちである。何故であろうか。不思議である。

 その辺りの事をフィオとクレメアは知っているので、思わず驚いてしまったのだ。

 

「な、何で二人ともそんなに驚くんだ……?」

「だ、だって……キョウヤって今まで男の友達が出来なかったから……」

「急に男の友達が出来たって聞いたら、つい……」

「い、いや、確かにこっちに来てから全然友達が出来ないけど……それでも、故郷では友達は多い方だったからね……?」

 

 言わずもがな、日本での事である。

 

「……パーティーに誘ったら断られたけど、日帰りのクエストを臨時でって事なら組んでくれるって言ってたから、近い内に紹介出来ると思う」

「そ、そうなんだ……。あの、キョウヤ?」

「うん? 何かな?」

「その……無理に紹介しようとしなくていいからね?」

「そ、そうそう! キョウヤには私達が居るんだから、気にする事ないって!」

 

 そう言うフィオとクレメアの視線は、どこか優しげであった。何というか、可哀想な人を見るような、生暖かい視線。

 

「…………いや、待って。本当だから。本当に今日、友達が出来たから!」

「む、無理する事ないよ、キョウヤ!」

「そ、そうそう! キョウヤには私達が居るんだから!」

「本当なんだってば!」

 

 その後、二人に信じてもらうのに小一時間ほど掛かったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、カズトの方はと言うと。

 

「受け取れませんってば! 今回、私は参加してないんですから!」

「いいえ! 俺は以前言いました! これからクエストの報酬の半分をウィズさんに払うと確かに言いました! そしてウィズさんはそれを了承しました!」

「まっ、待ってください! それは一緒にクエストを受けた時だけの事ですよね⁉︎」

「いいえ違います。俺が一人で受けた時も入ります」

「い、いえですから、私は参加してないんですからそんなに受け取れませんよ! 今回なんて、他の人とパーティーを組んで報酬を折半したのに、そのまた半分を私に渡してしまったら殆ど残らないじゃないですか!」

「一向に構わんっっ」

「構います! 私は構います!」

「ですが、報酬から家賃を払う約束ですし」

「報酬の半分は流石に多すぎますよ! そんなに気にする事はありませんから!」

「そんな事はありません! 俺はウィズさんの為なら、報酬を全額差し出してもいい覚悟があるっ!」

「そんな覚悟要りませんから! もう少し欲を持ってください!」

 

 そんな感じで、報酬の半分を渡したいカズトと、そんなに多くは受け取れないウィズとで、軽い口論になっていたのだが。

 

「やめてください! 頭を上げてください、カズトさん!」

「ウィズさんが! 受け取るまで! 土下座をやめないぃっ‼︎」

 

 と、訳の分からないカズトのゴリ押しにより、結局ウィズが折れて受け取る運びとなったそうな。

 ただ、これからの支払いは報酬の二割と決められた。互いに一勝一敗の引き分けであろう。……何が引き分けなのかは謎だが。




このすば男キャラって良い人多いですよね。ミツルギさんとかバルターさんとか。
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