あれ?これって料理小説だっけ?
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未だに日が登りきっていない中、シロウは財布と袋を持って出歩いていた。その目的は金がねぇぇ!と言って泊まりに来ているグレンの朝食の食材を購入するためだ。
「どれもいい魚だな...どれにするか......」
「お、また来たのかい兄ちゃん」
「あぁやはりここの魚が一番でね、新鮮で種類が豊富。全く素晴らしい店だよ」
「おいおい褒めるな褒めるな、褒めたって最近入荷した鯛ぐらいしかでねぇぞ」
シロウと親しげに話す店主が氷で締められている鯛の尻尾を持って見せてくる。
朝飯に出すにして重すぎる......晩飯用だな。
朝の食材を買いに来たのに、夜の献立まで決まり一石二鳥だった。
鯛以外にも魚の開きを買っていく。
「これと鯛をもらおう」
「おっ、いいね。さすが兄ちゃん目の付け所がいいねぇぇ。よしさらにサービスしとくぜ」
店主は鯛と2匹の開きが入った袋に、近くにあった蟹を入れてくる。
さすがにそれはと断ろうとするが、兄ちゃんに食べて欲しいんだと言われ有難く頂く。
今日もいい買い物が出来たと足が軽くなる。
家に帰るとすぐに食事の支度を始める。
まず時間のかかる米を炊き始め、次に魚の開きの下処理をする。
グレンは基本骨がある事を嫌うので、丁寧に丁寧に骨をピンセットを使って抜いていく。
細かな骨を取り終わると、両面に塩を振りかけ魔力で火をつけじっくり低温で焼いていく。
魚がいい色に焼け匂いを放ち始めたタイミングで、グレンが目を覚まし奥の部屋から出てくる。
「ふわぁぁ......ねみぃぃ...美味そうだな」
「少しまて後少しで終わる」
最後に汁物を作る。
魔力で冷やし続ける箱の中から、一つの鍋を取り出す。
その鍋の中には、昨日の夜の内から煮干と昆布を水につけていた物をが入っていて、いい出汁がでている。
それを火につけ沸騰する前に火を弱め、味噌を溶かして火をつけている間に切っていたネギとワカメ、そして手作りの豆腐を入れる。
沸騰しないように弱火で軽く火を通したあと、丁度炊けたご飯と共に器によそう。
そして最後の仕上げとして軽く卵を溶き、熱していた細長いフライパンに入れ卵焼きを作り、食器の上に盛る。またもや丁度のタイミングで魚が焼け、これで全ての準備が整う。
「グレン完成だ、しっかりと味わえ」
「うっひょぉぉうまそう!!いただきます」
卵焼きと魚を食べ「うめぇぇ!!」と叫んだ後味噌汁をのみ「ほうわぁぁ」と和み米を口に運び「なんでただの米がこんなに美味しんだろ?」と思う。
結論やはりシロウの飯はうまい。
ご飯を数回おかわりして食べ終わると、鞄に荷物を詰め(飲み物となけなしの金しか入っていない)顔を一回洗うと、シロウより先に出る。
「じゃあ行ってくんな」
「後から追う、それと弁当は後で渡す」
「了解」
グレンが行ったあと4人分の弁当を用意し始め、完成した時には丁度いい時間になっていた。
家を出て数分歩くといつものようにルミアとシスティーナに合流する。
「待たせたか?」
「ピッタリだよ」
「本当時間に正確ね」
「あまり褒めてくれるな、ほれ今日の分だ」
2人は弁当を受け取ると自分の鞄に詰める。それこそ手馴れたように。
それもそのはず、今では普通の学食では満足出来ない身体になってしまい、昼ご飯をシロウに作って来てもらっていた。
その後も3人は話をしながら学院へと向かい、自分達の教室に辿り着く。
現在システィーナが一時的に指揮を執り、魔術競技祭の種目決めを行っている。
魔術競技祭とは生徒の実力を見るために年に3回開催される催し物だ。そして、その魔術競技祭で優勝したクラスの担任には、特別賞金が発生する。
確実にグレンはヤル気をだすな。
むっ噂をすればなんとやらか。
廊下の方から誰かがものすごい速度でかけてきている音が聞こえる。
シロウの予想通りその音を出していたのはグレンで、開口一番に言葉はまるっきりシロウの予想と被っていた。
「さぁ!優勝するぞ魔術競技祭!!!!」
次の日の放課後。
「グスッ......」
「いい加減腹をくくれグレン」
グレンが泣いているのには訳がある。
それはその日魔術競技祭の特訓をしていた際に、隣のクラスのハーレー先生ととある約束をしてしまったのが原因である。
その約束は負けた方が給料三ヶ月分渡すという物だ。
「だったら!シロウでてくれよぉぉ」
「それは無理だと言ってるだろ。私は護衛の任務に行かねばならないんだから」
そうシロウは何故かアリシア女王陛下の護衛任務が発せられていた。
「シロウの裏切りものぉぉ」
「なるほどな...そう言う事を言うなら飯はぬ」
「ごめんなさいまじごめんなさい」
ジャンピング土下座をかましたグレンに呆れながら、そんな事をするはず無いだろと声をかけ晩御飯の準備に取り掛かる。