落第騎士の英雄譚~破軍の眠り姫~(一時凍結) 作:スズきょろ
詩音「ずいぶん早いじゃない、いいじゃない読者様達が待っている事だしね!」
作・詩「「それではどうぞ!」」
「ぅん・・・ふぁ~・・・もう朝かぁ・・・起きなきゃ」
窓から朝の日差しがさし込み、小鳥たちのさえずりで詩音は目を覚ました。二段ベッドの下の段から身体を起こしグーッと伸びをする。
「んっん~!・・・すぅ、はぁ・・・よし、今日もいい天気!」
詩音の寝巻は友達いわく変わっているらしい。
詩音の寝巻は、俗にゆうキグルミパジャマだった。ちなみに、今日のパジャマはお気に入りの熊さんパジャマ。詩音はこのパジャマを五種類ほど持っている。
寮の同居人は、詩音のこの格好を初めて見たとき『龍切さんっ、なんて可愛いのっ!(ぶっぱぁっっ!!)』って言いながら鼻血噴き出してたっけ?詩音は小さい頃からキグルミパジャマを愛用していたから、何にも感じなかった。
「六時半か、着替えて正門に行かないと」
そう言って詩音は、キグルミパジャマを脱ぐ。朝日に照らされて露になる。大きすぎず、だけども小さすぎない胸と、これまた健康的なお尻が現れ、そんな詩音は上下に紺色のジャージを取り出して着替える。そして肩まである髪の毛についた寝癖を櫛で軽く整えるが、そんな詩音の髪型には一つ問題があった。それは・・・
頭のてっぺんの一房のアホ毛が治らないのだ。
まあ、このアホ毛は産まれた時からの付き合いだからもう諦めている。むしろ、詩音のチャームポイントとして一役買っているそうだ。(クラスメイトの女の子に、聞いた話だとそうらしい・・・)
まあそんな話は置いといて、机の上に置いてあるタオルとスポーツドリンクを持って、動きやすいランニングシューズを履いて、鍵を閉めて学園の正門へと向かった。
しばらく歩いて、学園の正門についた詩音は時計を見た。
「七時か・・・じゃあもう戻って・・・あっ、一輝!」
目当ての人物が走りながら戻って来たので詩音は手を振る。その相手も手を降り返した。一輝だ。彼は毎朝体力作りの為に朝早くから学園の回りを走っていた。前に距離を聞いたら二十キロ位だって言っていた。
「はぁ、はぁ・・・おはよう、詩音」
「うん、おはよう一輝、はいこれ、タオルとスポーツドリンク」
「いつもごめn・・・ムグっ!?」
一輝が何を言おうとしているか分かった詩音は、右の人差し指で一輝の口を塞いだ。
「一輝?私は君から何か見返りが欲しくて、やっている訳じゃないのって言ったでしょ?
そうゆう時は、ごめんじゃなくてありがとうって言って欲しい。その方が私は嬉しいな」
「うん、そうだった。いつもありがとう詩音」
「よろしい!じゃあ寮に戻りましょ?」
「そうだね」
一輝と詩音は、制服に着替える為に寮に戻るために歩きだした。すると一輝が何かを思い出したようで話を振ってきた。
「そういえば、今日だったよね。ここに《紅蓮の皇女》が来るのって」
「そうね。今日だったはずよ。
確か10年に1人の天才騎士で歴代最高成績で首席入学でしょ?さらに本物の皇女様ってんだから驚きだわ。色々詰めこみ過ぎでしょ!」
「あはは・・・でも一度は戦ってみたいな」
「確かに!」
一輝の言葉に同意を示す詩音。しかしそんなことを話しているうちに寮についてしまった。
「じゃあまた後で会いましょ?」
「うん、また後で」
そう言って、詩音は一輝の隣の部屋の406号室に入り制服に着替えようとして服を脱ごうとした時。
『いやぁあああああ!!!!ケダモノぉぉおおおおお!!!!』
朝の静寂を切り裂く少女の悲鳴が、隣の部屋から聞こえてきた。
「な、何っ!?・・・あ、うわぁあっ!?」
着替えている最中だった詩音は、その悲鳴に驚いてバランスを崩し倒れた。
──────────────────────
《
自らの魂を武装―――《
古い時代には『魔法使い』や『魔女』とも呼ばれてきた彼らは、科学では測れない力を持っており、最高クラスならば、時間の流れを意のままに操り、最低クラスでも身体能力を超人の域に底上げすることができた。
人でありながら、人を超えた奇跡の力。
武道や兵器などでは太刀打ちすることすら叶わない超常の力。
今や警察も軍隊も―――戦争ですら、
だが、大きな力にはそれ相応の責任が伴う。その一つが《魔導騎士制度》である。
魔導騎士制度とは、国際機関の認可を受けた
そしてここ、日本の東京都に東京ドーム10個分という広大な敷地を持つ『破軍学園』もその免許を取得するための、日本に七校ある『騎士学校』の1つである。
ここでは若い
その破軍学園の理事長室に、悲鳴を聞きつけた寮の警備員に痴漢として現行犯逮捕された黒鉄一輝は連れてこられた。そして、詩音も彼の付き添いということでついてきていた。
「なるほど。下着姿を見てしまった事故を、自分も脱ぐことで相殺しようとしたと」
皮のソファーに座る、煙草をくわえたスーツ姿の麗人、破軍学園理事長・神宮寺黒乃は一連の原因と経緯を詩音と共に一輝から聞き終えると――呆れた表情を詩音と共に言い放つ。
「アホだろお前」
「一輝のアホ」
「フィフティフィフティで紳士的なアイデアだと思ったんですけどね」
「ねぇ一輝、いや変態紳士さんって読んだ方がいい?」
「さすがにやめて欲しいです・・・」
「でもさ一輝、着替え中の女の子の部屋に、見ず知らずの男が入ってきていきなり服をキャストオフ。とんだ変態紳士じゃない」
言われた一輝は戦慄した。
「確かにそうだね、すごい危ない人だ・・・・・・・まぁ今思えば突然のことで僕も混乱していたんだなぁ。
はぁ、ステラさんに悪いことしちゃったな」
「どうすんのよ、これでステラ姫が日本嫌いになったら」
「なんだ、二人ともヴァーミリオンの事を知っているのか」
「もちろんですよ、今朝その事を話していた所ですし」
痴漢騒ぎの被害者の少女の名はステラ・ヴァーミリオン。
ヨーロッパにある小国、ヴァーミリオン皇国の第二皇女。
「入試の成績はぶっちぎりのナンバーワンだぞ。全ての能力値が平均を大きく上回り、
能力値が低すぎて留年して、もう一回一年生をやる誰かさんとは大違いだ。なあそう思うだろ《
むすっとした表情で黒乃の嫌味に一輝は抗議しつつ、しかし否定はしない。
「まあもう一人は、能力値は決して低い訳ではないのに、全理事長に言われたことにキレて暴言を吐か、更には授業をサボりまくって単位が足りなくなり留年。お前もなかなかだよな。聞いたときは、その内容に職員室の先生方が笑いを堪えるのに必死だったんだからな?
《眠り姫》」
「いやぁ~ついイラついちゃって・・・テヘ☆」
詩音は舌をチョロっと出しててれたように答える。そう、詩音が留年した原因は一輝とは違う。一輝との縁を切れと言われてそれに怒り、前理事長に向かって『うるせぇっ!お前に私の交遊関係をとやかく言われる筋合いなんかねぇんだよ!禿げダヌキっ!』と言って前理事長の怒りを買った事と、その後の実技の授業を全てサボったため留年の処分を受けたのだ。
「まあ、この一件、下手すれば国際問題になりかねん。黒鉄に非はないが責任を取ってもらうぞ。理不尽に感じるだろうが、そこは男の度量を見せてみろ」
「・・・男ってなんでこう都合のいい時だけ利用されるんでしょうね」
「さぁな、でも、今回は事情が事情だし諦めろ」
「・・・はぁ」
「女で良かったぁ~」
一輝は己の境遇にため息を吐き、詩音がそんな境遇にないことを横で笑った、その時。
「・・・失礼します」
理事長室のドアが開き、件の少女、ステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。
「ごめん、あれは不幸な事故で、僕も別にステラさんの着替えを覗こうと思ったわけじゃない。ただ、見てしまったものは見てしまったわけだから、男としてけじめは付ける。ステラさんの気がすむように煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「・・・潔いのね。これがサムライの心意気なのかしら」
「口下手なだけあって」
一輝の言葉にステラは強張った表情を和らげて、薄く微笑む。詩音はその様子を見て話のわかる子だと思った。
「じゃあ、イッキ。貴方の潔さに免じてこの一件―――ハラキリで許してあげるわ」
・・・・・・思っただけだった。
「いや、ちょっと待って。なに?大負けに負けてもハラキリなの!?」
「それはまあ、姫である私にあんな粗相をしでかした訳だし死刑は当然でしょ?本来なら丸太に縛り付けて国民全員で一発ずつ石打ちにするところを、本当に特別なんだからね」
「一輝、介錯は私がしてあげるね。さあ諦めて腹を切りなさいな?」
「ちょっ!なんで、詩音までそんなこと言うの!?しかも、それ処刑っていうよりユッケ作ってるだけだよね!?」
「名誉死にしてあげるだけでも出血大サービスよ」
「出血するの僕なんだけど!?」
「おー、上手いこと言うじゃない。そんな、一輝に座布団一枚あげるね」
「龍切、私からも座布団一枚だ」
詩音も黒乃も悪ノリしてそう言うが、一輝にとっては命に関わる問題なので二人の言葉に笑えなかった。
「いや、二人とも○点みたいな事言ってないで、この校内殺人止めようよッ!?」
「黒鉄。お前の命1つで日本とヴァーミリオン皇国の恒久的な平和が買えるんだ。安い買い物だとは思わないか?」
「人の命差し出しておいて安い買い物って言い草はないよねっ!?」
「一輝、いい人だったわ・・・ぐすっ」
「詩音も僕まだ死んでないからね!?」
詩音と黒乃からしたら面白いことこの上ない状況なのだが、一輝からすればこれほどのぼったくりはない。
「あ、あのさぁステラさん。もう少し他の解決方法はないのか?」
「む、なにが不服なのよ。日本男子にとってハラキリは名誉なんでしょう?」
「いや、僕平成生まれのゆとりっ子だし、サムライとか関係ないし!ヒップホップとか超聞くしYOッ!」
「とって付けたようなキャラ付けだな」
「一輝、それは無理があるよ?」
「理事長と詩音は止める気がないなら黙っててくださいっ!」
さらに混沌を極めた状況の中、詩音は何か気づいたようにステラに尋ねる。
「そういえば、ステラ・ヴァーミリオンさん、あなたは部屋の鍵は誰に貰ったの?」
「ステラでいいわよ、フルネームで呼ばれるとなんかこそばゆいしね。
誰って、そこにいる神宮寺理事長よ?」
「じゃあ、ステラ。あなたはそのとき、ルームメイトの話は聞かされなかったの?」
「そういえば、聞いてなかったわね」
そのことで全てを把握した詩音は半目で黒乃を見る。黒乃はニヤニヤ笑っていたが、詩音に半目で見られた瞬間、いつものキリッとした顔に戻る。そして、その動作で彼女の思惑がわかってしまい、詩音はため息がでた。
「はぁ、そう言うことね。一輝、ステラ。二人は405号室が自分の部屋だと言ってた。そこはあってるよね?」
「ええ」
「うん」
二人は詩音の言葉に頷く。
「つまりは、こうゆう事。
今年から就任した新理事長新宮寺黒乃の方針、一輝は知ってるよね?」
「『完全な実力主義。徹底した実践主義』に則り力の近い者同士を同じ部屋にしお互いを切磋琢磨させ合うだっけ?」
「そう。しかし、ステラほどの優れたものはいないし落第生である私や一輝ほど劣ったものはいない。それぞれ全く正反対の理由でペアになれるものがいなかったから余り者になったて訳。だから、余り物同士でペアを組みルームメイトになったと。
まあ、私はそのなかの余り者だから一人部屋なんだけどね」
「パーフェクトだ。龍切。さて、これで納得してくれたかな?」
「納得できるわけないでしょうっ!?」
バンッ!とステラは理事長の執務机を手のひらで叩き抗議を続ける。
「だ、だいたいアタシがこいつと一緒の部屋で生活するなんて納得できません!」
「これは決定事項だよ、ステラ。理事長の言い分だと他の男女ペアもいるだろうし、その全員にいちいち便宜を図っていたら本末転倒。これ以上言うなら、退学もあるかもよ?」
「うぅ・・・」
「おいおい、私が言おうとしたこと全部言うなよ」
黒乃が詩音にそう恨めしそうに言うが、詩音はそれをどこ吹く風といった様子でスルーする。
「・・・・・・わかりました」
結局ステラも詩音の言葉にたじろぎ、折れざるを得なかった。
「ただし、一緒の部屋で生活するにあたってアンタに三つだけ条件があるわ!」
「何?」
「話しかけないこと、目を開けないこと、息しないこと」
「その一輝君多分死んでるよね」
「この三つが守れるなら部屋の前で暮らしていいわ!」
「しかも最終的には追い出されているだとッ!?」
「何よ。できないの?」
「できないよそんな無茶苦茶な要求!最低限息はさせてよ!?」
(部屋の前で暮らすことはいいの!?一輝!?)
「いやよっ!どうせ息をするふりしてアタシの匂いを嗅ぐつもりなんでしょ変態!」
「口呼吸するから!これなら匂いはわからないし!」
「ダメよっ!どうせ舌でアタシの吐いた息を味わうつもりなんでしょ変態!」
「その発想はなかった!お姫様の発想力パナい!?」
(いや、普通そんな発想出てこないよ・・・)
「嫌なら退学しなさいよ!そうすれば私は一人部屋になれるわ!」
「そんなめちゃくちゃな・・・」
「まあ、もし一輝が辞めちゃったら私とだけどね?」
「やれやれ。このままではいつまでたっても話が付き添えにないな。
ならこうしろ。これから、二人で模擬戦をやって、勝ったほうが部屋のルールを決めるんだ。己の運命を剣で切り拓くのが騎士道なれば、これに異論を唱えるものはいないだろう?」
みかねた黒乃がそう二人に解決策を提案する。それは二人で正々堂々試合をして、勝った方が意を通す、単純明快なもの。
騎士同士の揉め事を解決する常套手段だ。
「ああ、それは公平でいいね、そうしようよステラさん」
「は、はぁっ!?」
一輝は賛成したが、ステラは目を向き、声を裏返らせたり。
「え?そんなに嫌なの?」
「い、いえ、イヤとかイヤじゃないとかどうでもいいって言うか、・・・あ、アンタ・・・自分が何いってるからわかってるの?」
「・・・何か変なこと言ったっけ?」
「Fランクの!進級すらできないような《落第騎士》がッ!Aランク騎士のアタシに勝てるわけないでしょッ!?」
その言葉で、一輝と詩音はステラの驚きに納得する。
確かに、進級水準にも満たない粗末な能力値の一輝が、十年に一度の天才という呼び声の高い期待のルーキー相手に、『試合して決めよう』と持ちかけるのは、無謀を通り越して愚行だ。
だが、そんな常識、一輝には通用しない。
「でもほら、勝負はやってみないとわからないから」
一輝の言葉に詩音は笑みを浮かべる。詩音は一輝自身の今までの努力を見てきたため、彼にも譲れないものがあるのを知っている。そして、なぜ彼が騎士の道を歩んでいる理由も。
「流石、の一言ね一輝」
「ありがとう詩音」
しかし、その一輝の言葉がステラのプライドの火に思いっきり油をかけた。
「いいわ。わかった。わかりました。やってやるわよその試合、でもアタシをこれだけバカにしたんだから、かけるのは部屋のルールなんて小さなものじゃ済まないわよ!
「え、ええええ!?そ、それはちょっとやりすぎなんじゃ・・・」
「今更怖気付いても駄目よ。アタシをここまで本気にさせた自分の軽率さを呪いなさい。これはもう模擬戦ではなく、決闘なんだから!」
(ああ、ああ・・・むちゃくちゃな事言っちゃって、そんなこと言ったらこの人は・・・)
黒乃ならステラの意見に必ず乗るだろうと思い、そちらに視線を向ける。すると、案の定黒乃は乗っかってきた。
「話はまとまったようだな。ならば第三訓練場を使え。許可は私が出す」
(・・・・・やっぱり)
「り、理事長!勝手にまとめないでくださいよ!」
一輝が抗議するも、時既に遅し。ステラは「覚悟しなさいよね!!フンッ!!」と鼻を鳴らし、一輝を置き去り理事長室から出ていってしまった。おそらく、第三訓練場へと向かったのだろう。
「・・・はぁ、なんだか大変なことになっちゃったなぁ。困りますよ理事長。こんなの・・・」
「くくっ。さすがに下僕は嫌か?」
「嫌ですよ。勝っても負けてもどっちも嫌だ・・・」
そこで一輝は言葉を止め、「でも」と再び続ける。
「七星剣武祭には必ず彼女も出てくる。言ってしまえば遅いか早いかだけの違いです。」
「そこまで、わかっているのならためらう必要はないだろう。要はお前が勝てばいいだけのことだ。勝って、自分の必要なだけの譲歩を引き出したら下僕云々なんて反故にしてしまえばいい。それで万事解決だ。」
ポン、と一輝の肩を叩き、黒乃も理事長室を出て行く。
そして、部屋に残された一輝は今日何度目かわからないため息をつき、同じく部屋に残された詩音は苦笑する。
「まあ、決まっちゃったんだから、腹をくくりなさいな。それに『アレ』・・・もちろん使うんでしょ?」
「うん、もちろんだよ。『アレ』を使わないと彼女にも勝てないし、この先の戦いでも勝てないしね」
「なら、やるしかないね。頑張れ、一輝」
「ああ、ありがとう」
二人はそう言葉を交わし拳を合わせ、理事長室を後にした。
決闘の舞台へ向かうために。己の運命を、その魂の刃で切り拓くために。そしてもう一人は、彼が運命を切り拓くのを見届けるために。
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魔導騎士が国家の戦力としての側面を持つ以上、当然戦闘技能が求められる。国家間の戦争はもちろん、
ゆえに、破軍学園の敷地にはいくつとのもドーム型闘技場が点在しており、内部には直径百メートルほどの戦闘フィールドと、それをすり鉢状に囲む観客席が設けられている。
そのうちの一つ、第三訓練場の中心に黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンの姿があった。
そして、そんな二人を見つめる幾つもの視線が観戦席にある。
もともとこの訓練場を使ってトレーニングしていたり、噂を聞きつけて見学に来た、二、三年生たちの視線だ、数は二十強と、春休み中に突然決まった模擬戦の見学者としては数が多い。その誰もがお目当ては鳴り物入りで入学した
「刀華ちゃーん、こっちこっち、久しぶりだね」
「うん、そうだね。しーちゃん」
「一緒に見ようよ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
詩音と親しげに話す少女の名前は東堂刀華。この学園の生徒会長にして学年序列一位、『雷切』の異名を持つ学園最強の騎士。年は詩音よりも一つ上なのだが、留年しているため、二つ上の三年生だ。そして、昨年度の七星剣武祭のベスト4だ。
しかし、なぜそんな少女が落第生であり『眠り姫』と呼ばれている詩音と親しいのかというと、二人は昔からの幼馴染であり詩音の実家が彼女が暮らしていた養護施設と近かったからだ。一時期同じ人物の元に師事していたことも共通している。
そして、刀華は詩音から誘われて、彼女の隣に座る。はたから見れば学園最強の『雷切』と落第生の『眠り姫』という不思議な組み合わせだったが、二人は特に気にしなかった。
「でも、本当に留年したんだね。しーちゃん。最初聞いたときは驚いたよ」
「まぁ、あれだけのことをやっちゃったんだから仕方ないよ、それに一輝のこともあるしね~」
「黒鉄一輝君のこと?」
「うん」
詩音はステラと相対する一輝を見ながら、そういう。一輝はとても落ち着いていて、見ていて安心できた。
「しかし、なんで今日はここに?ステラの偵察?」
「それもあるけど、しーちゃんにも聞きたいことがあったの」
「聞きたいこと?」
「うん、しーちゃんは今年は選抜戦出るの?」
「もちろん!今年は逃げも隠れもしないからね。思いっきり暴れるんだぁ」
「そう、よかった」
詩音の言葉に刀華は微笑みながら、昔のことを思い出す。今まで何度も手合わせしたことがあるが、そのどれもが刀華の完敗だった。刀華はランクという概念やその他諸々全ての基準をなくし、詩音の戦闘能力だけを見るとするならば、間違いなくこの学園でトップクラスに入り、七星の頂に最も近い実力を持つ女だと認めている。
「あれが《紅蓮の皇女》ステラ・ヴァーミリオン。なるほど、確かに他とは比べ物になりませんね」
「だけど、ステラは一輝のことを舐めきってる、おそらく噂とかを聞いたんだろうね」
「てことは、しーちゃんはこの勝負黒鉄君が勝つと思っとるの?」
「もちろん、一輝は常識に当てはまらない規格外の人だからねぇ。短期決戦に・・・ううん、一撃必殺の状況に持っていかないとステラは負ける」
一年間一輝の鍛練を誰よりも近く見てきた詩音は誰よりも彼を理解し信じていた。
そして、詩音の考えは、昔からの彼女を知る刀華にも理解できた。詩音自身も誰よりも鍛錬し、もがき、足掻き続け、淡々と自らの力を鍛え上げた女だ。そんな彼女が一輝のことを認めているのだ。どれほどの実力を持つものかは刀華自身も気になる。そして、自分も試合が開始されるのを待つ。
詩音と刀華の会話から少し遡り、訓練場に入る前に聞いた黒鉄一輝という男の情報に、ステラは失笑する。
「噂は聞いたわ。アンタ。聞けば聞くほどダメダメね。もう魔導騎士を目指すのなんてやめて、普通の人間として生きた方が身のためなんじゃないの」
「まあ、そうなのかもしれないけどさ。でも、勝負はやってみないとわからないし。それに、友達が信じてくれてるんだ。負けるわけにはいかないよ」
「あの子のことは別にどうでもいいけど、アンタわかってるの?負けたらアンタ、アタシの下僕なのよ」
「もちろん、わかってるよ。でも、それはあくまで負けたらの話。だったら、僕が勝てばいい、そのための努力はしてきたつもりさ。」
「ふぅん・・・」
(努力・・・ね。まるで、・・・アタシが才能だけで勝ってるみたいに)
ステラは自分の中からふつふつと怒りが湧き出しイライラしてきた。
ステラ自身、今は天才などと呼ばれているが、実際は違う。彼女は最初から強いわけではなく、むしろ、その逆、まともな騎士になることすら不可能と言われた。強すぎるステラの能力は、あろうことか彼女自身の体すらその灼熱の炎で焼いたのだ。
それでも、彼女は諦めなかった。
全ては、自分の国であるヴァーミリオン皇国とその民を守る大きな助けとなるために何度も大火傷を負っても、何度も挫けそうになっても諦めずに今の強さに上りつめた。
(だからそんな、才能とか、天才とか、安っぽい言葉で片付けられちゃたまらないのよ!)
「それでは、これより模擬戦を始める。双方、固有霊装デバイスを《幻想形態》で展開しろ」
「来てくれ《陰鉄》」
「傅きなさい《
黒乃の言葉にそれぞれ
「よし、・・・・・・では、
数多の観客が見守る中、
作者「いかがだったでしょうか?
次回は一輝VSステラとステラVS詩音です!」
詩音「ついに私の実力が明かされるのね!楽しみだわ~」
作者「序盤はこれだけ書けるけど、後々が心配だなぁ・・・」
詩音「まあ頑張りなさい作者!応援はしてるから」
作者「ありがとう詩音!よっしゃぁ書きますよぉー!」
詩音「あらら、行っちゃった。では皆さん次回もよろしくね~!!」