靄野郎が抑えられ、脳味噌敵に捕まっていたオールマイト先生が拘束から抜けた。残りの主犯は一人だが、オールマイト先生は負傷したわき腹を抑えており、完全な有利とは言えないようだ。
「『怪しい動きをした』と判断したらすぐ爆破する!!」と靄野郎の弱点を暴き、抑えて宣言する勝己を見ながらカードをセットした俺は「正直お前も敵に見えるよ…」と零す。
だがこの危機的状況を淡々と述べる『掌の敵』はまだ余裕の態度を保っている。まだ何か策はあるのか?だとしたらヤバいな、増援まだ来なさそうだぞ…。
「脳無、爆発小僧をやっつけろ、出入り口の奪還だ。」
『脳無』、と呼ばれた敵は、轟に氷結された自分の身体が崩れるのも構わず起き上がった。
「身体が割れてるのに…動いてる…?」「皆下がれ!!なんだ?ショック吸収の”個性”じゃないのか?」
無理矢理起き上がった『脳無』は身体を震わせ、傷口から身体を完全に再生させていく。驚く俺達に『掌の敵』は「別にそれだけとは言ってないだろう。これは”超再生”だな。」と述べる。オールマイトの言う”個性”とは別の個性。普通の人間じゃまず有り得ない。「複数”個性”持ちとかチートかよ・・・・」
俺の言葉にニヤリと笑った『掌の敵』は「脳無はオールマイト、お前の100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバック人間さ。」
再生を完了した脳無は俺には目に負えない速度で勝己へ向かって攻撃する。尋常じゃない爆風が吹き、態勢を崩してしまった。目を開けて状況を見ると後ろにいた出久の傍に勝己が下がっており、先程靄野郎を抑えていた場所にオールマイト先生が立っていた。庇ったのか…。
負傷しているのに即座に反応し、庇ったオールマイト先生を見て凄まじいと感じた。
「・・・・加減を知らんのか・・・・」「仲間を援けるためさ仕方ないだろ?」
『掌の敵』は大仰に両手を広げオールマイトに説く。
「俺はなオールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ良し悪しが決まるこの世の中に!!何が平和の象徴!!所詮抑圧の為の暴力装置だおまえは!暴力は暴力しか産まないのだとお前を殺すことで世に知らしめるのさ!」「滅茶苦茶だな…そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘吐きめ」
理解しがたい持論を説くが、ばっさり切り捨てられた『掌の敵』はニッタリと笑う。「バレるの早…」
「3対6だ」「…正確には3体6+aで…」「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた…!!」「とんでもねぇ奴らだが俺らでオールマイトのサポートすりゃ…撃退できる!!」
意気込む俺等をオールマイトが手で制し止めた。
「ダメだ!!!逃げなさい!!」
「・・・・さっきのは俺がサポートに入らなきゃやばかったでしょう」「オールマイト血…それに時間だって無い筈じゃ…」「…なんなら俺がやりましょうか…?」
「それはそれだ轟少年!札戯少年、君は大分消耗しているようだから撤退しなさい!!ありがとな!!しかしプロの本気を見てなさい!!」
四の五の言ってる間に向かって来た敵達にセットしていたカードを発動しようとした瞬間、身が竦む程の殺気。味方を含めて『脳無』以外の人間が停止する。止まった俺達を置いてオールマイト先生は『脳無』と真っ向から殴り合いを開始するが、先ほど言ったショック”吸収”で不利の筈だ。だが先生は近づけない程の拳圧を轟かせながら不敵に笑う。
「”無効”ではなく”吸収”ならば!!限度があるんじゃないか?
私対策?私の100%を耐えるなら!!更に上からねじ伏せよう!!
ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!」
・・・・少しずつ、『脳無』が圧されていく。
「敵よ こんな言葉を知ってるか!!?」
先生の放った全力の最後の拳が、『脳無』をドームの外へ吹っ飛ばした。
・・・・なんだよあれ、超かっけぇ・・・・
「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば十分だっただろうに
300発以上も撃ってしまった。
さてと敵、お互い決着を早めにつけたいね」
敵連合にとって秘密兵器だったのだろう『脳無』が倒されたことで敵は動揺し、再び場が硬直する。先生はアレで衰えた、と言っていたが絶対衰えてないだろ、とんだロマンチストだ。敵も同じく考えていた様で悔し気に首を掻く。
「衰えた?嘘だろ…完全に気圧されたよ…よくも俺の脳無を…チートがァ…!全然弱ってないじゃないか!!あいつ…俺にウソ教えたのか…?」「…どうした?来ないのかな?クリアとかなんとか言ってたが…
出来るものならしてみろよ!!」
完全に有利になった戦況に、最早俺達が出る幕は無いんじゃないかと思う。…俺の出番なかったわ…。【オーガ】出し損だったか…。召喚予定だったカード達を見て溜息を吐く。敵達がまだ動揺しているうちに足手纏いにならない様、撤退を提案した鋭児郎に皆も頷き、動き出す。だが出久だけはまたブツブツと言いながら動きはしない。「おい、出ッ…!!?」
動き出した敵と同時に両脚が有り得ない方向に曲がった出久がオールマイトと敵の間へ飛び出した。出久へ標的を変えた敵に背筋が凍る。
「ッ発動!【デモンズチェーン】!!」「なッ!!?」「!!?」
四方から飛んできた鎖が『掌の敵』を拘束し動きを止めたと同時に脚に銃弾が撃ち込まれる。
見ると飯田と豪華なヒーローたちが勢揃いしていた。…飯田、お前今滅茶苦茶輝いてるよ…!!
不利と悟った敵達は逃亡を図り、それをヒーロー達が阻止しようとするが、靄野郎が『掌の敵』ごとワープして逃げられてしまった。発動対象が離れ《除外》されたことにより【デモンズチェーン】の鎖も消えてしまう。
そこで一気に襲い掛かる酷い眩暈と疲労感。高火力モンスターの連続召喚に加え長時間の維持に体力を持ってかれていた俺は、張りつめていた気が緩みそのまま無様に倒れてしまった。身体が鉛のように重いし、膝が笑い過ぎてヤバい。「大丈夫か!?」「…疲れた…俺より出久の方行け…両脚折れてると思う…」
此方へ向かって来た先生方を横目に、出久の方へ向かった鋭児郎を見送り俺はそのまま気を失ってしまった。