「悪いけど、あなたを破棄しないと!!」
周りに誰もいないのに独り言をいった。
家を出てからというもの、緊張の連続だった。
このビルに侵入するのにも本当に苦労した。
あらかじめ侵入ルートを特定していてもハプニングの連続。
やっとここまで辿り着いた。
「これでいいわ。
後は・・・、そうだ。
さっき彼女が腕に付けていたスマホを装着して、データを書き換えないと」
バイオタイプのスマホを装着して起動させた。
スマホとは名ばかりで、実質的には、これは個体管理ツールだ。
昔のスマホの機能に加え、個体の情報が入っている。
中央のコンピュータで一括管理しており、施設に入るにはこれを提示しないと何処にも入れない。
しかもこのスマホ。個人が勝手に着脱できないようになっている。
コンピュータにハッキングして解除するしか手が無い。
母さんのが教えてくれた技術で、コンピュータにハッキングができ、私が生まれてからずっと腕に付いてたスマホを取り外すことができた。
「これでよしと」
母さんからは、ハッキングのテクニックの全てを教わっている。
血は繋がってないけれど、母さんは私に愛情をたっぷりかけて育ててくれた。
残念ながら、この世界の女の人は赤ちゃんを産むことが出来ない。
昔、人類が滅亡するぐらいの食糧危機になり、男女を強制的に分ける法案が通った。
さらに最悪なのが、22歳になったら強制的に異性のアンドロイドと結婚させられる。
そんなこと、絶対におかしい。
反対、反対!
絶対に反対!!
女の子として生まれてきたからには、赤ちゃんを産みたい。
だって、それが自然でしょう?
「絶対に反対なんだからね」
母さんにこの事を相談したら、最初は拒否された。
私は諦めずに説得し、最後にはしぶしぶ納得してくれた。
「明恵、仕方ないわね。
そこまで決心が固いのであれば、お母さんも協力するわ。
でも、本当に死ぬ覚悟があるのね」
「はい、母さん。
でも正直に言うと、少し怖いけど。
法を犯したものは永久追放って法律に書かれてあるので追放されて死ぬかもしれない。
けど、それでもやってみたいの」
「本当に仕方のない子ね。
それじゃ、私の知識を全て教えます。
覚悟しなさいよ、明恵」
「母さん、ありがとう」
「それと、料理の方もね。
私の持っているレシピを全て教えるわ。
今日から地獄のような日が続きますよ。
覚えなければならない事が、山のようにありますからね」
「はい、よろしくお願いします。母さん」
それから今日までは過酷な日々で、数時間しか寝れない日がつづいた。
プログラミング言語を覚えるのが一苦労なのに、さらにそれを組み合わせてプログラムが動くようにする。
たった一箇所でも間違いがあると誤作動を起こすか、最悪の場合動かない。
料理も思っていた以上に大変だった。
美味しくないと、結婚した相手から疑われる。
アンドロイドは完璧に料理を作るからだ!!
「まぶしい」
思わず口にした。
朝日が直接目に入ったんだ。
気がつくと朝になっていた。
昨夜、破棄したアンドロイドの席に座って寝ていたんだ。
今回の事で、最も問題なのは、妊娠に関わることだった。
「だから、母さん。もし私が妊娠したら相手の人を説得して、赤ちゃんを産む。
そして、養子を管理するシステムに侵入して、私の赤ちゃんを養子として育てるの」
「それが最善の策ね。本当にあなたは強くなったわね。
幼い頃はよく泣いていたのに」
「もう、母さんったら。
それ何度目なの、小さい頃の話をするのは」
「もうすぐ明恵と別れる時が来ると思うと悲しくてね。
昔の思い出が次から次へと浮かんでくるのよ」
「ごめんね、母さん。
アンドロイドと結婚すれば私は母さんの近くに住めるのに。
親不孝者だね。
本当にごめんね」
「それは、納得のいく結婚ではないからね。
人間の男の人との結婚が自然なんだよ。
明恵の言う通りだよ。
本当はね、昭恵。
今なら言えるけど、私も若い頃自分の産んだ赤ちゃんが欲しかったんだよ。
でも、明恵みたいな行動力がなくてね」
「母さん、私頑張るわ。
お母さんの分までも」
彼女がきっかけで、世界の秩序が大きく変わっていく事になった。