家族の絆   作:坂本ヒツジ

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幸せな1日

  智と、夢のような一週間が過ぎた。

 その反面、人間だと悟られないかといつもビクビクしていた。

 智を愛しているから、彼を傷つけたくない。

 

 今日は彼の初出勤。彼はプログラマーなので、基本的には在宅勤務だと言っていた。母さんと同じだ。1ヶ月に一回ぐらいのペースで会議があるのも同じ。つまり、今日の昼間は彼がいない。

 

 少しホッとしている。

 

「朝ごはん美味しかったよ、美貴」

「智の口にあって嬉しいです。晩ご飯で、何か食べたいものがありますか?」

「んー、そうだなぁ。和食を食べたいかな」

「はい、わかりました。旦那様」

「え、俺のこと。あ、そうか。古典的な呼び方だね。それじゃ、美貴は奥様だ」

「え。あ、そうですね。その呼び方されると、なんか照れちゃいます」

 

 私が愛していると言ったのは本音。だけど、彼を愛しているからこそ、全てを話したい衝動に駆られる。

 

 私は罪深い女だ。

 

 彼は私をアンドロイドだと思い込んでいる。私は、私は彼を結果的に利用している。彼がひどいやつだったら、こんなにも悩まないのに。

 愛が、こんなにも苦しいものだとは知らなかった。昔の人のように、人間として彼の奥さんになれたらと何度思った事か。

 

 また、泣きたくなってきた。

 

「じゃね、美貴。愛しているよ」

「智、私も愛しています。お気をつけていってきて下さね」

 

 彼がいないのは寂しいけれど、今は少し息抜きしないと私の神経が参ってしまう。掃除に洗濯、それに料理。昔から奥様達がやってきた家事は体を動かすので悩みを忘れる。今の私に必要な事だ。お昼頃、家事に夢中になっていたので、その音が呼び出し音と認識するまでに時間がかかった。スマホを見ると母さんからだった。驚きながら応答した。

 

「もしもし、母さん」

「やっと繋がったよ。明恵、元気そうだね」

「母さん、どうやってこのスマホとわかったの」

「簡単な事よ。明恵と同じ身長。そして、最近結婚した人の情報を入力したら、1人しか該当しなかった。さらに、結婚相手を見たら私と同じプログラマー。という事は、今日の昼間は会議に出るため政府に行っている。今は明恵1人でしょう」

「さすが私の母さん、当たってるわ」

「それより、結婚おめでとう。これを言いたくてね」

「ありがとう、母さん。母さんのおかげで結婚できました」

「彼はどんな人だい」

「すごく優しい人。それに、彼は私を愛しているし私も彼を愛しています。それで秘密を彼に言えなくて落ち込んでいたの」

「あらまー。私には夫に対する愛がどんなもであるか知らないから、これに関して助言はむずかしいね」

「いずれ、彼に話す時が必ず来る。今から少し怖いけど。その時に胸のつかえが取れると思う」

「そうなるといいね。ところで、結婚写真を見せてくれるかい。どんな花嫁衣装か気になってね」

「ちょっと待ってね。今送ります」

 

 私はスマホを操作し、写真の入ったファイルから、結婚式の写真をえらび、

 母さんに送った。

 

「明恵、よかったね。和服の結婚衣装を着れたんだね。似合っているし、とっても綺麗。あーあ、母さんもその場に居たかったよ。でも、こればっかりはね」

「私も、母さんにいて欲しかった。けど、この写真を母さんに見せられたのでそれだけでも嬉しい。母さんに結婚の報告が出来なかったので、よけいに落ち込んでたんだ」

 

 久しぶりに母さんとの会話したので、この後も話が弾み、小1時間話をしていた。

 

「明恵、そろそろ切るよ。今度連絡する時は、彼が政府に行く時だね」

「はい、母さん。本当に電話ありがとう。私頑張るね。母さんとおしゃべりしたら、気が楽になった。母さんまたね」

「ああ、それまで元気で暮らすんだよ」

「母さんこそ、元気でね。さようなら」

 

 母さんからの電話は、私にとっては強い味方になった。精神的に支えてくれる人。全てを知っている人。智も大切な人だけど、母さんも同じく大切な人。

 愛する人が増えるたびに私が与える愛が減るのではなく、逆に増える気がする。

 

 これって愛の性質かな。

 

「ただいまー。今帰ったよ」

「智、お帰りなさい。お風呂が先ですか、それともご飯にしますか。

 智、何か後ろに隠して」

 

 私が言い終わらないうちに、彼の後ろから色とりどりの花束を私に差し出した。花束をよく見ると、私の好きな薔薇も入れてあった。

 とっても嬉しかった。

 今日はなんて素敵な1日なのだろうか。母さんと話せたし、智が私の為にわざわざ花屋さんに行って買ってきてくれた。

 

「ありがとう智。とっても嬉しい。花束をもらったの初めて。それに私の好きな薔薇もある。覚えていてくれたんだね」

「あ、いやー、そのー。」

 

 智は私を抱き寄せキスをしてくれた。

 このまま永遠に、抱かれていたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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