家族の絆   作:坂本ヒツジ

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裏切り

 真夜中、俺のスマホが鳴った。まだ夜中の2時だ。誰からだ。相手は友達の知宏だった

 

「もしもし、どうした知宏」

「それは俺が聞きたいよ。お前何やらかしたんだ」

「え、それってどういう意味だ。」

「隆が ニコニコしながら警察の本庁に1時間前に来て、俺の上司と会っている。先ほどお前に対して逮捕命令が出されたんだよ。後3時間程でそちらにパトカーが行って、お前を逮捕するそうだ。で、何やらかしたんだ」

 

 バレた。隆が裏切った。

 

「それならいずれ分かる事だ、はっきり言うよ。俺と人間の妻との間に赤ちゃんが生まれたんだ」

「人間の妻。赤ちゃん。本当かよ」

「本当だ」

「よく分からねえけど、お前親父になったのか」

「そうだ。おっと、時間がない。情報ありがとうよ」

「おー。じゃな。元気でいろよ。捕まるなよ」

 

 最悪の事態になった。想定していた内で最悪の事態だ。えーと。落ち着けよ智。やる事はまず美貴を起こして。

 

「美貴起きてくれ」

「え、今何時」

「隆が裏切って、後3時間後に警察がここに来る。以前から練っていた逃走の準備だ」

「わかったわ。坊やは」

「寝ている。俺は出発の準備をするよ」

「私はみんなのスマホを外すのね。簡単なことよ」

 

 機転の早い美貴には助かる。起きたと思ったらすぐに行動に移ってくれた。これは、赤ちゃんの世話をしている習慣からか出来る事だな。とにかく、俺もすぐに行動にうつしてと。

 

「美貴、俺のスマホも外してくれ」

「ちょっと待ってね。ハイ終わり。少し痛かった?」

「少しだけな。これってちょっとした感動ものだな。小さい頃から外したかったのに簡単に外れたよ。よし行こう」

「はい、あなた」

 

 俺たち家族は徒歩で山に向かった。月明かりがあったので、山への道ははっきりと見えた。計画では、途中の川に3人のスマホを沈まない容器に入れて流す事にしていた。

 

「これでよしと。時間がかなり稼げるだろう」

「あなた見て。私達の家の周りに、車があんなに沢山」

「危なかったな。パトカーだよ。知宏に感謝しないとな。よし、こっちだ。道夫は大丈夫か」

「 坊やはぐっすりと眠っているわ」

「親孝行な息子だよな」

「本当に」

 

 息子を見ると、何が何でもやらねばと勇気が湧いてくる。美貴の為、息子の為、そして俺の為にも。そして俺は地位も名誉も捨てて逃走している。山の向こうには、はっきり言って何があるか分からない。情報が全くないのだ。しかし、捕まって追放されるよりも俺たちはこちらを選んだ。

 

「美貴、ここで少し休もう。6時間以上歩きっぱなしだ」

「はい。坊やにおっぱいをあげないと。それと私たちには朝ごはんですね」

「そうなんだよ。こんなに歩くとお腹が空いて。お腹がぐーぐー泣いてるよ」

「ウフフ。私も似たようなものよ」

 

 美貴は道夫におっぱいをあげながら黙々と食べている。よほどお腹が空いたのだろう。当然だなと思うよ。こんなに歩いて、しかも子供に栄養を与えなくてはならない。

 

「少し足が痛いわ。あ、靴ずれしてる」

「ちょっと見せてくれ。血が出ている。これで少しなのか」

「そのう、痛いです。でも、手当すれば全く問題なく歩けますよ」

「ばかだなー。そこまで我慢するなよ」

「ごめんなさい」

 

 美貴は靴ずれを起こして、すごく痛いのに歩いて。しかも、あの小さな体で一歳近い子供を抱いて歩いてきた。そういえば、古典に、母は強し、と言う言葉があったな。まさにこれが当てはまるな。

 

「智 、そろそろ行きませんか」

「止めても行きたいんだろ。もう少し美貴の体を休ませたかったけど。ま、俺たちは追われている身だからな。しかたないか。靴ずれは大丈夫だよな?」

「正直に言って痛いのですが。この子を産んだ時の痛みに比べれば十分の1でしかないですよ」

「そうだよな。あの時の美貴は凄かったもんな」

「もう、あなたったら」

 

 家を出てから初めて2人は笑った。道夫はキョトンとして、俺を見ている。いきなり俺は、彼の顔に近づき、俺の顔を隠した。そして。

 

「いない、いない、ばー」

 

 一瞬 道夫はびっくりしたが、その後は笑っている。もはや迷っている暇はない、出発しないと。

 

「よし、では行きますか、奥様。こんなに晴れて、絶好の散歩日和ですよ」

「はい、旦那様。本当に天気も良く。ちょとした散歩にはいいですね」

 

 2人は笑った。それにしても、美貴の精神の強さに、今更ながら驚かされている。

 

「痛、まただ。また小枝で引っ掻いた。あーあ、今度は血が出ている」

「智、大丈夫なの」

「暗くなってきて、前がよく見えないんだよな。そろそろ寝るところを確保しないとな」

「そうね。あそこに、大きな岩があるからその下はどうかしら」

「行ってみるか」

 

 そこは雨風を防ぐには絶好の場所だった。岩の下にテントを張った。食事を取って寝る準備をした。

 

「智、隆が裏切ったのは何故なのかしら。あんなに協力的だったのに」

「そうなんだよ。訳、分からないよな」

「何が原因で彼を変容させたのか知りたいけれど、今は睡眠が必要みたい」

「もう寝るか。明日も早く起きないといけないし。おやすみ、美貴」

「おやすみなさい、あなた」

 

 俺たち2人は、そう会話を交わしたら、すぐに寝ていた。

 

 

 

 

 

 

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