《ベータテスト》
それは開発中の製品に対して行われ、利用者の感想や意見をフィードバックさせバグの修正やバランスの調整を行うことを目的に行われる。多くの場合ベータテストにはクローズドベータテストとオープンベータテストが存在しクローズドが最初に行われ次にオープンで発展させるという形がとられる。
MMORPGでも当然ベータテストは存在し少し、いやかなり特殊なMMORPGと化してしまったこのゲームにも当然ベータ期間は存在した。だが、このMMORPGにはオープンベータテストが存在せず、とんでもなく高い倍率の抽選に通った人のみで行われるクローズドベータテストの後正式サービスとなっていた。それによりスタート時点ではプレイヤー間にかなりの経験や知識の差が存在してしまうこととなり、その差による対立が生まれてしまった。
ベータテスターしか知り得ない知識。その知識を用いてこの最悪のゲームを有利に進める。なるほど。確かにそれはチートのようなものだろう。
ベータのチーター。略してビーター。なんだそのパワーワードは。
そんな奇妙な称号を手にしてしまった先程までボス攻略を同じパーティで行ったパーティメンバー。決してカッコよくも名誉でもない称号をヤツはいい呼び名だと宣い更にはこう言い放つ。
――元テスター如きと一緒にしないでくれ。
本心ではないのだろう。決して元テスターへの当てつけでもないのだろう。恐らくヤツはベータテスターへの敵意をすべて自分に向けるつもりなんだろう。
だが俺は思った。
その通りだ。あんなのと一緒にされると困る。
俺の内心を知ってか知らずかヤツはこっちを一瞥し、歩みを進める。
――2階への転移門は俺がアクティベートしといてやる。この上の出口から主街区までは距離があるから死ぬ覚悟がある奴だけついてきな。
歩きながらヤツが言う。つまりはついてくると危ないから大人しく待ってなってことか。
静寂が場を支配する。このボスフロアにはヤツが靴を鳴らし螺旋階段を登っていく音だけが響く。
ヤツがオレ達から見えなくなるまで登った辺りで呆然と眺めていた連中にも我に返った奴が出てくる。よほどヤツの事が気に入らないのかそいつの怒りはヤツとパーティを組んでいた俺ともう一人にも飛び火する。
なんだって?パーティ組んでたお前らもビーターだ!責任をとれ!だって?
――あんなボス相手に一人で立ち回るような化け物とオレを一緒にしないでくれ。オレはちょっと情報握ってるだけの只の
「ベータテスターだ」