学園都市に舞い降りた天使たち   作:灰色

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感想、評価などありがとうございます!


3話「察知」

「シャワーありがとう、上条く―――」

 

「わー止めてくれ!止めろ!止めてください!不幸だあー!」

 

「へぇー上条さんってこういう趣味なんだ」

 

「とうま、そこに座って。

シスターとして話があるんだよ」

 

「な、んでせうか。

インデックスさん……歯をガシガシするのやめてもらえません?」

 

上条の部屋でシャワーを浴びた皆元が見たのは(主に上条にとって)惨憺たる有様だった。

どこから見つけたのか分からないが薫が浮遊しつつ上条の物らしき雑誌を眺めている。

どのような雑誌かは、まぁお察しというところで。

試しにキーワードをあげてみるならば「お姉さん」「巨」とかそんなとこだろうか。

 

「……なんだこれ?」

 

「薫が上条はんの家探しを始めたんよ。

最初は上条はんもどうぞご勝手に、て感じやったんやけど」

 

「こういうときの薫ちゃんって妙に察しが良いのよね」

 

「仲良くなった、でいいのかな?」

 

「良いんじゃない?

透視()てはいないけど多分2人とも結構なお人好しよ」

 

数多くの人間を透視してきた紫穂が言うのならば間違いではないだろう、と皆元は思う。

趣味で警察の捜査に関わったりもしている紫穂はその経験からも人を見る目は伊達ではないのだ。

むしろ厳しい。

そんな彼女が言うならば問題はないだろう。

 

「薫、そこらへんにしておけ」

 

「『あらあらいけない子ねぇ……』」

 

「止めて……止めてつかぁさい」

 

上条の本を音読していた。

記憶を失っているがためにチルドレンを、というよりも薫を部屋で自由にさせていた上条だったが彼女が持つ超常的なエロ本探知能力で身に覚えのない「雑誌」を発見される流れとなってしまった。

いくら覚えていないとはいえ自宅にあるそういう本を年下の少女に発見されたうえ、音読されるのは一種の精神的拷問と化していた。

このつらさに比べたら現在頭部を襲うインデックスによる口撃(かみつき)など可愛らしいものだ。

 

(いや、痛いことには変わりないんだけど)

 

「か・お・る!」

 

「あいた!」

 

上条はこの状況により気が付いていなかったがシャワーから上がった皆元が器用にも薫の頭にげんこつをお見舞いすることによって不幸から解放されたのだった。

 

 

 

「さて、これからどうしたものかな」

 

少し小さくはあるが上条から服を借りた皆元は言葉を吐き出した。

 

「とりあえずだけど落ち着けるとこ欲しいなー」

 

「そうだな。

にしてもお金が問題だな……」

 

薫の言葉に首肯しつつも皆元は思案を巡らせる。

 

(現状、すぐに帰ることは出来ない。

元の世界に戻るためにも拠点が必要だ、とはいえ僕らに資金はない……)

 

「あのー提案があるんですが」

 

気楽そうに上条は手をあげる。

 

「とりあえず俺の部屋使っていいですけど」

 

「いや、それは悪いよ。

そんなことになったら君はどこで寝るんだい?」

 

「上条さんってば私たちの魅力にやられちゃっていきなり大胆なこと言ってくんねー。

このこのー!」

 

「うわ、フケツー!」

 

「わーさいてー」

 

「だーかーらー!

どうしてそうなんだよ!?

てか三宮そこまで棒読みするぐらいだったらわざわざ俺に暴言はく必要なくねっ!?」

 

上条も茶化されてるとはわかっていながらもいちいち反応してしまう。

 

「上条君……?」

 

「皆元さんまでそっち側に!?」

 

(こええよ!

いつも優しい人が怒ると一番怖い典型だな、これ)

 

まさか上条がチルドレンにやらしい気持ちがあるのかと若干、正気を失いかけた皆元だが閑話休題と話を本筋に戻す。

 

「……冷静に考えてこの部屋に4人追加は無理だろう?」

 

「いえ、俺は今日から浴室で寝るつもりだったんですよー。

いくらインデックスとはいえ女の子ですし」

 

さらりと言ってのける上条に皆元は眼頭が熱くなる思いだった。

不幸体質ここに極まれり。

これから毎日浴槽で眠ることなど例え記憶などなくとも(不幸で)鍛え上げられた上条当麻の肉体にはなんら影響はないのである!

 

「とりあえずってことでどうでしょうか?

申し訳ないですけど皆元さんには廊下で寝てもらって、それなら間違いも起きないですよ。

―――もともとそんなつもりはありませんけどね?」

 

実際のところ資金のない現状では手狭とはいえ魅力的な提案だ。

それ故に皆元は迷う。

 

(なんなんだろう、彼は。

ただのお人好しか?

あまりにもそれが過ぎるというか……)

 

ぶっちゃけたところ皆元の考えすぎなのだがこんな状況では疑いが発生しても仕方のないことだろう。

家主の話とインデックスは割る込んでくることもなく、チルドレンも選択を前にして皆元にこれからを委ねている。

 

(もしものことがあってはならない。

僕は絶対にこの子たちを守らないといけないんだ……!

どうする?)

 

信頼を込めて見つめるチルドレンを前に皆元の迷いは大きくなっていく。

もしかしたらこの選択がチルドレンを、下手をすれば上条達を危険な目にあわせることだって有りうるのだ。

 

「皆元」

 

思考の渦に飲み込まれかけた彼の手に暖かいものが触れた。

はじめは薫。

それに倣うようにして2人が続いて皆元の手を握り締める。

 

「皆元が私たちがいれば大丈夫って言ってくれたように」

 

薫の言葉を紫穂がつなぐ。

 

「私たちは皆元さんがいれば大丈夫よ」

 

だからと葵も言う。

 

「うちらのこともあって悩んでくれてんのやろけど皆元はんがこれって思うんやったらそれが一番やで」

 

「ありがとう、君たち」

 

信頼ゆえに、独特の世界を作る皆元たちを見て上条は複雑な気持ちになっていた。

 

(これが積み重ねてきたモンなのかねぇ)

 

積み重ねた過去がない上条にとって、いささかまぶしい。

 

「とうまはどうしてそんなに悲しい顔してるの?」

 

何かを察したらしいインデックスを誤魔化すように撫でる。

 

「何でもねーよ」

 

今度は表情に気をつけつつ上条は皆元の返答を待つ。

少し悩んだ後、皆元が表をあげた。

 

「上条君、お世話になっていいかな?」

 

「もちろんですよ」

 

(あーあ、雑誌は処分しなきゃな。

まったく不幸だぜー)

 

そう思う上条の表情は、明るい。

 

 

 

夜、上条宅で晩飯をとったチルドレンと皆元はベランダに出ていた。

食器を洗うぐらいしようかという皆元だったがかたくなに断る上条を突破する理由もなかった。

上条としては手持ちの残金で買った食材を巧みに調理した皆元に対する精一杯の感謝の意を示すための行為だったがうまく伝わってはいない。

 

「うちに比べたらだいぶ狭いわね」

 

「今頃バレットたちも心配してるやろなぁ」

 

「京介たちもあわてたりして」

 

「……3人とも能力はもう戻っているかい?」

 

皆元の質問にそれぞれ肯定の返事をする。

 

「特務エスパー「ザ・チルドレン」解禁。

葵、この周辺に怪しい気配があるか探ってもらえるか?」

 

「がってん!」

 

皆元に頼まれると葵は瞳を閉じる。

ただそれだけで常人では、いや仮に空間把握の才能があるとしてもそれを上回るほどの精度とスピードで脳内に情報が流れ込んでくる。

それは視覚ではない。

もっとも進化した能力、と言われるテレポーター。

その中でも頂点にいる野上葵にこそ許された芸当だ。

 

(この辺りは学生寮ばっかりやから基本は屋外に注意すればええな)

 

周囲に動くもの、建物の構造上不審な物を発見することは出来ない。

 

(なんやほんの少しだけどこの空間ノイズは……チャフ?

でも瞬間移動を邪魔するほどの物でもなし)

 

とりあえずこちらを監視する視線はないことと空間ノイズについて葵はそのまま皆元に報告をする。

 

「ありがとう、良くやってくれた。

空間ノイズか……」

 

「せやけどホンマに大したことあらへんと思うで。

これくらいなら澪たちだって問題ないくらいや」

 

そうか、と答えると少し考える様子の後皆元の指揮は再開した。

 

「薫は周囲に防壁を張ってくれ。

紫穂は葵が感じたっていう空間ノイズを透視できるか」

 

「任せて、皆元!」

 

「誰に言ってるの?」

 

薫は仮に対物狙撃銃などが来ても止められる程度の防壁を軽く展開する。

それを確認した後に紫穂は中空へと手を差しのばして透視を始めた。

 

「―――これは、知識の広がり?」

 

紫穂が感じ取ったのはそれぞれが相互に情報交換をする「何か」だった。

1つ発見すれば芋づる式に発見されその「何か」は上条の自室を含めていたるところに充満している。

 

(何、これ。

……黙って表面を透視るだけじゃ意味ないわね。

これ自体をサイコメトリーしないと、……!?

知識量が半端じゃない!?)

 

紫穂が読み取ったそれは非常に微細な通信機器のようなものだった。

人の精神にダイブするのとは勝手は違うものの侵入を試みたところそれは容易に行えた。

侵入と同時に紫穂に膨大な情報が注ぎ込まれた。

上条とインデックスとが仲良く食器を洗う様子がどこかの女子寮でお泊まりをする花飾りをつけた少女が薄暗い路地裏で拳をぶつけ合う若者同士が研究施設の内部で何者かによって惨殺される少女たちが川の字になって眠る施設の子供たちが様々な銃器に囲まれた長髪の美青年が居酒屋で酒を酌み交わす教師が笑顔が怒声が悲しみの涙が弛緩した微笑が「人間」が。

 

「紫穂!」

 

皆元たちの声で紫穂は正気を取り戻した。

気がつくと彼女は皆元に抱きかかえられている。

いつの間にか倒れたらしい。

 

「どれくらい気を失ってた?」

 

「ほんの一瞬だ。

しかし今の様子は尋常じゃなかったぞ」

 

「大丈夫!?」

 

起き上がる前に皆元に抱きかかえられてる今を少しだけ堪能する。

 

(これ以上は1人占めになっちゃうわね)

 

「もう大丈夫よ皆元さん。

2人とも心配かけてごめんね」

 

「そないなこと言わんといて!」

 

「そうだよ、大丈夫なの?」

 

「ちょっと一気に情報を取り込みすぎただけよ」

 

「紫穂、一体何と接触したんだ?」

 

心配そうな顔をする3人に笑いかけてから紫穂は今味わった感覚を話した。

 

「―――具体的に何を透視たのかは覚えていないけどこれだけは言えるわ。

この街は監視されてる」

 

「な!?

薫は防御を、葵はもう一度周囲を索敵頼む」

 

「おっけ!」

 

「はいな!」

 

周囲を警戒する皆元たちだったが周囲は静けさを保ったままだ。

耳を澄ましても聞こえてくるのはどこかを走る車両のエンジン音くらいで危険性を香らせるものはない。

 

「あれ……?」

 

「どうしたんだ、葵」

 

「空間ノイズがなくなってるんや、うちらから離れたとこにはあるんやけど……」

 

「紫穂、もう透視れるか?」

 

携帯に表示された簡易的なバイタルサインと念波グラフを確認してから問いかける。

データ上に異常はないとはいえもっと注視するべきは本人の感覚だ。

 

「そんなに心配そうに見ないでよ。

……確かにこの辺りはなくなってるわね」

 

「一先ず監視はなくなったということか?

3人とももういいよ。

もう部屋にもどっていてくれ」

 

心配するチルドレンに大丈夫だ、と促してベランダから室内へと入れた後も皆元は電気の光で星の見えない空を眺めていた。

 

(見たところ星座も僕らの知るものと変わらない。

違う世界というよりも並行世界という考えが近いのか……?)

 

「皆元さん、何してるんですか?」

 

「上条君か。

ちょっと空を眺めていただけだよ」

 

「(皆元さんってけっこうメルヘンな人なんだな……)」

 

「き、こ、え、て、る、よ」

 

冗談を交えつつなんとなく2人は並んだ。

 

「そういえば上条君、今日はお風呂はどうするんだい?」

 

「近くに銭湯があるんでそこに行こうかと思ってます。

皆元さんたちは大丈夫ですか?」

 

さきほど触れた学園都市の監視の目が気になるものの流石に女湯までは見ていないだろうと1人で納得する。

仮にあったとしてもチルドレンなら撃退するのは余裕だろう。

紫穂から得た情報をもとに推測するに監視装置は個々が小さい通信端末の群体のようなものと思われる。

もしそうならばリミッターをつけていたとしても薫の能力ならば容易に追い払えるはずだ。

 

「彼女たちも広い湯船が好きだろうからね」

 

「そりゃあ良かったです」

 

「お金は大丈夫なのかい?」

 

「大丈夫、とは言い難いんですけどね……」

 

うなだれる上条だがその表情までも沈んでいない。

いきなりのインデックスとの同居で緊張していた彼としてはチルドレンの存在はありがたかった。

 

「今日は俺の服で我慢してもらってになると思いますけど」

 

「それもありがたいよ。

もういくかい?」

 

「そうですね、早くしないと完全下校時間になっちゃいますし」

 

急ぐとしよう、と保護者たちも室内に入ったのだった。

 

 

 

先にあがらせてもらうよ、と皆元は1人で先に銭湯にでた。

 

(世界が違っても銭湯はそこまで違わないんだな)

 

上条から借りたオレンジのシャツを着た皆元はまたも空を眺めつつ考えを巡らせる。

 

「お兄さん、ちょっといいかしら」

 

そんな皆元に声がかけられる。

声の主は胸にさらしを巻き学ランをはおった少女だった。

みたところ学生のようだ……服装は奇抜だが。

 

「なんだい?」

 

「招待状を持ってきたのよ、来訪者さん」

 

 

 

銭湯。女湯、脱衣場

 

 

 

「良い湯だったね!」

 

つやつやとする薫を尻目にインデックスは疲れ果てたようだった。

 

「かおるは変態さんなんだよ」

 

「どんまいやでインデックスちゃん」

 

「違うよ!

あたしはただ若々しいインデックスちゃんの素肌をほおっておくことができなくて……」

 

「ほんまの変態やないか!」

 

鋭い突っ込みを入れる葵は流石関西出身というべきか。

4人は風呂をあがりタオルを体に巻く、という簡素な格好で湯で温まった体を冷ましていた。

 

「そーだ、とうまがお風呂あがったら牛乳でも買いなさいって言ってたんだよ」

 

「上条さんも結構気が利くのねー」

 

「以外やなーぱっと見そういうタイプには見えへんかったけど」

 

「とうまはとっても頼りになるんだよ!」

 

本人の知らないところで結構な評価を受けている上条だった。

 

「いい?

インデックスちゃん、今から風呂上がりに飲む牛乳の飲み方を教えるからちゃんと真似してね!」

 

「了解だよ!」

 

腰に手を当てぐびぐびと一気飲みする。

薫とインデックスに付き合うようにして葵と紫穂も同様にする。

夏に暑い時期の風呂上がりにはいい清涼感だ。

 

「「「「ぷっはぁー!」」」」

 

まるで姉妹のような一体感の4人はわりと学園都市の生活を満喫気味だった。

もっと危機感を持たなくていいのかチルドレンよ。

 




感想や評価を頂いて半分衝動気味で書いたのですがなんとなく前回以上に粗が出ちゃってる気がします……。もっとギャグパートやりたいよう!

重くなりすぎずふざけながらも締めるとこではしっかりする。それを目指してまいります!
次回はもっとギャグするぞー!(独り言)

ともあれ、ご覧いただきありがとうございました!
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