その1
「えええーーーわたしが秘書艦!!」
執務室に呼び出されるなり、いきなり言い渡された辞令で私は思わず自分を指差し大声を上げてしまった。
さかのぼる事、1時間と30分ほど前。
とある鎮守府、いかにもと言った煉瓦造りの建物の前にある広場には今日配属となった提督を迎えるべく手の空いてる艦娘たちが今か今かと待ち構えていた。
「司令官ってどんな人なんだろうね?」
「やさしい人だといいねー」
ヒソヒソ話をする駆逐艦達のさらに後方で手の空いてた私達も広場に来ていたのだが…
「ねぇ瑞鶴知ってる? 配属される提督って男性なんですって!」
隣に居る翔鶴姉がいたずらっぽい目付きをしながら私に耳打ちしてきた。
「おとこかぁ…初めて見るんだけど、どんな感じなのかな?」
「私も資料室の本で読んだのだけど、同じ人間なのに私たちより声が低くて体格もかなり違うらしいみた…」
不意に翔鶴姉の声が止まったので彼女の顔を見ると彼女の視線が自分ではなく明後日の方向を向いていた…いや違う私以外の艦娘のほとんどが翔鶴姉と同じ方向に視線の先、およそ50mほど先にある海軍将校が着る真白い軍服とスラックスに身を包んだ者がゆっくりと、だが力強くこちらへと向かっていた。
彼は徐々に近づくに連れて姿がはっりとし始めてきた。 身長は超大型戦艦よりさらに少し上で体格は肩幅が広くさらに我々艦娘と違って体のおうとつが少なく硬い印象がある。
さらに近づき顔もはっきりと見えるようになった。 面長の顔立ち頬はこけて彫りも深い。 髪はショートヘアにしてる艦娘よりもさらに短く切り揃えられ、制帽からはみ出ない様にワックスで固められて後ろに流すヘアスタイル。
そして一番印象に残ったのが切れ長の目と野生の狼の様なギラギラした瞳と薄い唇、怒っているでも笑ってるでもない硬い表情は冷たい人かなと言う印象があった。
遂に真っ白な格好の彼は私達の10m手前で立ち止まり首を傾け私達を見渡すと「んんっ」と軽く咳払いをした。
それを私達は誰一人声を出さず見つめていた。 そしてゆっくりと彼の口が開かれる。
「あー今日からこの鎮守府に配属された、宮城トマソンだ。 よろしく頼みゅ!」
その声はどの艦娘よりも低音で聞こえて…いやそんな場合ではないこの提督、いきなり噛んだのである…今後もそうなのだが彼は肝心な場面で必ずと言っていいほど噛んだり言い直すのである。
前に居る駆逐艦達も含めこの場面に笑うことも突っ込む事も出来ないこの微妙な空気の中で私達はトマソン提督とのファーストコンタクトをしたのだ。 てか、何だよこのいきなりのガバな展開は…これぞガバソン。