放課後。再びテレビの中のお城。
「おい里中先行きすぎだっ!!」
「里中もう少しゆっくり行った方が……」
「大丈夫大丈夫!」
「何で鳴上にだけ返答するんだよっ」
「ヨースケフラレたクマね」
「フラレたの?」
会話は楽しそうだけど実はシャドウが次から次へと襲ってきて意外と楽しくない状況が続いていた。
『あらぁ? サプライズゲスト?』
少し大きなホールに出ると前には天城がいた。いや、服装がドレス……シャドウか。
『どんな風に絡んでくれるの? さてさて、私は引き続き王子様探し! いったいどこにいるのでしょう? こう広いと期待も高まる反面なっかなか見つかりませんね~』
『あ、それともこの霧で隠れんぼ? よ~し、捕まえちゃうぞ!』
『それじゃあ再突撃行ってきます! 王子様、首を洗って待ってろヨ!』
なかなかのテンション高めでそう言って、シャドウ雪子は走り去って行った。途中で雑魚シャドウが襲ってくるが特に障害じゃない。僕らは倒しつつ先に進む。
「この扉の奥に気配がするクマ!」
「よし、行くぞ!」
鳴上の合図で里中が一気に扉を開ける。
「千枝!?」
クマの言うとおり、その部屋には天城がいた。そしてシャドウも。
『ようこそサプライズゲストのみなさん。はたまた王子様……。雪子……待ってた!!』
『王子様が4人も! いや~ん雪子どうしよう!! つーかぁ、雪子ねぇ。どっか行っちゃいたいんだぁ。どっか誰も知らない遠くぅ』
『王子様なら連れてってくれるでしょぉ? ねぇ早くぅ』
「むっほ? これが噂の“逆ナン”クマ!?」
そこに反応するんだ。って4人? 男子は鳴上に花村に僕……。
「4人の王子って……まさかあたしも入ってるワケ……?」
「4人目はクマでしょーが!」
「それはないな……」
うん。僕もないと思う。そもそもクマって人間? 頭外したら空っぽだったよ? そんな不気味ってワケではなかったけど。
『千枝……ふふ、そうよ。アタシの王子様……いつだってアタシをリードしてくれる……。千枝は強い王子様……』
『……王子様“だった”』
“だった”……? 過去形?
『結局千枝じゃダメなのよ! 千枝じゃアタシをここから連れ出せない! 救ってくれない!』
「雪子……」
『老舗旅館? 女将修行!? そんなウザい束縛まっぴらなのよ! たまたまここに生まれただけ! なのに……』
「や、やめて……」
天城はそう言うがシャドウ雪子はやめずに話した。まるで、“ホンモノ”が言えないのなら“
『生き方……死ぬまで全部決められてる! あーやだイヤだ。イヤあーっ!!』
「そんなことない……」
天城は必死に否定するが声がとても弱々しい。
『老舗の伝統? 町の誇り? んなもんクソ食らえだわッ!』
『それがホンネ。そうよね……? もうひとりの“アタシ”!』
「ち、ちが……」
「よせ言うなッ!」
花村が叫ぶが今回も間に合わなかった。
「違う! あなたなんか……私じゃない!」
『うふふふふふふ! いいわぁ。力がみなぎってくるぅ! そんなにしたらアタシ……』
シャドウ雪子を囲む黒い影は上空に飛んでいった。そして勢いよく大きな鳥かごが落ちてきた。その中に鳥の大きなシャドウが現れた。
『我は影……真なる我』
シャドウが炎を出して攻撃してくる。あっという間にこの部屋一帯が炎に包まれた。
「ーーっ!」
急に頭の中に声が響く。ファルロスだ。
【やぁ湊。前回は彼がチェンジしたようだけど、今回は君からいこうよ】
僕は召喚器を構える。
【そうだね。彼が“ランタン”なら“フロスト”でいこう】
「うん。いいよ」
「ハンチョー? どうしたクマか?」
「鳴上に負けたくないだけ。……“ジャックフロスト”!!」
引き金をひく。現れたのは新たなペルソナジャックフロスト。ランタンが火でフロストが氷。彼が火を吸収するのなら僕は火を凍らそう。
『どっか遠くへ行きたいの……。誰かに連れ出してほしいの……。ここじゃないどこかへ!』
シャドウが鳥かごで物理攻撃を仕掛けてきた。
「“アラミタマ”!」
勾玉のような形のペルソナが物理攻撃をガードする。鳴上の新しいペルソナだ。
僕はオルフェウスとジャックフロストを使い分けて戦っていく。鳴上もたまにジャックランタンを出して火を吸収しながらイザナギで戦っていた。
「……ねぇ鳴上。ジャックランタンとジャックフロストって間違えやすくない?」
「そうだな。非常に間違えそうだな」
「今その話しいる!?」
花村ナイスツッコミ。ジライヤが風でサポートしながらトモエを中心に戦っていた。シャドウはそれに応戦しつつ語っていた。
『ひとりじゃ出て行けない……。ひとりじゃアタシにはなんにもないから』
「トモエっ!!」
トモエの攻撃がうまくいった。シャドウは苦しみだす。
『ああァァアア。アンタなんかああああ……』
『アンタなんか王子様なんかじゃない! どこ!? アタシの王子様!!』
天城は色々と悩んでいた。
「……鳴上、少し僕ら守っといて」
「わかった」
鳴上は僕に何も訊かずにイザナギで僕と天城を守るようにしてくれた。天城は僕の顔をじっと見てる。
「天城。僕の知り合いにも、家系に苦しんでた人がいた。苦しんでた、と言うより受け入れてた。その人は昔自分の家系の人が起こした罪なのに、自分が償うのは当然だ。みたいに思ってた」
僕が話したのは美鶴先輩のこと。花村と天城の悩みは、美鶴先輩と何となく似ているように思えた。里中は……友だちとか、親との関係で悩んでた風花かな?
天城は僕の話をじっと聞いてくれた。花村も、何か思ったことがあったのかジライヤでシャドウを少しづつ攻撃して僕らを守りつつ器用に聞いていた。
「つまり、シャドウが言ってたことは別にどうでもいい。天城はどうなの? 家から出たいの? 出たくないの? この町が好きなら、家が好きだろうと嫌いだろうと別にいいんじゃない?」
言い終わると鳴上に目線で「もういい」と伝える。頷くとイザナギをシャドウの攻撃に全力を注いでいた。花村も攻撃を再開させた。
「そう……だね」
天城はそう呟く。すると次は大きな声だった。
「家の跡継ぎなんてクソ食らえッ!」
……かなり大胆なお言葉だ。
「けどね。父さんも母さんも。おじいちゃんもおばあちゃんも。旅館の人たちみんな、仲居さんたちも板前さんたちも。お得意のお客さんたちも、稲羽の町の近所のみんな家族みたいで」
「知ってる? 小さい頃からみんな優しくしてくれたんだよ? 千枝だって、おじさんおばさんも。今だって、鳴上くんに花村くん、有里くんだって。そういうなかで育ったから今の私があるんだよ。“旅館なんて潰れてくれたほうが”って思ったりもするけど」
「やっぱり私の家……。みんながいてくれて私がいられる場所……。潰すなんてやっぱりできないよ」
『アアアァ!!』
途端にシャドウが苦しみだした。弱まった証拠だ。
『王子様はまだ来ないの? 王子様早く。アタシを連れ去って! どこか……アタシのことなんか。誰も知らない世界に!!』
『希望もないこの世界から。ひとりで出ていく勇気もないこのアタシを。ねぇお願い。誰か私をここから連れ出して! 私、待ってるの!!』
それでもシャドウは、王子様を待っていた。とても、悲しい気がした。
「ジャックランタン!」
ジャックランタンがシャドウの火の攻撃を吸収する。そして上空からジライヤとトモエ。
「いっけジライヤ!」
「トモエ!」
息の合った攻撃でシャドウを地面に叩きつける。後一息だ。
「この前もなんだけどさ、何でトドメやらないの?」
「今回のは、おまえが“いいこと言ったで賞”だ!」
「ハンチョー! 意味はわからんかったクマけど、いいこと言ったのは分かるクマよ!」
「やったれ有里くん!」
「有里、頼んだ」
僕はため息をひとつつく。とても盛大なため息だ。幸せ二日分は消えると思う。
『王子、様……』
「残念だけど来ないよ。王子様」
それでもシャドウは王子様と呟く。
「王子様は、探してもらうより自分で決めた方がいいんじゃない? 男が待つ側だと思うけど」
『自分で探す……?』
「うん。その方が女子にとってトキメキ? みたいなのあるんじゃない? ……それでも見つからないなら」
僕はシャドウ相手に何言ってるのかと自分でも思ったけど、きっと他の人聞いてないよね。とか思いつつ。ジャックフロストを召喚して、言った。
「僕がなるよ。その“王子様”に」
『あぁ……。私の、王子様……』
ジャックフロストの放つ氷がシャドウの体にまとわり、破裂。シャドウは消え、上空からシャドウ雪子がきた。
「天城」
天城は頷いてシャドウに近寄る。
「前は、今までは千枝が手を差し伸べてくれたけど。今度は私がそうしてあげる。連れて行ってあげる。“あなたは……私”。一緒に行こう? 今回は大丈夫だから」
シャドウはペルソナに姿を変える。天城のペルソナ「コノハナサクヤ」。可憐な天城にピッタリなピンク色のペルソナだ。
こうして、天城雪子は無事に救出された。
ちなみに、今夜もファルロスが来た。(死神コミュ4)
◇◇◇
4月19日。火曜日。
天城は霧の影響で体調は優れないらしく、しばらくは休むらしい。それでもとても元気そうだ、と里中が言っていた。とりあえず、一件落着でよかった。
このあとはコミュをいくつか発生させたり、日常を過ごしてからお次の完二くんに行かせようと思います。