5月3日。火曜日。
今日は憲法記念日で学校はお休み。僕は家にいた。すると電話が鳴る。花村からだ。
『おーっす有里。ジュネス遊びに来ねーか? 里中に天城、鳴上に菜々子ちゃんも来るぜ』
「うん。行く」
『おっしゃ。じゃ、待ってるぜ』
「了解」
◇◇◇
ジュネスに行くと既に他のメンバーが揃ってた。花村がビフテキを奢ってくれた。
「サンキュ」
「奢ってくれた。じゃなくて奢らされた。な」
「うんまー!!」
「千枝。ゆっくり食べないと喉につまらせちゃうよ」
「おいしい!」
「うまいな」
友だちと食べるのはいつでも楽しい。今日は暇だなと思っていたけど、楽しい休日になってる。
「ゴールデンウィークだってのにこんな店じゃ菜々子ちゃん可哀想だろ」
「そうだね。こんな店で、ゴメンね」
「うっ、真面目に言われるときつい」
こんな店って花村が言い出したんでしょ。ある意味自業自得。
「ジュネスだいすき」
菜々子ちゃんは笑って言った。花村が感動してる。よかったな花村。
「でもほんとはどこかりょこう行くはずだったんだ。おべんとう作って」
「お弁当、菜々子ちゃん作れるの?」
天城が訊くと菜々子ちゃんは首を横に振った。その後鳴上を見る。……なるほど。
「鳴上、料理出来るんだ」
「たしなむ程度には」
「へー 家族のお弁当係? すごいじゃん、“お兄ちゃん”」
菜々子ちゃんは小さな声で「お兄……ちゃん」と言っていた。意外と気に入ったのかな、鳴上の呼び方。
「へー おまえ料理とかできんだ。たしかに器用そうな感じあるけどさ」
「あ、あたしも何気に……上手いよ。たぶん」
「何でそんなに自信なさげなの?」
「有里くんは料理出来るの?」
「同じくたしなむ程度」
って言ったら花村がかなり驚いてた。やってたし教えてもらってたから。……荒垣先輩に、ね。
「あ、有里くんが出来るならあたしも出来る!」
「いっやー ……ないわ、それは」
「何で僕が出来るなら里中も出来るのさ」
僕できないとか思われてた?
「んじゃあ勝負しようじゃん」
「じゃあ菜々子ちゃんが審査員かな。この人ら、菜々子ちゃんのママよりウマイの作っちゃうかもよ~?」
すると菜々子ちゃんは少し悲しげに言った。
「おかあさんいないんだ。ジコで死んだって」
花村……地雷踏んだな。命ないな。
それでも菜々子ちゃんはお父さんがいるから平気だと言った。それに、お兄ちゃん……鳴上もいるから、と。
「よし菜々子ちゃん一緒にジュース買いに行くか!」
「うん!」
花村は悪いと思ったのだろう。菜々子ちゃんと共にジュースを買いに行った。そしたら天城と里中も菜々子ちゃんに何か奢るべく二人の元に向かった。
「不味いな。僕収入ジュネスのバイトしかないんだけど」
「貸そうか?」
「……いや、さすがに“お兄ちゃん”に奢られるのは」
「あまりお兄ちゃん……とは」
鳴上を呼びに戻ってきたのか菜々子ちゃんが来た。
「なにしてるの? いっしょに行こ? ほら“湊お兄ちゃん”も!」
……湊、お兄ちゃん。
「行こうか“湊お兄ちゃん”」
「鳴上ホントごめん。僕が悪かった」
僕らは菜々子ちゃんの元に向かう。僕が右側で鳴上が左側。
「菜々子ちゃん里中たちから何か奢ってもらうの?」
「たこやき買ってくれるって。湊お兄ちゃんも食べよ! いいよねお兄ちゃん?」
「……ああ」
ちょっと待って鳴上怖いよ。ホント怖いよ。
今だけ鳴上が笑うと怖かったが菜々子ちゃんが元気に笑っている姿を見ると普段通りに戻った。シスコンだな。
今日はシスコンな鳴上の姿を見れただけでもよしとしよう。……湊お兄ちゃんと呼ばれた衝撃は翌日になっても続いたが。
◇◇◇
5月4日。水曜日。
今日もみどりの日でお休み。特に何もなかった。
強いて言うなら、「一日中寝てみよう!」と思ってベッドで寝て、気がつくと深夜12時だったことには衝撃的だった。
◇◇◇
5月5日。木曜日。
ゴールデンウィーク最終日。こどもの日。
今日はバイトをした。休憩時間に昨日のことを花村に言ったら、
「飯は?」
「朝ごはんだけ。午前7時に起きて食べて10時に寝て深夜12時」
「……おまえある意味スゲーよ」
「ありがとう」
「誉めてるワケじゃない。ちゃんと飯は食べろって」
何かオカンみたいなことを言われました。どうしましょう。そうだ、消ゴムを投げようリターンズだ。
「いてっ!」
「ごめん手が滑った」
「絶対嘘だよなっ」
「うん」
「開き直った!?」
バイトは辛いけどお喋りは楽しかった。
◇◇◇
5月6日。金曜日。
放課後。
そう言えば、みなさんお分かりだろうか? 実はあと土日挟んだ月曜日は中間テストだということに。
「先生花村くんが寝てますっ!」
「起きろスイング」
「いてっ! ……ってまた消ゴムかよっ!! 何回使うのそのネタ?」
「これがラスト。名付けて“消ゴムを投げようファイナル”」
「無駄にかっこよくすんじゃねぇよ」
僕らは今教室でテスト勉強の真っ最中。高二の勉強再びの僕、成績上位の天城、前の高校で10番以内を勝ち取った鳴上。この三人が先生役だ。
生徒役は平均以上をとれるものがあればダメな教科もある里中と基本アウトギリギリの花村。やり方さえ覚えれば赤点余裕で回避出来る学力をもってるのになぁ。
「わっかんねぇ!」
「だからこうしてこう。花村は覚えがいいんだから覚えちゃった方が早いよ」
「くっそ~ まさか有里スゴく頭いい組だったとは」
「……ふふ」
「うわぁー!!」
月光館学園の三年トップが美鶴先輩ならば、僕は二年のトップとも言える。何せ毎回一位だったから。
続きは土日でやろう、ということになり今日はひとまず解散した。
◇◇◇
5月7日。土曜日。
今日は一日雷雨だった。雨は今日でやむらしいのでマヨナカテレビの心配はないが、里中のこの怯えようが唯一の心配だった。
放課後。僕らが帰ろうとするととてつもない雷が鳴り響いた。そのせいで数分停電になった。
「うう……」
「里中怖いの?」
「こ、怖くなんかないもん!」
そう言う里中の目にはうっすらと涙があった。……かわいい。
「今日はさっさと帰った方がいいね」
「そうだな」
今日勉強しようにもこの雷じゃ集中出来なそう(主に里中)なので今日は止めておくことにした。明日は晴れるらしいので、明日朝一にジュネスのフードコート待ち合わせとなった。
◇◇◇
5月8日。日曜日。
雨や雷はやんだが空はまだ雲があった。明日からの中間テスト。里中は頑張ってるよ感はあるが、花村がもう死んでた。真っ白に燃え尽きた感しかなかった。
「花村……燃え尽きたって感じだな」
「明日大丈夫、コレ?」
「うーん、千枝はギリギリって感じだけど花村くんは……」
「うう、もう……ダメ」
◇◇◇
5月9日。月曜日。
中間テスト一日目。何か後ろでヒーヒー小言を言ってる声が聞こえた。
◇◇◇
5月10日。火曜日。
二日目。今日はグシャグシャって音が聞こえた。まさかとは思い訊いてみるとそのまさか。花村がテスト用紙をグシャってした音だった。
◇◇◇
5月11日。水曜日。
三日目。次はスースーと聞こえた。チャイム鳴った瞬間に後ろを見ると花村が寝ていて起きるところだった。
◇◇◇
5月12日。木曜日。
最終日。今日は何も聞こえない。最終日くらいは真面目にやろうと思ったのだろうか。今日もチャイム鳴った瞬間に見ると……。
「えっ、いない」
いなかった。僕の呟きに気づいたのか鳴上も後ろを見る。
「……有里。俺、相棒としてスゴく心配になった」
「僕もスゴい心配」
◇◇◇
5月13日。金曜日。
ジュネスに行くと鳴上ともう一人いた。
「誰だっけ?」
「天城がいなくなった時の。あの刑事さん」
「足立です。どうも」
思い出した。あの口が軽そうな刑事だ。
「サボり?」
「酷いなぁ、聞き込みだよ聞き込み」
「右手にソフトクリームを持って聞き込みする刑事初めて見た」
「あ、あはは……」
結論。足立さんはサボりだ。鳴上もそのサボりに付き合うらしい。僕も付き合うことにした。
「物好きだよねぇ、君たち。ここでこんなことしてないで友だちと遊んでた方が楽しいと思うよ?」
「今も十分楽しいと思います」
「僕は暇を潰せればどうでもいい」
「あはは。面白いね君たちは。僕、これからもここいるから。あ、悠くん堂島さんには内緒ね。たまに話に付き合ってよ」
サボり癖のある刑事。足立さんと知り合ったのであった。
ーー新たなコミュニティ。「道化師:足立透コミュ1」
そろそろ完二の登場です。と、なると……あのマヨナカテレビもやらなきゃいけないワケで……。頑張ります。
花村とばっかり関わっている気しかしないのですが……気のせい? 気のせい、だよね?(汗)