ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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熱気立つ大浴場
5月14日(土)~5月17日(火)


『静かな町をおびやかす暴走行為を誇らしげに見せ付ける少年たち……』

 

『そのリーダー格の一人が、突然カメラに向かって襲い掛かった!』

 

『見世モンじゃねーぞコラァ!!』

 

 5月14日。土曜日。

 

 テレビに一人の少年が映ってた。そう言えば何か一年で噂が色々あったな。その噂には一人の少年の名前が必ず出てきた。

 

巽 完二(たつみ かんじ)

 

 八十神高校一年生。まさかの後輩キャラだとは驚き。S.E.E.S時代の時は後輩キャラはなぁ。……天田くらいだもの。コミュキャラなら伏見とかいたけど。……コミュキャラだし。

 

 こういう後輩キャラが仲間になったら最高だろうな。あ、別にテレビに落とされろと願ってるワケではない。

 一応、これでもちゃんと事件について考えてはいる。

 

 そして夜。雨が降っていた。マヨナカテレビ、念のために見ておかないと。

 

「……あれ、どこかで見たような」

 

 強そうで不良みたいな外見。ついさっき……あ。そうか。巽完二だ。つまり、次の犯人の標的は彼かもしれない。鳴上と電話して、明日ジュネスに集まろうということになった。

 

〓〓〓

 

 5月15日。日曜日。

 

 僕たちはジュネスに集まった。

 

「えー それでは。“稲羽市連続誘拐殺人事件特別捜査会議”をはじめます」

 

「ながっ!」

 

「じゃあ、ここは特別捜査本部?」

 

「おー それそれ! 天城上手いこと言うな」

 

 “特別捜査本部”……いいね。何か惹かれるものがある。

 

「まずは昨日……マヨナカテレビ、見たよな?」

 

 花村が話をきりだす。みんな頷く。特番見た直後だから映った人物が誰なのかピンきたようだ。

 

「はっきり映らなかったってことは、まださらわれてないってことか」

 

 鳴上の意見に僕も頷いて同意する。つまり、まだ助けられる。ということだ。

 

「あの子。小さいときはあんな風じゃなかったけどな……」

 

「天城は知ってるの?」

 

「うん。あの子の家染物屋さんなんだけど、ウチ昔からお土産品仕入れてるの。だから今も完二くんのお母さんとはたまに話すよ」

 

 「染物屋さん、行ってみる?」と天城が提案し、僕たちはその染物屋「巽屋」に行くことになった。

 

◇◇◇

 

「こんにちは」

 

 店に入ると人がいた。お婆さん……この人が完二のお母さんだろう。そして少年が一人。

 

「それじゃあ僕はこれで」

 

「あんまりお役に立てなくてごめんね」

 

「いえ。なかなか興味深かったです。ではまた」

 

 少年は去っていく。僕たちの横を通り過ぎる際、こっちを見た気がした。鳴上も見ていたらしく、同感らしい。

 

 気を取り直して完二のお母さんに話を訊く。

 

「このスカーフ、どっかで見たような」

 

 里中が見てるひとつのスカーフ。確かに、僕も見覚えがあった。どこだろう……? 思い出そうとしていると横から「あっ!」と何か思い出した顔を花村がしていた。

 

「わかったテレビの中だ! ほら、山野アナの……!」

 

 あー。確かにそうだった。あの不気味な部屋のスカーフ。あれだ。里中も鳴上も思い出したようだ。

 

 完二母によると元々山野アナに頼まれたオーダーメイドだったらしい。男物と女物のセット。だけど片方しかいらないと言われたらしく、もう一枚は仕方なく売りに出している、と。

 

 マヨナカテレビを確認しつつ完二に注意。となって、今日は解散となった。

 

〓〓〓

 

 5月16日。月曜日。

 

 学校終わり、気になったので僕は巽屋によった。すると昨日会った少年と完二が話をしていた。

 

「あ……明日なら別にいいけどよ……。あ? 学校? も、もちろん行ってっけど……」

 

「じゃあ明日の放課後、校門まで迎えに行くよ。それじゃあ、また明日」

 

「お……おう」

 

 少年は去っていった。僕の横を通った時、目が合ってしまって少しドキドキしたのは秘密だ。

 

「男にドキドキしてるの?」

 

「あ? 誰だおまえ」

 

「二年二組、有里湊。よろしく、完二」

 

「え、あ……ウス」

 

 あ、敬語使えるんだ。僕が先輩だとわかった途端に敬語使うってことは……。

 

「僕って先輩に見えない?」

 

「……その。正直、そうっスね」

 

 完二は申し訳なさそうに言った。すると今度は完二の方から僕に訊いてきた。

 

「その。先輩は俺のこと怖くなのか?」

 

「別に? 僕の周りには完二より怖い見た目の人(荒垣先輩)がいたからね。完二なんてまだ可愛いもんだよ」

 

「か、かかかかか可愛いって言うんじゃねぇよ! キュッとしめんぞオラァ!」

 

「なぜそこで動揺する」

 

 何か今回のマヨナカテレビは色んな意味で恐ろしい気がする……!

 

「じゃ、また暇潰しで来るから」

 

「暇潰しで来られても困るっス」

 

「なら突撃?」

 

「もっと迷惑!」

 

 とりあえず、今日の生存確認は出来た。次は、“尾行”だ。僕は花村に今日の完二と少年との会話を話した。明日、二人が校門前で待ち合わせをする、と。そしたら僕の予想通り、尾行するぞ、と返ってきた。

 

〓〓〓

 

 5月17日。火曜日。

 

 朝。僕らは集まって今日の尾行について話していた。

 

「場所は完二と染物店の両方。絶対犯人に先越されたくないしな。……というわけなんで天城、ケータイ番号教えてみない?」

 

 花村。それが狙いか。

 

「……あ、思い出した。今日尾行終わったらお豆腐買って帰るんだった」

 

「うわ……いっさい聞いてねぇ……」

 

「はいはい。……でもそっか。張り込み? 尾行? 地味にワクワクしてきたぞ!」

 

◇◇◇

 

 放課後。僕らはすでに張り込みを始めていた。

 

『ターゲットは登校しているな!?』

 

『目標確認。ターゲットは登校済みであります!』

 

『ターゲットは本日昼休み終了間際、母親の手作り弁当持参にて登校。現在はトイレで髪の毛をいじってるであります』

 

『ターゲットはやたらソワソワしており、絡まれたらイヤなので出てきたであります!』

 

 ここまでは花村と里中の会話だ。いつもより張り切っている。テスト勉強の時と大違いだ。この二人の音声は電話を通している。では今僕はどこにいるのか。

 

『……んで何で有里は堂々とターゲットと共に行動してるんだよっ!!』

 

『いつの間に完二くんと仲よくなったんだね』

 

 天城が「スゴい」と誉めてくれたのはいいけど花村はとてもうるさい。ターゲットにバレるだろ。

 

「何で先輩は俺の横にいるんスか。その……周りに変な噂とか」

 

「知らないしどうでもいい」

 

「……オレ待ち合わせがあんだけど」

 

「別にいいよ。行ってきて。ただこの学校にいる最中は共に行動をしてもらうだけ。僕のことは気にせず行動すればいい」

 

 完二は少し納得いってない顔だが僕は無理矢理納得させた。今日のターゲットの情報は大部分は僕が直接訊いてきたのだ。今回の張り込みのMVPをもらってもいいと思う。

 

『有里。ターゲットと少年の接触を確認。至急戻ってこい』

 

「りょーかい。それハマった?」

 

『ちょっとな』

 

 みんなと合流したあと分担を分けた。完二には里中と花村が。染物屋の方は僕、鳴上、天城が向かう。

 

◇◇◇

 

 神社の入り口で僕らは飲み物を飲みながらゆっくりと待っていた。

 

「お店の方は特に変わったことはないみたい。このまま何もなければいいけど。犯人来るかな……?」

 

「どうかな。な、有里」

 

「僕にふらないでよ。来ないことを祈るしかない」

 

 天城は少し怖いけど、自分だけ何もやらないってのはイヤなようだ。

 

「あ、ごめんね。なんでこんな話してるんだろ。な、なんか緊張してるみたい。千枝もね、ああいう性格だから男の子の友だち多いけど……今は鳴上くんに有里くん。それに花村くんと一緒が一番楽しいみたい」

 

 するとボソッと「……私も」と聞こえた。天城の顔を見ると少し恥ずかしそうだ。

 

「……私も楽しいよ」

 

 そうだ。花村は失敗したけど僕らならいけると思う。

 

「天城、番号交換しない?」

 

「そうか、事件のことですぐに情報交換出来るように。だな」

 

 頷く。天城は少し恥ずかしがっていたけどOKしてくれた。花村、君だけ断られたな。どんまい。

 

ーー新たなコミュニティ。「女教皇:天城雪子コミュ1」

 

◇◇◇

 

 その後、二人が戻ってきた。両手を上にあげ、まるで「お手上げ侍」とでも言うかの如く。そしたら完二が戻ってきて変にキョドったりして、色々逃げ回ったあと解散した。空はもう暗くなりかけていた。これならきっと完二は大丈夫だろう。

 

 ……そう、思っていた。

 

『あ、天城ですけど。あのね、完二くん家にいないんだって! 旅館のちょっとした用のついでに染物屋さんに電話してみたの。それでね、完二くんのお母さんと話したんだけど……。完二くんどこかへ出掛けちゃってそのまま帰ってきてないみたいなの』

 

 夜に出歩かれては……こちらもお手上げ侍としか言いようがないよね。

 

 マヨナカテレビを確認して明日話そう。そう天城に落ち着くよう言って電話をきった。そしてテレビを見る。深夜12時。ノイズ音から始まりどんどん映像が……鮮明になっていった。

 

「完二はすでに中、か」

 

 鮮明になった映像にたたずむのは一人の男。巽完二。ただ天城と同じく違うところと言うかツッコミたいところが大量にあった。

 

 まず一つ目。

 

『皆様こんばんは。“ハッテンボクの町!”のお時間どえす!!』

 

 その口調とキモい顔はなに?

 

 そして二つ目。

 

『今回は……性別の壁を越え、崇高な愛を求める人々が集う。ある施設をご案内しまぁす。極秘潜入リポートをするのはこのボク……。巽完二くんどえす!』

 

 何故サウナ? そしてだからその最後の「どえす」はなに?

 

 最後の三つ目。

 

『いったいボクは、というかボクの体はどうなっちゃうんでしょうか!? それではこの“崇高な愛を求める施設”に突入! してきまぁす!!』

 

 完二。おまえ……やっぱり……。“そう”なのか?

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