ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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5月18日(水)~5月19日(木)

 5月18日。水曜日。

 

 テレビの中に行くとクマがショボンとしていた。誰かいるだろ、と花村が訊いても、

 

「あ……うん。誰かいるみたい」

 

 とても元気がなさそうだ。僕らは色々訊いてみる。元気なさそうだがちゃんと答えてはくれる。

 

「みたいって場所は?」

 

「わからんクマ……」

 

「もー なんなの。なんかスネてるとか?」

 

「わからんクマ……」

 

「完二くんって男の子だと思うんだけど」

 

「鼻クンクンしてもどっからのニオイかわからないの……」

 

 どうやらかなり深刻なご様子。この世界ではクマが頼り。クマがわからないとかなり困るのだ。

 

「ムムムム。“カンジクン”のヒントがあるといいかも! そしたらクマ、シューチューできる予感がひしめいてる」

 

 完二のことがよくわかるような……。噂ならとっても大量に聞くけど……。“人柄”が感じるようなヒント、か。これは難関だなぁ。

 

〓〓〓

 

 5月19日。木曜日。

 

 ちなみに今日はテストの結果発表の日だった。先生役はいつも通り。僕と鳴上でトップ争いだったらしいが、勝負は僕の勝ちだった。里中は何とか赤点じゃなかった。一方花村。真面目に受けたやつと最早教室にいなかった教科があった。

 

 そしてまさかの受けたやつは全て赤点を余裕を回避。これだったら全部出てろって話だよね。

 

 そして放課後。正直こちらが本題。

 

「ヒントって言われてもなー。“カンジクン”。お友だちとか少なそうだしな」

 

 ヒントを求めジュネスにやってきた僕、鳴上、花村。

 

「おまえ最近仲いいだろ。何かなかった?」

 

「一言二言話しただけだから」

 

「そか」

 

「二人とも。あいつ……」

 

 鳴上が指差す方を見るとあの少年がいた。

 

「有里、おまえ行ってこい」

 

「何で」

 

「俺に借り返してねぇはずだ」

 

 バイトの件、と言われて僕はドキッとした。確かにそれに関してはまだ返してない。僕は仕方なくその少年に声をかけた。

 

「ちょっといい?」

 

「……何か?」

 

「この前、完二……巽完二と話してたところ見たんだけど、何話してたの? おかしなところなかった?」

 

 これだけ訊くと何かと疑われそうなので一応補足的なものも言っておく。

 

「僕完二の先輩……なのは制服見ればわかるか。最近仲よくしてるから心配で。何かあったのか、と」

 

「……ふぅん。ま、いいでしょう。何か急いでいる様子だし、聞かれたことにお答えします。それに……」

 

 ……? それに?

 

「周りから避けられている彼とすぐに仲よくなれた貴方は少し興味深いですので」

 

「そう」

 

 見てたんだ。あの時の会話。

 

「そうですね……たしかに最近のことを聞いたら何か様子が変でした。だから感じたまま伝えました。“変な人”だね……と。ずいぶん顔色を変えてましたよ。こちらがビックリするくらいでした。それを踏まえると普段の振る舞いも少し不自然だったような気がしましたね」

 

 少年は“コンプレックス”を抱えているのでは、と丁寧に教えてくれた。それにしても……何か違和感がある。この少年に対して。

 

 僕は二人に先に行くよう伝えた。

 

「まだ何か?」

 

「えっと、僕は君のことを少年と呼んでいる。あ、名前知らないからこう呼んでるだけ。それで、その変なこと訊くけどさ、たまに君のことが“女”に見えるんだけど……」

 

 それ以上は何も言えなかった。この前少年と初めて会い、張り込みの前日に会った時に感じた違和感。どうしてもこれだけは早急に取り除かないといけないと思い、意を決して訊くことにした。

 

「……まずは名前を。「白鐘 直斗(しろがね なおと)」です。性別は……そうです。貴方の違和感の通り、とだけ答えましょう」

 

「歳訊いていい?」

 

「16歳の一年生です」

 

 つ、つまり……少年ーー直斗は、女? 違和感の通り、が答えならたぶんそうだよな。

 

「先ほどの方たち待ってるのでは? “有里先輩”」

 

「あっ。ありがとう直斗」

 

 僕はお礼を言ってエレベーターに乗った。一瞬聞こえた直斗の呟き。

 

「これで……二人目ですよ。すぐに見破ったのは」

 

 聞くと少し誇らしげになった。

 

「あれ、僕の名前言ったっけ?」

 

 疑問がひとつ生まれてしまったが、これ以上みんなを待たせる訳にはいかないのでそのままテレビの中に入っていった。

 

◇◇◇

 

 テレビの中。別部隊の里中と天城も戻っていた。

 

「手掛かり見つかったクマね! ふむふむコンプレックス……。……え、それだけ!? それだけで探すクマ? クマ使いが荒いクマね……」

 

「これ、完二くんのハンカチ染物屋さんに行って借りてきた」

 

 ヒントとハンカチを使ってクマはクンクンと鼻を酷使している。たまに汗くさいとかでどんよりしていたけど、無事に反応を見つけることが出来たようだ。

 

 僕たちはクマの後ろについていく。

 

「こ、ここ……」

 

 サウナだった。とても熱気がムンムンとしてる。何か……僕ら男子にとって嫌な予感しかしない場所だ。

 

「なぁ、二手に別れね? 俺と鳴上、有里はこのまま帰って、里中と天城はこのまま完二の救出」

 

「それだ!」

 

「いいと思う」

 

「じゃない! ほら、行くよ」

 

 僕ら重い足取りで歩く。するとひとつの広い部屋についた。真ん中にいたのは……シャドウ完二だった。

 

『ウッホッホ。これはこれは、ご注目ありがとうございまぁす! さあついに突入しちゃったボク完二!!』

 

「うわぁ……」

 

 僕たち全員の心の声だった。こうやって生でシャドウ完二を見ると……何か腹立つよね。

 

『【女人禁制! 突入!? 愛の汗だく熱帯天国】 あ・や・し・い、熱帯天国から、お送りしていまぁす!!』

 

「ペルソナぁぁっ!!」

 

 僕、鳴上、花村がペルソナを召喚した。今にも襲いかかろうとする僕らを里中、天城、クマが必死に止める。

 

「お、落ち着くクマ~!」

 

「うっせ! 早くしねぇと体が危ねぇんだよ! もう心がもたねぇんだよっ」

 

「あ、有里くんも落ち着いてって」

 

「あれはダメ。本気でダメ」

 

 これに巻き込まれるのなら風花入ったばかりの大型シャドウ戦の方がまだ……マシだった! たぶん!

 

『まだ素敵な出会いはありません。このアツい霧のせいなんでしょうか? 汗から立ちのぼる湯気みたいで、ん~ ムネがビンビンしちゃいますねぇ』

 

「ペルソナぁぁぁぁっ!!」

 

「チエちゃんも落ち着くクマ~!」

 

「何かムカつく」

 

「だよな」

 

 まるで「ヤケクソ」のバットステータスを受けてるような気分だった。でもノリは同じだったよな。天城の時と。

 

「ノリとしては天城と同じ気がする」

 

「えっ……」

 

 何かショボンと悲しんでいた。

 

『ボクが本当に求めるモノ……見つかるんでしょうかんふっ。それでは更なる愛の高みを目指して、もっと奥まで突入! はりきって……行くぜコラアァァ!!』

 

 何で最後素に戻った?

 

「同じ、アレと同じ……」

 

 奥から雑魚シャドウが襲ってくる。

 

「……何かムカつく! ペルソナッ!!」

 

 天城はペルソナ「コノハナサクヤ」を召喚して火の攻撃でどんどん倒していった。

 

「ジライヤッ!!」

 

 ジライヤが続けて攻撃しようとするが、火がまだ燃えていてジライヤに移り花村の背中にも火が出た。

 

「あっちぃ!」

 

「トモエ!」

 

 トモエの氷結魔法(ブフ)で燃えていたシャドウを凍らせる。すると花村の背中の火も凍った。

 

「うう……さみーよー」

 

「イザナギ!」

 

 最後にイザナギが凍ったシャドウを砕いて倒す。またまた連動して花村の氷も砕かれた。

 

「花村無事?」

 

「もうダメ……早く助けよーぜ。身も心もヤバくなる」

 

「ガンガー」

 

 僕は“女教皇”のペルソナ、ガンガーを召喚して回復魔法(ディアラマ)をかけた。花村の言うとおり早く助けないとこちらの安全がヤバくなる。

 

「いっそ灰にしちゃう?」

 

「いいんじゃないか?」

 

「よくない!」

 

「えぇ~?」

 

 あっちで物騒な会話があったが里中がいて助かった。危うくシャドウ完二が灰に……。

 

「オルフェウスでも出来るよ」

 

「じゃあ一緒にやる?」

 

「有里くんものっちゃダメ!」

 

 やっぱりダメらしい。ホンモノなら躊躇うがシャドウは、と言われるといっさい躊躇わなくなりそう。

 

 僕らは早急に完二を助けるため奥へと向かう。

 

 一番奥の部屋の扉にはピンクのペンキとかで「おいでませ」とか何とか書いてあった。完璧ココが完二のいる部屋だろう。

 

「さあ行くか」

 

 そう花村が言ったが……。

 

「……行かないクマか?」

 

「え?」

 

 五人分の「え?」が響いた。誰も扉を開けようとしなかったのであった。そりゃあ……自ら行きたくはないよねぇ。

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