5月19日(木)~5月23日(月)
完二救出後の夜、久しぶりのファルロスがきた。何だか少し嬉しそうだった。(死神コミュ5)
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5月20日。金曜日。
「やば。熱でた」
久しぶりにペルソナ合体をしたからなのか、もしくはあんなシャドウと戦ったからなのかわからないが、僕は熱をひいて寝込んでいた。もちろん学校は休んだ。
「仕方ない。病院行くか」
バスに乗って稲羽唯一の病院に向かう。風邪ひくのは月光館の文化祭の日以来かな。あれは辛かった。
◇◇◇
無事に薬を買って帰ろうと病院を出た直後。
「……いたっ。すみません」
「あぁ。こちらこそ悪い」
人とぶつかってしまった。熱のせいで足元がふらついたのだ。こういうことになるなら放課後で鳴上や花村に頼めばよかったな。
「ん? ーー! おいっ、大丈夫か!?」
後悔しても遅かった。僕は……気がつくと気を失っていた。失う前、声が聞こえた。誰かの声にそっくりだったけど……誰だったっけ。
◇◇◇
「……ん」
「起きたか。今リンゴ剥いてる。食えるか?」
「食べれます。……え!?」
ぶつかった人は隣でリンゴを剥いてくれていた。その人に礼を言おうとして顔を見たとき、僕は普段出ない変な声を出してしまった。そして、“涙”が出た。
「お、おい。どうした?」
「あ、いや……」
声が出なかった。僕の目の前にいた人物。僕のいた世界では“死んでしまった”。僕に嫌々ながらも料理を教えてくれた優しい先輩。「荒垣先輩」だったのだ。
「とりあえず、リンゴ食って落ち着け」
「いただきます」
しばらく僕は無言でリンゴを食べた。目の前に荒垣先輩がいることをまだ信じることが出来ず、たまにチラッと荒垣先輩の顔を見てしまう。
その度に荒垣先輩から「……何だ」と言われてしまった。恥ずかしくて「別に」とそっぽを向く。……まぁ、よくよく考えればこれも“if”の一つだと思えばいいのだ。「荒垣先輩が生きてる世界」。これもまたりっぱなif世界だ。
それでも気になってしまう。何故荒垣先輩はこの世界では生きているのかと。
「……今さら訊きますけど、二年前に起きた「辰巳ポートアイランド」での事件に巻き込まれたりは……?」
「よく知ってんな。二年前あそこに住んでたのか?」
「……えぇ」
真田先輩には活動部の核の一部的な存在だったから思わず話してしまったが、荒垣先輩にはちょっと躊躇われる。
「確かに巻き込まれたけどな、“重症”ってだけで生きてたんだ。死ぬんじゃねぇかと自分でも思ったけどな」
今はこの八十稲羽に引っ越してのんびりしながら、半年に一回程度念のため検査に来ているらしい。
本来なら検査はまだなのだが、偶然にも風邪をひいたらしく薬を買いにきたようだ。
僕はこの町にきて一ヶ月経つが荒垣先輩に今まで会わなかったなんて……! ある意味不運だと思う。やっぱ花村といたからかな? 花村って不運なんだよ。
◇◇◇
「ここで会ったのも何かの縁」ということで荒垣先輩と色々話をした。もちろん、シャドウ、ペルソナ関連は伏せた。やっぱ真田先輩に言ったのは間違いだったかな? ま、もう遅いけど。
病室に医者が来て「もう帰っていい」と言われたので帰ることにした。携帯を確認すると捜査隊のみんなからメールがきていたので返信した。
「じゃ、もう平気だな」
「はい」
「またな」
荒垣先輩が帰ろうとする。僕は思わず引き留めた。
せっかく会えた。例えいつかはまた会えなくなるとしても、今この時荒垣先輩が生きてることは事実だから。幻でもなく、夢でもない。紛れもない現実。
「今度、料理教えてください」
「誰から聞いた」
「……いえ、誰にも。そういう怖い人に限って何か女子力あるのが定番なので」
「どんな定番だよそれ。……はぁ。わかった」
こうして、僕はこの世界の荒垣先輩と知り合った。午前辛いと思ってた熱も、ポジティブに考えるなら……荒垣先輩と知り合えたという幸運があったのだろう。
ーー新たなコミュニティ。「月:荒垣真次郎コミュ1」
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5月21日。土曜日。
放課後、僕は神社に向かった。特に意味は無いのだが何かお参りすると学力が上がる気がして、昔行っていたのでついつい足を運んでしまった。それに、神社に行くと“少女”がいたからよく行っていたのだ。
昨日荒垣先輩がいたのだからもしかしたらこういう「もしも」もあり得るんじゃないかと思った。
「……お兄ちゃん、食べないの?」
「あ、うん。あげようか?」
「いいの!? ありがとうお兄ちゃん!」
現在「惣菜大学」という店の前の小さな飲食スペースにいる。
さっき僕が考えた「もしかしたら僕の世界で出会った人たちがいるのでは説」についてだ。正直僕は半信半疑の所もあった。偶然、そう思っていた。ゆかりも順平も真田先輩も、荒垣先輩だって単なる偶然。
「よく食べるね」
「お兄ちゃんは男の子なのに食べないんだね」
「お腹減ってないだけ」
では、この目の前にいる「少女」についてはどう説明すればよいのだろうか?
知ってる人は知っている。知らない人は知らない。少女の名前は「
神社につくと珍しく、そしてとっても見覚えのある顔があったので声をかけたところ舞子だった。舞子が言うには「お腹空いたけど家に帰りたくない」とのことらしいので仕方なくここで奢っていたという訳だ。後で花村に今度バイト連続でシフト組んでもらうよう頼まないと。
ちなみに両親は離婚して今は母親と暮らしている。ここは僕も知ってる。同じで少しホッとしたのは内緒だ。悩みは「母親が仕事ばかりで構ってくれない」。……また家庭の問題だった。
「お兄ちゃん、また遊んでくれる?」
舞子がキラキラとした目でこちらを見てくる。二年歳をとっても相変わらずの笑顔だ。
「うん。また遊ぼう」
「約束だよ!」
この世界でも僕は舞子に振り回されることになるのであった。……手紙を読んだあと父親に厳しい目を向けられたのがまるで昨日のようだ。
ーー新たなコミュニティ。「刑死者:大橋舞子コミュ1」
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5月22日。日曜日。
今日はたまたま外に出掛けていた。帰り道、ある人を見かけた。
「鳴上に菜々子ちゃん」
「有里か」
「湊お兄ちゃん、こんにちは!」
「こんにちは」
そうか。この家は鳴上の家か。正確に言えば堂島家だけど普段僕は鳴上しか(菜々子ちゃんはたまに)接しないので、ここは「鳴上の家」と言っておく。
「何してるの?」
「お兄ちゃんがね、“かていさいえん”を作ってくれてる!」
「家庭菜園?」
「菜々子が苗を貰ってきたから植える場所を作ってるんだ。ここを上手く開拓すればそれなりに出来ると思ったんだ」
へえ……。鳴上って器用だよね。
進歩状況はあと看板を作れば終わりのようだ。「せっかくだから」と僕も手伝うことに。かなりの力仕事だった。
「できたーっ!!」
「結構それなりに出来たな」
「ああ」
そして菜々子ちゃんが苗を植える。あとは水をあげながら成長を見守るだけだ。
「有里、手伝ってくれてありがとう」
「別に。僕は特に何もしなかった」
仲良く話していると急に鳴上が話を変えてきた。
「そうだ。有里、聞いたことあるか? 河原に不思議な人がいるんだと」
「不思議な人?」
「あぁ。何か……一言で言うなら。“エレベーターガール”?」
「ーーっ!」
まさか……。「エリザベス」か? いや、ただのエレベーターガールってこともありうる。けれどこの町にいたか? 不思議なエレベーターガール。
「明日いるらしい」
「……教えてくれてありがとう」
僕の反応を見て知っていると察したのか鳴上は何も訊かなかった。とても冷静で、ありがたかった。
今日は二人に別れを言って帰り、そのまま寝た。明日、まっさきに河原に行こうと心に決めて。
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5月23日。月曜日。
放課後、早速僕は鮫川河川敷に行ってみた。
「ほうほう。釣り……つまり魚との戦い。命をかけた素晴らしい決闘。ということでございますね」
いた。一人言を呟いていた。
「別に命はかけないと思うよ。……いや、魚にとっては命懸けか」
「あら、これはこれは。お客人、偶然でございますね」
「マーガレットから聞いたの?」
「えぇ。しっかり、聞かせていただきました」
エリザベスは足元の石を持つと投げた。何がしたかったのだろう。……あ、水切りか。
僕も足元の石を持ってやってみた。意外と上手く出来たので少し嬉しかった。
「流石でございます。水切りは力をいかにコントロールしどの角度で投げるのか。……とても興味深い遊戯でございます」
そこまで真剣に水切りを分析しなくてもいいと思う。
「有里湊様。……二年前、別世界で貴方がしてくれたようにこの世界でも
そこで、ひとつお願いがございます。……この八十稲羽を案内して頂けませんか?」
僕は頷く。エリザベスの言うとおり僕はあの町をいろいろと案内した。エリザベスはとても不思議な人だけどとても楽しかった。
「ありがとうございます。私が暇な時は大体河原かベルベットルームの前にいますので、その時はよろしくお願い致します」
エリザベスは丁寧にお辞儀したので僕もつられてお辞儀した。そして、最後にもう一度水切りをして去っていった。
ーー新たなコミュニティ。「女帝:エリザベスコミュ1」
荒垣先輩はシャドウワーカーには一応入ってます。ゆかりや順平、その他がいる「エクストラ・ナンバーズ(非常時特別制圧部隊)」に所属してるのでのんびり出来るか出来ないかで言えば出来ます。
p3本編でも途中から離脱という形だったので、「あまり無茶してほしくない」という真田先輩の提案という設定です。
八十稲羽に住んでるということはこの世界ではP-1グランプリ、クライマックスに出たら面白そう(笑)
ちなみにこの世界のエリザベスは何をしてるのか、何故八十稲羽にいるのかはわざと言ってないです。決してエリザベス好きだから無理矢理出した訳ではないです。
陽介が一番好きなんだから!(誰も聞いてない)