ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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特出し劇場丸久座
6月19日(日)~6月21日(火)


 夜。とある記者会見がテレビで流れていた。

 

『……以上、当プロ“久慈川りせ”休業に関します本人よりのコメントでした。えー、時間が押しておりますので質問などございます方は手短に……』

 

『失礼。えー「女性ビュウ」の石岡です。静養ということは何か体調に問題でも?』

 

『いえ、体を壊してるって訳じゃ……』

 

『とするとやっぱり心のほう?』

 

 “やっぱり”……? 彼女も少し動揺していた。それから記者の質問はだんだん熱をおびていく。

 

 休業後は親族の家で静養。実家は稲羽市。……あの“連続殺人”の。老舗の豆腐店が実家らしい。そちらを手伝うのか。

 

 ここで司会の人が「記者会見は終わり」と無理矢理終わらせた。

 

 久慈川りせ。人気絶頂の中突然の休業。この後は実家の稲羽の豆腐店に。そしてこっちは連続殺人二件に誘拐二件で騒がれている八十稲羽。……きっと、この町にずっと住んでる人にとっては、ずいぶんと騒がしくなったんじゃないかな。

 

〓〓〓

 

 6月20日。月曜日。

 

「うーす」

 

「お、来た。最近マジメに来てんじゃん。どしたん?」

 

「出席日数って面倒なんがあるもんで」

 

「これからも続けるがよいぞ」

 

「有里先輩、何でチョー上から目線なんスか」

 

 昼休み。僕たちは屋上に集まって昼ごはんを食べながら“昨日のテレビ”について話していた。

 

「“久慈川りせ・電撃休業”ってやつでしょ? まさに今ブレイク中ってとこなのになんで休業すんだろーね」

 

「アイドルってのも大変だよなー うん……りせいいよね! まだデビューして短いけどこのままいきゃじきトップアイドルだぜ。

 

 俺、結構好きなんだよ! なんたって……キャワイイ!!」

 

「オッサンかよ」

 

「花村キモッ」

 

 里中と僕が同時にツッコミ。最後の「キャワイイ!!」は流石にアウトだわ。ダメだわ。

 

「たしか彼女ここ出身で小さい頃まで住んでたらしいし。ファンきっと多いんじゃん?」

 

 里中がそう言うと天城が何かを思い出したようだ。

 

「そう言えば、ニュースだと彼女“お祖母さんの豆腐屋さん”へ行くんでしょ? それ……もしかしてマル久さんのことかな」

 

「マルキュー?」

 

「“マル久豆腐店”。ちょっと前までウチの旅館でも仕入れてたの」

 

「もしかして、商店街にあるあの豆腐店」

 

 そう言うと天城は頷いた。

 

「え、じゃああの豆腐屋行ったらりせに会えんのかな!?」

 

「ちょっとちょっと。重要な点から逸れてってない? 事件の話だって! アンタ自分で“テレビつながり?”って言ったでしょーが! 狙われるかもよ、彼女」

 

 うーん。里中の言うとおり、彼女が狙われる可能性もあるけど……。

 

「昨日今日テレビに出たわけでもない。最初、僕たちは被害者の関係性は“事件の関係者”って推理してたけど、それはどうなの?」

 

 僕のその質問に答えたのは鳴上だった。

 

「久慈川りせと山野アナは繋がり自体ほとんどない。同じ番組に1,2度出たことがあるだけ」

 

「つまり、これで久慈川りせが狙われたら犯人の狙いがさらに絞り込めるという事だね」

 

 僕の言った事の意味が分かった二年組は頷いた。けど完二だけは分かっていなかったようだ。今度は丁寧に花村が説明する。

 

「もし、りせが狙われたら犯人のターゲットは完全に“テレビで報道された人間”だ。最初の事件の関係者って線はほぼなくなる」

 

「はー、あーなるほど」

 

 やっと……? 完二も分かった……かもしれない。たぶん。

 

「よし、じゃあ早速りせの動向に注意だな! うしっ……!!」

 

 花村がやけにはしゃいでいた。里中の「テンション上がってんな……」という呟きに僕と鳴上はウンウンと頷くしか出来なかった。

 

◇◇◇

 

 放課後。僕、鳴上、天城、里中ーー花村は遅れて合流ーーが一緒に帰ろうとすると、校門に一人の男子がいた。そいつは天城に話しかけた。

 

「雪子だよね。こ……これからどっか遊びに行かない?」

 

「え……だ……誰?」

 

 知らないんだ。名前で読んでたから知ってるかと思ったけど。すると周りからヒソヒソ声が聞こえた。

 

「何アイツ。どこのガッコ?」

 

「よりによって天城狙いかよ。……ってか普通はひとりンときに誘うだろ」

 

「張り倒されるにオレリボンシトロン一本な」

 

「賭けにならねって。“天城越え”の難易度知らねぇのか?」

 

 “天城越え”……か。って何だろ?

 

 里中に小声で訊いてみると、天城は遊びに誘う男子をことごとく断っていることから名付けられたらしい。……本人はそんな自覚ないようだ。

 

「アレじゃね? 唯一出来るとすれば今女子たちに大人気の今年来た転校生二人」

 

「あー、あるかも。オレ成功にリボンシトロン一本な」

 

 おい何言っとるんだそこのヒソヒソ会話男子二人。賭けるな、リボンシトロンを賞品にするな。……飲みたいなら奢ってあげるから。

 

 てか人気だったの? てっきり鳴上だけかと思っていたけど。まぁ、正直余り興味ない。

 

「あ……あの。い……行くの? 行かないの? どっち?」

 

「い……行かない」

 

「……ならいい!!」

 

 ちゃんと答えたのに逆ギレとか意味不明。

 

「オラ寄り道なんぞしないでさっさと帰れ帰れ!」

 

 ……? コイツモロキン見た途端、とっても嫌な顔をして「モロキン……」って呟いた。モロキンの事を知っているのか?

 結局あの男子はそれ以上なにも言わず去っていった。

 

「あの人……なんの用だったんだろ……」

 

「なんの用って……デートのお誘いでしょ。どう見たって」

 

「え、そうなの……?」

 

 どうやら天城はよく分かっていなかったらしい。けど、あの男子の誘い方もどうかと思うけど。

 

「よう天城。また悩める男子フッたのか? まったく罪作りだな。俺も去年バッサリ斬られたもんなぁ……」

 

 花村も合流。

 

「え……別にそんなことしてないよ?」

 

「マジで? じゃあ今度一緒にどっか出かける!?」

 

「それは……嫌だけど」

 

 なるほど。こういうとこか。

 

「しっかしまぁ怖いよな。“追っかけ”とかさ」

 

〓〓〓

 

 6月21日。火曜日。

 

 放課後、学校の帰りに商店街に向かった。天城が言っていた「マル久豆腐店」。とりあえず外からでも一度見ておこうと思ったからだ。ちなみに花村はジュネスのバイト、鳴上は吹奏楽部の部活でいない。女子二人は僕より先に帰ったので誘おうにも誘えなかった。

 

 僕は部活に行かないのかって? 部活に行く日も一緒にした覚えはない。ってかそこまで一緒だったらある意味ヤバイ。

 

「はぁぁ。……はいはい! ほら止まらないで! 動いて動いて!」

 

「あれ? 足立さん」

 

 店の前にいた足立さん。僕に気づくと急にこんな事言ってきた。

 

「僕の代わりに店前の交通整理やって!」

 

 ……頼まれたから受けたけど、その代わりに一応、あえて言っておく。

 

「警察の仕事だろそれ」

 

 少々口が悪かったがそこはあれだ。サボり癖を治してほしい僕の愛のムチ的な事だと思ってもらいたい。

 

◇◇◇

 

「……何かすまんな」

 

「いえ、暇だったので。後で足立さんにきつく言ってくださいね。何なら菜々子ちゃんに言ってもらいますか? 菜々子ちゃんに言われたら流石に少しは治ると……いえ、別に何も。すみません」

 

 怖いよ堂島さん。目付き怖すぎ。よく一緒に過ごせるよね、菜々子ちゃんと鳴上。それとも普段は優しいのかな? 菜々子ちゃんを使うような事を言ったから目付きヤバくなったのかな?

 

 足立さんと交通整理を代わって早二時間。野次馬を追っ払ったりしたり、久慈川りせのお祖母さんが「すまないねぇ」とがんもくれたので食べたり。時間が経つのはとても早かった。

 そしたら堂島さんが来たのでワケを説明。

 

「それにしても野次馬が多いな」

 

「人気アイドルらしいですからね。僕も花村……友人から聞いたけどファンが多いとか」

 

「お前は違うのか? 高校生の野次馬が多いからな。お前らみたいな年代はみんなそうなのかと」

 

「どいつもアイドルオタクみたいに言わないでくださいよ」

 

 それに僕は二年間の出来事は知らないんだから。一気にワープしてきたみたいな感じだから。

 

「そいつは悪いな。……さてと、足立の居場所に心当たりあるか?」

 

「……すみません。ないですね」

 

 ジュネスのことは黙っておく。後でたこ焼き奢ってもらう約束していたから。

 

「ったく、ガキに押し付けて自分はサボりかよ。はぁ……。悪い、もう少しやってくれないか。急いであの馬鹿連れて戻るから」

 

 ふむ。前言撤回しよう。堂島さんはたまに怖いけど、とてもいい人。

 半分冗談で「バイト代的な出ます?」と訊いたらまさかのOK。思わず即答で引き受けてしまった。

 

 堂島さん。早めに足立さん連れ戻してくださいね。

 

◇◇◇

 

「バイト代出るから即答で引き受けて? 先輩って金欠なの?」

 

「返す言葉もございません」

 

「そう言えば先輩名前は?」

 

「有里湊」

 

 三十分後。今度はまさかの久慈川りせが来た。いや、家に帰ってきたと言った方が正しいのか。

 野次馬が少なくなる時間ーー夜ごはんの時間だと思えばいいーーを見計らって帰ってきたらしい。流石、人気アイドル。

 

 堂島さんと同じようにワケを説明したらまさかの家に招かれてしまった。これには僕も驚きがヤバい。ちなみに、手続きした後、鳴上と会って少し話をしたとか。……ん? 手続き?

 

「八高に通うの?」

 

「そう。一年生……だから貴方を先輩って読んだの」

 

「なるほど」

 

 それにしてもここの豆腐凄く美味しい。豆腐料理だらけで最初はちょっとうんざり気味だったけど、食べているとそんなの気にしなくなってきていた。

 

 ……そんな時にこういう話するのもアレなんだけど、今雨降っていてマヨナカテレビありそうなんだよね。だから、一応言っておく。ってかいっそ本人に見てもらう?

 

「マヨナカテレビって知ってる?」

 

「マヨナカテレビ……。雨の日の深夜12時にひとりで消えてるテレビを見ると映るっていう」

 

「知っていたの?」

 

「噂……知り合いから聞いた事あった」

 

 ここのマヨナカテレビの噂は殺人事件とセットで騒がれている。別に都会から帰ってきた人が知っていた……でもおかしくはない。まぁマヨナカテレビの場合は証言がすでにあるので噂ではないとこの町の一部の人は思っているとか。

 

「今日……一雨来るかも。一応見てみる事をオススメしとく。映った人が失踪する事件があったから」

 

「分かった。今日はありがと、先輩」

 

 食事を終え、お祖母さんに礼を言って外に出る。りせが外まで見送りに来てくれた。花村が知ったら羨ましがるだろうな。りせが言うには交通整理のお礼、らしいけど僕にとっては十分過ぎるくらいお礼されたな。

 

「ねぇ、先輩」

 

 りせが声をかけてきた。少し、真剣な表情。テレビで見る“りせちー”とは、かけ離れた……でも少しだけりせの“本当”が見れた気がした。

 

「……有里先輩も、私が“りせちー”だから優しくしてるんでしょう?」

 

 僕は何て答えればいいのかわからなかった。そうじゃないと思っていても、心の奥底ではきっとそう思っている自分がいるかもしれない。

 

 だから、僕はこう答えた。

 

「半々かな。生りせちー見たいが半分。もう半分は……りせちーじゃなくて「久慈川りせ」はどんな人なのかを見てみたいって思ったから」

 

「……!! 有里先輩って、変わってる」

 

「自覚はしてる。反省や後悔はしない」

 

「ふふっ。面白い、も追加ね」

 

 さっきの暗い表情から一変して笑顔になった。やっぱり、暗いより明るい表情の方がホッとするよね。

 

「じゃ、またね先輩。豆腐買いに来てくれたらサービスしてあげる!」

 

「やった。……じゃ、また」

 

◇◇◇

 

 その日の夜。マヨナカテレビを見てみると、水着姿の女子が映っていた。髪型的にりせに似ているのだが、鮮明ではないのでよくわからない。鳴上に電話して明日集まって話そうということになった。




シャドウ戦はアニメ版の予定です。
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