ペルソナ4 有里湊のif世界での物語   作:雨扇

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6月23日(木)~6月24日(金)

 7月23日。木曜日。

 

「昨日のマヨナカテレビだけど久慈川りせに間違いないな」

 

「顔映ったしね」

 

「本物より迫力あった気ィするけど」

 

「花村、顔のびてるよ」

 

 僕たちはいつも通りジュネスに集まっていた。議題はもちろん昨日のマヨナカテレビだ。

 

「これでまたひとつわかったね。犯人に狙われるのは……テレビで報道された人」

 

 つまり、山野アナの事件関係者の線は消えることになる。

 りせは朝にちらっと覗くとまだ誘拐されておらずちゃんと店にいることを確認している。と言うことは、マヨナカテレビが鮮明になりバラエティっぽくなるのは本人が入れられたあとになる。

 

「あれって入った被害者自身が生み出してるのかもって前言ってたよね。どういうことか最初はイメージつかなかったけど今はそうなのかもって思う。

 

 映像に出てくるの“もうひとりの自分”なわけだし、入った人の本音が無意識に見えちゃうのかも」

 

 里中の考えに同意出来る。けど、あのマヨナカテレビは本人が入る前はぼやけて見える。あれは誰になのか、何のために見せているのだろう?

 花村に訊くと花村もわかんないらしく、「犯人に訊け」と返ってきた。冷たいな。

 

「……結果的に予告に見えてる。っていう可能性はない?」

 

 天城がそう言った。

 

「どういうこと?」

 

「被害者の心の中が映るなら犯人も……って思っただけなんだけど。誰かを狙ってる心の内が見えちゃうのかなって」

 

 なるほど。人をテレビに入れられるってことは犯人も“同じ力”を持ってるわけだと思うから。……じゃあアレ(マヨナカテレビ)は犯人の“これから襲うぞ~”っていう妄想?

 

「被害者とか犯人とかとにかく人の頭ん中が入り混じってできてるモン……ってか?」

 

 花村がそう言いながら目線がどんどん完二に向いていた。……? あぁ。そういうことか。

 

「てゆーか完二くん。ついてきてる? さっきからひとっ言もしゃべってないけど」

 

「はぇ……?」

 

「……寝てたんじゃないだろーな」

 

「そ……そんなことねぇっスよ! すっごい推理中!!」

 

「完二、ヨダレ」

 

 僕がそう指摘すると完二はとても焦って口を拭きだす。完二が推理? 嘘だね。

 

「ハァ……あの世界ってさ。ホントになんなんだろ。クマくんの説明も“たぶん”が多くて正直よくわかんないし。そもそも犯人はなんで人をテレビに入れるのかな?」

 

「入れたらシャドウに襲われて死ぬ。殺す気でやってるのは間違いないとは思うけど」

 

「手口がテレビなのは警察が絶対に“証明できない”からってことか?」

 

 鳴上の言う通りなら恨みがあったってことかな?

 

「オレを恨んでるヤツなら掃いて捨てるほどいんな」

 

 完二。どや顔するんじゃない。

 

「けど天城先輩とかあるんすか? 人に恨まれる覚えとか」

 

「ないよ」

 

 ……天城さん。キッパリ即答で言ったな。

 

「や、雪子……誰でも知らないうちにってこと少しはあんじゃないかな……はは」

 

「ないよ」

 

 だからキッパリ即答で言わなくても。

 

 うーん、今まで被害にあった全員に共通する恨みってなるとな……全然検討つかない。

 

「ま、幸いまだ先回りできるチャンスだし。この際動機は後回しだ。捕まえてからしゃべらせればいい。とりあえず今ハッキリしてんのはりせが危ないってことだ」

 

「……ってことはまた張り込み!?」

 

「おーよ! 今度こそ犯人に先回りしようぜ!」

 

 花村、気合い入ってんなぁ。

 

◇◇◇

 

「また来てねぇ~」

 

 四六商店にて僕たちは張り込みの準備をしていた。

 

「やっぱアンパンと牛乳だよね」

 

「張り込みつったらそれしかないだろ」

 

「定番だよね」

 

 あれ? 自動販売機の前に足立さんがいる。

 

「足立さん、サボり?」

 

「え、いやぁ違う違う。まー……聞き込みの最中。つーかなんでこんな子どもら見張るハメに……。あ、いやいやなんでもない。堂島さんの指示とか関係ないし。それより君らこそ何してんの? 買い食い?」

 

 足立さんってホント口軽いよね。

 

「今から豆腐屋にりせちゃんの様子見に行くんすよ」

 

「あ……そうなんだ。ボ、ボクもちょうど行くところだったんだよ」

 

「じゃあ一緒に行きます?」

 

 そう訊くと足立さんは頷いた。

 

「現職のデカだもんね。ちょっとは心強いかも?」

 

「うーん。どうだろう?」

 

 里中と花村の会話が聞こえた。足立さんは弱そうだから。ちょっと不安なのも無理ないかな?

 

◇◇◇

 

 足立さんが店内のりせと、天城と里中は店前を、男四人は少し離れた所を警戒していた。

 

「立ち止まんなよ! 怪しまれんだろ!」

 

「や、もう何往復もしてっから……」

 

「疲れた。無理」

 

 日が傾いて暗くなりかけた時、事件が起きた。

 

「あっ……あれ!」

 

 店近くの電柱にしがみついてる男がいた。その男は見つかったことに驚きすべるように落ちた。そして逃げた。

 

「く、くるな! と、飛び込むぞ! 僕が車にひかれてもいーのか!?」

 

 男は今にも車道に飛び込む勢いだ。ってかひかれたいならどーぞって感じるのは僕だけかな?

 もしかして、「死」を間近で感じてない。とってもある意味お幸せな人生なのに命を粗末に扱う所にムカついたのかな?

 

「お……おい。どーする?」

 

 花村が訊いてくる。「正面から行く」と鳴上はすぐにそう言った。ま、それが一番手っ取り早いか。

 

「僕が気をそらすから、上手くやって」

 

「珍しいな、有里が立候補するなんて」

 

「頼むっス」

 

「任せた」

 

 僕が頷き一歩前に出る。

 

「マジで飛び込んじゃうぞ!」

 

「どーぞ」

 

 僕は即答した。みんな驚いてる。もちろん、目の前の男もだ。

 

「死ぬんでしょう? どーぞ。人生悔いないってことですよね? まぁ飛び込んでも助かる確率はありますけど……。どちらにしろ大事な人を悲しませるってことですよ?

 

 貴方にはいますよね? 両親とか、大事な人が。その人たちを泣かせるんです。

 

 僕にはいません。両親いないし、大事な人もいない。だから、今日一日を大切に、友達を大事に。そう生きてきてる。なのに捕まりそうだから「飛び込むぞ」? 僕にとって“ハンパな覚悟での死”は戦って死んだ人への侮辱だ。腹が立つ」

 

 ふう。スッキリした。一応敬語は使ったよ。

 

 ……アレ? 何でみんな動かないの? だったら……。

 

「はい。捕まえた」

 

「えっ……あっ!?」

 

「そいっ!」

 

「ぷぎゃっ!」

 

 痛い。僕、殴りキャラじゃないんだけどなぁ。剣でばっさばっさと斬るキャラなんだ。殴るのは完二とか真田先輩の役目だと思う。

 

 僕が殴ったことで何故か固まってたみんなも動きだし、男を取り囲んだ。

 

「きっ君らね。善良な一市民にこんな乱暴なマネして……」

 

「るせぇ! 人様ぶっ殺しといてテメェはそれか!? あぁ!?」

 

「ひょー! タ、タンマ! ぶっ殺しってなんのこと!?」

 

 男は「りせちーの部屋を見たかっただけ」と言っているがとりあえず足立さんに連れていってもらった。

 

◇◇◇

 

「なぁ有里」

 

「ん? 何?」

 

 足立さんが男を連れてったあと、花村が僕を呼んだ。

 

「さっきあの男に言ったのは……」

 

「全て事実。両親は事故に巻き込まれて死んだ。鳴上と花村には一人暮らしだって言ったと思う」

 

「そういう理由だったのか……」

 

「鳴上と同じ理由なのかと」

 

 そうだったらよかったね。

 このまま帰らせてくれなさそうだったので大まかに過去を話した。もちろん色々誤魔化したり省いたりしたけど。

 あの男に話してる僕はとても怖かったらしい。だからみんな動けなかったのか。

 

 その後、念のためマヨナカテレビを見ておくってことで話がまとまり解散した。

 

◇◇◇

 

 夜、マヨナカテレビの前に最後ちらっと確認しようと店に行った。

 

「えっ、いない!?」

 

「たまにあるけど少し心配でねぇ」

 

 お祖母さんに訪ねたら「いない」と言われて僕は驚いた。もしかして僕たちが男を追いかけてる間に落とされたのか? マヨナカテレビの時間が迫っていたので教えてくれたお祖母さんにお礼を言って店を出た。

 

 けど、僕はすぐに足を止めた。お祖母さんは部屋へと戻り、今日は夜から雨が降っていて周りは誰もいない。僕は地面にある物が落ちているのを見つけた。

 

 それは、“久慈川りせ”の携帯電話。鳴上からりせの携帯のストラップががんもだって聞いていたからすぐにわかった。クマがりせの場所を特定する手がかりになればいいと僕はお祖母さんに渡さず持って帰ることにした。本人に返せば問題ナシ。

 

「嫌な予感が外れればいいけど……」

 

◇◇◇

 

『りせチーズ! こんばんは久慈川りせです! マールキュン! この春からね、私進級していよいよ花の“女子高生アイドル”にレベルアップ! やたー!

 

 今回はですね、それを記念してもうスゴい企画に挑戦しちゃいます! えっとね、この言葉聞いたことあるかなぁ?

 

 スゥ トォ リップゥー

 

 んもうほんとにぃぃ? きゃあ恥ずかしー! ていうか女子高生が脱いじゃうって世の中的にアリ!? でもね、やるからにはどーんと体当たりでまるっと脱いじゃおっかなって思いますっ!

 

 きゃはっ、おったのしみにー!』

 

〓〓〓

 

 6月24日。金曜日。

 

 放課後、僕らはジュネスに向かっていた。

 

「にしてもあの刑事さん(足立)全然ダメだな。やっぱ俺らががんばらねぇと……。し……しかし……す……すとりっぷとかってマジか!? なんか回を重ねるたんびに企画どんどんスゴくなってね!?」

 

「落ち着け」

 

◇◇◇

 

「……クマ、泣いてないよ」

 

 テレビの中に入るとクマがポツンと座っていた。背中ごしだけど「悲しいんだな」とすぐにわかった。

 

「みんなクマのこと忘れて楽しそうに……クマ見捨てられた……。タイクツでヒクツしてたクマ。どーせクマは自分がなんなのかも知らんダメな子クマ」

 

 そうとう寂しかったようだ。そしてちゃっかり里中と天城に甘えてる。

 

「いつか逆ナンしてもよい?」

 

「おー、いいぞぉ!」

 

「……逆ナンのネタはもう封印しない?」

 

「それよか確かめてーことあるんだよ! 今、こっちどーなってる? 久慈川りせって女の子来てないか? なんかわかんない?」

 

「クジカワリセ……? んむ……?」

 

 花村に訊かれて鼻をヒクヒクさせながらウロチョロするクマ。クマの様子を見るにわからなかったんだな。

 

「わかんないのか……? なんかおまえの鼻、段々鈍ってきてない?」

 

「クマは何やってもダメなクマちゃんね……」

 

 あー、さらに落ち込んだ。

 

「オラ泣くなよ。お……俺の胸に来てもいいんだぜ?」

 

「オトコくさいのはお断りクマ!!」

 

 そんなこと言う元気はあるようだ。

 

「……焦ることはない。自分のこともできることも、ゆっくり探せばいいさ」

 

「そうだね。役に立たなくなったから捨てるとかありえない。クマは役に立ってる。安心して」

 

「……ありがとうクマ。センセイとハンチョーは優しいクマね……。いろんなことわからんけど、クマもっとがんばるクマよ」

 

ーー新たなコミュニティ。「星;クマコミュ1」

 

「と言うわけでモフモフしていい?」

 

「どういうわけでそうなんだよ」

 

「ハンチョーならいいクマよ」

 

「なっ!? 俺はダメで先輩はいいってどういうことだよゴラァ! ちっとモフモフしてるからってチョーシ乗んじゃねーぞ!!」

 

 しばらくクマのモフモフ体を触らせてもらった。これは……コロマルに負けないモフモフだな。

 

「センセイ、ハンチョー。ハッキリとわかんないけど誰か入ってるよーな気は微妙にするクマ。そのコを感じれるような何かヒントがあればきっと前みたいにわかるクマ」

 

 ヒント……か。

 

「それって完二の時が“ハンカチ”と“コンプレックス”みたいなの?」

 

「そうクマ。どちらかにする場合はエピソード的なのがいいクマね。最近クマの鼻が悪くなって物だと大まかにしかわからなくて危険クマ……」

 

 一応クマに“久慈川りせの携帯電話”を渡した。クマが鼻をヒクヒクさせている。

 

「んー、やっぱダメクマ。これだけだと方角しかわからんクマね。やっぱクマは役立たずなクマちゃんね……」

 

 また落ち込んでしまったので慰めてから僕たちは情報収集のため解散することになった。




情報収集の部分はカット。次話はその翌日から始まります
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