4月11日。月曜。
僕はとあるマンションの一室。マーガレットから用意された僕の家だ。お金は一ヶ月分だけもらった。
これ使い終わったら? ……バイトするしかない。つまり放り出された状態だ。
「明日から八十神高校二年生、か。ちょっと複雑だな」
段ボールの中に入ったバックや制服を見つめる。ついこの前まで二年生なのにまた一年間二年生をやらないといけないなんて……正直めんどくさい。
そろそろ正午になる。僕は商店街をうろつく。最近デパートの「ジュネス」が出来たせいで収入が危ういとのこと。店をたたむ所が増えてきたらしい。
「愛屋」の近くにある掲示板を見てみる。バイトの募集は4月23日からだそうだ。
「金の援助がない以上、バイトを出来るだけ多くこなすしかないよな……」
ため息を一つつく。本屋が南側にあるようなので行ってみることにした。
「らっしゃーせー」
ガソリンスタンドの方から声が聞こえた。客がきたのだろう。店員の張り切る声が耳に入ってきた。
「どこかお出掛けで?」
「いや、こいつを迎えに来ただけだ。都会から今日越してきてな」
「都会……か。懐かしいな」
僕は今日越してきたという「彼」を見る。とても落ち着いた感じの人だ。高校生……二年生かな? 彼と店員が握手した。
「……」
「だいじょうぶ? 乗り物よい? ぐあい、わるいみたい」
急によろめいた彼は小さな女の子に心配された。大丈夫だと言うけれど明らかに辛そうだった。
ガソリン入れも終わったらしく三人は車に乗って去っていった。
「やあ。君も見ない顔だね。引っ越してきたのかい?」
……あ。かなり長居し過ぎたせいで店員に目つけられた。
「ええ。まあ」
「都会から来るとなーんもなくてビックリっしょ? 実際退屈すると思うよ~ 高校の頃っつたら友だちんち行くとかバイトくらいだから。ウチ、今バイト募集してるんだ。学生でも大丈夫だから」
そして店員は僕にも握手を求めてきた。
握手した後の彼の反応から見るに何かあるかもしれないと少し思っていたけど……まだ確証はない。前の世界での、勘だ。
でもまあ握手を拒む訳にはいかないので僕は握手に応じる。
「考えておきます。ちょうどバイト先探してたんで」
「それはよかった。……」
店員は握手した状態のまま少し固まっていた。目線は僕に向けられたまま。
「あの」
「ああ。ゴメンね。よかった、是非考えといてね。それと……これは一人言だから」
そういうのは聞いてくれってパターンと思うんだけど。そこは気にしなくていいのかな?
「……君か、“別世界”から来たのは」
「ーー!?」
「……ああ、ごめんごめん。一人言だから気にしなくていいよ。ホントホント。別に何の意味もないから、じゃ」
店員はにっこりと笑って店の方に戻っていった。
僕は……しばらく動けなかった。動揺で、上手く思考が回らなかった。
もしかして綾時みたいな存在かもしれない。 と思った。
「まー戦う気がないならいっか」
僕は特に気にする様子もなく昼ご飯と夜ご飯をまとめて買って家に戻り、片付けの続きと明日の準備をした。
「彼とまた会えるかな。話が会う人かもしれないから」
確証はないけれど、そんな気がした。
◇◇◇
4月12日。火曜日。
八十神高校の職員室に行くと手招きされた。諸岡先生が担任の二年二組のクラスに入るようだ。近くに行くともう一人生徒がいた。
「あ」
「こいつも転校してきた奴だ。転校生同士仲良くするんだな」
「どうも。
「有里 湊。昨日ガソリンスタンドで見た」
「そうか」
諸岡先生についていって二組の教室についた。先生の後に続き鳴上が入って僕も入った。
「落ち着けー! 不本意ながら転校生を二人紹介する。ただれた都会からへんぴな地方都市に飛ばされた哀れなヤツ。いわば落武者だ」
あ。僕も都会からの設定なんだ。まぁ合ってると言えば合ってるけど。それにしてもこの人口悪いね。落武者って言われたよ。絶対嫌われてるよ諸岡先生。てかこそこそと「モロキン」とか聞こえた。モロキンがあだ名なんだね。
「鳴上悠です。よろしく」
「有里湊。よろしく」
このあと先生から何か言われかけたけど緑のジャージの女子から助けられ僕と鳴上は席に座った。鳴上は先ほどの子の隣で僕はその前の席。
座ると声をかけられた。先ほどの女子だ。名前は「
『全職員・生徒にお知らせします。学区内で事件が発生しました。通学路に警察官が動員されています。それに伴い緊急会議を行いますので至急職員室までお戻りください。また全校生徒は各自教室で待機、指示があるまで下校しないでください』
急にこんな放送があって教室中はざわざわとし出した。
先生が教室を出たあと里中ともう一人、僕の隣の女子が話始めた。
「はー……いつまでかかんだ」
「さあね」
「あ。そういえば“雪子”、前に話したヤツやってみた? 「雨の夜中に……」ってヤツ」
「あ、ごめんやってない」
……眠たい。いくら「影時間」がなくて早く寝れるとしても僕はいつも眠たくなる。寝たい。
女子達の会話の中で気になるワード、「雨の夜中に……」があって訊きたかったけど……。
「あ、有里くん。寝ちゃったね」
隣の雪子と呼ばれていた女子が言った。僕は眠気に負け、しばらく寝ることにした。
◇◇◇
「おーい、有里起きろー!」
誰? 確かいつも学校では順平が起こしてくれるけど……。順平の声じゃない。
「もう少し……」
「もう帰らないと暗くなっちゃうよー!」
今度は聞き覚えのある声がした。……あーそうだ。里中だ。顔をあげ周りを見る。
「もう帰っていいってさ」
三人いた。里中と鳴上、そして「
赤の人は先に帰ったらしい。名前は「
「さ、帰ろっ!」
有里湊。さっそく友達と呼べる存在が出来ました。