「イザナギ!」
「ジライヤ!」
「オルフェウス!」
シャドウが里中に向かって鞭で攻撃する。それを僕らのペルソナが防いだ。
「……やっぱこうなっちまうか。巻き込みたくなかったんだけど仕方ねねぇか。俺にも、同じ様なことあったんだよ」
『なにアンタら……。ホンモノさんなんかかばっちゃって……。あたしのほうが……あたしのほうが……。あたしのほうがっ!! ずっと素直で正直なのに!! そんな薄汚いサイテー女!!』
「ぐあっ!」
「花村!!」
里中を庇ってシャドウの長い髪で首を掴まれる花村。鳴上や僕が助けようとしたけどこっちにも攻撃がきて自分や戦えない里中を守るのに精一杯。
「くっ!」
「鳴上っ」
鳴上が吹っ飛ばされてしまった。シャドウは花村の首を絞めようとしてる。不味い、このままだと花村が……。
「……っ」
なにか、感じた。鳴上の方からだ。
「……チェンジ」
イザナギが愚者のアルカナカードになった。そして別のアルカナになる。「魔術師」のアルカナだ。
「ワイルド」の力を持つ者しか出来ない能力。ペルソナのチェンジだ。
「“ジャックランタン”っ!!」
「ペルソナがもう一体クマ!?」
クマだけじゃない、花村も驚いていた。普通はペルソナは一人一体だから驚くのも当然と言えば当然。
「いけっ!」
ジャックランタンはまず花村を掴んでる髪を焼いていく。僕もオルフェウスに「アギ」を指示。ペルソナ二体分のアギがシャドウに炸裂した。
『あたしのほうが……』
シャドウはまだ耐える。里中が認めてないからだ。
「花村!」
「おうっ!」
……とそのときシャドウの蹴りがジライヤの急所に当たった。ペルソナのダメージは本人にも影響してくる。つまりジライヤの急所のダメージも花村の急所にダメージがくるワケで……。
「……っ!!」
「ヨースケ! どうしたクマ!? 動きがニブイクマ!! いつもならこうシュンビンにビンビンに!!」
「や……ビンビンつーかギンギンっつーかキンキンっつーか。どうも相手が里中だと思うとやりにくいというか調子が出ないっつーか」
「花村……」
「そっとしておこう……」
「Mクマ?」
「ちげーよ!! とも言い切れないのがちょっと悲しい」
Mなんだね。
「……ねぇ」
里中が声かけてきた。うつむいていて表情はよくわからないけど、何か悲しそうな声だった。
「あたし……どっかで間違えちゃったのかな。あたしのやってたことってただ自分に酔ってただけだったのかな」
鳴上が「……里中」と呟く。シャドウが怒っているのか強い口調で言った。
『何をそんなわかりきったことを!!』
「……あたし、そんなに強くない。雪子が思ってるほど強くない。雪子が……雪子がいてくれたから!」
里中は話し始める。里中の表情はさっきまでとは違って何かを決意したようだった。花村の時と同じだ。
「あたしは雪子みたいに美人じゃないし、女らしくないし。将来何したらいいとかもわかんないし。嫉妬もしちゃうどーしようもないサイテーなやつかもしれないけど、それでも! やっぱり雪子が一緒にいてくれることがうれしいから……!」
『あ、ああぁぁぁぁぁ!! 何よ何よ何よ! 結局は雪子がいないと何も出来ないじゃない! だから雪子が手放せない! 雪子がいないと! あたしは何も出来ないただの落ちこぼれじゃない!』
「でも!」
里中はシャドウに負けずに話す。
「でも……あたし、雪子を守ることは出来る! 守りたいんだ。雪子を早く、助けてあげたい……!」
シャドウがどんどん弱まってる。
「今クマ!」
「ジャックランタン!」
ジャックランタンがアギでシャドウを攻撃する。
「ジライヤ!」
ジライヤは風属性の攻撃“ガル”で炎をさらに広げる。シャドウがとても苦しんでいるのがわかる。
「止めだ!」
「いけ有里!」
「ハンチョー! やっちゃうクマーっ!」
みんなが僕を応援する。止めなら鳴上とかがやればいいのにって思うけど、前回は鳴上が最後の攻撃をしたから譲ってくれたのかな。
「オルフェウス!」
オルフェウスがシャドウに近づく。ジャックランタンの炎がまだ消えてないからか、消そうと悶えていた。
『ホンモノさんを庇っちゃって……アンタたちバカなの!?』
「バカだよ。でも、里中が認めるきっかけをつくったのはもう一人の里中である君だと思う。だから……君も相当バカだと思うよ」
オルフェウスが超至近距離からのアギを何発も放った。今回はちゃんと倒れないくらいにしてある。
シャドウは怪物から里中の姿に戻った。
「里中」
「大丈夫。……こんなあたしでも、雪子のこと好きなのは嘘じゃないから」
里中は、シャドウ千枝に真っ直ぐと向かって言った。
「アンタは……あたし。だよ」
シャドウ千枝は少し笑って姿を変えた。里中のペルソナ。名を「トモエ」。里中らしいペルソナだと思う。
「あ、れ……?」
里中が座り込む。そう言えばメガネかけてない。僕はクマに里中のメガネを渡すよう言った。里中はメガネをかけると視界がはっきり見えることに驚いていた。
「あるなら早く言ってよ!」
「チエちゃんがどんどん行っちゃうから渡せなかったクマよ」
「う、ごめんなさい」
クマによるとシャドウはペルソナを持たない普通の人間は霧が晴れる日までは襲わないらしい。僕たちの世界と霧の晴れる日が逆みたいだ。だからとりあえず今日一旦戻っても問題はないらしい。それでも里中にとってはヒヤヒヤするだろうが、一旦は抑えてもらった。
「そだ。リーダーさ、鳴上がやってくんね?」
「俺か?」
クマも里中も、もちろん僕も異議なし。鳴上も頼まれたら断れない性格なのか了承した。
「何で花村はしないの?」
「俺ってほら、参謀的な? 有里でもリーダーよかったんだけどさ」
「僕はパス」
「というと思ってやめました」
よくわかってらっしゃる。僕は……もうしばらくいいよリーダーは。それに、鳴上の方が似合ってるし。
ーー新たなコミュニティ。「愚者:自称特別捜査隊コミュ1」
◇◇◇
今日の夜もファルロスが来た。正直後にしてほしいと思ったが、シャドウ戦後に来る習慣を変えないらしい。もう諦めた。少し話して寝た。(死神コミュ3)
◇◇◇
4月18日。月曜日。
花村と鳴上と話していると里中が登校してきた。もう体は大丈夫らしい。疲れもとれ、いつでも行けると張り切っている。
「今日行っちゃうか?」
「リーダーは鳴上だから」
「俺が決めるのか?」
「鳴上くんなら文句なし。てか有里くんが決めても文句なし」
「それ花村じゃなきゃ文句ないってことだよね」
今日行っちゃうことになりました、と。
「やべトイレ行きたかったんだ!」
花村がダッシュでトイレに向かう。すると里中が僕と鳴上に話しかけてきた。
「二人とも、ありがとね。あたし、絶対雪子助けるから。頼っちゃっていいよ」
里中はニッと笑う。シャドウがする不気味な笑みではなく、とても明るい笑みだった。
ーー新たなコミュニティ。「戦車:里中千枝コミュ1」
シャドウ千枝戦終了です。物語の展開早いですかね? とりあえず雪子救出まではこのペースだと思います。「もっと展開遅くしてほしい」とか意見ありましたら感想にて教えてくれると嬉しいです。
有里くんのペルソナ構成は映画版をベースに少し変えたりします。
雪子救出が終わればゆったり出来る……かもしれない。