ありんす探偵社へようこそ   作:善太夫

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よろいちゃんからの依頼

 城砦都市エ・ランテルベーカリー街221B『ありんす探偵社』、美少女探偵ありんすちゃんの朝はベッドの中のまどろみで始まります。

 

「いつまで寝ているんだ? 寒い日は思いきってパッと起きてしまった方が良いんだぞ?」

 

 探偵助手のキーノが小言を言います。──でも──ありんすちゃんにだって言い分があります。だって、今朝はとても寒いのですから。

 

「今日は探偵ちゃ、お休みにしるでありんちゅ」

 

 キーノが引っ剥がした布団を取り返してまたもや潜り込みます。

 

「そうだ。暖かいコーンクリームスープがあるぞ? まあ、ありんすちゃんは起きないからいらないか」

 

「コーンクリームスープ!」

 

 実はありんすちゃんはコーンクリームスープも大好きです。もっともモンブランケーキにはかないませんが。

 

 てきぱきと着替えたありんすちゃんはテーブルに着きます。キーノは湯気の上がったコーンクリームスープの皿をありんすちゃんの前に置きます。

 

「おいちいでありんちゅ」

 

 あらあら。慌ててスプーンですくうからあちこちスープまみれです。こんな事ならよだれ掛……ゲフンゲフン……エプロンをした方が良かったのではないでしょうか?

 

 ありんすちゃんが綺麗に食べ終え──お皿をペロペロ舐めた為、本当に綺麗にピカピカでしたが──砂糖とミルクたっぷりの食後のコーヒーを楽しんでいると、チリンチリンと扉の鈴が来客を知らせました。

 

「あ、あのー……僕はツア……いや、よろいです。みんなからは『よろいちゃん』と呼ばれてます」

 

 頭から大きな鎧をスッポリ被った女の子がモジモジしながら入ってきました。

 

「──いや、ツアー──んぐぐぐ」

 

 キーノが思わず叫びかけるのをありんすちゃんが無理矢理止めます。キーノはいつになったらお客様に対する礼儀を覚えるのでしょうね?

 

「実は探して欲しいものがありまして……そのう、ギルティ武器って知りませんか?」

 

 ありんすちゃんは腕を組んで考えます。どこかで聞いたような気がするような、しないような……

 

「……うーん……微妙でありんちゅね」

 

 助手のキーノが代わりに尋ねます。

 

「……なんだかあやふやな依頼だな。その『ぎるてぃ武器』とは具体的にはどんなものなんだ?」

 

 よろいちゃんはしばらく考え込みました。

 

「……そ、そうですね。あのぅ……リ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者チーム“朱の雫”が持っている鎧みたいな、特別な武器や防具……ですね」

 

 ありんすちゃんの瞳がキラーンと輝きました。

 

「ちょの『あかのしくず』から鎧を取って来たらよいでありんちゅね!」

 

 キーノは慌てました。このままでは本当に行動しかねません。

 

「まあ、待て。ありんすちゃん、後で打合せしよう。……で、謝礼について話をしたいのだが?」

 

「謝礼は金貨千枚でどうでしょう? もちろん武器や防具の代金は別に支払います」

 

「ありんちゅちゃにまかしぇるでありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんは即答してしまいました。うーん……大丈夫でしょうか?

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 よろいちゃんが帰った後、ありんすちゃんはキーノと作戦会議を始めました。

 

「……ぎるていってなんでありんちゅ?」

 

 やっぱり。ありんすちゃんは意味がわからないのに引き受けてしまったみたいですね。きっと謝礼の金貨千枚に目が眩んだのに違いありません。まあ、私も金貨千枚なら……ゲフンゲフン。

 

「うむ。ギルティとは罪、という意味だな。すると罪を正す正義の武器、という事かな? 言っておくが“朱の雫”から奪うのは無しだ。要は他にはない特別な武器や防具を探したら良いんじゃないか?」

 

 なんだか謎めいていますね。これって名探偵が解決するのに相応しいのではないでしょうか?

 

 ありんすちゃんが目を瞑って推理を始めます。ありんすちゃんの頭の中では灰色の脳細胞が活発に動いているのでしょうか。

 

 ん? 何だかありんすちゃんの頭が前後に揺れだしました。おやおや……どうやらありんすちゃん、居眠りをしているみたいですね。

 

 うーん……そういえば食後でしたね。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 翌日、『ぎるてぃ武器』について悩んでいたありんすちゃんは何か思い出したみたいです。助手のキーノに「ちょっと行ってくるでありんちゅ」と言い残して何処かに出かけて行きました。

 

 うーん……まさかとは思いますが……ナザリッ──ゲフンゲフン。……ありんすちゃんの運命はいかに?

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 よろいちゃんが指定した場所は大きな洞窟でした。ありんすちゃんは世にも珍しい、そうですね『ぎるてぃ武器』に相応しい武器を用意した、と自信満々です。

 

「お久しぶりです。僕がよろいです。ツアーとかいう人は、あの、知りません。本当です」

 

「こりが『ぎるてぃ武器』でありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんが上から被せてあった布を取り去ると……

 

「初めまして。私は元祖ローブル聖王国の聖王女、カルカ・ベサーレスです」

 

 ありんすちゃんが得意気に胸を張ります。

 

「カルカは『聖棍棒』なんでありんちゅ」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 残念ながら今回の依頼はありんす探偵社始まって以来初めての失敗となりました。カルカもいかにして自分が『聖棍棒』として使用されたのかを説明してくれましたが、よろいちゃんは納得しませんでした。

 

 仕方ないので真ローブル聖王国で流行していた武器『カルカ棒』も付けると提案しましたが断られてしまいました。

 

 残念でしたね。ありんすちゃん。


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