前回のあらすじ
依頼がなく暇なありんすちゃんは『名探偵の行く先には必ず事件あり』を信じてダーツに目的地を決めてもらい、助手のキーノと出かけました。到着したエルフ王国の城に入ったありんすちゃんを待ち受けていたのはなんと、二人の女エルフとエルフ王デケム・ホウガンの死体でした。
探偵の禁じ手といえる死者蘇生により女エルフを蘇らせたありんすちゃんは犯人が髪が黒と銀でオッドアイのハーフエルフだと知るのでした。
※ ※ ※
ありんすちゃんは閉じていた目をパチリと開きました。
「犯人がわかっちゃ、でありんちゅ!」
ありんすちゃんは力強く宣言しました。
「犯人は……マーラ、でありんちゅ!」
マーラ……?
……マーラ……?
うーん。ありんすちゃん、エルフ王の性器を突っつきすぎておかしくなってしまったのでしょうか?
「……犯人は……マーラ、でありんちゅ!」
再びありんすちゃんが宣言しました。
「……いや、マーラって誰だ? 初めて聞く名前だが……」
「……ありんちゅちゃにはしゅべてお見通しなんでありんちゅ! 犯人はマーラ。アウアウとマーレが合体しちぇ、変身しちゃんでありんちゅ!」
ありんすちゃんは力強く胸をはるのでした。
※ ※ ※
「……何の用なの? これでもあたし達は忙しいんだけど?」
「……えっと、あの……お姉ちゃんのいう通りだと……あの、思います」
鼻息を荒くしながら助手のキーノを連れてやって来たのはダークエルフの双子の前でした。
「……アウアウとマーレ、早く『マーラ』になるんでありんちゅ! ありんちゅちゃのおめめは節穴なんでありんちゅ!」
……いや、目が節穴だと解決しませんよ?
「マーラ? なにそれ?」
「……えっと、こちてこちて、『ふゅーじょん! ハッ!』って合体しるますでありんちゅ!」
……それって竜の玉を集めたり集めなかったりするヤツですよ? きっと……
それから延々とアウラとマーレにフュージョンのポーズを指導するありんすちゃん……あらあら、とうとう定規と分度器まで持ちだしはじめちゃいましたよ。
「ダメでありんちゅ。アウアウの人差指が3度さがっちぇいるますでありんちゅ。マーレは右足を2センチ後ろに下げますでありんちゅ」
うーん。たしかフュージョンって完全に同じポーズをとらないといけないんでしたよね? これって実は不可能なんじゃ……
結局何度試してもフュージョンは成功しませんでした。当たり前ですよね。
「犯人は銀色黒色の髪なんでありんちゅ……目はアウアウやマーレなんでありんちゅ。ふちゃりが合体しればピッタンコなんでありんちゅ……」
ありんすちゃんは犯人のハーフエルフの正体がアウラとマーレが合体したものだと思い込んでしまっているようですね。うーん。本当はデケムの娘でもある番外席次こと“絶死絶命”アンティリーネ・ヘラン・フーシェが犯人なんですが……
「ありんすちゃん、このフュージョンとやらで合体は無理みたいだぞ?」
見かねた助手のキーノも意見します。
ありんすちゃんはしばらくウンウンうなっていましたが──
「わかっちゃでありんちゅ! こりはアウアウとマーレが変身ベルトて合体しるんでありんちゅ! そちて『きちゃまの罪を数えな』言うんでありんちゅ!」
ありんすちゃん……それって風都の探偵な仮面のライダーなヤツです……うーん。仕方ありませんよね? だって、ありんすちゃんはまだ5才児位の女の子に過ぎないのですから……
ちなみにエルフ王デケムが全裸だったのはアインズの指示でマジックアイテムを回収したパンドラズ・アクターが剥ぎ取っていったからでした。