ありんす探偵社へようこそ   作:善太夫

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探偵はもう死んでいる

 アインズ・ウール・ゴウン魔導国から旧バハルス帝国首都アーウィンタールへ向かうオリエント急行の豪華な内装で飾られた食堂車の片隅ではありんす探偵社の二人がワインに舌鼓をうっていました。

 

「なかなかおいちいでありんちゅ。まちゃに至高で究極なブドウジューチュでありんちゅ!」

 

「……うむ。なかなかの逸品なのは間違いないな。これ程芳醇なワインは王都でもお目にかかった事はないぞ」

 

 おや? ありんすちゃんが飲んでいるのはブドウジュースじゃなくてワインみたいですが……ありんすちゃんって5才……

 

「……おいちいブドウジューチュ……」

 

「……今度はモ、モモンさまと……」

 

 前回エルフ王を殺した犯人を捕まえたありんすちゃんは何故か魔導国から犯人を引き渡すかわりに多額の報奨金をもらい、豪華な慰安旅行に出かけてきた、という訳でした。

 

 この旅行が事件の発端となるとは二人には知るよしもありませんでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「お疲れ様ですモモン様。食事をご用意いたしましたのでコパートメントでお休み下さい」

 

 車掌が声をかけてきた為アダマンタイト級冒険者“漆黒”のモモンはナーベを見やる。

 

「……モモンさ──ん。ここは私が……モモンさ──んは是非お休み下さい」

 

「……うむ。そうだな」

 

 アインズは心の中で(いや、アンデッドに休憩は必要ないんだが……)と突っ込みながらもコパートメントに向かう事にしました。

 

 アインズ──“漆黒”のモモンと“美姫”ナーベのアダマンタイト級冒険者チーム“漆黒”は密かに運ばれていた金塊の護衛任務の為、たまたまありんすちゃん達と同じオリエント急行

に乗っていたのでした。

 

 アインズがコパートメントでしばらく時間を潰して戻ってくると、先程の車掌があわててやって来ました。

 

「大変です! モモン様! 二人連れのお客様が殺されました!」

 

 アインズはナーベを連れて車掌の後に続きました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

(……? これはアンデッド反応だな……しかも二体か……)

 

 事件現場の食堂車の扉の前でアインズは立ち止まるとナーベに目配せします。ナーベは小さく頷くと短剣を片手に構えます。

 

「こちらです。このお二方が亡くなっています。はじめは眠っていると思ったのでしたが……身体が冷たかったので調べてみると心臓が動いていませんでした……」

 

 アインズは二人の少女を見ました。一人はまだ幼い少女でもう一人は12歳位の少女に見えます。

 

 アンデッド反応があった事からこの二人はアンデッドなのは間違いないようです。ですから心臓が動いていないのは当たり前なんですよね。

 

 つまりありんすちゃんとキーノはワインに酔って眠ってしまっただけだった、という訳でした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 自分達のコパートメントに戻ってきたありんすちゃんとキーノは沈んでいました。

 

 特にキーノはワインに酔ってだらしなく眠り込んだ姿をモモンに見られ、かつ、ナーベからは軽蔑の眼差しで「ふ。これだからミイデラゴミムシは……」と呟かれてしまいました。

 

「……ところで、どうするんだ? このままだと『探偵はもう眠っていた』になるぞ? まずいんじゃないのか?」

 

 キーノの言葉にありんすちゃんは考え込みます。しばらくしてありんすちゃんは自分の名刺を取り出すと何やら書きこみはじめました。

 

「こりでいいでありんちゅ!」

 

 

 

 

 名刺の『ありんすちゃん』がバツで消されて『はもう・しんでる』と書き加えられていました。うーん。

 

 

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