ロックマンZAX   作:Easatoshi

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注意事項:

本作品は整合性・時系列無視のメタネタ、下ネタ、不謹慎等
3点そろった壊れギャグ満載な二次創作です。

原作『ロックマンX』並びに『School Days』とそれらマルチメディア展開による作品の数々とは一切関係ありません。

加えて版権元の株式会社カプコン様と有限会社スタック様、及びに関係者様を誹謗・中傷する意図もございません。

あくまでジョークの一環として、
「エックス達はそんなこと言わない」と笑い飛ばして貰えれば幸いです。



第1話

「ヒィ……ヒィ……!!」

 

大都市の高層ビル群の路地裏を、イレギュラーが狭い隙間を縫うように走り抜けていた。

緑を中心に構成されたボディを持つ彼は、カメレオンをモチーフにしたレプリロイドである。

名は『スティング・カメリーオ』。

彼は今さる犯罪の現行犯でイレギュラーハンター達に追われている所だった。

 

「待てカメリーオ!」

 

逃げるカメリーオに後ろから男の怒声が路地裏に響き渡る。

目線だけをちらりと後ろにやると、

先程から執拗にカメリーオを追うハンター3名の姿があった。

 

「止まらなければ撃つぞ! 俺たちは本気だ!」

「大人しく観念しやがれ!」

「往生際が悪いとモテないよ!」

 

機械ならではの重々しい足音を重ねながら、

薄暗くてゴミや廃材が散らばる狭い路地を走る計4名のレプリロイド。

カメリーオは逃げながらも時折振り返っては、それぞれ青、赤、黒のボディを持つ

3人の人型のレプリロイドを苦し紛れに挑発する。

 

「ニニニッやなこった! 待てって言われて誰が待つか!

撃てるもんなら撃ってみろってんだ!」

「くそっ! やるしかないのか!!」

 

青いレプリロイド『エックス』が片腕を引っ込めて銃口に切り替える。

エックスの固定武装、ロックバスターMk17。

通称『エックスバスター』から光弾が発射される!

 

「ギニィ!?」

 

驚愕に染まるカメリーオの表情。

咄嗟の判断でカメリーオは上半身をよじって回避を試みるも、

青い光を伴う高熱の破壊的なエネルギーが、カメリーオの黄色い肩をかすめて飛んで行った!

カメリーオの肩の黄色いパーツが瞬時に黒と茶色のグラデーションに焦げる。

 

「こ、こいつ! マジで撃ちやがった!?」

 

一歩間違えればヘッドショットは避けられなかっただろう。

有言実行と割り切るには余りに容赦ないエックスの攻撃に、

彼の本気をカメリーオは痛感する。

 

「逃がさないよ!!」

 

間髪入れず、黒いボディに後頭部から突き出る

オレンジのくせ毛が特徴の少年『アクセル』が叫ぶ。

腰のホルスターから愛銃『アクセルバレット』を2丁、

目にも留まらぬ勢いで構えては、同時にカメリーオの足元めがけて威嚇射撃を行う。

 

「ギャニニニニニニニッ!!!」

 

爆竹でも炸裂したかの様にカメリーオの足元に激しく火花が散った。

鮮やかなアクセルの早撃ちに恐れおののき、

実に軽快なステップを踊るカメリーオ。

攻撃の手を緩めず迫ってくるエックス達を振り返りながら、

しかし走る勢いを弱めることはない。

 

実際彼は必死だった。

兎にも角にも逃げる自分を鬼気迫る表情で執拗に追いかけてくる

3人のイレギュラーハンターを前に、カメリーオはただ怯え惑う事しかできなかった。

 

「(畜生! たかが物取り一人に、何でここまでやるってんだ!?)」

 

追跡者達を憎々しげに思いながら、

腰に下げた黒いバックパックに手を当てる。

はちきれんばかりに張りつめて見るからに重そうな、

カメリーオにとってはそれはそれは大事な『ブツ』が収められている。

 

「いい加減にしろカメリーオ! 盗んだものを返せッ!!」

「や、やーだねえええええええ!!!!」

 

発砲さえ辞さないエックス達に、

逃げるのをやめないばかりか精一杯の強がりで悪態をつくカメリーオ。

余程これの中身に執着しているのか、下手をすれば排除されるリスクを、

バックパックの重みと共に負いながらも追っ手を撒こうとする。

 

エックスの言う盗品、

青いハンターの視線はカメリーオのバックパックに注がれていた。

 

そう、カメリーオの罪状は『窃盗』だった。

 

元イレギュラーハンターが第9レンジャー部隊所属という輝かしいキャリアを誇っていた彼だが、

合理主義を通り越した極端なまでの利己的な性格が災いして、

部隊の鼻つまみ者として扱われていた。

結果、彼の貧欲とも言える野心は能力を悪用した非合法な『副業』へと駆り立てられ、

なるべくしてなったと言うべきか、ついには追う側から追われる側に落ちぶれてしまったのだ。

 

それに関連して、本当は彼の腰から生えている尻尾の先端には

エネルギーを針状にして飛ばす固定武装、『カメレオンスティング』なる武器が内蔵されていたのだが、

ハンターを放逐された際に取り外され現在その武器を発射する事は叶わない。

つまり反撃できる手段があるのなら、とっくにやっていると言う訳だ。

逃げ惑いながらも、心の中はやられっぱなしな現状に対するもどかしさで一杯だった。

 

「(おっかねえ奴らだ! だが逃げ切ってこいつを捌きさえすりゃ……)」

 

一杯に詰め込んで膨らんだ腰のバックパックに視線を移し、手を当てるカメリーオ。

この中身に詰め込んだ盗品には、彼の懐を大いに潤わせるナニかが入っている。

 

3人がかりで追われるという絶体絶命のピンチながら、

逃げ延びた暁に得られる莫大な報酬にカメリーオはほくそ笑む。

勿論盗品を捌くことで手に入れられるのは

汚れた金以外の何物でもないが、勿論彼はそんな事にはこだわらない。

そもそも彼は、悪しき窃盗に手を染めた事には、何ら後ろめたい感情も覚えていない。

のし上がれれば何でも良いと言う身勝手さが、カメリーオの行動原理なのだ。

 

そうして逃走劇を繰り広げる内に、彼らは十字路に差し掛かった。

カメリーオは内心ほくそ笑む。

 

しめた!

 

建物に阻まれ一直線の通路ばかりだった裏路地に、人一人は入れそうな大きな隙間があり、

ご丁寧に角に差し掛かる手前には、使用済みの空き瓶やブリキ缶が詰まった木箱が置かれていた。

降ってわいた絶好のチャンス!

カメリーオは通りすがりに木箱を後ろ足で蹴って中身を地面にぶちまけながら、

エックス達の視界から逃れるように、差し掛かった十字路を左に素早く曲がった。

 

「っしまった!!」

 

転がってきた資源ごみにもつれながら、

カメリーオの動作に思い当たるものがあったのか、エックスは焦りの声を上げた。

そんなエックス達をあざ笑いながら素早く壁に張り付いては間髪入れずによじ登り、

カメリーオが自身の外見の由来となった動物にあやかった、彼特有の『特殊装備』を発動する!

 

 

 

ワンテンポ遅れて、エックスとアクセルが慌てた様子で曲がり角に飛び込んできた。

2人して素早く武器を構えるが……

 

「っ!!」

「い、いない!? どこ行っちゃったの!?」

 

カメリーオの曲がった路地裏を見渡すも、

その視線の先は決してカメリーオ自身をとらえる事は出来なかった。

突然見失ったカメリーオに対しエックスははっとした様子で口を開いた。

 

「……やられた、カメリーオの能力だ」

「(ギニニ……ご名答だよ!)」

 

毒づくエックスを壁に張り付いたまま真上から見下ろすカメリーオ。

その姿は背景の輪郭を自身の体の形に歪ませたような、

言うなれば透明なガラス細工になったかのように景色だけが透けていた。

 

他の隊員と折り合いの悪かった彼が、実力だけは買われていたと言う所以。

背景への擬態能力、モチーフとなったカメレオンらしい彼の能力である。

薄暗く視界の良くない路地裏である故に、猶更厄介なのは言うに及ばずである。

 

現にエックス達は歴戦のハンターであるもまんまと欺かれ、

真上にいるカメリーオの存在に気づく事無く、必死で見当違いな方向に視線を泳がせている。

 

「……曲がった直後だ、そんなに遠くへは行ってはいない筈だ」

「まずは奥の方を探そう!」

 

アクセルの提案にエックスは一言相槌をうつと、

直ぐ近くにいるカメリーオに気づく事なく路地の奥へと走り去ってしまった……。

 

「ニニニ……ばぁ~か♪」

 

エックス達がいなくなったのを確認するとカメリーオは擬態を解除した。

光を捻じ曲げていた身体が浮き彫りになり、汚れたビルの壁面にフェードインする。

その場の判断で彼らをまんまと出し抜けたのは

腐ってもカメリーオが能力自体は優秀な、特Aクラスの元ハンターだったからであろう。

存在に気付かずに自身を見失ったエックス達を馬鹿にしながら、カメリーオは鞄を引き寄せた。

飾りっ気のない膨らんだバッグは、彼の尻尾の先端に巻き付けていた。

 

「元レンジャー部隊を舐めすぎなんだよ」

 

カメリーオはほくそ笑んだ。

彼にとってエックス達の存在は目の上のたん瘤だった。

なぜなら追跡者3人とて、かつての自身と同じく精鋭のハンター達だからだ。

そんな彼らさえ上手に撒く事が出来た今となっては、カメリーオにとって最早敵はない。

 

たとえイレギュラーの烙印を押されようが、ブツを捌いた金でのし上がってしまえば、

それだけでも自分をロクに評価せず追い出した

イレギュラーハンター達への意趣返しともなるだろう。

 

「さぁ~て、あの3人が戻ってくる前にさっさと退散しますか」

 

あばよ、マヌケ面。

捨て台詞を吐こうとした所で、カメリーオはある事に気が付いた。

 

『3人』?

 

口に出した事を反芻するカメリーオ。

追いかけてきたのは確かに3人だが、

自分を追って曲がり角まで曲がったのはエックスとアクセルの二人だけだ。

ならもう一人……最後の赤いのはどこに行った?

自分の言葉を確かめるように、周囲を素早く見下ろして姿を探す。

夜目の利くカメリーオだが、しかし3人目の姿は影も形もない。

言いようのない不安がカメリーオを襲う。

 

 

「落鋼刃(らくこうじん)ッ!!」

 

 

唐突に上空から声がした。

カメリーオが慌てて上を振り向くと、わずかに青い空と日の光が差し込むビルの谷間。

壁をよじ登ったカメリーオよりさらに高い場所から、

鉄の刃を逆手に下に突き立て急降下する赤いハンターの姿が!

 

出し抜いた筈が裏をかかれた。

カメリーオが気づいた時には刃の先が尻尾の根元に突き立てられた!

 

「ギニイィィィィィィィィッ!!」

 

カメリーオの悲鳴が路地裏に響き渡る。

突然の事に対応できず、上から降って出た奇襲攻撃を前に、

鞄を抱えたカメリーオの尻尾は、重々しく大雑把な鉄の刃に根元から両断された!

そしてカメリーオ自身も顔面に赤いハンターの足が命中!

空中でストンピングを食らったカメリーオの手足は壁から剥がれ、

そのままハンター共々地面へと落下した。

 

カメリーオの地面に叩きつけられる重々しい音と共に、

鉄の刃が地面に刺さっては粉々に砕け散り、

中から緑に輝く超高熱のビームの刃が露になった。

直ぐ離れた所にカバンが落ち、切られた尻尾が取っ手に巻き付いたまま断面から火花を散らし、

生物のようにのたうち回り、かと思えば直ぐに機能を止めて動かなくなった。

 

「あ、ああ……ゼ、ゼロ……て、てめ……」

「……手間かけさせやがって」

 

赤いハンターの膝に顔を押しつぶされながら倒れ伏すカメリーオ。

落下の衝撃と上空からの襲撃者が全体重をかけたサンドイッチによって、

カメリーオは自慢の長い舌をだらしなく垂らしては、上目を剥いて痙攣する。

 

苦し紛れに赤いハンター『ゼロ』の名を口にすると、

彼の意識を司る電子頭脳が次々とエラーを起こし、

プログラムにもならない乱雑な英数字やアルファベットの羅列と砂嵐が、

横倒しとなり地面が縦に見えていた視界を覆い始める。

 

「こちらゼロ。 コソ泥を確保した」

 

自身が『ゼロ』と呼んだ赤いボディに長い黄金色の後ろ髪を持つレプリロイドは、

満身創痍のカメリーオを押さえつけては、

ビームサーベルの刃を収納し背中のサーベルラックに柄を差し込んだ。

身動きの取れないカメリーオを流し見つつ、サーベルを握っていない方の左手を側頭部に添え、

別の方向に走り去っていったエックス達に通信のやり取りを始める。

 

「くそっ……たれ……」

 

悪態をつきながらも、次々とシャットダウンするカメリーオの電子頭脳。

薄れゆく思考の中カメリーオは己の迂闊さと、それ以上にゼロの先読みのセンスを呪った。

後もう少し、もう少しでオサラバできてブツをさばき一攫千金を狙えたのに。

元ハンターの履歴さえ殴り捨てて、

後ろ指を指されながらものし上がれる道を必死で突き進んできたというのに。

それがたった一瞬の油断で全てがパァにされてしまった。

 

法や倫理に背く明らかな犯罪である事を棚に上げ、身勝手な怒りと悔しさに打ち震えながら、

朦朧とした意識でゼロを見上げつつ、

発生するエラーの数々の前に電子頭脳の演算機能がお手上げ状態となり、

ついに糸が切れた様にカメリーオの意識は闇に落ちていった。

 

 

こうしてビル群の裏側で繰り広げられた逃走劇はあえなく幕引きと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくしてエックスとアクセルの2名がゼロの元に集結した。

先程の曲がり角を曲がってすぐの所で、ゼロが伸びているカメリーオに手錠を掛けているのが見えた。

 

「ゼロ、すまない!」

「ああもうっ、結局先越されちゃったよ!」

 

 

到着するなり二人は浮かない表情になった。

能力を知っていながら見逃した事にばつが悪そうにするエックスに、

手柄を取られたと不満を露にするアクセル。

種類は違うが、結果オーライとはいえ少し悔しそうであった。

 

「だらしないぞ。 カメリーオが能力使って隠れる事は俺達が一番知ってる事だろう」

 

そんな二人を鼻息を鳴らしながらゼロが得意げに呟いた。

 

3人の中で唯一近接戦闘を得意とし、メインの戦法とするゼロ。

任務となれば敵の攻撃をかいくぐっては懐に潜り込み、

強烈なビームサーベル『ゼットセイバー』の一撃を叩き込む。

修羅場を潜り抜けてきたゼロの先読みのセンスは頭一つ飛びぬけていると言っても過言ではなく、

現に今しがたカメリーオを取り押さえる事が出来たのも、

曲がり角に逃げ込まれた時点で背景に隠れる事を素早く察知。

エックス達を先行させる形で自身はすかさず壁を駆け上がり、

後は上からカメリーオが姿を現すのを待っていたからと言う事だ。

 

「ま、それはさて置き……」

「押収品のチェック、だね」

 

ひと段落つくと、3人はカメリーオの落としたカバンに視線をやった。

ゼロのセイバーによって根元から切られ、

ぐったりしているカメリーオの尻尾が未だ巻き付いたまま。

ゼロは持ち主の元を離れて横たわったままの黒いバッグに歩み寄り、

屈むなり巻き付いた尻尾を乱暴に払いのけ、開け口のチャックに手を伸ばす。

 

金具を掴んでいるゼロの指が下がり、

金属の歯のかみ合わせが外れる音と共に鞄は開かれ中身が曝け出された。

路地裏の為昼間でもほの暗い場所だが、わずかに差し込む日の光。

望遠鏡にも匹敵するレプリロイドの視力をもってすれば、

カメリーオが何を盗んだかは一目瞭然だった。

 

「……随分詰め込みやがったな」

 

乱暴な手つきで鞄の中の一部を引きずり出すゼロ。

 

白いゼロの手の中に納まる盗品……桃色、純白、青、緑……

いずれも淡い色彩で、物によってはフリルで縁取りされたり、

または刺繍があしらわれている、あるいはその両方か、

三角や大きな丸が二つ連なった柔らかい布切れがそこにあった。

共通点として、いずれも洗っていないのか、

口で形容する事を憚られるような汚れがついてるその品は――――

 

「うわぁ……話には聞いてたが、これは……」

「このカメリーオって奴、変態の気でもあったんじゃないの?」

 

 

――――早い話が女物の下着であった。

 

共に押収物の中身を見ていたエックスとアクセルはドン引きしていた。

嫌そうな表情を隠しもせず露骨なまでに嫌悪感を露にする。

盗品の内容が物語る通り、

カメリーオは脱いで洗濯していない女性の下着を裏ルートで捌く泥棒だったのだ。

しかも丈夫そうなカバンが張り詰める程の内容量と充実したラインナップ、

恐らくは近隣の住宅地に住む女性たちの分は揃えてる事が伺われる。

 

「エックス、どうしてこんな犯人今まで野放しだったの?」

「手口からおおよその犯人は推測されてたんだけど、

 何せ文字通り姿が見えない相手だったからな。 指名手配するにも証拠がなかったんだ。

 でもまあ、犯行現場に出くわした事で現行犯逮捕できたのは運が良かったよ」

 

エックスは胸を撫で下した。

 

「勿論、本当は今回の犯罪が行われる前に捕まえたかったけど……ゼロ?」

 

言いかけた所で、エックスは先程から一言も発しない、長年のパートナーに声をかけた。

しかしゼロはカバンの中身を検める事に夢中で返事をしない。

柔らかい生地の塊が擦れる音だけが聞こえてくる中、

エックスはつい怪訝な眼差しでゼロの背中を見つめるが、

やがてひと段落ついたのか、漁っていたカバンを掴んで立ち上がりエックス達の方を振り返る。

 

「全く、こんなもんに執着しやがるとはカメリーオも堕ちるとこまで堕ちたか」

 

カメリーオの犯罪に呆れた表情で頭をかくゼロ。

 

「同感だ、俺もそう思うよ……」

 

そんなゼロに相槌をうちながらエックスは歩み寄った。

しかしどう言った訳か、その視線はゼロの顔ではなくもっと下の方に向けられていた。

 

「で、ゼロ。 その『不自然な股間の膨らみ』はなんだ?」

「あ? 俺の自前のバスターに決まってるだろ?」

 

鼻息をついてドヤ顔をするゼロ。

 

よく見ればカバンの中身を調べる前と比べ、

ゼロの股座はバスケットボールを彷彿とさせるほど大きく膨らんでいた。

違和感ありまくりな事この上ない。

 

「今日も元気と言う訳か」

「フッ、俺のバスターは今日もビンビンだぜ」

 

エックスとゼロはお互いにどっと笑いあう。

そこには任務の疲れもなく、朗らかな笑い声が物取り劇を繰り広げた路地裏に響き渡った。

 

「 ん な 訳 無 い だ ろ う が あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ッ ! ! ! ! 」

 

そして怒りの一撃!

間髪入れずに怒号を伴うエックスのノリツッコミともいえるソバットが、

ゼロのどうりょくろの次に大切な、X5以降見る影もなく弱体化した

自称ビンビンのゼットバスターにさく裂した!

 

「アバーーーーーーーーッ!!」

 

ゼロは絶叫した。

 

「だあああああああああ!! またこのパターンかあぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

アクセルも頭を抱えて絶叫した。

どうやらこの3人にとって、これら一連の出来事はもはや通例と化しているようだった。

 

稀代ともいえる戦いのセンスをして、華麗に舞う武神とさえ評されたイレギュラーハンターゼロ。

しかし、戦闘以外の部分に関しては目も当てられないスケベっぷりであった。

 

職場であるハンターベース内においては、

『見た目だけなら』女性陣にも多大な人気を誇るものの、

一方で任務の度にちょっとHな押収物があれば、

隙を見せるとすぐ尤もらしい理由をつけてガメようとする等、

ある意味でカメリーオに勝るとも劣らない手癖の悪さを見せつけるほどであった。

 

現にこうしてパンツ(?)の中にパンツをインサートしたあたりからも、

全く隠す気のない誤魔化し方を本気でやってのけるあたり、

ついでに頭の出来も相応である事を伺わせた。

 

 

「ゼロッ!! どうして君はいつもそうなんだ!? 絵に描いたような変態で俺は悲しいよッ!!」

「イッイレギュギュギュ!!」

「まってエックス!! これ以上やったらゼロの頭潰れるよッ!!」

 

「ギニ……ニニニ……ニギャァッ!?」

 

エックスにヘッドロックをかけられ、奇声を上げ白い泡を吹いて悶絶するゼロ、

それを慌ててアクセルが止めるという図式が成り立っている中、

気を失っていたままのカメリーオが目を覚ますなり声を上げた。

 

「ち、チクショウ!! お前らっ俺のブツに何してやがんだ!」

 

両手足を拘束され地面を這いずりながら叫ぶカメリーオ。

下手人が目を覚ました事を受け、エックスがヘッドロックを解く形で3人は争うのを止め、

こちらを睨むカメリーオの方に視線をやった。

 

「あ、生きてたかカメリーオ」

「チッくたばり損ないめ」

「おはよー変態」

 

「勝手に殺すんじゃねぇよッ!!」

 

打って変わって冷静な3人のハンターに、カメリーオは突っ込みを禁じ得なかった。

 

「ていうか誰が変態だ!? たかが脱ぎたての下着盗んだくらいで騒いでんじゃねぇよ!」

「え、違うの? どっからどう見ても変態でしょ?」

「単に高く売れるから盗んでただけだっての!

 そこのゼロみたいなマジモンの変態がいい値で買いやがるんだよ!」

 

突然やり玉に挙げられるゼロ。 言われるなりエックスとアクセルはゼロの方に目をやり、

 

「「それもそうか(だね)」」

 

二人して疑う事なく納得した。

 

「お前ら納得すんな!」

 

1ミリもゼロを健全でないと首を縦に振る仲間達に、

今しがたやろうとした行為を棚に上げゼロが怒りを露にする。

味方同士でみっともない言い合いをする3人に、カメリーオは声を荒げた。

 

「クソッタレ! 何だってお前らみたいな3バカに

 イレギュラー呼ばわりされなきゃいけねぇんだ!!

 尻尾切りやがったゼロもそうだが……

 特にエックス! てめぇいきなり俺の頭撃ち抜こうとしたろ!?」

「イレギュラーを狩る、それが俺たちの使命だからだ!」

「そう言う話じゃねぇよ!! そこのチビみたく威嚇射撃も無しかって聞いてるんだよ!」

「チビっていうな! ってか僕を勝手に3バカの頭数に入れないでよ!」

 

怒りの声を上げるカメリーオに対し、エックスはどこか論点のズレた答えを返す。

ついでにチビ呼ばわりされたアクセルも不満げに返答する。

 

「ああクソッ! ブルマ履いててイレギュラースレスレとか笑い話にもなりゃしねぇや!」

 

今すぐ殴り掛かりたいが拘束されているためそれも叶わない。

せめてもの悪あがきに、カメリーオはつい憎まれ口を叩いた。

 

「は?」

 

その一言が、エックスの中に眠る『鬼(イレギュラー)』を目覚めさせてしまう事も気づかずに。

エックスはピタリと動きを止め、真顔でカメリーオと目線を合わせた。

 

「……今何か言ったか?」

 

声色のトーンが下がるエックスに、

ゼロとアクセルは仕事仲間としての経験上から不穏な空気を察する。

 

「あっ……」

「やべっ、離れろアクセル」

 

ゼロはアクセルの肩を叩き、それに答える形で

アクセルは無言でうなずくと共にさっと身を引いた。

ゼロも痛む股間を抑えつつうさぎ跳びで怒気を発するエックスから離れると、

2人して神妙な面持ちでエックスの動向を見守った。

 

「君は今、俺の事ブルマとかイレギュラーとか言ったね?」

 

エックスは満面の笑みで、しかし目つきに関しては全くその限りでない、

さながら『影』を感じさせるような面持ちでカメリーオに近づいた。

青いハンターから発せられるただならぬ雰囲気に、

カメリーオは思わず減らず口を閉じて固まってしまった。

 

「何言ってるんだよ」

「あ……あ……」

 

エックスはにこやかに右手を差し出し、ひっこめた筈のバスターに再び切り替える。

赤い集光レンズの埋め込まれた銃口に青い光が満たされていく。

『チャージショット』、エックスのバスターはただ弾をばら撒くだけでなく、

エネルギーを銃口に収束させて威力のより高い一撃を一気に解き放つ事も出来る。

 

そんな凝縮したエネルギーの塊を、硬直するカメリーオの頭に突きつけてこう言った。

 

 

「 イ レ ギ ュ ラ ー は 君 の 方 だ ろ ? 」

 

「あ、ああああああああああああ

 あああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

 

カメリーオも理解したらしい。 自身がいらぬ一言で地雷を踏み抜いてしまった事を。

それも核地雷とも評される超ド級のタブーを犯した事実を。

 

日頃エックスは温厚で正義感にあふれる人物像で知られるが、

反面切れるととんでもなく恐ろしく、何より無慈悲であった。

一説によると先の幾多のシグマ大戦においても、

平和を取り戻すという口実で何分で反乱を鎮圧できるかという、

ゲーム感覚でタイムアタック的なものを行っていたとか、

少々サイコパスな兆候が見え隠れするとか言う不穏な話もある。

 

そんな彼が目に見えて怒りのオーラを漂わせて迫る状況を前に、

もしカメリーオが人間であったのなら、

逃れようのない絶対的恐怖にしめやかに失禁ないし脱糞していただろう。

命乞いの言葉すら思うように出せない、

今のカメリーオはただ悲鳴を上げて震え上がる哀れな獲物に過ぎなかった。

 

「え、エックスまって! 今こいつ撃つのはまずいよ!」

 

今にも撃ちそうなエックスを前に、流石に見かねたアクセルが止めに入る。

憧れの大本である青いハンターが、たかが下着泥棒を

全力で殺っちまう事を見過ごす訳にもいかなかったからだ。

アクセルは震える我が身をおさえて、何とか喉の奥から言葉を紡ぎだす。

 

「このイレギュラーを今処分したら……そうだよ! 取り調べ!

 取り調べできなくてどういうルートで下着捌いてたか

 分からなっちゃうよ! それでいいの!?」

「……!! そうだな……」

 

言葉をひねり出して必死に説得するアクセルに諭されたのか、

エックスのバスターから収束されていた光が消え、

銃口に切り替えていた手首から元の白い右手に戻る。

ひとまず始末書ものの事態に発展する事だけは避けられたらしい。

アクセルは胸を撫で下ろした。 カメリーオも殺害されるのだけは回避できたと一息つく。

 

エックスは目を閉じて、カメリーオに背を向ける。

 

「カメリーオの首を引きちぎるのは取り調べの後にしよう」

 

さらりと無慈悲なエックスの死刑宣告に、今度こそカメリーオは絶望した。

どうやらアクセルの助け舟は、処刑までの時間を引き延ばした程度に過ぎなかったようだ。

 

「ニニ……ニニニニニニニニニニニニニニニニニニッ!!」

 

とうとうカメリーオは発狂してしまった。

当然だ、これからハンターベースへと護送され取り調べを受けた後、

凄惨な目にあわされる事が確定したも同然だからだ。

温厚そうな対外的なイメージとは裏腹に、エックスはそういった事に対しては容赦しない。

『やる』と決めたら『やる』。

曲がりなりにも部署は違えど同じハンターだったカメリーオには、それは痛い程に分かっていた。

 

口からだらしなく長い舌を出しながら、

明後日の方向を向いて大笑いをする哀れな犯罪者を前に立ちすくむアクセル。

 

「なんでそうなるのかな……」

 

額に手を当ててただ呆れ返る以外になかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、先が思いやられるぜ」

「僕のセリフだよゼロ! ああもうッ!! 何でまた股間膨らんでるのさッ!?」

 

そしてどさくさ紛れに再び押収品のパンツを、

バスケットボール大に張り詰めるまで股間に詰め込んでいたゼロ。

 

この後ゼロは全く同じような言い訳をして、

自前のバスターへとアクセルバレットの3点バーストを叩き込まれる事になる。

 

巡回していた他の仲間達が到着する頃には、

狂い笑いを浮かべるカメリーオと気絶しているゼロの姿が目撃されたそうな。

 

 




もう、後戻りはできん。
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